堀川惠子のレビュー一覧
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この記者の、取材対象への執念にはいつも驚かされる。
検事の葛藤がよくわかった。
昔の東京拘置所の寛容な対応や、教誨師の存在、立ち会った人たちによる処刑についての証言など興味深い。
私自身はどちらかというと廃止かな、くらいで死刑に対して強い意見を持っているわけではない。
ただ、本書は、長谷川武が死刑判決を受けた後に更生している様子を見せていたことを受けて「あんなふうに変わってくれたのに死刑執行してよかったのか」と葛藤するということが描かれているが、私は、そもそも長谷川武があんなに澄み切った気持ちになれたのは死刑判決を受けたからなのではないか?と感じた。
生への諦念が生まれて初めて悟りを得たような -
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読みやすく、面白かった。
死刑囚との対話を通して、死刑囚の人となりが理解できる一方で、彼らは死にゆく運命にある。死刑の描写も生々しく、辛いものがある。
死刑は残虐であるという認識はあったが、それは死刑囚に対してだけではなく、死刑に関わる人々にとっても残虐である。国家は、権力によって人を殺すだけではなく、殺す人を作り出す。望んでなくとも、仕事として、人を殺さなくてはならない。死にゆく人を見届けなくてはならない。私自身に見えていなかった観点かもしれない。
しかし、この本の中では、死刑囚の心情に近づくが、被害者の心情に近付くことはできない。死刑が残虐なのは分かったが、被害者にとって、その償い -
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昨年末に柚月裕子さんの『教誨』を読んで教誨師の仕事に関心をもち、本書を手にしました。
読後、「よくぞ本書を世に送り出してくださった!」と、著者の堀川惠子さんには敬意を表する以外にありません。
全く知らない異世界事実の重さに、圧倒されました。50年間にわたり、死刑囚と対話し刑の執行に立ち会った教誨師・渡邉普相。本書に記されているのは、ひとりの僧侶の目に映った「生と死」、そして「教誨師としての苦悩」の告白です。
法治国家日本の「死刑制度」への疑問は、本書を読むほどに増します(個人的に死刑反対論者を公言するものではありません)。被害者遺族の心情も大切ですが、死刑廃止により凶悪犯罪の抑止力が -
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ネタバレ「この話は、わしが死んでから世に出して下さいの」
教誨師という仕事をご存知だろうか。
死刑囚と唯一自由に面会することを許された民間人。対話を重ね、最後はその死刑執行の場に立ち会う。報酬もなく、精神的にも肉体的にも過酷なボランティアである。
生とは、死とは。
法の裁きとはいえ、寿命がまだあるものに強制的に死を与える。
これを「人殺し」と呼ばずして、何と呼ぶのか。
約50年間 教誨師の職を担った渡邉普相(わたなべ ふそう)の遺書的作品である。
☆構成がえぐい
ニュースだけでは伝わってこない死刑囚1人1人の性格を丹念に描き、教誨師との何気ないやりとりで読者を和ませ、親近感を覚え始 -
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「死刑囚」という少しそそられる単語で「教誨師」が何かすらもイマイチ分からないまま読んでみたけど、地上波では堂々と語れない内容を遺言書として長きに渡る教誨師人生を公にした本作は、読み終わった後の重みが凄すぎた…
自分の国の事なのに、死刑なんてドラマの中か、短期的に移り変わるニュースくらいでしか知らなかった無知な自分に対して、色々考えさせられました。自分が結論付けるにはあまりにも重すぎますが、かと言って考える事の放置は、自らの国(法律)の責任転移になると思います。自分らの知らぬうちに、知らない職種があり、知らぬ間に、世間が忘れてしまった事件の犯人を死刑に処する。これで一体誰が報われるというのでし -
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星を四つとしたのは、広島に生まれ育った人間として、知らなければならなかった事を今初めて知ったことがいかに多かったことか、ということによる。
悲しみも喜びもみな自分が作る。人が作るんじゃない。自分のものの思い方で、喜びも怒りも哀しみも生まれるし、争いも生まれる。だから、自分との戦いなのだ。強くならないといけない。強ければ相手に優しくできる。ひとりひとりの心が強くなれば、戦争は起きない。大切なのは力じゃなくて、心なのだ。
相手に仕返しをしようと思うのなら、強くなることだ。強くなれば、優しくできる。私はあなたと違って、あなたに辛く当たらない、私は強いから。だから、あなたにはめいいっぱい優しくする -
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苦しい、苦しく切ない死刑囚の話だ。
いつだって貧困やいじめはこのような悲しい事件を引き起こしてしまう。
28歳で執行された長谷川武死刑囚
貧しい生活の中で高級な腕時計をローンを組んで買っていた、贅沢すぎると怒られた時に自分はこの腕時計が欲しかったわけじゃない、いつも貧乏な生活で我慢ばかりして引け目を負って生きてきたけど、この高価な品を持っているだけでなぜか心が安らいだ、安心できたと。
自分もみんなと同じ一人前の人間なんだと確認できたと。
ただ、ただ普通でいたいだけだったのにと思うと胸が締め付けられる。
最後の夜に食べたいと求めたラーメンとお寿司
寝ずに書いた手紙たち、28歳の彼の魂が切ない -
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夏が来ると 広島・長崎をテーマにした書籍に目が留まります。
この本は
「氏名や住所がわかっていながらなぜ無縁仏とされたのか?」
という所から切り込んでいる内容でした。
いまだに 引き取り手のいない遺骨が沢山あるという事。
あの日 家族全員がなくなった為にそういう事もあるし、
この本では 間違って 違う名前を記載されたとか
人違いだったとか、海外からの方が日本語名で最後言ったので
本名がわからずこの 供養塔に収められたままであるとか。
戦後70年。
もう 当時を知る人がいなくなってしまってきている今。
私より若い方が こうして調べて本にしてくれた事は
とても嬉しい。
私の知らなかった 戦争 -
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この本の感想は難しい。
いまから30年ほども前に死刑執行された長谷川を追っていく。長谷川が死刑判決後に検察官や弁護士、関係者に書いた手紙を元に進んでいく。その過程で被害者がひとりだけ、生活態度真面目なのになぜ死刑になったか裁判官達が珍しく覚えていない、とまるで誤って死刑になったかのような描写がされる。
ここに強い違和感を感じる。被害者はたったひとり、だけどごく普通の主婦で、家に居る所を押し込み強盗にあった。発見者は小学生の娘。この本を被害者側から書いたら当然だが全く違う内容になっただろう。だって長谷川の犯行は冤罪ではなく、例えば防衛のためでもなく、生活のためでもない。贅沢な暮らしをしたいという -
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以前この方の本を読んだので
引き続き読んでみたいと思ってこの本を選びました。
死刑囚という人達を見たこともない私にとっては、
メディアの情報のみから受ける印象しかありませんでした。
数々の接点やタイミング 条件が違っていれば
彼らは死刑囚というほどの犯罪を犯さずにすんだかもしれない。
私達は人を裁く事は できない。
でも、罪を犯した人をほおって置く事もできない。
まして 死刑を!と 声高々に言えないし、廃止!とも 言えません。
この教誨師の死刑囚に対する態度などは
他の場面でも共通の事なのかもしれないと思った。
多くの人の命を 目の前で失い
僧侶といっても つらかった事だと思いま