峯村健司のレビュー一覧
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ロサンゼルス郊外にある中国高官の愛人村、習近平氏の娘が偽名でハーバード大学に留学していたというショッキングな内容から始まる。
社会主義国にありがちなトップによる富の集中は想定内であらるが、それが仮想敵国である米国内で行われていることに驚きを感じる。華僑の歴史を持っている中国としては、人の移住による中華思想実現を政策の一つとしているのかもしれない。
習近平氏が最も重要な儒家の一人として荀子を紹介しているという事実にも着目すべきだと思う。荀子は「人は生まれながらにして欲望を持っている」という「性悪説」の立場に立っていた。したがって習近平氏も荀子が訴えた「法による統治」を重視する可能性がある。
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中国という国に、力強いリーダーが誕生するまでの過程が描かれている部分が一番緊張をしながら読めた。タイトルの『13億分の1の男』は、運も、実力も、類稀なものを持ち備えていることをよく現している、まさにこのタイトルがピタットくる。
中国という国の政争、覇権争いがテレビや新聞での表面的な伝えられ方とは違った、迫るものを感じさせられる。
それでも、この時代の巨大な国は、この類稀なリーダーによってさえ、まとめられることには多難な道が横たわっている。さらには、この実力のあるリーダー自身さえ、この巨大な権力を掌握してどの様に振舞っていくのか、けっして国際社会の全体像が良くなる方向とは限らなさそうなところ -
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25歳以上も齢の離れた2人の中国研究者による対談。
手頃な分量で内容も平易だが、中身は濃く、本質を突く。
現在の習近平中国共産党政権が、世界史的にみてもいかに異質な存在か。
例えば、
「資本主義経済を軍事力によって制圧した集団が政府を樹立し、権力を握っている」
「中国共産党は世界最大の裏社会だ」(共産党幹部の発言)
「なぜ中国共産党は権力を持つのか、それは、中国共産党が権力を持つからだ」
共産党統治の正当性を支えた中国独立、経済発展が威力を失い、国力が衰退に向かう中、その正当性の保持は危うい。
習近平政権が台湾統一を目指しているとの観察は遠藤誉氏と同じだが、同氏が武力統一はないとしてい -
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何年か前の本とは思うが勉強になる。最近の米露の関係性とトランプ大統領のウクライナに対する決断の意図がなんとなく想像できた気がした。ロシアは歴史的にアメリカに対する劣等感や敵対感が国全体にわたって刷り込まれていて、ウクライナ侵攻とその結果も今後の米露の関係に多大な影響を与える。アメリカ側としてはロシアとの溝を深めることは不本意で、今ここでウクライナという”小国”を見捨ててでもアメリカ国内の今後の平和のため、ウクライナに降伏を進めているのではないか。自分の認識している道理だけだと、ウクライナは侵攻されている側なので、静止するのであればロシア側だろと思うので。またロシアのウクライナ侵攻を中国は今後の
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ロシアによるウクライナ侵攻、また今後起こりうるといわれる台湾有事の予測など、昨今の国際情勢について、著者が複数名の専門家と対談する。本書は主にアメリカとロシア、中国の関係を中心に語っており、それによると、ロシアと中国は日本を半植民地と見なす、つまりアメリカと同盟国を結んでいることは完全な主権を確立していないと考えている。また日本のロシアに対する性善説は江戸時代末期からあり、実際に日露戦争の直前、桂太郎が英国と同盟を結ぶことに対し、伊藤博文は日露協商を唱えるという事例があった。さらに2022年のウクライナ侵攻時に、ロシアに経済制裁を実行したが、これは短期的に見ると効果は現れないが、相手のコスト
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新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻、ガザ地区戦闘など、この数年で世界のバランスが崩れる中、次に構えているリスクは「台湾有事」だと思う。今年は台湾総統とアメリカ大統領選挙があるので、台湾問題や習近平がどのような人物なのか知りたいと思い、手に取った。
台湾は東アジアの「弾薬庫」であり、中国•ロシア•北朝鮮がすぐ目の前にある日本が巻き込まれて、甚大な被害が出ることが予想されている。
台湾も日本も、ウクライナと異なり「島国」だが、海に囲まれているが故の、情報や物資補給ラインが脆弱であるという指摘は衝撃的である。
また本書後半では、中国が武力行使に出たときのシミュレーション(日本のインフラが徐々に破壊 -
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断片的に捉えていたウクライナ問題を体系的に理解するに有益な本だった。また、ロシア関係だけではなく、最も意識すべき中国に繋げて議論される。個人的には台湾有事とウクライナ戦争がストレートには繋がらない。その視点でも読んでみた。
2003年のイラク戦争はアメリカが全くロシアの言うことを聞かずに開戦した。それまではロシアもG8に参加し、西側との全面戦争は無いのだからと徴兵制を廃止しろと言う主張をしていた。それと前後して2003年にジョージアでバラ革命、2004年にはウクライナのオレンジ革命。そこでウクライナがNATOに加盟すると言い出した。2005年にはキルギスでチューリップ革命。この一連のカラー革