あらすじ
大正の世、名無しのぬっぺほふことおいらは財閥家の令嬢コバト姫に飼われ、純愛を捧げていた。だが、コバトが義理の兄・秋信と関係を持っていることを知ってしまい、おいらは観る人を不幸にする絵「夜波」を使って秋信を抹殺しようと決める。夜波の画家ナルセ紳互を妖怪たちが集う無得市に引き込み、ようやく絵を手に入れるが、なぜか想定外の人物にも渡ってしまい……。若き鬼才が奔放な想像力で描く衝撃×禁断の妖奇譚!
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Posted by ブクログ
美貌の下に暴力と狂気と歪んだ愛情を宿した少女、コバト姫。かあいいお肉ちゃんと名付けられ、そんな彼女に狂おしく恋焦がれるぬっぺほふ。
穢らわしくて生臭い愛情の結末は残酷だが、二人にとってはそれが幸せ。
二人が求めていたのは、暖かくて優しい感情ではないからだ。
人を選ぶ内容だが、大正浪漫でエログロな人外×少女ものとして、大いにお勧め。
Posted by ブクログ
不本意ながら、妖怪ぬっぺほふが可愛い。
性根はとことん下衆なのに
もちもちしていてお日様のにおいがするお肉の塊が
あばーあばーって泣きじゃくるとか!
かわいすぎる。
かわいすぎて★4つ。
内容は大正エログロファンタジー要素の強いホラー。
そういうのがお好きな方にはおススメです。
Posted by ブクログ
書店で平積みにされているのを見て、ふっと購入しました。
何しろ、表紙のイラストが、三津田信三さんの刀城言耶シリーズの表紙を手掛けている、村田修さん。そして、『夜波の鳴く夏』という、いかにも、という雰囲気のタイトル。
あらすじを読んでみると・・・ぬっぺほふが主人公!?
これはもう、買うしかないと。
一気読みをしての感想は、まず、「凄いものが出てきた!」でした。
有り得ない設定なのに、さらりと受け入れてしまえるうまさ。そして、単に、「怖い」や「ホラー」なのではなく、人間の内面を抉り出すような小説でした。
例えば、妖怪のぬっぺほふたちは、人間の顔を喫む(舐める)のですが、舐められた人間は、数回では何の変化もないものの、徐々に人間らしさが失われて行き、ただ、人の形をした、食欲と性欲のみのモノに変わり果てるのです。そこで為される説明は、ぬっぺほふたちが舐めるのは、単に人間の顔の皮膚ではなく、徐々に失われる事になる、人間らしさ、なのだと。
それから、見た者を不幸にするという、途轍もない毒を持つ絵、『夜波』も、作中でそれと同じような役割を果たします。
一見ただの黒く塗り潰されただけの絵。でも、『夜波』に魅了される者は、その中に、それぞれ違ったものを見ます。『夜波』の持つ毒というのも、どうやら、持ち主の抱える罪の意識を暴くもののようで、ここでも、人間の内面が曝け出されて行きます。
飴村行さんの粘膜シリーズと、そして妖怪が好きなら、きっとはまる作品です。
それから、最近知ったのですが、村田修さんは、津原泰水さんの実弟なのですね。