堀川惠子のレビュー一覧

  • 透析を止めた日

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    このノンフィクション作家の作品にはハズレがない。
    まして今回は夫の闘病記なので、著者自身のやりきれない感情も赤裸々と綴られていて、思わずページをめくり続ける。
    どうしたら夫の日々の苦痛を軽減できるかとの悲痛な思いが、現在の透析治療の問題点の分析につながっていく。同じく透析治療を受けている患者の治療の改善までも視野にいれたノンフィクションになっている。
    いつもながら、堀川さんの筆力には感心する。

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    2025年09月19日
  • 原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

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    いつもながら堀川さんの著作は読みごたえがある。これまで読んだ裁判とか死刑囚がテーマではなく、この本は広島の原爆がテーマだけどもともと堀川さんは広島出身だそうでそれだけに真摯に取材を重ねた感がある。
    原爆投下そしてその後をたどるなかにさまざまな不条理が、やるせない思いにさせるものが描かれる。原爆を機に身内ですら疎遠になったり不仲になったり、原爆で亡くなった人の算定の覚束なさとか、供養塔に納められている人の情報が実は不確かだったりとか、本で深く触れられている佐伯敏子さんや著者が受けた行政の対応とか。平和を軸に誠実に公明正大に対応している気がしていた行政の被爆者対応、縁故者対応だって平和のイメージを

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    2025年09月15日
  • 透析を止めた日

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    重いテーマだが読んで良かった。患者の命を繋ぎ止める透析をどう止めるか、何をもってしてその決断をするのか。自分が当事者になっても判らないと思う。生き様ではなく死に様を考えることは少ない。それを医療の制度と患者とその家族の感情、患者本人の痛み苦しみ、様々なことを考えて決断を下さないといけない。自分がどのような立場でその時が来ても正解の答えは出せないだろう。だが、そのためにもこの本は読んで良かった。最後に以下の言葉を備忘として残しておきたい。
    「私たちは必死に生きた。しかし、どう死ねばよいのか、それが分からなかった」

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    2025年09月15日
  • 透析を止めた日

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    ネタバレ

    すごい本です。迫ってくる。
    人工透析について何も知らなかった。
    そして、最期にどんな結末になるのかなんて考えたこともなかった。こんなことになるなんて想像もしなかった。

    内容は本の紹介欄を読んでください。
    医療調査の専門家と言ってもよいジャーナリスト夫妻。
    夫の林さんはNHKのディレクター。40代から人工透析を受けている。
    人工透析は週3回、4時間づつ通う必要があるというのは、知っていた。でも成分献血のように椅子に座ってゆっくりしてればいいんだよねくらいの感覚だった。
    でも実態は全然違う。
    太い針を刺し、大量の血液を交換する。その結果瘤のようなものができる。
    腎機能がダメになるということは尿が

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    2025年09月13日
  • 教誨師

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    50年にわたって死刑囚と対話を重ねて刑の執行に立会いつづけた教誨師の僧侶の語りに基づくノンフィクション。興味本位で読み始めたが、死刑という刑事罰のあり方について考えさせられた。贖罪とは、犯罪者の人権とは、執行を決める人と立ち会う人の心のありようとは。執行の現場における生々しい描写も多く、「よってたかって人殺しをする」シーンをイメージすると読み進めるのも苦しかった。語り手や死刑囚、死刑執行に携わるすべての人に敬意や配慮が感じられて、取材が丁寧で信頼できると感じた。

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    2025年09月08日
  • 透析を止めた日

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    病気と闘っている人をみると自分の考えの甘さや命を軽くみている自己嫌悪を感じる。
    そして担当医も看護師も親身になって患者に寄り添っているのではないことも、多分書かれてある以上に冷たいあしらわれ方と自己保全の塊の対応をされているのだと感じる。
    命を預けて高い診療費を払っているのだから患者のケアや説明を充分納得できるような体制を整えて欲しい。テレビで医療従事者の特集を観たが親身になってくれている医師は特殊で一部だけなのかと思ってしまう。

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    2025年09月05日
  • 透析を止めた日

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    前半は透析患者の夫を側で介護していた経験からの闘病記。とくにラスト、透析が回せなくなった後の苦しそうな数日の細かい記録は、読んでいて辛いし怖かった。
    それでも、こんなにも献身的に支えてくれる妻がいた事はとても幸せだなぁと思わされる。自らの腎臓肝臓を移植することまで決意しているくらい、夫のこと、本当に愛しているんだなと、恋愛小説かのような場面も。

    後半は透析医療について、緩和ケアが保険対象ではない点、透析治療終末期における腹膜透析の重要性などが記されている。
    緩和ケアの件については驚きで、緩和ケア病棟は癌患者のみしか入れないって、何それ意味わからん!びっくり。尿毒症による溺れるような苦しみって

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    2025年09月03日
  • 透析を止めた日

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    昔、自分の弟が、透析になるかもという瞬間があり、その弟からの推薦で手にしました。
    弟は、運良くその後復活して、何事もなく元気ですが、下手したら、、、と思うとこの本を読んで恐ろしくなりました。

    ………
    長年続けてきた透析を、ある日突然やめることになった主人公。身体の変化や不安、周囲の反応に戸惑いながらも、透析なしで生きる日常を模索していく。希望と恐怖が入り混じる、命と向き合う一日の物語。

    血液透析のこと、特に終末期のことなど知る由もなかったけど、透析=人生の終わり
    となることを初めて知った。
    第二部に、腹膜透析の話があり、少し気が軽くなった。昔、義理の妹が若くして亡くなったのですが、ギリギリ

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    2025年08月31日
  • 透析を止めた日

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    透析と聞くと、「糖尿病の人が受けるもの」と思っていました。けれど、この本を通して、難病の患者さんにとっても必要になる場合があることを知りました。

    しかも、血液透析を受ける人は必ず週に3回通わなければならない。その現実を前にすると、仕事や生活との両立は本当に大変だと思います。

    著者のご主人(NHKディレクター)もまた、難病で透析を続けていました。本を読み進める中で、主治医や通っていた透析センターの医師たちの対応が冷たいなと、完全に他人事という対応に「それでも医者か」とも憤りを感じました。

    第二部で描かれる医師たちの姿を見ると、もっと患者に寄り添う姿勢があれば、適切な治療を提案していたなら(

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    2025年08月30日
  • 狼の義 新 犬養木堂伝

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    「狼の義 新犬養木堂伝」林新/堀川惠子

    犬養毅とその側近であった古島一雄、この二人の物語を読み終え、深い感慨に耽っている。今の程度の低すぎる候補者やすでに議員になっている人に是非読んでもらいたい本である。私欲を排し、国家の行末を真剣に考え、命を削る覚悟で政界を生きた犬養毅。壮絶な一生に学ぶべきものがあると思う。

    ・犬養毅が心から尊敬したのは福沢諭吉だけだった。

    ・犬養毅はいつも貧乏だった。年がら年中高利貸しに追いかけられていたが、それでも支援を求めてくる人には気前よくなんでも与えていた。

    ・犬養毅は護憲派の政党をひとつにまとめ、全員が胸に白バラをさして議会に入場して、藩閥政治の桂園時代

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    2025年07月16日
  • 原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

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    毎朝の通勤電車の中で、ときおり涙ぐみながら読んだ。私たちが穏やかで変わり映えのしない日常を送るこの地の下には、たくさんの死が埋まっている。どうしてそれを忘れていられよう。

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    2025年06月19日
  • 透析を止めた日

    購入済み

    身につまされる

    身内を同じく見送ったものとして考えさせられた作品。 自分がこの病について不勉強でけして穏やかに看取れたとは言えず当時は分からなかったことが堀川さんによって解明された気がする。

    #共感する #深い

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    2025年06月11日
  • 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

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    歴史物は昔から好きで、明治から昭和にかけての本も読んできたが、敗戦の要因が今までとは違う角度から明解に書かれており、腹落ちできた。海軍物の小説は多く、陸軍はインパールなど印象が悪かったが、一部には有能なメンバーがいたことを知れたのはよかった。

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    2025年04月29日
  • 狼の義 新 犬養木堂伝

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    書評:命を懸けて、言葉を信じ抜いた人間の肖像
    ――『狼の義 新 犬養木堂伝』(角川ソフィア文庫)

    「話せばわかる」——その言葉の裏には、犬養毅という一人の政治家が、言論による政治、政党による民主主義を誰よりも強く望んでいた事実がある。本書『狼の義』は、五・一五事件で暗殺された総理大臣の伝記という枠を超え、「国家とは何か」「人は何のために生きるのか」を静かに、そして力強く問いかける。

    犬養毅は、藩閥による専制の時代にあって、国家と政府を明確に区別し、政府が国家に反すると判断すれば倒閣も辞さない。その一貫した信念は、時に政局において不可解にも映るが、彼の中では明確な論理が通っていた。国家の未来

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    2025年04月17日
  • 教誨師

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    すごかった。
    軽率にに死刑制度は賛成か、反対か、なんて答えられない。浄土真宗の悪人正機説、「善人が救われるのであるから、悪人であればなおさらだ」というフレーズが初めはよく分からなかったが、全部読み終わった後なんとなく理解した。
    遺族はもちろん、加害者も執行側も教誨師も、一人一人が重いものを背負っている感じがやりきれなかった。

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    2025年02月15日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    裁判によって「裁かれるのは誰か」。裁く人も裁かれる人も人生の重荷を背負っている。被告人のみならず、裁判に携わる関係者、そしてその仕組みのもとで暮らしている国民である自分も無関係ではない、と気づかされる。
    人生の明暗を分けるその境界線は非常に脆い、という言葉は、だからこそ常に相手の思いを聴く、相手の思いに馳せることが大事、ということにつながるのだと思った。

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    2025年01月19日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    1966年強盗殺人の容疑で逮捕された二二歳の長谷川武は、さしたる弁明もせず、半年後に死刑判決を受けた。
    長谷川は「自分が奪った他人の命は、たとえ自分の死をもってしても償い切れるものではない」と死刑を待つ間に気づいて手紙に書いていて、私はそのことに初めて気づいた。
    命は一つしかないからたとえ犯人が死刑によって自分の命を使っても、それは償いにならない。となると、死刑は必要なのか?という気持ちになる。
    遺族のために国家が犯人の命を奪うのも、本当に正しいのか?しかも、裁判員として自分が死刑に関わることがあるかも、ということがかなり怖くなった。

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    2024年12月24日
  • 教誨師

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    柚月裕子さんの「教誨」という作品の参考文献として挙がっていた本のひとつ。作者のあとがき、法科大学院の先生の解説までとても読み応えがある。
    印象に残ったフレーズが12もあって、文字起こしするのも一苦労。教養本として間違いなく読んでよかったと思えた作品でした。

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    2024年12月15日
  • 教誨師

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    死刑囚と対話を重ね、その最期にも立ち会う、「教誨師」という存在。本書は筆者が一人の教誨師の人生を辿ることによって「死刑とは何か」「人を裁くとは何か」についてという根源的な問いを突きつけてくるものです。




    僕が本書を読むきっかけとなったのは『AERA』の2014年3月10日号にて、僕が敬愛する作家の佐藤優氏が取り上げていたからでありました。

    28歳から死刑囚と対話し、寄り添い、その外語にも立ち会う「教誨師」(きょうかいし)という仕事を戦後半世紀にわたって続け、いまだ日本の中に厳然として存在する「死刑制度」というものが持つ矛盾を一身に背負いながらその生涯を貫いた僧侶、渡邉普相師(1931~

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    2024年11月22日
  • 原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

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    「じゃからこの年になってもね、自分との戦いなんよ。強くならんといけないね、強ければ相手に優しくできるでしょ。ひとりひとりの心が強くなれば、戦争だって起きんのよ。」佐伯敏子さんのこの遺言は世界中のすべての人々に共有されなければならない。

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    2024年10月25日