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激臭を放つ粘液に覆われた醜悪な生物ヌメリヒトモドキ。日本中に蔓延するその生物を研究している私は、それが人間の記憶や感情を習得する能力を持つことを知る。他人とうまく関われない私にとって、世界とつながる唯一の窓口は死んだ妻だった。私は最愛の妻を蘇らせるため、ヌメリヒトモドキの密かな飼育に熱中していく。悲劇的な結末に向かって……。選考委員絶賛、若き鬼才の誕生!
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Posted by ブクログ
日本ホラー小説大賞は、たまにこういったものが出てくるから侮れない。個人的には角川ホラー文庫の装丁ヤメればいいのに、と、思う。もっと差別化した装丁にすればいいのに。そのほうがこの「なまづま」の良さと心地悪さが際立つだろうに。 例えば読書がスキで、あたしみたいにグロへの耐性がかなりある知人がいたとし...続きを読むたらあたしはこの本、迷わず勧める。その時の確認事項としては例えば、日本ホラー小説大賞に沿っていけばおそらく、こうだ。 以下、A群とB群でB群の方がスキ、あるいは最低限B群が「読める」。 A群例:「黒い家」「ジュリエット」「パラサイト・イヴ」「嘘神」 B群例:「姉飼」「夜市」「鼻」「粘膜人間」 上記B群いずれか、特に粘膜人間と鼻を読んだことがあるあなた、きっとあたしのいいたいことがわかりましたね?そうなんですよこの作品、そのレベルのすごさです。しかもすごいのは、架空の生命体のぐろぐろ加減に比べて、地の部分の主人公の独白が、かなり美しい絶望と愛で織りなされていること。ここは4作品とは大きく違ってむしろ、ちょっとした恋愛小説と大差ないほどだ。巻末に選考委員のコメントとして愛のドロドロが書かれていないとあったがそうだろうか?十分切なくもどろどろだったように思うけれど個人的には。 おっとすっかり忘れていた、どんな話かというと: 激臭を放つ粘液に覆われた醜悪なばけもの、ヌメリヒトモドキが住み着き、増殖していく東京で、その研究をする私。その汚臭に精神を病みつつもあるとき、ヌメリヒトモドキが人間の抜け落ちた髪や爪を食べて母体に吸収・排出される過程で成長し、その人間の感情や記憶を学習することを知る。3年近く前に死んだ妻の髪を大事に保存していた私が考えたのは、ヌメリヒトモドキを飼育して、妻に模したそれを完成させようとする、が。 最後のエンディングが、単に絶望感に彩られた予定調和ではないのがいい。あたしは何度か書いているけど完全にハッピーエンド信奉者ではある。けれどそもそも絶望と不快を下敷きにしたこの作品はすでに破綻の音がしていた訳で、その中でこうひねったのであればすごいなーと思ったし。 気色悪いし生理的におえってなるシーンもたくさんある。でもそれでも、技巧的で巧みな独白部分と、最後の絶望的ででも非常に計算高いこの作品は、読んでよかったと思う。 <引用> 「ねっとりとした慢性的な疲労をとびきり深いため息に代えてでろでろと排出すると、私はうなだれるようにして足下を見下ろした。」 「浮薄さを装っているせいで自分は人に好かれないということに山崎さんも気づいてはいるだろう。だがそれでも彼は演じることをやめない。演じ続けることでいつしか本当に、喪われた過去を顧みず、ただ来るべき未来のためにだけ生きられるようになると夢見ている。しかしその願いどおり、もし彼がもう少し愚かしい人間だったなら、奥さんを亡くした後、彼はもっと幸福な人生を送ってきたはずだ。話を聞く限り、奥さんを失った後の彼の人生は幸福とは言い難い。彼はまだ、聡明なままなのだろう。」 「彼女の中で、私にはまだたくさんの空白があったに違いない。彼女にとっての私の中に存在している未知な部分は ー 私が多くの言葉を持たないせいで彼女の目には空白に映っていた私の心の一部は、彼女の陰鬱な精神状態を反映してあらぬ色合いを帯びていた。私が自分の多くを語らず、彼女が私の多くを知り得なかったせいで、彼女の中の私は好き勝手姿形を変えて、現実の私の態度とは関係なく、彼女を責め立て、彼女を罵っていたのだろう。」 <引用終わり>
ヌメリヒトモドキは切っても焼いても真空に閉じ込めても、何をしても死なない。悪臭を放つ粘液を垂れ流し、ゴキブリのように人の住む町に増える。 そして、人の頭髪や爪、死肉、記憶などを与えると、その人間とまったく同じ意思を持った「近似個体」に成育していく特徴をもつ。 主人公はヌメリヒトモドキを研究する研...続きを読む究員で、最愛の妻を亡くしている。 研究チームの一人をヌメリヒトモドキにコピーすることに成功し、そこから妻の蘇生を思い立ち、狂気にとりつかれていく。 哲学の思考実験「スワンプマン」をホラーに落とし込み、人間のディスコミュニケーションを描いた物語として、とても面白く読めた。 ただ、終盤で急ハンドルを切った感があり、僕はそこから先をもっと読んでみたいと思った。 審査員たちに、文体がくどいと評されているが、評者たちは自身の作品を読んだことがないのだろうか。無視していい。
ヌメリヒトモドキという、人間が粘液になったような生物がいる世界。町外れには「女王」と呼ばれる巨大なヌメリヒトモドキがいて、ヌメリヒトモドキはそこから生まれ、また女王に返って融合し、また生まれるサイクルを繰り返す。主人公はヌメリヒトモドキの研究者。ある時ヌメリヒトモドキの人間近似個体の研究から、主人公...続きを読むは亡くなった妻をヌメリヒトモドキで作ることを思いつくー。 もう、「どうやったらそんな話思いつくん?」という感想。粘液の描写が最高に気持ち悪くて良かったです。異常な世界観の中で細かく描写されていく主人公の心情とだんだんシンクロしていくから不思議。ただ亡くなった妻以外の人との関係性についての描写がちょっと薄いというか…カンナミ研究員ともう一悶着あっても良かったかな?という感じ。 ラストはめちゃくちゃ好きなタイプの絶望でした。
第18回日本ホラー小説大賞受賞作を読みました。 それは、腐敗臭を放つ粘液に覆われた、まるでナマコのような生物、 「ヌメリヒトモドキ」が蔓延している時代。 ある男が、それを研究し、 それが、人間の記憶や感情を記憶し、人間のように進化していくことを知り、 亡くなった最愛の妻をよみがえらせる...続きを読むため、 ヌメリヒトモドキの飼育を始めるのだった。 ヌメリヒトモドキとは、 青白く、何とか人の様相をしているが、 生臭く、ねばねばしたもので覆われ、目や口もはっきりせず、 ズルズルと引きずるように街中を歩き回っているおぞましい生き物らしい。。。 こんなものが、街中をうろうろしているというのを想像しただけで寒気が。。。 おまけに、本から異臭まで漂ってきそうな。。。 ちょっと異質のホラーですが、 どうなっていくのか、ドキドキしながら読めました。 ただ、涼しくなるような恐怖はありませんでしたけどね。
確か、”読むのが怖い”からだったかな。あとはホラー大賞受賞作ってこともあって。モドキのあまりの醜悪さに、読みながら顔をしかめたり気持ち悪くなったりすることしきり。『こんなけったくそ悪いモノ!』って思ったけど、それってまさに作者の意中なんですよね。まんまとやられたし、何やかや続きが気になって最後まで楽...続きを読むしませてはもらったんで、作品としての評価は意外に高いです。
言葉選びが好み。 表紙がとても不気味だけど読み終わる頃には可愛とさえ思ってしまう。 不器用すぎる男の物語り 死んでもあんな愛され方されたら幸せだ
淡々とした語りがしだいに、「あ、なんかヤバそう」と恐怖を募らせていくつくりは江戸川乱歩っぽく感じた。発想も面白いし、コンパクトなのが良い。次の作品も読みたい。
永遠は怖い 不死だから病気にならない 病気にならないということは 脳の病気にもならない だから精神が狂うこともない という設定が面白かったです そこまで踏み込んだ作品はめずらしいです
読んでいて、『狂愛』という言葉がしっくりくる作品だと感じました。 *** 『ヌメリヒトモドキ』というスライム状の生物がそこらじゅうに生息しているのが当たり前、という世界で繰り広げられる物語。 主人公は、数年前に妻を亡くしてから、毎日を無為に過ごすヌメリヒトモドキ研究者。研究の過程で、そのヒト...続きを読むモドキが人間の髪の毛や体液から容姿と記憶を学習する習性を持つと知り、最愛の妻を再現する為にヒトモドキを家の浴室で密かに飼育し始める。。。というストーリー。 この、『ヌメリヒトモドキ』というよくわからない生物が、まるで実在の生物かのごとく生々しく感じられる描写はすごいです。読んでいて激臭やヌメリ感を肌に感じます。 そして、喪失を取り戻そうと妻の再現に執着する研究者の執念は、一貫して手記風に描かれた文章にも現れているのではないでしょうか。人物のセリフが長いのも特徴で、恐らくそれが解説・批評で言われている「文章がねちっこい」と感じる原因の一つなのではと考えます。 それゆえ、意外な結末を迎えた読後の余韻も、ぬめってまとわりつくような感覚を覚えました。 堀井さんの他の作品もぜひ読んでみたいのですが、書店には他の作品があまり置かれていないのが残念。。。
第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。ホラーの皮をかぶった純愛小説だね。異形の存在・ヌメリヒトモドキの描写に、内省的な主人公の自分語りが相俟ってネットリ具合が倍増。ひたすらに粘着質な、”妻”への愛が凄まじい。キスシーンなんて鳥肌モノだよw。ただ、個人的にはもう少し鬼畜度が欲しかった気も……。
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堀井拓馬
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