山本淳子のレビュー一覧
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枕草子は古典の教科書に載っている「春はあけぼの」というフレーズであまりにも有名だ。そしてこれを書いた清少納言もこの草子の作者として知られている。私が学生の頃は随筆というジャンルに分類され、「平安時代のOLエッセイ」と呼ばれていることも聞いたことがある。
しかし本書を読むと、清少納言が軽いエッセイ感覚で枕草子を編んだという思い込みは払拭される。枕草子は実に巧妙に作り挙げられた忠臣清少納言による主君定子に関するイメージ戦略なのだ。それも殺伐とした政治の話を一切取り上げることなく、定子サロンの洗練された優美さや機知、そして華やかな姿だけを取り上げることによって実現している。
枕草子を抜きにして中宮定 -
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コンパクトなのに非常に奥深い教養が身につく本。
源氏物語全54帖のあらすじも載っているが、そちらよりも物語に関連した平安時代の風俗や文学の歴史、人物の系譜などを学べることが面白い。
菅原道真公の飛梅伝説は知っていたけれど、ずっと白梅だと思っていたのが紅梅だったことを43帖「紅梅」の解説で知ったし、梅自体が奈良時代に中国から渡来したことも知りました。などなど…。
源氏物語の楽しさはちゃんと全訳本などを読むべきだけれど、この本をサブテキストとして併用すればバッチリ!
源氏物語をきっかけに色々なことが学べる素晴らしい1冊でした。今後も折にふれて再読します。 -
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ネタバレ表題がなんとも魅惑に満ちている。
かの清少納言が随筆『枕草子』に託した”たくらみ”とは?
冒頭「春は、あけぼの」に込められた秘かな想いとは?
今まで他の物語を読んで何となく知っていた中宮・定子の波乱万丈な人生。
山本淳子さんの指導により深く掘り下げてみると、定子の毅然とした美しさや聡明さ、それを見守る清少納言の知性に惚れ惚れする。
誰もが羨む恵まれた血筋に生まれながら必ずしも順風満帆とは行かず、暗闇をさ迷うような人生を歩んだ定子。
そんな定子の気持ちを誰よりも察し、定子の苦悩が少しでも和らぐように、定子の魂を鎮め浄化させようと、清少納言はただ黙々と『枕草子』を書き綴る。
人生とは時に切なく時 -
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なんと、面白いことか。
本書が扱うのは古典の名作『枕草子』。学校の授業で、文法に悪戦苦闘しながら、つまみ食いのようにして読まされた『枕草子』。おそらく、全文を古文で読み通した人はそうはいないだろう。
かくいう私も、田辺聖子さんの現代訳『むかし・あけぼの』(名作です!)を読んだ程度。『枕草子』は、どこか、軽いエッセイのようなものと捉えていた。だが、それは確かに一面だが、それだけではない。『枕草子』には清少納言のたくらみ、想いが込められていたことを本書は指摘する。
その手がかりは、歴史的事実と『枕草子』の記載の乖離から浮き上がる。著者の山本さんは、それを清少納言の事実誤認とは考えない。清少納言 -
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誰もが知る「枕草子」。でも、本書で著者が解き明かしていくその姿は、まったく思いもかけなかった新しい光を放っている。なるほど、そういうことなのだと、目から鱗がポロポロと落ちる思いで読んだ。
-才気煥発の人、清少納言による、ユニークな美意識に貫かれた随想-「枕草子」の一般的なイメージはこんな感じだろうか。平安文学好きなら、もう少し知っているかもしれない。清少納言は中宮定子を理想的に描き、その没落後のことは一切書かなかった。定子の産んだ内親王や親王については、不思議なことにほとんどふれられていない。紫式部はその日記に清少納言を辛辣に(と言うより感情的に)批判して書いている、などなど。
本書を読ん -
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本書は「週刊 絵巻で楽しむ源氏物語五十四帖」というビジュアルシリーズに連載されたエッセイがもとになっているそうで、一般向けの読みやすいものだ。最初のあたりは、以前出た著者の「源氏物語の時代」と比べるとやや浅い感じがして、読者サービスのような軽い書き方に少し違和感があった。章のタイトルが「恋の”燃え度”を確かめ合う、後朝の文」とか「祖先はセレブだった紫式部」とかだったり…。それでもやっぱり、専門の研究者による源氏のお話はさすがに面白く、内容も章が進むにつれどんどん深みを増して、結局は大満足のうちに読み終えた。
「源氏物語」は(今更言うまでもないけれど)たいそう魅力的な物語なので、時代により人に -
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ネタバレ源氏物語の原作者紫式部が彰子中宮の元で宮仕えをしていた3年程の記録及び体験記とも言える「紫式部日記」の解説本です。
原典と口語訳とを併記されておりまずはとてもわかりやすいです。
タイトルにビギナーズ・クラッシックスと銘打ってあるだけのことはありますw
残念ながら原典の全てが掲載されているわけではなく、日記の内容や式部が家庭の主婦から職業女房へと成長・変化してゆくさまにあわせ、3部構成になっています。
「鬼と女は表に見えないのが良い」とされていた平安の時代、職業としての女官や女房は多くの男性に顔を晒さねばならず総じて「はしたない」「言い寄り易い」と軽視されている側面がありました。
式部もその -
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ネタバレ藤原道長の生涯を新たな視点で描いている一冊。
これまで藤原道長というと「この世をば我が世とぞ思う望月の欠けたることも無しと思へば」という和歌を元に権力者として力を誇った傲慢な人物というイメージがずっとあったことは否めない。
しかし、本書によると、藤原道長は、非常に幸運な運命のあった人物であり、それが、すべて自分が権力者としての階段を登っていく過程において、それを阻害するような人物の死によってもたらされるという事に着目している。
例えば、藤原道隆、道兼の二人の兄が早逝しなければ、道長に摂関というポジションは回ってこなかっただろうし、道隆の子、伊周、隆家兄弟が勘違いから花山法皇に矢を射かけ