堀川惠子のレビュー一覧

  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    この記者の、取材対象への執念にはいつも驚かされる。
    検事の葛藤がよくわかった。
    昔の東京拘置所の寛容な対応や、教誨師の存在、立ち会った人たちによる処刑についての証言など興味深い。
    私自身はどちらかというと廃止かな、くらいで死刑に対して強い意見を持っているわけではない。
    ただ、本書は、長谷川武が死刑判決を受けた後に更生している様子を見せていたことを受けて「あんなふうに変わってくれたのに死刑執行してよかったのか」と葛藤するということが描かれているが、私は、そもそも長谷川武があんなに澄み切った気持ちになれたのは死刑判決を受けたからなのではないか?と感じた。
    生への諦念が生まれて初めて悟りを得たような

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    2023年04月17日
  • 教誨師

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    読みやすく、面白かった。

    死刑囚との対話を通して、死刑囚の人となりが理解できる一方で、彼らは死にゆく運命にある。死刑の描写も生々しく、辛いものがある。

    死刑は残虐であるという認識はあったが、それは死刑囚に対してだけではなく、死刑に関わる人々にとっても残虐である。国家は、権力によって人を殺すだけではなく、殺す人を作り出す。望んでなくとも、仕事として、人を殺さなくてはならない。死にゆく人を見届けなくてはならない。私自身に見えていなかった観点かもしれない。

    しかし、この本の中では、死刑囚の心情に近づくが、被害者の心情に近付くことはできない。死刑が残虐なのは分かったが、被害者にとって、その償い

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    2023年02月12日
  • 教誨師

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     昨年末に柚月裕子さんの『教誨』を読んで教誨師の仕事に関心をもち、本書を手にしました。
     読後、「よくぞ本書を世に送り出してくださった!」と、著者の堀川惠子さんには敬意を表する以外にありません。
     全く知らない異世界事実の重さに、圧倒されました。50年間にわたり、死刑囚と対話し刑の執行に立ち会った教誨師・渡邉普相。本書に記されているのは、ひとりの僧侶の目に映った「生と死」、そして「教誨師としての苦悩」の告白です。

     法治国家日本の「死刑制度」への疑問は、本書を読むほどに増します(個人的に死刑反対論者を公言するものではありません)。被害者遺族の心情も大切ですが、死刑廃止により凶悪犯罪の抑止力が

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    2023年02月02日
  • 教誨師

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    ネタバレ

    「この話は、わしが死んでから世に出して下さいの」
     
     教誨師という仕事をご存知だろうか。
     死刑囚と唯一自由に面会することを許された民間人。対話を重ね、最後はその死刑執行の場に立ち会う。報酬もなく、精神的にも肉体的にも過酷なボランティアである。
     生とは、死とは。
     法の裁きとはいえ、寿命がまだあるものに強制的に死を与える。
     これを「人殺し」と呼ばずして、何と呼ぶのか。
     約50年間 教誨師の職を担った渡邉普相(わたなべ ふそう)の遺書的作品である。

    ☆構成がえぐい
     ニュースだけでは伝わってこない死刑囚1人1人の性格を丹念に描き、教誨師との何気ないやりとりで読者を和ませ、親近感を覚え始

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    2022年10月25日
  • 教誨師

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    「死刑囚」という少しそそられる単語で「教誨師」が何かすらもイマイチ分からないまま読んでみたけど、地上波では堂々と語れない内容を遺言書として長きに渡る教誨師人生を公にした本作は、読み終わった後の重みが凄すぎた…

    自分の国の事なのに、死刑なんてドラマの中か、短期的に移り変わるニュースくらいでしか知らなかった無知な自分に対して、色々考えさせられました。自分が結論付けるにはあまりにも重すぎますが、かと言って考える事の放置は、自らの国(法律)の責任転移になると思います。自分らの知らぬうちに、知らない職種があり、知らぬ間に、世間が忘れてしまった事件の犯人を死刑に処する。これで一体誰が報われるというのでし

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    2022年10月24日
  • 原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

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    星を四つとしたのは、広島に生まれ育った人間として、知らなければならなかった事を今初めて知ったことがいかに多かったことか、ということによる。

    悲しみも喜びもみな自分が作る。人が作るんじゃない。自分のものの思い方で、喜びも怒りも哀しみも生まれるし、争いも生まれる。だから、自分との戦いなのだ。強くならないといけない。強ければ相手に優しくできる。ひとりひとりの心が強くなれば、戦争は起きない。大切なのは力じゃなくて、心なのだ。

    相手に仕返しをしようと思うのなら、強くなることだ。強くなれば、優しくできる。私はあなたと違って、あなたに辛く当たらない、私は強いから。だから、あなたにはめいいっぱい優しくする

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    2022年10月03日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    苦しい、苦しく切ない死刑囚の話だ。
    いつだって貧困やいじめはこのような悲しい事件を引き起こしてしまう。

    28歳で執行された長谷川武死刑囚
    貧しい生活の中で高級な腕時計をローンを組んで買っていた、贅沢すぎると怒られた時に自分はこの腕時計が欲しかったわけじゃない、いつも貧乏な生活で我慢ばかりして引け目を負って生きてきたけど、この高価な品を持っているだけでなぜか心が安らいだ、安心できたと。
    自分もみんなと同じ一人前の人間なんだと確認できたと。
    ただ、ただ普通でいたいだけだったのにと思うと胸が締め付けられる。

    最後の夜に食べたいと求めたラーメンとお寿司
    寝ずに書いた手紙たち、28歳の彼の魂が切ない

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    2022年06月26日
  • 原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

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    夏が来ると 広島・長崎をテーマにした書籍に目が留まります。
    この本は
    「氏名や住所がわかっていながらなぜ無縁仏とされたのか?」
    という所から切り込んでいる内容でした。

    いまだに 引き取り手のいない遺骨が沢山あるという事。
    あの日 家族全員がなくなった為にそういう事もあるし、
    この本では 間違って 違う名前を記載されたとか
    人違いだったとか、海外からの方が日本語名で最後言ったので
    本名がわからずこの 供養塔に収められたままであるとか。

    戦後70年。
    もう 当時を知る人がいなくなってしまってきている今。
    私より若い方が こうして調べて本にしてくれた事は
    とても嬉しい。

    私の知らなかった 戦争

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    2022年05月20日
  • 教誨師

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    表紙が仏像なのはどういう意味か?
    死刑囚。
    教誨師。
    死刑制度。

    過去の大きな罪、人を殺して今度は法に殺される人。
    冤罪は。
    心は?
    罪とは?
    反省とは?
    自分も考えてしまう。

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    2022年02月20日
  • 教誨師

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    絶対読むべきです!

    『死刑反対か賛成か』
    そんな薄っぺらい言葉で語られるような、
    本ではありません。

    人間が人間を赦すということが
    どういうことか?
    読んでいて時に、
    その重さに押し潰されそうになります。

    死刑囚の重荷を一緒に背追い込んで、
    それを墓場まで持っていかなければならない
    (そんな苦痛を伴うにも関わらず、ボランティア)
    教誨師の苛烈な苦悩。

    その活動には、
    尊敬の念しかありません。

    この本によって、
    教誨師としての活動が
    もっと多くの人に認知され、
    死刑制度について沢山の人が議論する
    きっかけが生まれることを願います。

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    2022年02月01日
  • 教誨師

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    大杉漣氏が残した映画作品の教誨師を観て、この職業に興味を持った。
    殺人の罪を犯したものは死を持って償うのが当然だと単純に思っていたけれど・・・・。


    冤罪だと思われる人が死刑になったり、
    自分から死刑でなければいけないと思う者。
    罪の意識が薄い者。
    突発的に殺人を犯し、深く反省する者。
    著者も書いておられたが、悲惨な事件を一つでも減らすには、これらさまざまな者たちの心情を知ることに意味があるのではないかと思う。

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    2021年11月23日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    社会の課題を見つめる新たな視点をもらえた。
    取材力が凄まじい。
    構成も素晴らしく、寝食を忘れて読んだ。

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    2021年08月05日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    この本の感想は難しい。
    いまから30年ほども前に死刑執行された長谷川を追っていく。長谷川が死刑判決後に検察官や弁護士、関係者に書いた手紙を元に進んでいく。その過程で被害者がひとりだけ、生活態度真面目なのになぜ死刑になったか裁判官達が珍しく覚えていない、とまるで誤って死刑になったかのような描写がされる。
    ここに強い違和感を感じる。被害者はたったひとり、だけどごく普通の主婦で、家に居る所を押し込み強盗にあった。発見者は小学生の娘。この本を被害者側から書いたら当然だが全く違う内容になっただろう。だって長谷川の犯行は冤罪ではなく、例えば防衛のためでもなく、生活のためでもない。贅沢な暮らしをしたいという

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    2016年02月16日
  • 透析を止めた日

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    二部構成の第一部は筆者の夫の後半生を語ったノンフィクション
    登場人物が亡くなることが最初から明かされている映画を見ているような気持ちで読み進める
    筆者のテーマとは外れるが、まだ特に持病がない身には節制しなきゃと思う

    第二部は現在の透析医療をめぐって医療機関を取材したルポルタージュ
    前半は終末期医療について、制度設計の問題のみならず医学的にも未解決であることが強調されているように感じられたが、後半では腹膜透析が解決策の一つであることが説明されている

    たくさんの人が読んだ方がいい本だと思う

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    2025年10月31日
  • 教誨師

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    ネタバレ

    忘れることのない本になると思います。
    半世紀に渡り教誨師を勤め上げた渡邉さんには敬服いたします。

    死刑執行の場面は自然に手に汗が湧いてくるほど重い。
    死の直前のふるまい。緊迫する刑務官。読経の響き。

    ロープがギッシギシと音を立てる。

    加害者側の背景や死刑執行までの過程が描かれていくが、もしここに被害者のほうからの視点も織り交ぜながら描かれていれば私はどうしても死刑制度はありと答えてしまう…
    そもそも、死刑制度について賛成か否定か そんな話ではないくらい深い本でした。 

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    2022年11月23日
  • 教誨師

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    以前この方の本を読んだので

    引き続き読んでみたいと思ってこの本を選びました。

    死刑囚という人達を見たこともない私にとっては、
    メディアの情報のみから受ける印象しかありませんでした。

    数々の接点やタイミング 条件が違っていれば
    彼らは死刑囚というほどの犯罪を犯さずにすんだかもしれない。

    私達は人を裁く事は できない。
    でも、罪を犯した人をほおって置く事もできない。
    まして 死刑を!と 声高々に言えないし、廃止!とも 言えません。

    この教誨師の死刑囚に対する態度などは 
    他の場面でも共通の事なのかもしれないと思った。

    多くの人の命を 目の前で失い
    僧侶といっても つらかった事だと思いま

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    2022年05月22日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    死刑制度と、それに関わる人々の姿を描き出しており、大変意義のある取材であることに異論はない。
    が、やはり冤罪でもない、多くの犯罪を犯し、最後には殺人に及んだ長谷川に対し、どんなに反省し、悔悟の念を持つようになっても、全く心を寄せる気になれなかった。
    それだけに、被害者側の取材が意図的であるにせよ不足していることに強い違和感を感じた。
    早い段階で少しでも被害者側の取材をしていれば、この本のような取材や立論の流れになっただろうか。

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    2015年12月26日