酒井隆史のレビュー一覧

  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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     本文だけで二段組約600頁の大著、しかもその内容が帯によれば、「考古学、人類学の画期的研究成果に基づく新・真・世界史!」というのだから凄い。
     人類史20万年で分かっていることはごくわずか。しかし現実にはルソーの『人間不平等起源論』かホッブスの『リヴァイアサン』で示された発想の二者択一で、それをアップデートしたものが語られているに過ぎないと著者たちは言う。例えば、農耕の発明により「バンド」から「部族」へ、さらに「首長制」→国家へであったり、狩猟採集、牧畜、農業、工業といった生産様式の変化などなど。ベストセラーらとなったビッグ・ヒストリーの著者たち(自分も大変面白く読んだ)、ハラリ、ダイアモン

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    2023年10月24日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    斎藤幸平の『人新世の資本論』でこの本を知り、手に取った。はじめはブルシット・ジョブとは誰の役にも立たない仕事や資本主義を成立させるために作られた(例えば広告代理店のような)仕事のことかと思っていたが、そうではない。役に立たないとわかっているのになぜかなくならない仕事のことだった。
    私の周りではブラックな仕事の話を聞いてはいたが、その反対にこのような内容の伴わない仕事があるのかと暗然とした。
    その対極としてあるのがケアワークである。教員の仕事がブラックであることは昨今知られていることであるが、このブラックさは政治によって作られたものであり、ケアワークをブルシット化することが政治的に進められた結果

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    2023年09月23日
  • 賢人と奴隷とバカ

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    ブルシット・ジョブ論の紹介で知られる酒井隆史さんの評論集。様々な話題が扱われるが、柱となるのは、「ポピュリズム批判」批判だ。つまり、本来ポピュリズムには、知と権力とが結びついた、エリート主義への批判という意味があった。これを単に「反知性主義」と批判するだけでは、結局はやエリートによる支配を肯定してしまい、現状肯定で終わってしまう、と。

    とはいえ、ポピュリズムは結局、ヒーロー待望論で終わってしまうなどの問題がある。なので筆者は、民主主義を深化させるしかない、と結論付ける。

    となると、なかなか難しそうだが、その手掛かりはいくつかあるとのこと。たとえば、2015年の大阪都構想住民投票。あの時、大

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    2023年08月17日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    この本以降「ブルシット・ジョブ」という言葉が流行語のように数々の著作で引用され、動画でも用いられてきた。この語感の意味をその定義以上の文化的な課題への警鐘を含め、しっかり前後の文脈まで把握する事が重要。二次的な浅い理解ではなく、原典を読めて良かった。本著は少し冗長で口説く感じるが、平易で分かりやすい表現。かつ、自らの頭で考えながら読む為には、あれこれ具体例を示しながら、ダラダラとした対談のような紙幅がちょうど良かったと、後から感じた。

    興味のある切り口で頭の整理をしてみる。「価値のある仕事とは何か」「価値とは何か」「価値の無い仕事は何故生まれたか」「隣人と奥さん(旦那さん)を交換し、相互に有

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    2023年08月14日
  • ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか

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    久松達央著『農家はもっと減っていい』で知ったブルシット・ジョブ(BSJ)。グレーバーが著した原典ではなく、まずは解説書を手に取った。ケインズが予言した週15時間労働が、最新技術を駆使すれば可能なのに、BSJがそれを妨げている。社会的価値と市場価値の反比例は衝撃的だ。エッセンシャルワークが過酷で低所得という理由もBSJ論で説明されている。ベーシック・インカムも、本書を読む前はその在り方に疑問があったが、BSJをなくすためには必要なのかも知れないと思えてきた。

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    2023年03月26日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    やらなくても誰も困らない仕事(何も寄与しない仕事)って確かにあると思います。

    労働自体が目的となっていないか❓
    そんな事を考えさせられる一冊です。

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    2023年01月21日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    他の人も書いている通り、とにかく冗長で読みづらい。が、筆者の言いたいことは納得できるし面白い。
    本文の後に続いた訳者の文章は1番要約してあってわかりやすいのだが、だったら本文の訳もう少しわかりやすくしてよ…と言いたくなった。。

    ケアリングの話は全くその通りで、簡単にロボットによる代替ができると思わないし、それを数量化しようとするからおかしなことになる、というのは実際にブルシットジョブをやっている人間として非常にわかる。

    そして最後は少し違う観点からベーシックインカムの議論に。ここが非常に面白かった。
    人間の本質はきっと労働そのものに価値を感じるはずであって、だったらそこに集中する環境を作る

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    2025年11月30日
  • 啓蒙の海賊たち あるいは実在したリバタリアの物語

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    マダガスカルに定着した海賊とその子孫の社会学。面白い。中間的な位置づけに自分を持ってくる知恵と後世からの評価

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    2025年09月22日
  • ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか

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    最初はブームに乗っかったのかと思っていたが、そうではなくて訳者が大部で何を言いたいかわかりにくいところがあるというよくある洋書の欠点を踏まえて広く読まれるようにと書いたダイジェストと解説という感じ。空気を読むって日本固有の文化と思いがちだがそうではないといった話は日本人だからできるし、洋書に日本人の解説挟むのはメリットデメリットありそうだけどいいことだと思う。ネオリベラリズムが官僚制と背反するどころかむしろ招くものだとか、経営封建制とかは原著を越えた解説なのかな。
    最後で初めて知ったが原著者は59歳にして亡くなってしまったらしい。それはかなり残念。

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    2025年09月04日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    ネタバレ

    新年度にぴったりの本、かもしれない!
    就職や就活を通して「社会人」になる洗礼を受ける私たち。

    社会に貢献する、
    組織の役に立つ、
    どんな仕事も尊い、

    そうやって社会に出たときに世界中の働く人が直面する矛盾や葛藤は、
    きちんと説明されてこなかった。
    だからこそ、多くの共感を読んだんだろうと思います。

    本書が出版されたのは2018年、この日本語版も2020年7月、パンデミック発生後に出されています。

    著者のブルシットジョブ論が世に広まったのは、2013年のウェブマガジンへの寄稿記事からだそうです。

    その後のコロナがさらに彼の議論を現に裏付け、「グレーバー現象」がさらに広まっていったのも納

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    2025年03月30日
  • ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか

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    グレーバーの『ブルシット・ジョブ』の訳者による解説本。『ブルシット・ジョブ』は大作で読むのに時間を要するが、手軽に新書で学べると思い手に取った。

    まさに、自分の身の回りは「ブルシット・ジョブ」に溢れている。役員が一瞬目を通すための資料作成とか、無駄な根回しとか、仕事のための仕事が量産されている。また、やたらに新しい社内ルールを作ることを好む人もいる。ルールを関係者に説明したり、運用する側はそれなりに汗をかくものだが、そこへの配慮が無かったりする(失笑)。

    本書後半で、上位役職者が報酬を受け取るごとに、チーム全体では相当な労務と生産性低下が生じる事例が紹介されている。下位のスタッフほど、事業

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    2024年11月25日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    ひとことで言えば「ビッグ・ヒストリー」への疑問、アンチの超大作だが、ハラリやダイアモンド、ピンカーなどをポップ人類史と徹底的に批判しているのが興味深い。
    遊戯農耕とシリアス農耕というコンセプトも大変面白い。わかりやすく直線的に語ることの弊害にも気付かされる。
    膨大で熱のこもった訳者あとがきもあるので、先にここから読んで全体の見取り図とするのも良いと感じた。

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    2024年11月13日
  • ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか

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    この言葉を初めて知りました。

    傍から見てプレッシャーもなく羨ましいなと思っていても、もしかすると当事者の心は蝕まれているのかもしれないことを知りました。

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    2024年10月29日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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     アメリカのアナキストでもある文化人類学者デヴィッド・グレーバーが書いた世界のカラクリを解き明かす「解放の書」との触れこみで、前から気になっていたものをついに読んだ。
     3名で訳しているのもあり、かなり読みにくい。訳も色々と迷ったようで、訳注も多い。原文も修飾語が多く一文が長いのだと思う。日本語もそのとおりに訳しているらしく、やたらと「~の~の~における~については~か?」みたいな冗長な表現が多く、章立ても行き当たりばったりで、全然頭間に入らなかったため、2回ほど通読するはめになった。
     
     ブルシット・ジョブというのは「その仕事にあたる本人が、無意味であり、不必要であり、有害でもあると考える

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    2024年10月19日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    我々の不平等な社会はいつ始まったのか?という問い。これを人類史の考古学的証拠を見ていきながら、なぜ我々の社会は閉塞してしまったのか?という問いへと定義され直される。その答えへの手がかりには太古の人類を現代人と同じような人間として認識しなおし、これまでに存在した多様な社会を無視せずに包括する必要性がある。近年人気を博しているポップ人類史に対する批評であり、改めて構造主義的見地から人類史を捉え直す名著。

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    2024年07月13日
  • ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか

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    『ブルシットジョブ仕事の理論』の訳者が、ブルシットジョブについて端的に分かりやすく解説している。
    原作より平易でとっつきやすい内容となっているそうだが、かなり読み応えがある。

    ▪︎みずからが原因となる喜びや、世界に影響を与えることは自己の源泉となる。
    それができないことは自己の危機であるためブルシットジョブは精神的暴力である。
    幼少期のいないいないばあやごっこ遊びは、本能的に私達が自らのパワーを行使したいと願っていることを体現している。

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    2024年05月24日
  • ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか

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    まず、ちょっと勘違いがあった。仕事の中での無意味な作業を指しているのかと思って読み始めたが、職業というか職種そのものの話しだった。
    無意味な仕事が発生する原因について、いくつかあげていたが、時間給というか、雇った人の時間に対して対価を払うという考え方が、この無意味な仕事の発生源というのはなるほどと思った。要するに、お金を払うならなんかやらせないともったいない。
    自身がコンサルタントを名乗っており、まさにこのブルシットジョブに当たる。
    あと、人は、楽して儲けるというか、働くふりをしてお金を儲けることに本能的な忌避感があり、それを続けることで、病んでいくというのも、今の社会に鬱といったものがあるこ

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    2024年01月24日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    ブルシットジョブ、確かにあるよなと納得してしまう。これまで、このような視点で仕事の意味について考えた事は無かったし、仕事の有無は問題になってきたが、主観的な仕事の価値が問題となった事はたぶん無かった。
    ブルシットでない仕事が生活できな程低賃金で、ブルシットなペーパーワークが高給な事は事実で、何でこんな事になったのか、納得が出来ない。
    ベーシックインカムはいい考えだが、ハードなケアワークをニーズを満たすだけの人間が選択するのか、需給のバランスが取れないように思う。

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    2023年07月10日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    ネタバレ

    読みづらくて大変だった。本書による定義では、ブルシットジョブとは、
    「被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態。とはいえ、雇用条件の一環として、本人は、そうでないと取り繕わなければならないように感じている。」とされている。既にしんどい。
    その無意味な仕事に対して、なぜか結構なお金が支払われる状況があり、これが働く者の尊厳を傷つけて苦しめるような現象まで起きている。

    ・・そして、200ページほど事例の列挙と勿体ぶった考察が続く。大幅に端折ると、
    ・労働はそれ自体が価値という考えが古くからある(労働価値説)。
    ・そこに資本主義が入っ

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    2023年07月08日
  • ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

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    自分の仕事は世の中の役に立っているんだっけと自問してしまう。管理する仕事とか金融とかやっている人は心の中どうなんだろうとか。

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    2023年06月15日