【感想・ネタバレ】透析を止めた日のレビュー

あらすじ

「私たちは必死に生きた。しかし、どう死ねばよいのか、それが分からなかった」

なぜ、透析患者は「安らかな死」を迎えることができないのか?
どうして、がん患者以外は「緩和ケア」を受けることさえできないのか?

10年以上におよぶ血液透析、腎移植、再透析の末、透析を止める決断をした夫。
その壮絶な最期を看取った著者が、自らの体験と、徹底した取材で記す、慟哭の医療ノンフィクション!

解説 日本腎臓学会理事長・南学正臣(東京大学腎臓内分泌内科教授)

<序章>より
「夫の全身状態が悪化し、命綱であった透析を維持することができなくなり始めたとき、
どう対処すればいいのか途方に暮れた。
医師に問うても、答えは返ってこない。
私たちには、どんな苦痛を伴おうとも、たとえ本人の意識がなくなろうとも、
とことん透析を回し続ける道しか示されなかった。
そして60歳と3ヵ月、人生最後の数日に人生最大の苦しみを味わうことになった。
それは、本当に避けられぬ苦痛だったか、今も少なからぬ疑問を抱いている。
なぜ、膨大に存在するはずの透析患者の終末期のデータが、死の臨床に生かされていないのか。
なぜ、矛盾だらけの医療制度を誰も変えようとしないのか。
医療とは、いったい誰のためのものなのか」

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Posted by ブクログ

ネタバレ

透析患者を取り巻く状況ーーー例えば、透析に通うADLがなくなった時から社会的入院を余儀なくされるとか、寝たきりでも死ぬまで回し続けるのが一般的とか、透析を止めて安らかに逝く手段がないとか、そもそも腎不全は緩和ケアの対象外だとかーーーそういうことを私は全く知らなかった。
著者と夫の日常の描写を通して、特にその最期の壮絶さを通して、著者の問題意識は痛いほど伝わってきた。夫の死後、献血に行ったら栄養失調と言われ、一気に白髪になり、などという記載もあったが、本当に苦しかっただろう。
それでも本書の後半の冷静な取材は見事だった。現状を綴るだけでなく、明確に腹膜透析と在宅ケア社会資源という理想型を提言している。医師の「死の一瞬に尊厳があるのではなく、死へと向かう生に尊厳があるような生き方、これを医療者として支援していきたい」という言葉も刺さる。
だが、この一連の取材は、自分たちの望まなかった苦しい最期を振り返り直視しなければならない、辛い作業であったろうと思う。「取材者たれ」と自分に鞭を打ち続けた著者のことを思うと胸が詰まる。

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

腎臓の病気の治療法である人工透析を通して、生と死について、医療について深い示唆を与える本である。著者は、腎臓の難病によって人工透析しなければならない夫を看取る。しかし、衰弱して人工透析が受けられなくなった夫は、苦しみの中で亡くなった。なぜ、最後まで苦しまなければならなかったのか。まず、人工透析を受ける患者は緩和ケアを受けられない。そして、人工透析にも血液透析以外に腹膜透析という方法があることを知らせられない。緻密な取材で、乱暴に言えば金のなる木としか見られていない人工透析患者の現状を紹介し、患者の尊厳を守り安らかな最期を迎えられるようにするにはどうすればよいかを提言する。死の瞬間に尊厳があるのではなく、死へと至る生に尊厳があるのだから。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

透析という言葉の裏に隠れている医療現場について学べる良書。
さらに、患者中心主義に基づいた解決の糸口についても伝えてくれた。
色々学べて読んでよかった!

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

自分がいかに、人工透析について知らなかったか、それだけでなく偏見の目を持っていたのかに気付かされた。
透析クリニックの前に、送迎の車が停まり、患者さんたちが乗り降りしているのを見ると、不摂生の結果、医療費の高騰、という言葉が頭をよぎることがあった。

でも、透析を受ける(まわす、というらしい)というのは、その人の心にも身体にも大きなダメージがあること、家族の負担も大きいこと、そもそも透析を始める理由も様々であること。

知らずに判断するのは良くない、とよく言われるけれど、まさにそう。


さらに、「人工透析」が市場のシステムに組み込まれているのも悲しい現実だと思った。以前いった病院に「病ではなく人を見る」的なことが書かれていたけれど、医療はそうあってほしいと思う。


以下メモ

・透析導入者の平均年齢は69.87歳。透析患者の7割が65歳以上の高齢者。

・透析患者は増加の一途という定型表現が使われがちだが、現実は2022年末の数値は前年比で初めてわずかながら減少に転じ、今後この傾向が続くことも予想されている。

・近年、治療のプロセスにおいて行き過ぎた医療者主導を是正し、透析を導入しないことも患者の権利とする傾向が強まっている。これに対して「医療者の倫理観の発露」という観点も重要だと訴える。
患者の自己決定権は、十分な情報提供の上にあるべきもの。「尊厳死」は軽々しく患者に委ねていいものではない。

・一般に過剰な延命措置を行わない「尊厳死」には、多くの人が賛同する。問題は、尊厳死という選択の先に、まるで安らかな死があるかのように錯覚されていることだ。尊厳死と安楽死が混同されている。近年は病院死が増えて死が見えにくくなり、死の苦しみを具体的に想像することが難しい。「ぴんぴんころり」など現実には稀だ。多くの場合、緩和ケアが機能しなければ、尊厳死を選んだ先にある死は必ずしも平穏なものにはなりがたい。

・血液透析と腹膜透析

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

とても読み応えのある一冊だった。
腎臓にまつわる病気や、日本の医療制度について知らないことをかなり教わることができた。

それに加えて、僕は果たして、ここまで愛し、愛してくれる人に今後の人生で出会えるのだろうか?と疑問を感じた。
自分が林さんと同じ立場に立った時、信念を持ったまま矍鑠と人生を終えられるだろうか。それを背負ってもいいと思ってくれる人に出会えるだろうか。そして僕はその人に、背負ってもらう覚悟ができるだろうか。また、すべて逆も然り。

なんかそんな、自分の今後について考えさせられる本でもあった。
愛とは。
助け、助けられる、とは。

とてもよかった!

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

透析患者の辛さ、実態を知った。
透析専門クリニックの裏話も知った。
自分がもし透析必要な状態になれば、腹膜透析を選びたい。

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2025年11月20日

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透析を止めるとは?どういうことだろうか?気になり、読みました。人生の質は、最期の死様まで大切に扱われ、選択の種類や経過がつまびらかにされる事が必要だと感じました。
著者の配偶者と自分の経験を、傷口を開く覚悟で記し、
透析についての、日本の現状まで取材した行動力と精神力は、すごいものがありました。

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2025年11月18日

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透析がこんなに辛い治療だったとは。正直言って驚いた。この本をきっかけに、患者に様々な選択肢を与えられるような環境に進むことを望む。

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 知らないことが多すぎる。この本からたくさんのことを知った。

 透析患者は生きているかぎり透析を続けるしかないことは知っていたけど、透析を止めた後に旅立つまでの間に人生最大の苦しみがあることは知らなかった。止めたら死ぬけど、それは穏やかなものだと思っていた。

 誰もが、死の間際に緩和ケアを受けられるものと思っていた。しかし実際は、緩和ケアを受けられるのはがん患者とAIDS患者、重度の心不全の患者に限られていて、透析患者をはじめその他の病気の患者は受けることができない。

 透析に血液透析と腹膜透析という二つがあることも知らなかった。日本の腹膜透析の患者は透析患者全体の2.9%だという。香港では69%、欧州やカナダでは20〜30%、日本は極端に少ない。

 著者は取材を進める中で、腹膜透析患者のQOLがとても高いことに気がついた。終末期に腹膜透析を選んだ患者と家族、医療関係者の見取りの場面がとても穏やかで、どこか「納得」して死を見送っていたと感じた。

 しかし、日本で腹膜透析はなかなか普及しない。そこには、巨大医療ビジネスの闇、それは診療報酬という形での国の「関与」がある。それらを明らかにしながら、それでもこの状況を改善しようと全国で励んでいる医療従事者を取材し、僅かな希望を見出そうとする。

 本書は、著者と透析患者の夫の塗炭の苦しみから、「ことに終末期に生じる問題について、患者の家族の立場から思索を深め、国の医療政策に小さな一石を投じようとする」ものである。そして、その試みは成功し、国は緩和ケアの対象に腎不全を含めることにした(2025年11月5日 中央社会保険医療協議会)。

 慢性腎臓病は日本人の5〜8人に1人が罹患する国民病(本書解説より)であるので、僕自身、あるいは家族や友人たちの誰が罹患してもおかしくないものである。本書に出会って、本当に良かった。

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2025年11月07日

Posted by ブクログ

愛と勇気で世の中に一石を投じた、貴重な一冊です。

2024年1月に、恩師が人工透析になったことを知ってから、何かに取り憑かれたように腎臓の病気について調べ始めました。しかし、透析を止める日がくることについて考えは及ばず....
2024年11月に本書出版されたことを知ったとき、ハッとさせられました

著書の夫である林新さんの透析導入は、難病が原因でした。治療の記録は克明です。克明であるがゆえに辛い。林さんは治療過程の中で、実母からの移植も受けています。

第一部は1人の患者の治療記録に留まらず、ご夫婦の愛に満ち溢れていました。透析を止めることになってからの様子は、涙なしに読めませんでした。緩和ケアの対象が、がん患者に限定されているという現実を、私は初めて知りました。

第二部は林さんの死後、著者が病院の内情にも踏み込んで、透析患者の終末期までを取材した記録です。終末期患者の透析を見合わせる適切な時期、透析を選ばないという選択、透析患者の高齢化、腹膜透析の選択など、課題は山ほどありました。“この本を育てていきたい”という著者の思い、重く受けとめました。

10月6.7日連続で、朝日新聞に“「透析を止めた日」著者 堀川惠子さんに聞く”という記事が載せられていました。来年度予算編成の指針となる「骨太の方針」に腎不全患者緩和ケアの推進が明記されたとのこと。そして、11月2日には「腎不全患者のための緩和ケアガイダンス」が9月末に公表され、腎不全で初の緩和ケアの手引きとなることが、記事になっていました。

堀川さんの熱意とペンの力で、世の中が良い方向に動きつつある。著者の努力に最大限の敬意を表します。そして、透析患者だけでなく、他の病気の緩和ケアも進んでいくことを願うばかりです。

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2025年11月05日

Posted by ブクログ

前半は実体験を詳しく記述し、後半は現状の課題に対する一つの答えとしての腹膜透析について丁寧な取材を基にこちらも丁寧に記述されている。前半は特に実体験ということもあり、大変だなという言葉では表せない程の読書体験ができた。文字どおり、健康は貴重だと改めて思いを強くした。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

夫を送った経験を記録し、その後も取材を積み重ねた本作。入り口はあるのに出口がない血液透析をめぐる日本の医療の現在地を問うた力作だ。衝撃だった。透析について何も知らなかった。実は昨年、親戚が透析に向かう送迎車の中で突然死、という出来事があった。なんと不幸なこと、と悲劇を嘆いたが、この本を読むとそれは透析患者にとっては幸せな最期と言えるかも?と思わされるほど、透析者の最後の過酷さに震えた。緩和ケアを受けられるのががん患者だけという現実にも、唖然とした。「ガンで死にたい」と言わしめる背景にはこういうことも含まれてるのか。皆保険制度の問題、医者不足の問題、病院経営の問題、緩和ケアとはどうあるべきか?尊厳を保ったまま死ねるのか?医療の世界はこんなにも暗澹としてるのかと不安にはなる。延命治療はいらない、と思ってたけど、その結果どうなるのか?苦しくても知ること、知らしめること、考えること、選択すること、選択肢が用意されてること、大事だと思った。このライターのノンフィクションを読むのは三作目。「暁の宇品」「教誨師」いずれも素晴らしかった。最も信頼しているライターの1人だ。

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2025年11月02日

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堀川惠子さんの『透析を止めた日』を読んだ。
夫が「多発性嚢胞腎」で血液透析を受け、終末期に透析を止める決断をご本人がし、亡くなった。
透析を止める――それが「死を迎える」という意味を持つことを、私はこの本で初めて知った。
それまでの私の透析の知識といえば、「地震などで電源が止まると透析ができず、大変なことになる」という程度だった。身の回りに透析を受けている人もいない。だから、透析がどれほど大変で、どれほど生と死に関わるものなのかを考えたことがなかったのだ。
腎臓の働きを失った人は、血液透析で体の中の老廃物を取り除かなければ生きていけない。週に三回、病院に通い、何時間もベッドの上で針につながれる。畳針ほとの太い注射針の痛みもある。
それだけでも想像を超える負担だ。
そして最期の頃には、血液透析を続けても耐えがたい痛みに襲われることがあるという。尿毒症の苦しみを思うと、透析を止めるという決断の重さが身に迫ってくる。
またこれも本書で初めて知ったことだが、日本では緩和ケアが保険診療として「がん」と「重症心不全」にしか認められていないという現実だった。腎疾患の患者に最適なケアを提供できない問題も本書の後半で指摘している。
「延命」を当然とする医療の中で、「静かに死を迎える」という選択が、透析患者に対してはまだ制度の外にある。
また、透析には二つの方法があることも初めて知った。
多くの人が受けている血液透析のほかに、腹膜透析(PD)という方法がある。腹膜透析は自宅で行うことができ、設備も大がかりではなく、痛みも少ないという。最期を穏やかに迎えられる例も少なくないそうだ。
それでも日本では血液透析が主流だ。医療機関にとって収益の面で有利であること、血液透析しか知らない医師が多いことが背景にあるという。筆者も夫の治療について主治医から、腹膜透析の説明はなかったということらしい。
もし自分や家族が腎臓病になったときは、血液透析だけでなく腹膜透析という選択肢もきちんと説明を受けたいと思う。
この本は、私にとって「医療の中の生と死」を他人事ではなく、自分の未来の問題として考えるきっかけになった。

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2025年11月01日

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透析について全く無知だったきとに気づかされました。データや事実をベースにした問題提起の熱量が半端ではないです。人間が死ぬことがここまで難しいことだとは知りませんでした。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

【概要】
1部:著者の夫の生き様、死にゆく様と伴走する妻の闘病生活が描かれている。
2部:日本の透析医療の現状。そして、透析患者であっても穏やかに最期を過ごすことができた人の紹介。

【感想】
旅立ちが近いことを自身で感じ、大切な人とのお別れや身辺整理を行なう中でもなお、肉体的な苦しみから解き放たれない様子がそのまま伝わってきて読んでいて本当に辛かった。日本の医療の限界や、近い将来自分と大切な人に訪れるかもしれない未来に絶望感さえ感じ、とんでもない虚無感に襲われた。透析患者が故に保険診療の絡みで緩和ケア病棟に入れず、望む緩和ケアを受けられないどころか、蔑ろにされているような孤独感を病院の中にいても感じてしまうのか。
2部では、腹膜透析という選択肢に一筋の光を感じた。全ての人が、その人が望む形で最後のときを生き抜けるような世の中になってほしい。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

最近、透析の方を担当することが増えてきました。
というか、透析をする方が多くなったからですよね。
透析をする、しないという選択の重さと
選んだ本人、支える家族の苦しさ。
「わかる〜」なんて絶対言えない。

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2025年10月26日

Posted by ブクログ

透析を止めた後の壮絶の苦悶に絶望的になったが、後半は日本での緩和ケアの可能性と腹膜透析の広がりという希望を描き救われる。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

著者の作品はこれまで興味深く読んでいた記憶があった。4、5冊くらいは読んだはず。本書は今年の始めに新聞の書評で見かけていたもので、久しぶりに著者の本を読んでみた。

彼女の執筆の陰で、こんな苛酷な日々が続いていたとは。

大切な伴侶の、それこそ文字通り命懸けの日々を、共に心身を擦り減らしながら必死に駆けずり回っていたとは想像だにしなかった。
本書は、その伴侶の闘病に寄り添い共に闘い続けた日々の記録であると同時に、自分事として直面せざるを得なかった医療制度の課題を、ジャーナリストとして核心に迫らんとした取材記録でもある。

医療と福祉は、近いようでその実、背中合わせだと言ってもいい。究極の理念は当事者の命を守る、権利を守ることだから同じなのだろうが、少し立ち位置が違うことから、福祉の人間としては時々、医療の現場で違和感を覚えることがある。医学モデルと社会モデルの違いというべきか。いや、もう最近は社会モデルのその先が追求されているんだったか(なにで見たのだったかな…『急に具合が悪くなる』だった???書いてあったのでなくて、私が連想してそのことを考えただけだったかもしれない…)。
その隙間を埋めようと奔走する人々がいるのも確かで、最終章はそれに救われた気分。制度は、いろいろと政治的な理屈に阻まれて、本来あるべき姿になかなかなれないことがままあるけれど、それをただもどかしく見つめているだけじゃなくて、実際に頭を働かせて体を動かしていくことが必須。
福祉の勉強を始めたころ、教授に、ないものを作るのもSWの仕事、と再三言われていたのはつまりこういうことだよな。
できない理由を探すのではなくて、どうすればできるかを考えないといけない。
と、著書の奮闘ぶりを読み、問題意識を持った有識者たちが駆けずり回るのを読み、我が身を振り返る読書となった。

行動するって大変だな。

追記
なんと、気づいていなかった。まさに今日新聞の一面に、この本をきっかけに機運が高まり緩和ケアの対象範囲を広げる議論が始まったとの記事。びっくり。
っていうか、朝新聞に目を通してなかったんだよね。夜中になって気づく私。
タイムリーな読書だったのね。
著者は喜んでいるだろうな。

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2025年09月22日

Posted by ブクログ

このノンフィクション作家の作品にはハズレがない。
まして今回は夫の闘病記なので、著者自身のやりきれない感情も赤裸々と綴られていて、思わずページをめくり続ける。
どうしたら夫の日々の苦痛を軽減できるかとの悲痛な思いが、現在の透析治療の問題点の分析につながっていく。同じく透析治療を受けている患者の治療の改善までも視野にいれたノンフィクションになっている。
いつもながら、堀川さんの筆力には感心する。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

重いテーマだが読んで良かった。患者の命を繋ぎ止める透析をどう止めるか、何をもってしてその決断をするのか。自分が当事者になっても判らないと思う。生き様ではなく死に様を考えることは少ない。それを医療の制度と患者とその家族の感情、患者本人の痛み苦しみ、様々なことを考えて決断を下さないといけない。自分がどのような立場でその時が来ても正解の答えは出せないだろう。だが、そのためにもこの本は読んで良かった。最後に以下の言葉を備忘として残しておきたい。
「私たちは必死に生きた。しかし、どう死ねばよいのか、それが分からなかった」

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごい本です。迫ってくる。
人工透析について何も知らなかった。
そして、最期にどんな結末になるのかなんて考えたこともなかった。こんなことになるなんて想像もしなかった。

内容は本の紹介欄を読んでください。
医療調査の専門家と言ってもよいジャーナリスト夫妻。
夫の林さんはNHKのディレクター。40代から人工透析を受けている。
人工透析は週3回、4時間づつ通う必要があるというのは、知っていた。でも成分献血のように椅子に座ってゆっくりしてればいいんだよねくらいの感覚だった。
でも実態は全然違う。
太い針を刺し、大量の血液を交換する。その結果瘤のようなものができる。
腎機能がダメになるということは尿がでない。
つまり水分を排出できないということ。
このため厳しい水分制限や食事制限が課される。
一生。
患者は大抵一人で通院するため、家族でさえその大変さがわからない場合も多い。

最終的に人工透析も受けつけなくなると、末端から腐っていき、大変な痛み(陣痛と同じくらいとも)の中、死んでいく。
癌とは違い、緩和ケアが受けづらく、最期の苦しみは本人も家族も傷つける。

医療ジャーナリストの夫婦でさえ、医療機関選びには後悔している。
海外で浸透している腹膜透析も日本では受益できる機会が少ない。それは透析医療をやればビルが建つと言われるほど、透析による保険点数が高いという理由もある。
夫の死後、妻が当時の苦しみも含めて赤裸々に描いたドキュメンタリー。科学的、社会的考察も充実し、プロが魂を込めて書き上げたもの。

目が離せなくて一気に読み上げました。
人の死ということについて考えさせられる。

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

病気と闘っている人をみると自分の考えの甘さや命を軽くみている自己嫌悪を感じる。
そして担当医も看護師も親身になって患者に寄り添っているのではないことも、多分書かれてある以上に冷たいあしらわれ方と自己保全の塊の対応をされているのだと感じる。
命を預けて高い診療費を払っているのだから患者のケアや説明を充分納得できるような体制を整えて欲しい。テレビで医療従事者の特集を観たが親身になってくれている医師は特殊で一部だけなのかと思ってしまう。

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

前半は透析患者の夫を側で介護していた経験からの闘病記。とくにラスト、透析が回せなくなった後の苦しそうな数日の細かい記録は、読んでいて辛いし怖かった。
それでも、こんなにも献身的に支えてくれる妻がいた事はとても幸せだなぁと思わされる。自らの腎臓肝臓を移植することまで決意しているくらい、夫のこと、本当に愛しているんだなと、恋愛小説かのような場面も。

後半は透析医療について、緩和ケアが保険対象ではない点、透析治療終末期における腹膜透析の重要性などが記されている。
緩和ケアの件については驚きで、緩和ケア病棟は癌患者のみしか入れないって、何それ意味わからん!びっくり。尿毒症による溺れるような苦しみって怖すぎます。それなら殺してくれ!って、ほらまた安楽死の方向へ考えがいってしまう…。死を受け入れる覚悟はできていても、苦しいのは嫌、きっと誰もがそうですよね。医療ってそのためのものでもあるはず、生きるためだけじゃなくて、苦しまないための医療でもあってほしい。

また腹膜透析についてのネガティヴなイメージは本当によく聞きます。身内で透析患者がいたのですが、介護看護する家族もばい菌でも入ったら責任感じるし嫌だという意見もよく聞きました。この本で腹膜透析についてのメリットもよくわかり、考え方が広がりました。もちろん我が家のケースでも、腹膜透析という選択肢を医師から提示された事はありませんでした。

私の身内は透析を止めた当日に息を引き取ったわけですが、最後の方はやはり血圧がすぐ下がってしまうので透析中断という事が何度かありました。それくらいキツい透析を最後の方はさせていたんだなと思いました。

透析医療の知識が広がり、また腹膜透析をイメージだけで拒む人がいたら、この本に書いてあった事を伝えてみたいなと思います。

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2025年09月03日

Posted by ブクログ

昔、自分の弟が、透析になるかもという瞬間があり、その弟からの推薦で手にしました。
弟は、運良くその後復活して、何事もなく元気ですが、下手したら、、、と思うとこの本を読んで恐ろしくなりました。

………
長年続けてきた透析を、ある日突然やめることになった主人公。身体の変化や不安、周囲の反応に戸惑いながらも、透析なしで生きる日常を模索していく。希望と恐怖が入り混じる、命と向き合う一日の物語。

血液透析のこと、特に終末期のことなど知る由もなかったけど、透析=人生の終わり
となることを初めて知った。
第二部に、腹膜透析の話があり、少し気が軽くなった。昔、義理の妹が若くして亡くなったのですが、ギリギリまで腹膜透析を自宅でやっていたことなど思い出しました。

でも、血液透析は、病院にとってとてもお金になる方法であり、患者を手放したくないクダリは、愕然とした。なんだこれは?病院にとって医療とはなんなのか?QOLが上がる方法があるのに患者は知らずに命を縮め、そして苦しみ亡くなるのか。

医療とは何なのか?
本当の医者とは。
憤りと絶望と一握りの光を見せられた。
※これはノンフィクションです。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

透析と聞くと、「糖尿病の人が受けるもの」と思っていました。けれど、この本を通して、難病の患者さんにとっても必要になる場合があることを知りました。

しかも、血液透析を受ける人は必ず週に3回通わなければならない。その現実を前にすると、仕事や生活との両立は本当に大変だと思います。

著者のご主人(NHKディレクター)もまた、難病で透析を続けていました。本を読み進める中で、主治医や通っていた透析センターの医師たちの対応が冷たいなと、完全に他人事という対応に「それでも医者か」とも憤りを感じました。

第二部で描かれる医師たちの姿を見ると、もっと患者に寄り添う姿勢があれば、適切な治療を提案していたなら(血液透析ではなく腹膜透析)、ご主人はあれほどまでに苦しまなくてよかったのではないかと思いました。 

著者も書いていますが、「医療は誰のためにあるのか」。このことも本書は問い掛けていると思います。

東京慈恵会医科大学の中野医師の言葉が心に残りました。
「医療にとって大切なことは、ただ病気を治すことよりも、患者さんのQOLを上げること。もっと大事なのは、メンタル、こころを支えることでしょう。」

病を治すこと、命をつなぐことは勿論大切。同時に、「その人らしい生き方」をどう守れるか。それも大切。

透析なんて無縁であるとしても、医療について何か思うところがあるならば、本書をお薦めします。

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2025年08月30日

購入済み

身につまされる

身内を同じく見送ったものとして考えさせられた作品。 自分がこの病について不勉強でけして穏やかに看取れたとは言えず当時は分からなかったことが堀川さんによって解明された気がする。

#深い #共感する

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

私は慢性腎臓病患者です。まだ透析までは時間があると信じてます。かつて、何も知らずに、配偶者には、腎不全になっても透析はせずに死にたいと、伝えましたが、本書を読んで、そんな簡単な話ではないと知りました。自分は末期の苦しみに耐えることが出来るのか不安です。腎臓病患者も緩和ケアを受けられる日が来ることを願います。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

堀川惠子の透析を止めた日「読んだ
ノンフィクションで二部構成になっている
一部は夫の透析との戦いで、二部は透析の実情を克明に語っている。
中学からの友達も透析をしている。
漠然と大変だろうとは思っていたが、こんなに大変だとは思わなかった。
本書の中に透析の入り口は片側四車線の道路を走るようで出口は歩くのも困難なあぜ道を歩くようなものだと書いてあった。
透析の大変さをよく表していると思った。
癌と違って終末を迎えるような施設もないと言うことだ。
家族もほんと大変だというのが良く分かった。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

腎不全末期、血液透析患者のその先。
私たちはどう死ねばいいか分からなかった…という一文が象徴的。
夫への愛と喪失の悲しみと共に、社会的問題を投げかけた作品。
医療の進歩と共に、腹膜透析という選択が出来るようになって来たのは救い。利益重視で血液透析しか道が無い…という状況が変わる事を祈りたい。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

親の死をきっかけに終活ノートを作り始めた。終末期については延命治療は避けたい、苦痛のみ取り去る緩和治療を望む、と記したが堀川氏の作品を読み緩和ケアはすべての病の終末期に適用されないのだと知った。いのちの終わりを苦痛を取り去り安らかに閉じていきたいという望みが叶わない医療とはだれのための医療なのだろう。医療は疾病を直すためだけでなく、終わりに向かう命を安らかに閉じるためにもその医療資源を振り向けてほしい。自分の健康と命を人任せにせず(そうできない意識レベルの方もいるのだが)、自分はどうしたいのかを健康な時から考えたい。堀川氏と林氏の苦しい日々から生まれた本作が今後のよりよい終末期医療の方向性に役立つことを望みたい。

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2025年08月22日

Posted by ブクログ

二部構成の第一部は筆者の夫の後半生を語ったノンフィクション
登場人物が亡くなることが最初から明かされている映画を見ているような気持ちで読み進める
筆者のテーマとは外れるが、まだ特に持病がない身には節制しなきゃと思う

第二部は現在の透析医療をめぐって医療機関を取材したルポルタージュ
前半は終末期医療について、制度設計の問題のみならず医学的にも未解決であることが強調されているように感じられたが、後半では腹膜透析が解決策の一つであることが説明されている

たくさんの人が読んだ方がいい本だと思う

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2025年10月31日

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