【感想・ネタバレ】戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇のレビュー

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Posted by ブクログ

八田元夫さんも丸山定夫さんも全く知らなかったが、著者の手により、読んでいる間ずっと生き生きとわたしの中で存在した。たくさんの人が出てきたが、それぞれ背景や出来事が丹念に描かれ、その人たちの性格や暮らしぶりや、内面の苦悩や喜びが手に取るように伝わった。
どの職業の人も戦争の間、不条理な目にあったことがたくさんあろうかと思うが、演劇人の苦労は、表現の自由が奪われ、官憲との戦いもあり、収監されたり、拷問を受けたり、特別なものであった。読んでいて苦しくなる。
そして「桜隊」の悲劇。そこに辿り着くのはわかっていたが、いざ原爆の日が近づくとドキドキしてきた。そして想像以上の恐ろしい結果だった。なんの罪もない人が、一瞬にして死に絶える。なんとか助かったと思えた人たちが、1、2週間のうちに亡くなる。普通の生活に戻れ何年が過ごしたのち、原因不明の調子の悪さで亡くなったりする。

"いったん国が戦争することを許してしまえば、それに抗って生きることは容易ではない。もし、同じ時代が再び来れば、自分はまた同じことを繰り返してしまうだろう。人間はそんなに強くない。だからこそ、平和と言われる時代にあっても、無関心にその時代の行列に並ぶのではなく、自分が正しいと思うことに向かって意思を示し続けなくてはならない。それは演劇であってもいいし、デモでもいい。とにかく傍観者にならないことが自分たちに課せられた義務なのだと、晩年の八田は若い俳優たちに繰り返した。それが、戦禍の中を生き延びた1人の演劇人、ガンマ線に貫かれた1人の被爆者として辿り着いた道だった。"

次々と戦争を知る人たちが亡くなっていく。14年という長い期間丹念に取材され、資料を読み込まれ、著作にされた。そのことの意味をしっかり受け止めたいと思う。

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2024年02月13日

Posted by ブクログ

広島出張の折、市の中心部にある平和大通りに、ひっそりと存在している、さくら隊の慰霊碑に気づき、この本を手に取りました。早稲田大学演劇博物館に眠っていた八田元夫の資料を読み解きつつ、改めて知る、あの時代、あの日の物語。初めて読み解かれる、様々な秘められた物語の多いことに吃驚、著者の取材力に★四つですね

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2024年04月13日

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