酒井隆史のレビュー一覧
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『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』酒井隆史著
前々から介護や教育など、人を支えるエッセンシャルワーカーの給料が低く、ITなどホワイトカラーが高いことに違和感はあった。管理職など、無駄な仕事を生む仕事。自分の精神を殺しながらの仕事。その裏には醸成された仕事には価値がある、教育やケアはやりがいがあるという思想が生み出されている。正直この思想に動かされて、働くのは合わないのに働いて精神を病んだとも言えると感じている。相互にケアし健康で豊かで、不安や恐怖・ストレスから解放される未来は来るのだろうか。その一助をグレバーから学ぶことができる。 -
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自分の仕事がブルシットジョブで向こう20年を耐えるのはムリだから転職する、という人生の節目で、じゃあブルシットジョブという言葉を作った人の本を読んでみようと手に取った。
語感だけで使ってた単語だが、著者の定義を見てその通りで驚いた。被雇用者本人でさえ存在を正当化しがたいほど完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態で、とはいえその雇用条件の一環として本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている、と。そしてこれはシットジョブとは違うんである。
ブルシットジョブの種類や、市場が生み出した仕事になぜそんな非効率なものがあるのか、なぜブルシットジョブが増えているのかという問 -
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第1章
ホモ・サピエンスは唯一の現生人類ではなく、ネアンデルタール人やデニソワ人をはじめとする複数の人類種が共存し、交雑していた事実を示している。
これにより、人類の起源は単純な直線的進化ではなく、多様で複雑なネットワーク型進化モデルで説明されるべきである。
さらに、アフリカを起源とする「単一起源説」も修正が必要である。最新の化石発見と古代DNA解析により、人類はアフリカ以外の地域でも独自の進化を遂げ、遺伝的交流を重ねてきたことが明確に証明された。
古代DNAの解析技術の進展は、人類の移動経路と交配の詳細なパターンを解明し、過去に存在した多様な人類集団が互いに影響を与え合っていたことを -
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この本は語られること多くして、実際にはあまり読まれていないのではないか。
実際読んでみると、グレーバーはここで、現代の資本主義の根源的な問題を抉り出しており、その最も本質的な批判になり得ていると思う。
この書物の結論のひとつは、この社会においては、労働が他者の助けとなり他者に便益を提供するものであればあるほど、そしてつくり出される社会的価値が高ければ高いほど、それに与えられる報酬はより少なくなるということ。そして逆に報酬の高い労働とりわけFIREセクター(金融、保険、不動産)におけるそれは、社会的に徹底的に無意味であると本人に感じられるようなものであるということだ。
すなわちいわゆる「負け組」 -
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人類の歴史に安易なストーリーを付与して、狩猟採集から農耕へ、そこで「所有」という概念が発生したから支配構造が登場してきたという、この世界観を覆したのが本書。そもそも、直線的に所有を生み出す農耕へ突き進んできた訳ではない。また、狩猟時代に既に支配構造はあった。
必ずしも支配構造があった訳でもない。必ずしも闘争があった訳でもない。黎明から既に人類は多様なスタイルにあり、一概には言えないものを、単純化して認知してしまっている。
食べなければいけない。食料調達の方法は、環境や技術レベルにより、狩猟採集も農耕生産も使い分けていた。私は飢えのレベルにおいて、本来そこに人食もあったと考えたい。また、飢え -
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自分は、本書ではブルシット・ジョブとよばれるような仕事に就いている。普段の仕事自体は比較的ストレスなく進められているが、繁忙期で退勤時間が0時を回ったりする時に、「こんな時間までするほど価値があるような仕事ではないよな…」と思ってしまう。
ここでいう価値は「社会的な価値」と「自分にとっての価値」両方の意味を指す。自分の仕事はおもに調書作成で、上長に自分のした仕事を正しく伝えるために発生する仕事であり、それ自体に直接的な価値はない。
また、自分はお金を稼ぐために仕事をしているという意識が強くて、仕事それ自体にやりがいや価値はあまり感じられていない。
本書(というかグレーバーの著書)でのBSJ -
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ネタバレやっと読み終わった、という感じ。だが、それに見合う本だった。世界の見方を変えてくれる本というのはそうそうあるものではないが、本書は自分にとってまさにそういった本の一つとなった。多分、何度か読み返してそのたびに考察のヒントを与えてくれそうな予感がする。
一般に流布している人類史の見方として、1 人間集団はその規模を拡大するにつれて複雑化するため、やがて集団を制御するための非生産階層が必要となり、その階層が集団を支配するようになる。2 規模の拡大につれて支配層が分厚くなり、ヒエラルキーの度合いが増大する。3 農業などのテクノロジーにより、規模拡大が加速し、ヒエラルキー形成が加速する、といった -
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若干冗長に感じたところはあるけど、面白かった。特に最後の何章かがとても面白かった。
世の中のあり方に対する著者の姿勢に心を動かされた。
結局のところ、この本で一番私がグッと来たのは、意思の発露みたいなものだ。アナーキストっていうのはこういうことなのかなと。
本を読む楽しみというのはそういうことにある気がする。
ずっと、カタカナの何とかコンサルタントみたいな人がこんなに増えていて、しかも現場に対する意見が異常に抽象的で、人がわからないような英語が多く、ケアリングの場所においては何の役にも立っていないにも関わらずコンサルタントとして入ってきては結果を出せ結果をだせ(そして、ケアリングワークをして -
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ブルシット・ジョブそのものを読んでないのだが(価格で二の足を踏んでいた)、その概要がとてもわかり易く説明されていた。
全く関係ないのだが、この概念の理解と共感にとても役に立った概念が『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日記』の「人間病」と称された概念で、なんというか、学びというのはリレーショナルなんだなと改めて思った。
過剰な自律であり、分不相応な自己抑制であり、良く在ろうとするご気分と、良く在るべきだという社会的な同調圧が、ブルシット・ジョブを生んでいる。
そこで語られる「良さ」が本当に「良さ」なのか、誰も議論されず、誰からも疑われぬままに。
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Posted by ブクログ
考古学者と人類学者の共著のビッグヒストリー系なんだけど、ハラリやダイアモンドが前提としていることを否定する。
ビッグヒストリーを書いてきた思想家はルソーとホッブズとの考えの間を行ったり来たりしてきたが、どちらも真実ではない。古代の人や未開の人は我々が思っているような未熟な人ではなく我々と同様に思索する人々だった。アメリカ先住民は西洋を批判していて、ヨーロッパ人は彼らから多くのことを学んでいた。社会的不平等に起源があると考えるが、それは農耕によって不可避的にもたらされたものではない。本当に問題にすべきは社会的不平等の起源が何かではなく、どうして閉塞したかにある。人類はそれまで様々な社会組織の間を