堀井拓馬のレビュー一覧
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日本ホラー小説大賞は、たまにこういったものが出てくるから侮れない。個人的には角川ホラー文庫の装丁ヤメればいいのに、と、思う。もっと差別化した装丁にすればいいのに。そのほうがこの「なまづま」の良さと心地悪さが際立つだろうに。
例えば読書がスキで、あたしみたいにグロへの耐性がかなりある知人がいたとしたらあたしはこの本、迷わず勧める。その時の確認事項としては例えば、日本ホラー小説大賞に沿っていけばおそらく、こうだ。
以下、A群とB群でB群の方がスキ、あるいは最低限B群が「読める」。
A群例:「黒い家」「ジュリエット」「パラサイト・イヴ」「嘘神」
B群例:「姉飼」「夜市」「鼻」「粘膜人間」
上 -
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ヌメリヒトモドキは切っても焼いても真空に閉じ込めても、何をしても死なない。悪臭を放つ粘液を垂れ流し、ゴキブリのように人の住む町に増える。
そして、人の頭髪や爪、死肉、記憶などを与えると、その人間とまったく同じ意思を持った「近似個体」に成育していく特徴をもつ。
主人公はヌメリヒトモドキを研究する研究員で、最愛の妻を亡くしている。
研究チームの一人をヌメリヒトモドキにコピーすることに成功し、そこから妻の蘇生を思い立ち、狂気にとりつかれていく。
哲学の思考実験「スワンプマン」をホラーに落とし込み、人間のディスコミュニケーションを描いた物語として、とても面白く読めた。
ただ、終盤で急ハンドル -
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「てのひら怪談」よりもさらにミニマムな「ゆびさき怪談」。140文字以内という制約があるけれど、それでも、というかだからこそ描き出されるさまざまな恐怖が魅力的です。描かれない部分も多いけれど、その分想像力が恐怖を増幅させることも。
怖いと思ったのは織守きょうや「首がない」「橋姫」、澤村伊智「地獄」「ファミレス」、堀井拓馬「ネタバレイヤー」などなど。岩城裕明「ヒールはやめて」はなんだか可愛くて和みました。矢部嵩の作品はどれも不気味で素敵。そして白井智之「白塗りの悪魔」「川辺の砂」って……不可思議なホラーとしても読めますが。ミステリファンにはいろいろ気づけて楽しい作品では。 -
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ヌメリヒトモドキという、人間が粘液になったような生物がいる世界。町外れには「女王」と呼ばれる巨大なヌメリヒトモドキがいて、ヌメリヒトモドキはそこから生まれ、また女王に返って融合し、また生まれるサイクルを繰り返す。主人公はヌメリヒトモドキの研究者。ある時ヌメリヒトモドキの人間近似個体の研究から、主人公は亡くなった妻をヌメリヒトモドキで作ることを思いつくー。
もう、「どうやったらそんな話思いつくん?」という感想。粘液の描写が最高に気持ち悪くて良かったです。異常な世界観の中で細かく描写されていく主人公の心情とだんだんシンクロしていくから不思議。ただ亡くなった妻以外の人との関係性についての描写がちょ -
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第18回日本ホラー小説大賞受賞作を読みました。
それは、腐敗臭を放つ粘液に覆われた、まるでナマコのような生物、
「ヌメリヒトモドキ」が蔓延している時代。
ある男が、それを研究し、
それが、人間の記憶や感情を記憶し、人間のように進化していくことを知り、
亡くなった最愛の妻をよみがえらせるため、
ヌメリヒトモドキの飼育を始めるのだった。
ヌメリヒトモドキとは、
青白く、何とか人の様相をしているが、
生臭く、ねばねばしたもので覆われ、目や口もはっきりせず、
ズルズルと引きずるように街中を歩き回っているおぞましい生き物らしい。。。
こんなものが、街中をうろうろしていると -
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読んでいて、『狂愛』という言葉がしっくりくる作品だと感じました。
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『ヌメリヒトモドキ』というスライム状の生物がそこらじゅうに生息しているのが当たり前、という世界で繰り広げられる物語。
主人公は、数年前に妻を亡くしてから、毎日を無為に過ごすヌメリヒトモドキ研究者。研究の過程で、そのヒトモドキが人間の髪の毛や体液から容姿と記憶を学習する習性を持つと知り、最愛の妻を再現する為にヒトモドキを家の浴室で密かに飼育し始める。。。というストーリー。
この、『ヌメリヒトモドキ』というよくわからない生物が、まるで実在の生物かのごとく生々しく感じられる描写はすごいです。読んでいて激臭やヌメリ感 -
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ネタバレ【第18回日本ホラー小説大賞長編賞】
失われた最愛の人を取り戻すために、科学者が一線を越えてしまうお話。
前半は妻を失った科学者の喪失感がせつせつと伝わってきて、泣けてきた。心にズシッと響いた。妻を喪失して以来、カラカラで乾ききった人生を送る科学者。なんの色もなく、モノクロの世界で、「ただ」生きている。死なないから生きている。なんと虚しい一日。
後半、一線を越えてしまってからの科学者は、正直、哀れを催すほど愚かだったのが残念。それでも、妻への思いがあふれるように感じられて、前半の干からびてた科学者が生き生きとしているのが分かる。
そして、越えてはいけない一線を既に越えてしまっているんだ -
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書店で平積みにされているのを見て、ふっと購入しました。
何しろ、表紙のイラストが、三津田信三さんの刀城言耶シリーズの表紙を手掛けている、村田修さん。そして、『夜波の鳴く夏』という、いかにも、という雰囲気のタイトル。
あらすじを読んでみると・・・ぬっぺほふが主人公!?
これはもう、買うしかないと。
一気読みをしての感想は、まず、「凄いものが出てきた!」でした。
有り得ない設定なのに、さらりと受け入れてしまえるうまさ。そして、単に、「怖い」や「ホラー」なのではなく、人間の内面を抉り出すような小説でした。
例えば、妖怪のぬっぺほふたちは、人間の顔を喫む(舐める)のですが、舐められた人間は、数回では -
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悪臭を放ち、粘液をぼたぼた落としながら這うように歩き、人々にモドキタタキで追い払われながらもぬぼっと存在しているヌメリヒトモドキ。その生態を研究している主人公はヌメリヒトモドキを一匹捕まえ浴室に監禁し、亡くした妻に似せていき、妻をヌメリヒトモドキの中に蘇らせようと奮闘する。発想の新鮮さはあまり感じないが、インパクトは充分。
それよりも、決して上手いとは思えない粘着質の文書が徹底されていて、そちらの方に凄みを感じた。主人公が人を見る目は自分にも他人にも厳しく、しかも非常に複雑に自分も他人も分析し苦悩する。その心情をとても丹念に書き上げてある。非常に読みにくいけど、そこがいい。文章はキャリア