堀川惠子のレビュー一覧

  • 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

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    ネタバレ

    本屋で見かけて気になったので。
    原爆の話と想定して購入したし、実際原爆について勿論触れているのだが、大半は「海上輸送」の話だった。
    これがまた自分が想定していた以上に興味深い内容で、なかなか分厚い本ながら最後まで楽しく(と書くと不謹慎かもしれないが)読むことができた。

    輸送、特に兵器や兵糧など兵士以外の運搬について戦争の話をする際に意識することがあるだろうか。
    つい兵士たちのエピソードに目が行きがちで、運搬のことまでは注目しないのではないだろうか。
    それが戦中の、当時の人たちですら、運搬に関わる人以外は注視していなかったのだから、無理もあるまい。
    島国の日本は輸送をどうしても船に頼らざるを得

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    2024年09月22日
  • 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

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    ネタバレ

    「ヒロシマ」という文字から原爆についての本と思い購入したが,いい意味で裏切られた。帝国の対外戦争を支えた船舶司令部の誕生から,敗戦による終焉までが記録されている。前線の戦闘部隊より軽くみられる中,戦術,戦略を支えるために奮闘する司令官。ガダルカナル以降,前線で悲惨な死を遂げる船員たち。冷徹な筆致から彼らの姿が生々しく浮かび上がる。絶望的状況の中で真摯に使命を全うした現場に対し,理念なき上層部の滑稽とも思える振る舞いには怒りを覚える。あの戦争の姿を理解する書物として必須の一冊である。

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    2024年09月02日
  • 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

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    これまで読んだノンフィクションの中でも最も心動かされた書の一つ。
    陸軍の兵站が民間輸送船により成り立っていたことを初めて知る。日本のロジスティクスの貧弱さは、戦争の行方にとって致命症となった。今も、日本の経済や国民生活は船舶輸送に支えられているが、そこへの意識は低いと言わざるを得ない。この現実への警鐘でもあると感じた。とにかく、傑作である。

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    2024年08月23日
  • 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

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    単行本でも読んでいたが、文庫化を機に再読。

    陸軍の船舶輸送という地味だが重要な任務を遂行した2人の中将(田尻昌次、佐伯文郎)を描くことで、先の日本の戦争や軍隊の現実、そして、その本質が浮き彫りにされる。

    冷静で良識的な中将がいたことに少し救われる気もするが、何よりその報われない境遇に悲哀を感じる。

    帯の宣伝文句に「なぜ”ヒロシマ”に投下されなくてはならなかったか。」とあるが、全くそういう話ではないので要注意。(せっかくの傑作を貶める詐欺的広告は残念でならない…)

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    2024年08月16日
  • 狼の義 新 犬養木堂伝

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    犬養毅については、今までに掘り下げたことがなかったが、読み終えて、幕末や戦国と同じくらい激動の時代を生きた人だと感じさせられる。暗く悲しい時代だけれども、知るべきことであるし、大河ドラマで取り上げてほしいと思うくらいだった。

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    2024年07月03日
  • 教誨師

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    死刑について考えるときに、加害者と被害者にばかり目がいきがちだけど、死刑を執行する人がいる、ということにも目を向けなくてはいけないな、と気付かされた。
    以前ツイッターで安楽死の議論があるが殺すことを医者に丸投げしていることに誰も気づいていない。自分は立場的にもし安楽死が可能になったら殺す立場になるだろうけど心底嫌だ、みたいな意見を見かけて、それを思い出した。

    あと、加害者は心情的に自分を被害者だと思っていて(生い立ちの不幸などから)それを取り除かないと自分が殺した人への謝罪や反省の気持ちなんて持ち得ない的な事を渡邉さんが言われていて、なるほどと思った。確かにそうかも。
    でもそれがいかに困難な

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    2024年06月30日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    昭和41年の強盗殺人。犯行は計画的とされ、被告には極刑の判決。その彼が求刑した検事に送った手紙は感謝であった。罪を悔恨し、罰を受け入れ、従容として逝く。執行は5年後。国選弁護人ともやりとりされていた手紙。多岐に渡る取材先からみえてきたもの。凶悪犯とはまるで違う人物像。…酒飲みで電車に轢かれてしまった父。新聞売りで家計をつないだ母。家出したすぐ下の弟。生まれてすぐに養子に出された末の弟。勤め先の工場長。そして、裁いた法曹人達。各々の人生に落ちてた陰。突き付けるのは死刑の是非か…いや、それ以前に只管悲しい。

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    2024年06月04日
  • 教誨師

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    常々疑問に思っていた死刑という制度について、改めて考える作品であった。
    死刑についての話を考えると、気分が落ちてしまい嫌になるのに、どうしても気になって読んだ。自分には関係ないと思っている自分がいたが、これはやはり日本に生きる人が真面目に考えなければならない問題であると思う。
    残忍な殺害が行われて、自分の親族がその被害者となったことがないからあくまで想像になってしまうが、その人が死刑になったからと言って自分の気持ちが晴れることもなければ、なんの解決にもならないと思う。
    毎日後悔しないように生きていきたいと、生と死に対しても考える作品であった。

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    2024年05月06日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    ものすごく感動した。胸ふるわせながら読んだ。
    その世界では有名な元検察官で法科の教鞭もとっていた土本武司さんのもとを別件の取材で訪れた著者は土本さんから手紙の束を見せられる。40年以上前に自分が死刑求刑し、最終的に死刑になり、執行までの間に長谷川武さんから送られた数通の手紙。恨みつらみなどなく、じっくり話を聞いてくれたということへの感謝が綴られていた。この背景を著者は丁寧に追っていく。一人の人間が死刑になった背景が明かされるとともに、死刑制度のあり方にも迫る一冊。
    読んでいて思ったのは、長谷川さんの周囲には誠実な人がたくさんいたんだなということ。土本さんは多忙ななかでも自分が死刑を求刑するかも

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    2024年04月27日
  • 戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇

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    八田元夫さんも丸山定夫さんも全く知らなかったが、著者の手により、読んでいる間ずっと生き生きとわたしの中で存在した。たくさんの人が出てきたが、それぞれ背景や出来事が丹念に描かれ、その人たちの性格や暮らしぶりや、内面の苦悩や喜びが手に取るように伝わった。
    どの職業の人も戦争の間、不条理な目にあったことがたくさんあろうかと思うが、演劇人の苦労は、表現の自由が奪われ、官憲との戦いもあり、収監されたり、拷問を受けたり、特別なものであった。読んでいて苦しくなる。
    そして「桜隊」の悲劇。そこに辿り着くのはわかっていたが、いざ原爆の日が近づくとドキドキしてきた。そして想像以上の恐ろしい結果だった。なんの罪もな

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    2024年02月13日
  • 狼の義 新 犬養木堂伝

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    ノンフィクション作家さんによる記述で、複雑な政局や時代背景でもわかりやすく、感情移入して読むことができました。以前に原敬の小説を読んだことがあったので、二人を対比してみることができて面白かったです。

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    2024年01月29日
  • 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

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    それはまだ「永山基準」と呼ばれる死刑基準が出来る前の
    ことだ。1966年に強盗殺人事件の容疑で逮捕されたのは
    長谷川武、22歳。

    ほとんど弁明もせずに、彼は一審での死刑判決を受け入れた。
    しかし、母には受け入れがたい判決だった。母からの熱心な
    懇願で、小林健治弁護士は二審の弁護を引き受ける。

    だが、一審の死刑判決が覆ることはなかった。1971年11月9日、
    9時32分。28歳になった長谷川武は「従容として」刑場に消えた。

    本書は、別件の取材で検事・土本武司の元を訪れていた著者に
    獄中から届いた手紙を見せられたことから始まった、死刑制度を
    問う作品だ。

    それは、一審で死刑求刑を書いた土本

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    2023年11月09日
  • 教誨師

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    50年に渡り死刑囚に教え諭し、死刑執行に立ち会い続けた教誨師への取材ルポ

    教誨師 渡邉普相
    「わしが死んでから世に出して下さいの」という約束のもとで語られた教誨の現場

    教誨師は、死刑囚と対峙して対話を重ね、死刑執行に立ち会う宗教家
    仏教系、キリスト系各宗派からボランティアで行われている
    教誨を行うことと、どの宗派を選ぶかは死刑囚に委ねられている
    教誨師は、面会の制限が厳しい死刑囚に会うことのできる数少ない一般人

    本作は浄土真宗僧侶 渡邉普相への取材によって語られた内容が綴られている

    浄土真宗といえば親鸞
    そして、「歎異抄」であり「悪人正機」という説が本作で重要な意味を持つ
    「善人なほも

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    2023年06月21日
  • 教誨師

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    教誨とは、受刑者が改善更生し、社会に復帰することを支援する仕事。しかし、本書が扱うのは「死刑」の教誨。これは大変な仕事と思います。
    未来のある懲役囚ならまだしも、死刑囚に神仏の教えを諭したり、人生に絶望しきっているような人間の心を救うことが果たしてできるのか。本書は50年のあいだ、死刑囚と対話を重ね、死刑執行に立ち合い続けた教誨師・渡辺普相の生涯を描くノンフィクション小説です。
    本書は死刑囚の人となり、死刑囚の日々の苦しみと孤独感、後悔や怒り、死刑囚との対話や交流における悩み、そして執行の際に見せる死刑囚の言動を詳細に描きます。教誨という仕事により、渡辺は悩み、アルコールの力を借りるようになり

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    2023年04月17日
  • 教誨師

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    ネタバレ

    教誨師という言葉、仕事を知らなかった。
    死刑執行のとき、僧侶が立ち会うことは知識と知っていたが、これほどのことだとは。

    P98
    一方で、教誨師の存在が批判されるたびに持ち出される実話。
    「自分は冤罪だからと再審を請求しようとする収容者に対しても『これは前世の因縁で、たとえ無実の罪であっても先祖の悪業の因縁で、無実の罪で苦しむことになっている。その因縁を甘んじて受け入れることが、仏の意図に沿うことになる』と再審の請求を思いとどまらせるような説教をする僧侶がいる。こんな世の因果をふりかざして、再審請求を妨げる僧侶が少なくない」
    冤罪が確定して釈放された免田栄獄中記の中の文章。

    P188
    つまり

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    2022年11月29日
  • 教誨師

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    渡邉普相は、絞首刑の現場を
    「落ちた時に筋が切れて打ち首したのと同じ」
    「本人の意識はなく楽」
    「執行までが辛く、執行そのものは辛くないはず」
    と話していた。

    そのほか、
    ・執行までの教誨師の役割や死刑囚の日常
    ・執行する刑務官の苦労
    などが描かれている。

    「生きる」ことを含め「当たり前」として捉えるのではなく、一つひとつの「当たり前」に感謝して生きていかなければならないと考えさせられた本であった。

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    2022年05月08日
  • 教誨師

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    メディアで取り上げられる凶悪犯罪者に対して
    「死刑になればいい」そんな思いを誰もがいだいたことがあるだろう。

    教誨師という職業を通して、死刑制度について思考させられた作品。

    死刑囚は毎日死と隣り合わせ。
    残された時間を自分の犯した罪と向き合い、残された遺族と向き合う。

    この作品で取り上げられた人々は、描写のせいか
    更生したように感じ、死ぬ必要はないのではないかと。同じ過ちは犯さないのではないかと思ってしまう。

    閑話休題

    死刑制度があるならば、それに携わる人間がいる。
    そして、執行する人間も同じく「人殺し」をしている。
    同じ人殺しで人間が人間を捌く制度。
    とてつもなく矛盾している。

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    2022年04月27日
  • 教誨師

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    みんなで人殺しをしている、という言葉も、そこに第三者の宗教者を置いた方が良いとの助言も、読めば読むほど本当に自分が何も考えられていないことに気付かされた。 教誨師として接していくうちに再審の運動をした者、その行動になってしまうことの方が自然なのではないかと思わされる。話していくうちに感情移入してしまうような中、あくまでも教誨師として接していた渡邉さんの言葉や行動、思考は、深く重すぎる。 これを読んで死刑制度への価値観が変わると軽率に言えないが、そこに関わる人への視点は持ちたい。

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    2022年03月01日
  • 教誨師

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    なんというか、感想しずらい、、というか残しづらい。。フィクションならすらすら述べれるけど。

    ずっしりと覆い被さる。圧迫感を感じた。

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    2021年10月07日
  • 教誨師

    涙一滴、値する命

    ラジオ放送動画で興味を持ちました。
    一見、死刑囚は平凡な風貌ですが、おぞましいまでに残酷な犯罪をくり返す人もいます。

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    2018年08月13日