酒井隆史のレビュー一覧
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「私が障がい者雇用枠だから、何もできないと思われて、業務をわりあててもらえない」前の職場ではそう勘違いしていた。
この本を再読して、あの会社じたいがブルシット・ジョブであり、健常者枠で採用された人も本当はすることがなくて、することがあるフリをするのが上手だっただけなのだと気づいた。
することがなく長時間すわっているだけの仕事に私はうつ病になり退職した。
今は、障がい者雇用枠であってもブルシット・ジョブではない仕事、意味のある作業をする仕事に転職したおかげで、うつ病はかなり改善された。仕事にやりがいもある。給与は高くないけれど。
SNSがここまで普及したのも、勤務時間中こっそりSNSをつかって時間をつぶすしかない人が大勢いるからという本書の指摘も腑に落ちた。
また、テクノロジーの発達で仕事の効率があがったぶん、人々の労働時間を短縮しようという流れに世界が向かわなかったのは、1960年代に世界各国で学生運動が活発になり世界が混乱したことから、仕事の効率は上がっても人々を長時間拘束したまま、政治運動に興味をもつ時間を与えないようにしようという流れに向かったためだ、という指摘も興味深い。
そのために、仕事とは長時間無意味に拘束されることだという世の中になってしまった。うつ病から人々を守るためにもこの状況は改善されなければいけない。
本書について欲をいうと、エッセンシャル・ワークほど給与が低くブルシット・ジョブほど給与が高い傾向にある原因についての著者の説明がわかりにくい。
ブルシット・ジョブの人たちにストライキされても困らないけど、エッセンシャル・ワークの人たちにストライキされたら困るから、ストライキする余裕すらない状態にしておくためだと言いたいのかな?とも思うけど、著者の書き方だと、意味のある仕事をしてる人たちへの妬みが原因だとなってて、ピンと来ない。 -
Posted by ブクログ
他の人も書いている通り、とにかく冗長で読みづらい。が、筆者の言いたいことは納得できるし面白い。
本文の後に続いた訳者の文章は1番要約してあってわかりやすいのだが、だったら本文の訳もう少しわかりやすくしてよ…と言いたくなった。。
ケアリングの話は全くその通りで、簡単にロボットによる代替ができると思わないし、それを数量化しようとするからおかしなことになる、というのは実際にブルシットジョブをやっている人間として非常にわかる。
そして最後は少し違う観点からベーシックインカムの議論に。ここが非常に面白かった。
人間の本質はきっと労働そのものに価値を感じるはずであって、だったらそこに集中する環境を作るべきだと。
とても腹落ちしてしまった。
総じて苦行でもあったが、読んで正解だった、かな。 -
Posted by ブクログ
最初はブームに乗っかったのかと思っていたが、そうではなくて訳者が大部で何を言いたいかわかりにくいところがあるというよくある洋書の欠点を踏まえて広く読まれるようにと書いたダイジェストと解説という感じ。空気を読むって日本固有の文化と思いがちだがそうではないといった話は日本人だからできるし、洋書に日本人の解説挟むのはメリットデメリットありそうだけどいいことだと思う。ネオリベラリズムが官僚制と背反するどころかむしろ招くものだとか、経営封建制とかは原著を越えた解説なのかな。
最後で初めて知ったが原著者は59歳にして亡くなってしまったらしい。それはかなり残念。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新年度にぴったりの本、かもしれない!
就職や就活を通して「社会人」になる洗礼を受ける私たち。
社会に貢献する、
組織の役に立つ、
どんな仕事も尊い、
そうやって社会に出たときに世界中の働く人が直面する矛盾や葛藤は、
きちんと説明されてこなかった。
だからこそ、多くの共感を読んだんだろうと思います。
本書が出版されたのは2018年、この日本語版も2020年7月、パンデミック発生後に出されています。
著者のブルシットジョブ論が世に広まったのは、2013年のウェブマガジンへの寄稿記事からだそうです。
その後のコロナがさらに彼の議論を現に裏付け、「グレーバー現象」がさらに広まっていったのも納得です。
人類学者でありアナキスト活動家でもある著者は、2011年のウォール街占拠運動や『負債論』執筆もされていた。
そして、この日本語版出版直後、2020年9月に急逝されたそうです。
働く場の状況は、変わったのかな。どうでしょうか。 -
Posted by ブクログ
グレーバーの『ブルシット・ジョブ』の訳者による解説本。『ブルシット・ジョブ』は大作で読むのに時間を要するが、手軽に新書で学べると思い手に取った。
まさに、自分の身の回りは「ブルシット・ジョブ」に溢れている。役員が一瞬目を通すための資料作成とか、無駄な根回しとか、仕事のための仕事が量産されている。また、やたらに新しい社内ルールを作ることを好む人もいる。ルールを関係者に説明したり、運用する側はそれなりに汗をかくものだが、そこへの配慮が無かったりする(失笑)。
本書後半で、上位役職者が報酬を受け取るごとに、チーム全体では相当な労務と生産性低下が生じる事例が紹介されている。下位のスタッフほど、事業(社会)を継続させる「エッセンシャルワーカー」なのだが、給料は低いもの。自組織に当てはめると、具体的な顔が思い浮かんでしまう。
また、コンサルを入れて組織ルールを変革しようと試み、全体が疲弊した事例も身近にある。
目に見える組織のヒエラルキーを維持しようという過度な意識が働き、無駄なプロセスを踏んでしまいがち。私も直ぐには逃げられない(容易に転職できない)ゲームの中にいるが、上司から指摘されてでも、最低限の手間で進めようと思う。 -
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アメリカのアナキストでもある文化人類学者デヴィッド・グレーバーが書いた世界のカラクリを解き明かす「解放の書」との触れこみで、前から気になっていたものをついに読んだ。
3名で訳しているのもあり、かなり読みにくい。訳も色々と迷ったようで、訳注も多い。原文も修飾語が多く一文が長いのだと思う。日本語もそのとおりに訳しているらしく、やたらと「~の~の~における~については~か?」みたいな冗長な表現が多く、章立ても行き当たりばったりで、全然頭間に入らなかったため、2回ほど通読するはめになった。
ブルシット・ジョブというのは「その仕事にあたる本人が、無意味であり、不必要であり、有害でもあると考える業務」、「それらが消え去ったとしてもなんの影響もないような仕事であり、なにより、その仕事に就業している本人が存在しない方がましだと感じている仕事」のことである。本書の目的は、各種の仕事の社会価値を明らかすることではなく、自分の仕事にそれらが欠けていると考えながら働くことの心理的、社会的、政治的効果を理解することである。
■ブルシット・ジョブの5類型は以下のとおり
・取り巻き 企業の受付など
・脅し屋 ロビイストなど
・尻ぬぐい 無償ソフトウェアへの互換性対応を行う有償プログラマーなど
・書類穴埋め 役人など
・タスクマスター 取り巻きの逆(必要のない従業員ではなく、必要のない管理者)
また、ブルシット・ジョブの特徴として、欺瞞と曖昧さもあげられている。欺瞞というのは、どんな無意味な仕事でも、どんなに時間を持て余していても、働いているふりをしなければならないということ。つまり堂々とサボってはいけないのだ。曖昧さは、その欺瞞をまわりの人がどこまで自覚し、演じているのか分からない状況であり、「サボり」はどこまでが許容範囲か、「手が空いている」と宣言していいものか不明確ということである。
なぜブルシット・ジョブが人間の精神を侵すのか、なぜ人はブルシット・ジョブに耐えるのか、なぜブルシット・ジョブは増えているのか、なぜ問題視されないのか、といったことが400ページをもって解き明かされる。正直なところ、ちょっと長くて回りくどくて、読むのが面倒になりかけた。歴史に残りうる良書だと思ったし、もはや「革命の書」なのだけど、咀嚼に時間がかかる。何度も読んで、考えて、じわじわと蒙が啓かれる。
本書にはグレーバーのもとに届いたブルシット・ジョブの実例がいくつも含まれていて、それがかなり面白い。ドイツ軍内で隣の部屋にPCを動かすためにいる委託業者(遠くからやって来て隣室にPCを運んでくれる)とか、会社受付ですることがなく、クリップの色分けに従事する人とか…。ブルシット・ジョブに就いて自尊心が傷つき辟易している労働者が多いが、正直、それでそれなりの給料がもらえるならいいのではと思う。労せず大金を得られるのは幸運だと考える者はグレーバーは少ないと考えているようだが、本当だろうか。また、出てくる例が暇そうな仕事ばかりだけど、ブルシット・ジョブのくせにやたら忙しく責任も重い仕事も多くあるはずで、それが一番精神を蝕むのではと思う。
ジョブ型雇用の国とメンバーシップ雇用の国、キリスト教圏とそのほか(イスラムや儒教、仏教圏等)でかなり労働観は違うのではと思いつつ、そのあたりの論考はなかった。 -
Posted by ブクログ
まず、ちょっと勘違いがあった。仕事の中での無意味な作業を指しているのかと思って読み始めたが、職業というか職種そのものの話しだった。
無意味な仕事が発生する原因について、いくつかあげていたが、時間給というか、雇った人の時間に対して対価を払うという考え方が、この無意味な仕事の発生源というのはなるほどと思った。要するに、お金を払うならなんかやらせないともったいない。
自身がコンサルタントを名乗っており、まさにこのブルシットジョブに当たる。
あと、人は、楽して儲けるというか、働くふりをしてお金を儲けることに本能的な忌避感があり、それを続けることで、病んでいくというのも、今の社会に鬱といったものがあることにもつながるのでは。
また、作業の生産性について、よく日本が低いと言われているが、程度の問題こそあれ、海外でも発生しており、生産性なんていう尺度もあまり意味がなさそう。
いわゆるエッセンシャルワークのほうがブルシットジョブよりも給与が低い傾向についての分析では、価値の低い仕事をしている人びとの嫉妬が一因になっているというのはそういうこともあるかもだが、ちょっとやっぱり海外も同じというところに意外な感じがした。 -
Posted by ブクログ
ブルシットジョブを書き上げたデイヴィット・グレーバーと考古学者であるデヴィット・ウェングロウによる今までの歴史観に一石を投じる大作.国家の成り立ちが暴力性に基づいているといわれているが,本書では全く違うということを主張している.王族による暴力的な支配を経て,現代の民主主義が形成されているとされているのが,これまでの歴史観であったが,本書ではそのような王権国家が出てきたのは稀であり,1200年ごろから始まったと主張される.メソポタミア文明などでは,平和的で格差の小さい国家が形成されており,必ずしも支配と国家形成はセットではない.
本書では様々事例を用いて説明される.エッセンス的に
・文化とは何をしないかを定義することで定まる
など衝撃を受ける文面もあるため,長くて大変だが読む価値はあり