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Posted by ブクログ 2023年06月21日
50年に渡り死刑囚に教え諭し、死刑執行に立ち会い続けた教誨師への取材ルポ
教誨師 渡邉普相
「わしが死んでから世に出して下さいの」という約束のもとで語られた教誨の現場
教誨師は、死刑囚と対峙して対話を重ね、死刑執行に立ち会う宗教家
仏教系、キリスト系各宗派からボランティアで行われている
教誨を行...続きを読むうことと、どの宗派を選ぶかは死刑囚に委ねられている
教誨師は、面会の制限が厳しい死刑囚に会うことのできる数少ない一般人
本作は浄土真宗僧侶 渡邉普相への取材によって語られた内容が綴られている
浄土真宗といえば親鸞
そして、「歎異抄」であり「悪人正機」という説が本作で重要な意味を持つ
「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」
渡邉普相は悪人正機をこう捉えていたようだ
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「自分は善人だと思い上がっているような偽善者が救われるというのならば、自分の内なる悪を自覚して苦しんでいる人間はなおのこと救われるのだ」
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渡邉普相は広島で被爆した経験を持つ
たまたま爆心地にせを向けていた、長袖の服を着ていた、帽子を被っていた等の偶然により大火傷を負いながらも死を免れた
しかし、その経験は大勢の人を見殺しにして逃げたことへの悔悟を抱え、原爆症はがいつ再発するかという恐怖の怯える事となった
寺の子として生まれたが、継ぐ立場ではなかった幼少期
被爆の経験、
大学生の時には、身売りされて売春に身を落とした女の救済の思い
そして、上京して出会った教誨師 篠田龍雄
渡邉普相は教誨師をこうも捉えている
真面目な人間に教誨師は出来ません
突き詰めて考えておったりしたら、自分自身がおかしゅうなります
「二度と外の社会に出て気分転換すらすることの叶わぬ死刑囚たちに、精神的な広がり(空間)を与えるよう努めるべきだ」という篠田隆雄
教誨師の役割とは何なのか?
死刑囚が社会から求められたものは更生ではなく、隔離され二度と社会に戻ることなく刑罰により死を迎える事
教え諭したところで社会的な意味はあるのだろうか?
教誨師として死刑囚と対峙することで、死刑囚の様々な面が見えてくる
発覚していない余罪についてはなすもの、文字を書けないくらいの生い立ちを語るもの、自らを捨てた母への恨みを吐き出すもの
裁判は淡々と進み、死刑が確定した後に教誨でわかる死刑囚の生い立ちや心境
渡邉普相は後に教誨は上段から教え諭すものではなく「聴く」事だと悟っている
聴く事で、死刑囚はどのような影響があるのだろうか?
死刑執行の現場
やっていることは「人殺し」であると断言している
法により死を与えることは、死刑が存在する限り誰かがやらなければいけない
死刑が執行されても、幸せになった人間は、誰ひとりもいない
加害者、被害者、被害者家族にしても
その現場に宗教家を立ち会わせることが重要なのだという
本人が求めようが求めなかろうが、必ず教誨師を用意しなくてはならない
殺される本人のためだけではなく、殺す側の刑務官たちを含めて、人殺しの現場に宗教家がいる事に意味があり救いがある
教誨を繰り返した上での執行、宗教家が見届けることで心の救いになるという
宗教家が立ち会わなければ、それこそ本当の「人殺し」だとも
この考えを聞くと教誨師という存在意義も理解できる
私は、教誨の目的とは?
救われる必要はあるのか?
という疑問を持っていた
自分のやった行いに向き合わせる意味で教誨が存在するのならばともかく
死刑囚を救うという目的は必要なのだろうか?
犯人が悔い改めたところで被害者家族の感情に影響はあるのだろうか
生きることを否定された人間の精神的に救済する必要はあるのか?
悔い改めたとしても、その先にあるのは死のみ
そんな矛盾を感じていた
死刑の是非は色々あるだろうけど
死刑執行の方法や、それを行う人へのフォローは確実に必要であると終える
Posted by ブクログ 2023年04月17日
教誨とは、受刑者が改善更生し、社会に復帰することを支援する仕事。しかし、本書が扱うのは「死刑」の教誨。これは大変な仕事と思います。
未来のある懲役囚ならまだしも、死刑囚に神仏の教えを諭したり、人生に絶望しきっているような人間の心を救うことが果たしてできるのか。本書は50年のあいだ、死刑囚と対話を重ね...続きを読む、死刑執行に立ち合い続けた教誨師・渡辺普相の生涯を描くノンフィクション小説です。
本書は死刑囚の人となり、死刑囚の日々の苦しみと孤独感、後悔や怒り、死刑囚との対話や交流における悩み、そして執行の際に見せる死刑囚の言動を詳細に描きます。教誨という仕事により、渡辺は悩み、アルコールの力を借りるようになります。
この本は死刑廃止論や存続論には全く触れていません。それでも、現在の死刑囚の処遇については疑問を抱くようになりました。また、渡辺の「本人が執行されても、幸せになった人間は、誰ひとりいません」ということばは重いです。
教誨師という仕事の苛酷さ、日本の死刑制度をある程度理解するには格好の本。一気に読みました。
Posted by ブクログ 2022年11月29日
教誨師という言葉、仕事を知らなかった。
死刑執行のとき、僧侶が立ち会うことは知識と知っていたが、これほどのことだとは。
P98
一方で、教誨師の存在が批判されるたびに持ち出される実話。
「自分は冤罪だからと再審を請求しようとする収容者に対しても『これは前世の因縁で、たとえ無実の罪であっても先祖の悪...続きを読む業の因縁で、無実の罪で苦しむことになっている。その因縁を甘んじて受け入れることが、仏の意図に沿うことになる』と再審の請求を思いとどまらせるような説教をする僧侶がいる。こんな世の因果をふりかざして、再審請求を妨げる僧侶が少なくない」
冤罪が確定して釈放された免田栄獄中記の中の文章。
P188
つまり教誨面接では、二度と外の社会に出て気分転換さえ叶わぬ死刑囚たちに、精神的な広がり(空間)を与えるように務めるべきだという。
半世紀もの間、死刑囚と対話を重ね、死刑執行に立ち会い続けた教誨師・渡邉普相。
「わしが死んでから世に出して下さいの」という約束のもと、初めて世間に知らされた死刑制度の現実。
その矛盾と苦しみを一身に背負って生きた僧侶の人生を通して、死刑の内実を描いた作品。
死刑囚に向き合う、ただ一人の民間人である教誨師は、その職務上、他言厳禁。
だからこそ知らなければいけないのに知られていない。
ご苦労が、悩みが多いと思う。
いつか分からない執行の日まで、死刑囚の精神的安定と自殺防止などの大変さが、教誨日誌で垣間見ることができる。
この本を読み、死刑反対、死刑囚に対しての同情が出てくる。その同情してしまう死刑囚の最後を見守る宗教者とは、なんと気持ち的に負担のある仕事であろうか。
スイスにある安楽死をできる施設のように点滴を入れてスイッチを自分で押す、もしくは医者が押す、そのような形に変えていくことはできないのだろうか。
今の形式では、まず見た目にも悲惨さがうかがえる。
渡邉が初めて恩師の篠田龍雄と執行に立ち会った日のこと。
何度も面会を重ね、仏教の教えを学び、写経や読経をし被害者の命日を弔ってきた死刑囚がついに
執行されることとなる。
刑場に立たされた死刑囚が直前になって、上半身をよじり「先生!私に引導を渡してください!」
と篠田に乞う。
浄土真宗に「引導」などない。
しかし篠田は迷いもせず、それを引き受ける。
「よぉっし!!行きますぞ!!死ぬるんじゃないぞ!生まれ変わるのだぞ!」
「喝ーーー!!!」
死刑囚の表情から恐怖が消え、「生まれ変わるんですね」と救われた表情を見せる。
「あんたが先に行くけど、わしもあとから行きますぞ!」
今世では死刑囚だったが、次に生まれ変わるときには、必ず人様のお役に立てる人間に
と願っていたのか・・・。
渡邉も何度も壁にぶつかり、お堂にひっくり返って
「阿弥陀様、わっしは、また(死刑囚に)可哀想なことをしましたぜ・・・」と涙している。
後半、渡邉は自分がアル中であることを告白する。その事実は思いの外、死刑囚たちに受け入れられた。
人は神ではない。
好きで飲んでいる、とは言っているものの、それでなければやっていられないのだろう。
どんな形であれ、人が人の命を奪う(やらされる)ことに深く考えさせられる。
これは、ぜひ多くの人に読んでほしい。
Posted by ブクログ 2022年05月08日
渡邉普相は、絞首刑の現場を
「落ちた時に筋が切れて打ち首したのと同じ」
「本人の意識はなく楽」
「執行までが辛く、執行そのものは辛くないはず」
と話していた。
そのほか、
・執行までの教誨師の役割や死刑囚の日常
・執行する刑務官の苦労
などが描かれている。
「生きる」ことを含め「当たり前」として...続きを読む捉えるのではなく、一つひとつの「当たり前」に感謝して生きていかなければならないと考えさせられた本であった。
Posted by ブクログ 2022年04月27日
メディアで取り上げられる凶悪犯罪者に対して
「死刑になればいい」そんな思いを誰もがいだいたことがあるだろう。
教誨師という職業を通して、死刑制度について思考させられた作品。
死刑囚は毎日死と隣り合わせ。
残された時間を自分の犯した罪と向き合い、残された遺族と向き合う。
この作品で取り上げら...続きを読むれた人々は、描写のせいか
更生したように感じ、死ぬ必要はないのではないかと。同じ過ちは犯さないのではないかと思ってしまう。
閑話休題
死刑制度があるならば、それに携わる人間がいる。
そして、執行する人間も同じく「人殺し」をしている。
同じ人殺しで人間が人間を捌く制度。
とてつもなく矛盾している。
世論が「死刑制度の廃止反対」の声をあげている限り、矛盾は終わらず、執行するもの、残されたものの苦しみは終わらない。
しかし、犯罪者はやってはいけないこと、罰則があると知っているにもかからわず犯罪を犯している。
その側面からみると、死刑囚になってしまう可能性も承知なのではないか?
このテーマに関しては様々な知見に触れてみたい。
そして、作者の取材力には脱帽された。
見事なノンフィクション作品。
作者の作品は他にも読んでみたい。
Posted by ブクログ 2022年03月01日
みんなで人殺しをしている、という言葉も、そこに第三者の宗教者を置いた方が良いとの助言も、読めば読むほど本当に自分が何も考えられていないことに気付かされた。 教誨師として接していくうちに再審の運動をした者、その行動になってしまうことの方が自然なのではないかと思わされる。話していくうちに感情移入してしま...続きを読むうような中、あくまでも教誨師として接していた渡邉さんの言葉や行動、思考は、深く重すぎる。 これを読んで死刑制度への価値観が変わると軽率に言えないが、そこに関わる人への視点は持ちたい。
Posted by ブクログ 2021年10月05日
ジャケ買い。全然中身知らなくて、タイトルで買った。
教誨師とは、死刑囚が最期の時を迎えるまでに、必要であれば面談し、宗教的な面でのサポートをする宗教者。いろんな宗教、宗派の方がいるらしい。こういうのって、やっぱり人間には宗教が必要だからなのかな。自分は全然知らなかった。大杉漣の映画でちらっと聞い...続きを読むたぐらいか。
一気に読んでしまった。
教誨師は浄土真宗本願寺の僧侶。真宗の雰囲気が色濃くただよう。著者はノンフィクションの作家さんだし、門徒の方でもないのだが取材し的確に表現するとこういう雰囲気も伝わるものなのだと驚いた。一部どうかなと思うことがないでもなかったけど、これは宗教者の書いた本ではないのだ。
主人公というべき渡邉師は広島で被爆し、なんとか生きながらえてその後東京の寺に婿に入る。篠田師に導かれ教誨師の道へと足を踏み入れる。
いま生きている人間は、間違いなく死ぬ。それは誰も変わらない。でも死刑囚は、病気や身体の寿命において死ぬより先に、他人に死刑執行の時を決められて死ぬことがわかっている。そしてその理由は、社会的に許されない犯罪を犯して、社会によって死刑を確定されたからなのだ。
渡邉師と死刑囚たちの会話。普通なんだ。死刑囚だからと言って特別ななにかがあるわけではない。人間だ。そのことを改めて確認してしまう。
教誨によってお経を読むようになったり、本を読むようになったり、字を書く練習をしたり。そういう時間をすごしていく。
やがてやってくる「その瞬間」。自分もこの本を読みながら死刑囚を知ってきたのだ。人間としてのひとりひとりを。そして「その瞬間」を迎える。死の直前の人間とは。この世の誰もが死んだ後がわからない。でも、その直前までを目の当たりにする人がいる。医師や看護師の方は職業上、病から死に至る人をみていくだろう。でもこの死刑執行の場面は如何だろう。渡邉師はみんなで「人殺し」をしていると表現をする。そしてその死の瞬間を見守る。職業上。
二つのことを思った。
死を突きつけられた人間にとっての「救い」とはなにか。渡邉氏は宗教にはできない。できるのは人間が人間として向き合うだけ。多分そこからでないとなにも起こらないのだろう。いくら教義を振りかざしたとしても。
死刑制度って必要なのだろうか。お恥ずかしながらこの件についてはまったく知識がない。でも考えたいと思った。この国に生きる人間としてどうしたらいいのかを自分が考えようと思った。
自分は「わたしは誰かこころの支えになるためになにかがしたいです」「誰にでもなんでも相談にのります」という感じの人が苦手だ。というか拒否感がすごい。必要とするなにがしかの物質的な支援ならいい。「こころ」ってなんだよと思う。そういう人の話を聞いていると、ご本人に悪気はないのだろうけど「わたしにはできる」という謎の上から目線を感じてしまうのだ。それはあなたが「誰かのこころの支えになってる」って感じたいだけではないのか。誰かのために「今行動している」と感じたいだけではないのかと思うのだ。本当にそうしている人って、そういうことを言わない気がする。
篠田師も渡邉師もやっていることがすごくても、出てくるのは内省の言葉ばかりなのだ。失敗をした。後悔している。うまくいかない。これしかできない。言葉が出ない。自分の中の感情が出てしまった。その連続なのだ。
死刑囚には嘘の自分を見抜かれる。そんな緊張感の中、自己開示をしながら他人と対する。すごい。でもこれ、死刑囚じゃなくても日々自分もそうしたらいいのではないかと思うのだ。だって今ここで話をできる人はお互いいずれ死んでいく身だけは決まっているのだから。そう思って日々、人と対するのもいいかもしれないと思う。やってみようかな。失敗しても誰にも気がつかれないさ。
Posted by ブクログ 2021年06月15日
“死刑制度”とはなにか、教誨師という立場から知ってみたい、そんな気持ちで購入した一冊。しかし、そういった気持ちを圧倒されるほどの内容だった。
“教誨師の仕事とは空である”そんな一文になんとも言えないような感覚に陥った。死刑について知ったり、考えたりするだけではなく、毎日を生きるうえで躓いたり、どうし...続きを読むようもない悲しみに襲われたときにも作中で説かれている仏教の教えは救いになると思う。
この一冊は生涯手放すことはないだろうと確信した。そんな、一冊。
Posted by ブクログ 2021年04月23日
人間は弱い。人との出会いや置かれた環境によって、善人にもなれば悪人にもなる。誰もが心のうちに拭い切れない煩悩を抱えている。はるか天上の阿弥陀仏から見れば、そんな人間は所詮みな悪人ということだ。まずは自分の中にある「悪」、つまり目に見えぬ心の闇をしっかり見据えることこそ肝要と篠田は説く。(25ページ)...続きを読む
「一般の人は死刑っていうものは、まるで自動的に機械が行うくらいにしか思ってないでしょう。何かあるとすぐに死刑、死刑と言うけどね、それを実際にやらされている者のことを、ちっとは考えてほしいよ」(250ページ)
彼が見つめた「死」はいずれも、自然の摂理がもたらしたものではなかった。若き日に広島で見たのは、戦争という人間の愚かさが作りだした無用の「死」であり、東京で見たのは、人間が法律という道具で作りだした罰としての「死」であった。(338ページ)
Posted by ブクログ 2021年03月31日
「夜と霧」や「シーシュポスの神話」のテーマである、圧倒的な絶望の中でも、生きる意味を見出せるのか、という問い。
死刑を宣告された受刑者と、それを支える教誨師(初めて知った)を通して、改めて考えさせられた。
いつかは死ぬ我々と、死刑執行を待つ受刑者、何も変わらないのではないか?
Posted by ブクログ 2021年02月22日
教誨師という存在すら存じていませんてした。
死刑執行の直前の様子は、たとえ殺人犯といえどただの人間でした。そして執行する方もまた人間という事に気付かせていただきました。
この本をきっかけに歎異抄を読もうと決意しました。仏様とのご縁を結んでもらったのです。
Posted by ブクログ 2021年01月13日
本屋で何気なく手に取った1冊だったけどとても衝撃だった。私は祖父が熱心な仏教徒だったこともあり、仏教の教えはとても身近に感じた。教誨師と死刑囚との関わりを通して死刑囚のイメージが変わったとともに命について考えさせられた。母親の存在ってものすごく大きい。育った環境と周りの助けの有無で防げたものが多いと...続きを読む感じた。
Posted by ブクログ 2021年01月11日
カウンセラーみたいに上からモノを言っている人間になっていないか?
掃除のおばちゃんみたいに、同じ目線で話をしている人になれているか?
本音で人と話をできるのは後者の人
Posted by ブクログ 2020年10月01日
非常に興味深い本だった。
犯罪者や犯罪心理的なものにもともと興味があったという事もあり非常に読みやすい。
死刑については、賛成か反対かは非常に難しく結論が出せない。
とりあげられてた各死刑囚の話は1970年代以前ということで、最近の死刑囚とは罪を犯す理由や心理的な変化はあるのだろうか?
被害者...続きを読む遺族も死刑が執行されて必ずしも浮かばれるわけではないよう。
逆に恨む相手がいなくなり、気持ちのぶつけ所がなくなるという話も聞いた事がある。
でも、死というものに直面し反省や後悔するのも一理あるっちゃあるかとは思う。
死刑執行の様子は知っていたがそれぞれの死刑囚がどういう状況なのかは知らなかったので、すごく印象に残った。
Posted by ブクログ 2024年03月10日
前半の具体的な死刑囚とのやりとりから中盤以降、老教誨師の苦悩に焦点が移る。アルコール依存症にまでなり、入院。死刑囚たちにそれを告白してから関係性が変わった云々。
終盤の重さ、真剣さ、真摯さは、浄土真宗の僧侶との長きに渡る対話がなせるものか。
良い本を読んだ。
今の所、堀川惠子のドキュメンタリーに外れ...続きを読む無し。
Posted by ブクログ 2023年10月11日
50年もの間、死刑囚と対話を重ね、死刑執行に立ち会い続けた教誨師・渡邉普相。「自分が死んでから世に出す事」という約束のもと、語られた死刑の現場とその内実とは。
刑務所で服役中の囚人に対して、過ちを悔い改め徳性を養うための道を説く「教誨師」を長く務めた僧侶、渡邉普相さんの人生と告白を書いた本。
教...続きを読む誨師の目を通して書かれるのは、生死に対する無力感や人殺し(=死刑)の手伝いをしながら人を救う事に対しての苦悩。どんなに徳の高い宗教者やベテランの刑務官であったとしても、彼らもまた一人の人間であり、人の死に対して達観しきっているわけではないことを実感します。
恥ずかしながら、今まで死刑制度について、そこまで深く考えた事がありませんでした。それは、馬鹿みたいだけど、自分と周囲の善性について根拠のない自信があったからですが、そんな事を考えていたのが恥ずかしくなりました。死刑が執行されても、被害者も加害者も誰も幸せにしないと渡邉普相さんは語っていたそうです。そんなことになる前に、犯罪自体を減らす、犯罪者予備軍を減らす社会づくりを、今後は考えていかないといけないのかもしれません。
ただ”死刑囚”、”僧侶”、”被害者”、”被害者遺族”、”加害者家族”という名称だけでなく、そこに”個”を認識してしまうと、何の疑問も持っていなかった社会システムについての重みがぐんと増して、ましてや死刑囚個人と個々に向き合う事になる教誨師ともなればなおさらその苦しみはどれほどのものなのか。
言いたいことは色々あるのに言語化が難しくもどかしいですが、ただ、読んでよかったです。
Posted by ブクログ 2023年02月12日
読みやすく、面白かった。
死刑囚との対話を通して、死刑囚の人となりが理解できる一方で、彼らは死にゆく運命にある。死刑の描写も生々しく、辛いものがある。
死刑は残虐であるという認識はあったが、それは死刑囚に対してだけではなく、死刑に関わる人々にとっても残虐である。国家は、権力によって人を殺すだけ...続きを読むではなく、殺す人を作り出す。望んでなくとも、仕事として、人を殺さなくてはならない。死にゆく人を見届けなくてはならない。私自身に見えていなかった観点かもしれない。
しかし、この本の中では、死刑囚の心情に近づくが、被害者の心情に近付くことはできない。死刑が残虐なのは分かったが、被害者にとって、その償いとなるのはどんな刑罰か。
Posted by ブクログ 2023年02月02日
昨年末に柚月裕子さんの『教誨』を読んで教誨師の仕事に関心をもち、本書を手にしました。
読後、「よくぞ本書を世に送り出してくださった!」と、著者の堀川惠子さんには敬意を表する以外にありません。
全く知らない異世界事実の重さに、圧倒されました。50年間にわたり、死刑囚と対話し刑の執行に立ち会った教...続きを読む誨師・渡邉普相。本書に記されているのは、ひとりの僧侶の目に映った「生と死」、そして「教誨師としての苦悩」の告白です。
法治国家日本の「死刑制度」への疑問は、本書を読むほどに増します(個人的に死刑反対論者を公言するものではありません)。被害者遺族の心情も大切ですが、死刑廃止により凶悪犯罪の抑止力が落ち、増加の懸念が‥などあるでしょうか?
この問題には、死刑判決を下す司法、刑を執行する行政いずれにも高いハードルがありそうです。
そもそも、人は人を裁けるのか、人が人に死刑を執行できるのか、更には人は人を救えるのか‥。これらは、当事者でない圧倒的多数の私たちにとっては、全くの他人事です。だからこそ、本書の価値が高く、多くの方々が読むべき必読書だと思います。
ちなみにネット情報によると、世界的には死刑の廃止が進んでおり、(2021年現在)死刑廃止は108カ国(196カ国中)。10年以上執行がない事実上の廃止を加えると144カ国とのこと。ただ、死刑存続国は、先進38カ国加盟のOECDの中では日本のみ(※米国は50州中23州が廃止)だそうです。
死刑制度の是非についての議論が進むことを願って止みません。
Posted by ブクログ 2022年10月25日
「この話は、わしが死んでから世に出して下さいの」
教誨師という仕事をご存知だろうか。
死刑囚と唯一自由に面会することを許された民間人。対話を重ね、最後はその死刑執行の場に立ち会う。報酬もなく、精神的にも肉体的にも過酷なボランティアである。
生とは、死とは。
法の裁きとはいえ、寿命がまだあ...続きを読むるものに強制的に死を与える。
これを「人殺し」と呼ばずして、何と呼ぶのか。
約50年間 教誨師の職を担った渡邉普相(わたなべ ふそう)の遺書的作品である。
☆構成がえぐい
ニュースだけでは伝わってこない死刑囚1人1人の性格を丹念に描き、教誨師との何気ないやりとりで読者を和ませ、親近感を覚え始めたところで死刑執行の現場を克明に記す。
読者は読み進めるうちに知らず知らず場に引き込まれているため、教誨師と死刑囚の絆が無情にも引き裂かれる瞬間 精神的に大ダメージを受ける。
特に第5章「娑婆の縁つきて」の篠田龍雄と桜井の最期のやりとりは涙なくして読むことができない。
☆読みやすさ◎
小説を読むような気持ちで最後まで読める作品。
ノンフィクション初心者にオススメしたい本。
ただ、渡邉の少年時代の話は若干集中が切れる。
☆テーマ
生と死
Posted by ブクログ 2022年10月24日
「死刑囚」という少しそそられる単語で「教誨師」が何かすらもイマイチ分からないまま読んでみたけど、地上波では堂々と語れない内容を遺言書として長きに渡る教誨師人生を公にした本作は、読み終わった後の重みが凄すぎた…
自分の国の事なのに、死刑なんてドラマの中か、短期的に移り変わるニュースくらいでしか知らな...続きを読むかった無知な自分に対して、色々考えさせられました。自分が結論付けるにはあまりにも重すぎますが、かと言って考える事の放置は、自らの国(法律)の責任転移になると思います。自分らの知らぬうちに、知らない職種があり、知らぬ間に、世間が忘れてしまった事件の犯人を死刑に処する。これで一体誰が報われるというのでしょうか。
もっともっと、多くの国民に読んで頂きたいです。
Posted by ブクログ 2022年02月20日
表紙が仏像なのはどういう意味か?
死刑囚。
教誨師。
死刑制度。
過去の大きな罪、人を殺して今度は法に殺される人。
冤罪は。
心は?
罪とは?
反省とは?
自分も考えてしまう。
Posted by ブクログ 2022年02月01日
絶対読むべきです!
『死刑反対か賛成か』
そんな薄っぺらい言葉で語られるような、
本ではありません。
人間が人間を赦すということが
どういうことか?
読んでいて時に、
その重さに押し潰されそうになります。
死刑囚の重荷を一緒に背追い込んで、
それを墓場まで持っていかなければならない
(そんな苦...続きを読む痛を伴うにも関わらず、ボランティア)
教誨師の苛烈な苦悩。
その活動には、
尊敬の念しかありません。
この本によって、
教誨師としての活動が
もっと多くの人に認知され、
死刑制度について沢山の人が議論する
きっかけが生まれることを願います。
Posted by ブクログ 2021年11月23日
大杉漣氏が残した映画作品の教誨師を観て、この職業に興味を持った。
殺人の罪を犯したものは死を持って償うのが当然だと単純に思っていたけれど・・・・。
冤罪だと思われる人が死刑になったり、
自分から死刑でなければいけないと思う者。
罪の意識が薄い者。
突発的に殺人を犯し、深く反省する者。
著者も書い...続きを読むておられたが、悲惨な事件を一つでも減らすには、これらさまざまな者たちの心情を知ることに意味があるのではないかと思う。
Posted by ブクログ 2021年04月25日
死刑とは何のためにあるのか。「教誨師」というものさえ知らなかった。中盤の死刑執行の場面は読んでいて胸が苦しくなった。読むのに時間はかかったけど、読んでおいてよかった。
Posted by ブクログ 2021年03月07日
教誨師 渡邉普相に取材した話をまとめたノンフィクション。
原爆から生き延びてからの半生を描き、死刑の内実に踏み込んだ内容。
宗教家としてのお坊さんってあまり信用出来ないけど、人格者として尊敬できる方。
読み応えありました。
Posted by ブクログ 2020年07月26日
教誨師(きょうかいし)とは、刑務所等の矯正施設において受刑者の育成や精神的救済を目的として行われる活動を行う者のこと。
この本は、半世紀にわたり、死刑囚と対話を重ね、死刑執行に立ち会い続けた教誨師・渡邉普相氏へのインタビューを基に構成されたルポタージュである。
渡邉普相氏は、広島出身の浄土真宗の僧...続きを読む侶で、原爆の被爆者だ。晩年はアルコール依存症にも悩まされながらも教誨活動を行った。
教誨は、通常、受刑者の社会復帰つまり「生きること」支援するが、死刑の教誨となると「死んでいく」ことを手伝うということになる。渡邉氏は時には自らの活動を死刑という「人殺し」の手伝いと蔑むようなことを言いながらも、死刑囚に寄り添いながら、その心を救済し続けた。それこそ、刑場での死刑執行のその瞬間まで。
帯に「死刑の裏側が書かれています。」とあるが、まさしくそんな本。
死刑制度に賛成か反対か、僕の中でもなかなか答えは出ないが、「明日は刑が執行されるかもしれない」という恐怖の中で生きていくことはそれだけで充分過酷な刑罰である気はする。死刑判決後の死刑囚の精神状態は尋常なものではないだろう。
そして、そんな死刑囚のケアを(なんせ、心身ともに健康に死刑を受けさせなくてはならない)しなくてはならない拘置所の職員や教誨師の精神的苦痛は相当なもののはずだ。「制度がある限り誰かがやらないといけない」という強い使命感を持ってその職務を遂行している。
そんなことも考えさせられた。
あと、自分の生をしっかり生きようと。
平生業成(へいぜいごうじょう)=今こそ大切
Posted by ブクログ 2022年11月23日
忘れることのない本になると思います。
半世紀に渡り教誨師を勤め上げた渡邉さんには敬服いたします。
死刑執行の場面は自然に手に汗が湧いてくるほど重い。
死の直前のふるまい。緊迫する刑務官。読経の響き。
ロープがギッシギシと音を立てる。
加害者側の背景や死刑執行までの過程が描かれていくが、もしここ...続きを読むに被害者のほうからの視点も織り交ぜながら描かれていれば私はどうしても死刑制度はありと答えてしまう…
そもそも、死刑制度について賛成か否定か そんな話ではないくらい深い本でした。
Posted by ブクログ 2022年05月22日
以前この方の本を読んだので
引き続き読んでみたいと思ってこの本を選びました。
死刑囚という人達を見たこともない私にとっては、
メディアの情報のみから受ける印象しかありませんでした。
数々の接点やタイミング 条件が違っていれば
彼らは死刑囚というほどの犯罪を犯さずにすんだかもしれない。
私達は...続きを読む人を裁く事は できない。
でも、罪を犯した人をほおって置く事もできない。
まして 死刑を!と 声高々に言えないし、廃止!とも 言えません。
この教誨師の死刑囚に対する態度などは
他の場面でも共通の事なのかもしれないと思った。
多くの人の命を 目の前で失い
僧侶といっても つらかった事だと思います。
しんどい本ですが 若い人たちにも読んでもらいたい
一冊です。