堀川惠子のレビュー一覧
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いつもながら堀川さんの著作は読みごたえがある。これまで読んだ裁判とか死刑囚がテーマではなく、この本は広島の原爆がテーマだけどもともと堀川さんは広島出身だそうでそれだけに真摯に取材を重ねた感がある。
原爆投下そしてその後をたどるなかにさまざまな不条理が、やるせない思いにさせるものが描かれる。原爆を機に身内ですら疎遠になったり不仲になったり、原爆で亡くなった人の算定の覚束なさとか、供養塔に納められている人の情報が実は不確かだったりとか、本で深く触れられている佐伯敏子さんや著者が受けた行政の対応とか。平和を軸に誠実に公明正大に対応している気がしていた行政の被爆者対応、縁故者対応だって平和のイメージを -
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ネタバレすごい本です。迫ってくる。
人工透析について何も知らなかった。
そして、最期にどんな結末になるのかなんて考えたこともなかった。こんなことになるなんて想像もしなかった。
内容は本の紹介欄を読んでください。
医療調査の専門家と言ってもよいジャーナリスト夫妻。
夫の林さんはNHKのディレクター。40代から人工透析を受けている。
人工透析は週3回、4時間づつ通う必要があるというのは、知っていた。でも成分献血のように椅子に座ってゆっくりしてればいいんだよねくらいの感覚だった。
でも実態は全然違う。
太い針を刺し、大量の血液を交換する。その結果瘤のようなものができる。
腎機能がダメになるということは尿が -
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前半は透析患者の夫を側で介護していた経験からの闘病記。とくにラスト、透析が回せなくなった後の苦しそうな数日の細かい記録は、読んでいて辛いし怖かった。
それでも、こんなにも献身的に支えてくれる妻がいた事はとても幸せだなぁと思わされる。自らの腎臓肝臓を移植することまで決意しているくらい、夫のこと、本当に愛しているんだなと、恋愛小説かのような場面も。
後半は透析医療について、緩和ケアが保険対象ではない点、透析治療終末期における腹膜透析の重要性などが記されている。
緩和ケアの件については驚きで、緩和ケア病棟は癌患者のみしか入れないって、何それ意味わからん!びっくり。尿毒症による溺れるような苦しみって -
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昔、自分の弟が、透析になるかもという瞬間があり、その弟からの推薦で手にしました。
弟は、運良くその後復活して、何事もなく元気ですが、下手したら、、、と思うとこの本を読んで恐ろしくなりました。
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長年続けてきた透析を、ある日突然やめることになった主人公。身体の変化や不安、周囲の反応に戸惑いながらも、透析なしで生きる日常を模索していく。希望と恐怖が入り混じる、命と向き合う一日の物語。
血液透析のこと、特に終末期のことなど知る由もなかったけど、透析=人生の終わり
となることを初めて知った。
第二部に、腹膜透析の話があり、少し気が軽くなった。昔、義理の妹が若くして亡くなったのですが、ギリギリ -
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透析と聞くと、「糖尿病の人が受けるもの」と思っていました。けれど、この本を通して、難病の患者さんにとっても必要になる場合があることを知りました。
しかも、血液透析を受ける人は必ず週に3回通わなければならない。その現実を前にすると、仕事や生活との両立は本当に大変だと思います。
著者のご主人(NHKディレクター)もまた、難病で透析を続けていました。本を読み進める中で、主治医や通っていた透析センターの医師たちの対応が冷たいなと、完全に他人事という対応に「それでも医者か」とも憤りを感じました。
第二部で描かれる医師たちの姿を見ると、もっと患者に寄り添う姿勢があれば、適切な治療を提案していたなら( -
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「狼の義 新犬養木堂伝」林新/堀川惠子
犬養毅とその側近であった古島一雄、この二人の物語を読み終え、深い感慨に耽っている。今の程度の低すぎる候補者やすでに議員になっている人に是非読んでもらいたい本である。私欲を排し、国家の行末を真剣に考え、命を削る覚悟で政界を生きた犬養毅。壮絶な一生に学ぶべきものがあると思う。
・犬養毅が心から尊敬したのは福沢諭吉だけだった。
・犬養毅はいつも貧乏だった。年がら年中高利貸しに追いかけられていたが、それでも支援を求めてくる人には気前よくなんでも与えていた。
・犬養毅は護憲派の政党をひとつにまとめ、全員が胸に白バラをさして議会に入場して、藩閥政治の桂園時代 -
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書評:命を懸けて、言葉を信じ抜いた人間の肖像
――『狼の義 新 犬養木堂伝』(角川ソフィア文庫)
「話せばわかる」——その言葉の裏には、犬養毅という一人の政治家が、言論による政治、政党による民主主義を誰よりも強く望んでいた事実がある。本書『狼の義』は、五・一五事件で暗殺された総理大臣の伝記という枠を超え、「国家とは何か」「人は何のために生きるのか」を静かに、そして力強く問いかける。
犬養毅は、藩閥による専制の時代にあって、国家と政府を明確に区別し、政府が国家に反すると判断すれば倒閣も辞さない。その一貫した信念は、時に政局において不可解にも映るが、彼の中では明確な論理が通っていた。国家の未来 -
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死刑囚と対話を重ね、その最期にも立ち会う、「教誨師」という存在。本書は筆者が一人の教誨師の人生を辿ることによって「死刑とは何か」「人を裁くとは何か」についてという根源的な問いを突きつけてくるものです。
僕が本書を読むきっかけとなったのは『AERA』の2014年3月10日号にて、僕が敬愛する作家の佐藤優氏が取り上げていたからでありました。
28歳から死刑囚と対話し、寄り添い、その外語にも立ち会う「教誨師」(きょうかいし)という仕事を戦後半世紀にわたって続け、いまだ日本の中に厳然として存在する「死刑制度」というものが持つ矛盾を一身に背負いながらその生涯を貫いた僧侶、渡邉普相師(1931~