あらすじ
なぜ原爆は広島に落ちたのか。軍港宇品の50年を描く圧巻ノンフィクション。『教誨師』著者渾身の傑作。第48回大佛次郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
歴史物は昔から好きで、明治から昭和にかけての本も読んできたが、敗戦の要因が今までとは違う角度から明解に書かれており、腹落ちできた。海軍物の小説は多く、陸軍はインパールなど印象が悪かったが、一部には有能なメンバーがいたことを知れたのはよかった。
Posted by ブクログ
本屋で見かけて気になったので。
原爆の話と想定して購入したし、実際原爆について勿論触れているのだが、大半は「海上輸送」の話だった。
これがまた自分が想定していた以上に興味深い内容で、なかなか分厚い本ながら最後まで楽しく(と書くと不謹慎かもしれないが)読むことができた。
輸送、特に兵器や兵糧など兵士以外の運搬について戦争の話をする際に意識することがあるだろうか。
つい兵士たちのエピソードに目が行きがちで、運搬のことまでは注目しないのではないだろうか。
それが戦中の、当時の人たちですら、運搬に関わる人以外は注視していなかったのだから、無理もあるまい。
島国の日本は輸送をどうしても船に頼らざるを得ないのに、その船が当初から手薄だったという。
よくその中、太平洋戦争を続けられたなとしみじみ思う。
アメリカがそんな日本の海上輸送をことごとく潰しにかかっていたのだから、日本人よりよほど日本のことを理解していたように思えてくる。
いや、日本にも勿論理解していた人はいたのだ。
その声をちゃんと聞いてくれるお偉方がいなかった。
お偉方が、正確には戦争を続けたい何者かが(もしくは「雰囲気」が)海上輸送を軽視していたばかりに、傷口は広がったのだ。
海上輸送、そしてその海上輸送の前線基地だった宇品港に特化した一冊であり、軽視されがちの輸送に注目しているだけでも価値ある一冊。
読めて本当によかった。
驚いたのは、原爆が落とされた後の災害復旧の手際のよさ。
その手際のよさは、関東大震災での経験を活かしたからだという話。
関東大震災と太平洋戦争がそこまで離れていなかったことに、関東大震災の復旧に関わった軍人さんが、原爆からの復旧に大いに貢献していたという事実に驚かされた。
歴史は繋がっているのだ。
あと帯にあった「なぜヒロシマに原爆が投下されなくてはならなかったか」この一冊を読み終えたあとに出てくるその答えの無情さにも驚いた。
気になる方は是非最後まで読んで、その衝撃を受け止めて欲しいと思う。
まさかの、答えだったので。
Posted by ブクログ
「ヒロシマ」という文字から原爆についての本と思い購入したが,いい意味で裏切られた。帝国の対外戦争を支えた船舶司令部の誕生から,敗戦による終焉までが記録されている。前線の戦闘部隊より軽くみられる中,戦術,戦略を支えるために奮闘する司令官。ガダルカナル以降,前線で悲惨な死を遂げる船員たち。冷徹な筆致から彼らの姿が生々しく浮かび上がる。絶望的状況の中で真摯に使命を全うした現場に対し,理念なき上層部の滑稽とも思える振る舞いには怒りを覚える。あの戦争の姿を理解する書物として必須の一冊である。
Posted by ブクログ
これまで読んだノンフィクションの中でも最も心動かされた書の一つ。
陸軍の兵站が民間輸送船により成り立っていたことを初めて知る。日本のロジスティクスの貧弱さは、戦争の行方にとって致命症となった。今も、日本の経済や国民生活は船舶輸送に支えられているが、そこへの意識は低いと言わざるを得ない。この現実への警鐘でもあると感じた。とにかく、傑作である。
Posted by ブクログ
単行本でも読んでいたが、文庫化を機に再読。
陸軍の船舶輸送という地味だが重要な任務を遂行した2人の中将(田尻昌次、佐伯文郎)を描くことで、先の日本の戦争や軍隊の現実、そして、その本質が浮き彫りにされる。
冷静で良識的な中将がいたことに少し救われる気もするが、何よりその報われない境遇に悲哀を感じる。
帯の宣伝文句に「なぜ”ヒロシマ”に投下されなくてはならなかったか。」とあるが、全くそういう話ではないので要注意。(せっかくの傑作を貶める詐欺的広告は残念でならない…)
Posted by ブクログ
スローガンと方針だけで中味が伴わず、兵士たちや軍所属も認められない船員たちのことも知らずに推し進められた戦争の愚かさ、最前線を知る司令官たちの意見も届かず…虚しさばかり感じた。
そして、地政的にも歴史的にも陸軍輸送や宇品の日清戦争からの流れを知り、点でしか戦争のことを知らなかったことに驚いた。
日本にとって太平洋戦争は失敗ばかりであり、それでも優秀な人材はいた…でも、やっぱりこの敗戦で学んだことは、もっともっと世界に伝えることこそ日本がやるべきことなのに…と思わざるを得ない。
ノンフィクションだからこそ、痛烈だった。