あらすじ
藤原道長が恐れ、紫式部を苛立たせた書。それが随筆の傑作「枕草子」だ。権勢を極めてなお道長はなぜこの書を潰さなかったのか。冒頭「春はあけぼの」に秘められた清少納言の思いとは? あらゆる謎を解き明かす、全く新しい「枕草子」論。
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Posted by ブクログ
NHK大河の「光る君へ」の参考に読んでみた。
教科書で学んだ枕草子の印象が全く変わる内容。清少納言が好きになった。中宮定子の生き方やその背景に非常に興味がわいた。
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光る君へと重なってめちゃくちゃライブ感があった。
まさかの枕草子で味わうライブ感すごい。
枕草子普通にエッセイとしてもおもしろいけど、その書かれた理由や背景を知るとほんとうに見事なたくらみで、今日こうして誰もが知る代表的古典文学として燦然と輝いているのは見事でしかない。
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遠い昔、学校で、定子と彰子2人が後宮で寵を競い、その手段の一つが文学だった、定子サロンは清少納言と枕草子、彰子サロンは紫式部と源氏物語、と教わった気がするけど、「源氏物語の世界」や「道長ものがたり」を読んで、実はこの2人、ほとんど時代が被っていないこと、定子が死ぬまで圧倒的に愛されていたことを知った。
そう知って、不遇の定子を気持ち的に支えたであろう清少納言そして枕草子、と知ると、まったく違う物語がみえてくる。
清少納言は、紫式部日記の影響もあってか、枕草子に書かれた内容がそうだからか、とかく「軽い人」と見てしまいがちだけど、この軽やかなエッセーの背景にある史実に思いを馳せながら、じんわりと読みました。
うん、興味深くて面白かった。
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学校でこんなこと教えてもらわなかった…!
自身のためではなく定子様のために。
清少納言の強い思いを感じることができた。
『枕草子』が執筆された前後の時代背景、清少納言や定子様周辺の人物紹介も詳しいので、理解が深まる。
『枕草子』を読む準備ができた。
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枕草子は悲運で救われない定子の在りし日の幸せな姿を
①本人に思い出させ②他の人に思い出させるため語り続
ける鎮魂の物語
それは中関白家の悲劇が生んだ
道隆の死が切っ掛け、道長が藤の長者となり、花山法王
を伊周が襲撃・・・中宮定子の出家・・・定子が率いて
いた知的で機知に富んだサロンは崩壊した
道長に尻尾を振る貴族(斉信)との仲を根拠に、清少納
言は主(定子)に仇成す存在と疑われて距離を置くが…
伊周が定子に紙の束(草子)を渡し「何か書けば?」と
言うのに清少納言が「枕にしたいわ」とウィット溢れる
やり取りを覚えていて、実家で籠る清少納言は華やかな
サロンで繰り広げられた幸せな日々を書き連ねて、絶望
・悲嘆にくれる定子の心を慰めるのだった
政治バランスが乱れた状況に鑑み、特定貴族を批判しない、子供(内親王・親王)の事に触れない、幸せで何気なおかしみダケを記したのである
清少納言の側面や一部しか知らない人物像。定子との深い関係性と絆、信頼理想の皇后・定子の姿を描き続けた清少納言の定子への想いや平安時代の社会背景に目配せしつつ、枕草子を紐解く構成。文学の偉大さを改めて思い知らされた。
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皇后定子が失意と悲嘆のうちに亡くなった時、まだ24歳。一条天皇は21歳だった。
悲運を描かず、もっとも華やいだ日々を書きつづり、后が存命の折りにはその悲しみを和らげ、没後には魂を鎮めたという背景を丁寧に教えてくれる本だった。
読み終えて、枕草子を読むと泣けてきた。
Posted by ブクログ
清川妙さんの「うつくしきもの枕草子」を読んだのちに、読みました。枕草子のきらきら感を堪能した後だけに、これを読んだ直後は、それが痛々しい気もしてしまいました。でも、やはり前向きな枕草子かな。そのうち、原文で読んでみたいです。
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大好きな1冊で、何度も読み返している。現代では「毒舌ブロガー」と称される清少納言だけど、この本を読むと全然そんな気がしない。枕草子には、定子への愛が詰まっている。清少納言が生きた時代が小説のようにドラマチックに描かれて、間に随筆の現代訳や解説が入るため読みやすい。清少納言の“たくらみ“通り、今も生き続ける作品になっていることがすごい。「スキ」の想いに勝るものはないと思わされる。
Posted by ブクログ
枕草子は古典の教科書に載っている「春はあけぼの」というフレーズであまりにも有名だ。そしてこれを書いた清少納言もこの草子の作者として知られている。私が学生の頃は随筆というジャンルに分類され、「平安時代のOLエッセイ」と呼ばれていることも聞いたことがある。
しかし本書を読むと、清少納言が軽いエッセイ感覚で枕草子を編んだという思い込みは払拭される。枕草子は実に巧妙に作り挙げられた忠臣清少納言による主君定子に関するイメージ戦略なのだ。それも殺伐とした政治の話を一切取り上げることなく、定子サロンの洗練された優美さや機知、そして華やかな姿だけを取り上げることによって実現している。
枕草子を抜きにして中宮定子の生涯を知った者はきっと時の政治に振り回される彼女の人生を不幸なものとして憐れむだろう。しかし枕草子を通して彼女を知った者はその逆の印象を抱くに違いない。美しく機知に富んだ型破りな粋姿で、これまでの後宮とは違うおしゃれなサロンを作り上げた憧れの中宮こそが定子の姿だと信じてしまう。事実ももちろん織り交ぜながらそれを演出しているのが清少納言なのだ。私はそこに清少納言の意地と忠誠心、そして定子に対する深い愛情を感じて彼女のことがより一層好きになってしまう。
そして枕草子からはただ清少納言から定子への一方的な愛情だけではなく、定子から清少納言に対する厚い信頼も見えてくる。白楽天も諳んじる知識豊富でかっこいい女性像である清少納言も女房になりたての頃は緊張で定子に近づくことすらできず、定子の呼びかけにもしどろもどろだったのが驚きだが、そんな彼女が羽を伸ばして生き生きと活躍できるように接する定子の姿は主君として理想的ではないだろうか。枕草子はこうして定子の粋なふるまいを描くことで清少納言の忠誠心だけではなく、定子自身の清少納言への羨ましいほどの信頼や期待も読者に伝えている。当時この草子を読む機会があったであろう紫式部がどう思ったか、想像に容易い…そしてその結果生まれたのが紫式部日記の清少納言に対するディスりなのではないかと勘繰ってしまう。
少し脱線するが、私は杉田圭先生の『うた恋い』シリーズが大好きである。そしてその中でも清少納言と藤原行成の関係性や描かれるエピソードがたまらなく好きだ。年上の女性としてのプライドがあり定子様を慕う清少納言、そして無骨だが狭く深い友人関係を望む行成。二人の恋愛模様が描かれず、どちらかといえば深い友人関係がしっくりくる。私の中の二人のイメージは、まさにこの『うた恋い』で作り上げられているといっても過言ではない。そして今回『枕草子のたくらみ』を読むと、そのイメージは全く間違っていないことを再確認できてとても嬉しかった。特に11章の「男たち」に登場する清少納言と行成の歌の詠み合いは漫画そのままの表現で、二人の絵が頭に思い浮かぶほどだった。
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表題がなんとも魅惑に満ちている。
かの清少納言が随筆『枕草子』に託した”たくらみ”とは?
冒頭「春は、あけぼの」に込められた秘かな想いとは?
今まで他の物語を読んで何となく知っていた中宮・定子の波乱万丈な人生。
山本淳子さんの指導により深く掘り下げてみると、定子の毅然とした美しさや聡明さ、それを見守る清少納言の知性に惚れ惚れする。
誰もが羨む恵まれた血筋に生まれながら必ずしも順風満帆とは行かず、暗闇をさ迷うような人生を歩んだ定子。
そんな定子の気持ちを誰よりも察し、定子の苦悩が少しでも和らぐように、定子の魂を鎮め浄化させようと、清少納言はただ黙々と『枕草子』を書き綴る。
人生とは時に切なく時に儚く、けれどそれら全てはこんなにも光り輝き美しい。
清少納言好きはもちろん、平安時代好きにはたまらない一冊。
とても贅沢で有意義な時間を過ごせた。
何かと比較される清少納言と紫式部。
2人が孫の代まで因縁があったとは驚いた。
この2人って何かと比較されるけれど、時代的に見ても出逢ったことはないはず。
なのに何故こんなにも比較されるのか。清少納言の後に後宮入りした紫式部にとって、目の上のたんこぶ的存在の清少納言のことは忌々しくどんなにか嫌であっただろう。
それが孫の代まで縁があるとは、あの世の2人もびっくりしたことだろう。
千年の後の世でも受け入れられ、幅広い世代に読み続けられている『枕草子』。
定子が後宮で創り上げた文化は時代を超えて今もなお生き続ける。
『枕草子』に託した清少納言の”たくらみ”は大成功と言えよう。
悲しい時こそ笑いを。
くじけそうな時にこそ雅びを。
「あはれ」を「をかし」に変える清少納言の姿勢を見習いたい。
最後になりましたが、この著者を紹介して下さった地球っこさんに感謝します(*^^*)
Posted by ブクログ
なんと、面白いことか。
本書が扱うのは古典の名作『枕草子』。学校の授業で、文法に悪戦苦闘しながら、つまみ食いのようにして読まされた『枕草子』。おそらく、全文を古文で読み通した人はそうはいないだろう。
かくいう私も、田辺聖子さんの現代訳『むかし・あけぼの』(名作です!)を読んだ程度。『枕草子』は、どこか、軽いエッセイのようなものと捉えていた。だが、それは確かに一面だが、それだけではない。『枕草子』には清少納言のたくらみ、想いが込められていたことを本書は指摘する。
その手がかりは、歴史的事実と『枕草子』の記載の乖離から浮き上がる。著者の山本さんは、それを清少納言の事実誤認とは考えない。清少納言が意図的に改竄したと考える。では、何故、彼女はそのように記したのか。哀しくも「あはれ」なたくらみが明らかとなる。
しかし、清少納言のたくらみは成功したと言えるのではないだろうか。なんと1000年以上経った今に至るまで、聡明な中宮定子を中心としたそのサロンは、明るく、闊達なイメージで受け入れられているのだから。
Posted by ブクログ
清少納言が何故「枕草子」を書いたのか。
それは一重にお仕えしていた、中宮定子のため。
実際の彼女の生きた時代の政治背景は、をかし事は少なく、政治的陰謀で精神的に大変だった時代。
そんな心の重荷をほぐして欲しい、そして後世の人々に、中宮定子の雅で賢く立派だった姿を書き残したいという清少納言の心が解説でとても心に沁みました。
奥が深く、どこまでも裏を読む天才です。
Posted by ブクログ
清少納言の置かれた状況を克明に記述し、説得力のある形で当事者の心情を再現している。同じ著者の「源氏物語の時代」も名著であったが、これもそれに劣らぬ作品である。
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twitterでお薦めがあって読んだ本。
文学を文学としてだけではなく、実際にあった出来事と合わせると違うものが見えてくる、というのは新鮮な体験でした。
Posted by ブクログ
文句なしに楽しめた!未知の枕草子の世界に興味津々にならざるを得ない本でした。とても解り易く枕草子の世界に誘って頂き言うこと無し です。これはもう枕草子のたくらみ(寧ろ清少納言のたくらみ) と言うより山本淳子さんのたくらみ ですね。久しぶりに学習意欲を揺さぶられました❗ありがとうございます。
Posted by ブクログ
誰もが知る「枕草子」。でも、本書で著者が解き明かしていくその姿は、まったく思いもかけなかった新しい光を放っている。なるほど、そういうことなのだと、目から鱗がポロポロと落ちる思いで読んだ。
-才気煥発の人、清少納言による、ユニークな美意識に貫かれた随想-「枕草子」の一般的なイメージはこんな感じだろうか。平安文学好きなら、もう少し知っているかもしれない。清少納言は中宮定子を理想的に描き、その没落後のことは一切書かなかった。定子の産んだ内親王や親王については、不思議なことにほとんどふれられていない。紫式部はその日記に清少納言を辛辣に(と言うより感情的に)批判して書いている、などなど。
本書を読んで、清少納言や「枕草子」について抱くイメージがガラリと変わった。そして、いくつもの漠然とした疑問(上に挙げたようなこと)への、説得力のある「解答」をもらったと思う。著者の考察は、多くの研究者によって積み重ねられてきた「枕草子」研究や歴史的事実に立脚しているが、同時に、思い切って人物の内面に迫っていく独自の視点が導入されていて、そこに大きな魅力を感じた。
まず最初の、「枕草子」はなぜ、なんのために書かれたのか、という問題の立て方に、あ!と思った。私たち、いや私は、つい無意識に、平安時代の書き手たちを、現代の「作家」と同じように考えてしまうが、そもそも当時は(印刷などできないのは言うまでもなく)ものを書く紙が非常に貴重で高価だったのであり、「執筆する」ということの意味が現代とはまるで違う。「枕草子」も、紙を提供する人があり、ある明確な意図と目的を持って書かれたのだとあって、この「序章」ですっかり引き込まれてしまった。
第一章以降は、基本的に年代を追って、「枕草子」の各章段を引きつつ、その背景や清少納言の意図を探っていく形となっている。いやまったく、次から次から「そうだったのか」ということの連続で、自分がこれまでいかに固定的なイメージで読みとばしていたか、痛感させられた。「春はあけぼの」という出だしからして、ここまで重層的な読み方ができるのかという驚きでいっぱい。今まで何を読んできたのか…。
「枕草子のたくらみ」つまり執筆の目的についての著者の考えは、序章から明らかにされている。中宮定子の生前はその慰藉のため、死後は鎮魂のため。定子没後、藤原道長が栄華を極める世となってなお、なぜ「枕草子」は読み継がれ、その存在を抹殺されることがなかったのか。その理由を解き明かした終盤の筆致に、最も迫力があると思う。以前の著作「源氏物語の時代」でも感じたが、中宮定子の運命に寄せる著者の思いは、しみじみと深い。
著者は、「枕草子」において清少納言は自ら道化となり(もちろん定子のため)、自分の一面でしかないあるキャラクターを演じたのだと書いている。また、紫式部がなぜ清少納言に対して苛立ったのかも推測していて、このあたりが非常に面白かった。この二人の女性が生き生きとした姿で立ち現れてくる気がした。
Posted by ブクログ
みなさんのレビューで気になった本。小説以外の本はあまり読まないのだが、興味深い内容で楽しめた。
『枕草子』というと『春はあけぼの』など、幾つかの文章を遠い昔に授業で覚えただけの薄っぺらい知識しかない。イメージで気位の高い知識人のおばさま女房が宮中での日々を綴ったエッセイと思っていたが、この本を読んで変わった。
また作者・清少納言が仕えた中宮・定子についても後に入内する藤原道長の娘・彰子のライバルくらいの、これまた薄っぺらいイメージしかなかったのだが、この本を読むと何と波乱と悲劇の人生だったのかと驚く。
一条天皇に最初に嫁いだ后で父親は当時の権力者。帝との仲も睦まじく人生の絶頂期。しかし父親の急死により事態は一変。権力者は道長に取って代わり、后という立場は一気に揺らぐ。そこから更なる悲劇と変わらぬ帝の寵愛とに揺れ動く。
ざっくり書いただけでも映画やドラマになりそうなくらい波乱万丈だが、その定子に仕えた清少納言の立場もまた波乱続きだ。一時は出仕出来ないほど追い詰められ、その後も定子の境遇がどんどん侘しく辛いものになっていくのを目の当たりにするのだ。
『枕草子』は定子が辛い状況に陥った正にその頃に書かれ始め、定子亡き後も書かれ続けた。では『枕草子』は何のために書かれたのか。
『枕草子』では定子の辛い状況や道長への恨み言は殆ど書かれない。日々の徒然を面白おかしく、楽しいこと美しい瞬間、雅なエピソードで彩っている。『枕草子』の中での定子は嫁いだばかりの頃のように誰に憚ることなく帝と仲睦まじく過ごし、清少納言ら女房たちには優しくも時に知己や機転を鍛えさせてくれるよき主人であり、貴人と思えぬ積極性と茶目っ気を見せてくれる個性的で魅力的な女性だ。
紫式部の「絵空事ばっかり書いてるんじゃないわよ」という批判は当たっていたのだ。そこには切ないほど必死で健気な清少納言の思いがあった。
作者さんの解説を読むと、挿入される『枕草子』の数々の文章に清少納言の定子愛を感じる。それぞれのエピソードに清少納言の「こんな楽しいこと、面白いこと、幸せなことがありましたね」という定子への呼び掛けすら聞こえてきそうだ。
定子を楽しませるためなら清少納言は進んで道化の役もやるし恥ずかしいエピソードも披露する。定子の前では気位の高いオバサンではない。
こんな魅力的な定子という女性を描いた『枕草子』は、何故時の権力者・藤原道長に握りつぶされなかったのか。
その第二の問は言われるまで気付かなかった。まあ定子の境遇と『枕草子』が書かれた理由を知らなかったからなのだが。
だが言われてみれば確かにそうだ。長い歴史の中で、常に文書は後の権力者の都合に合わせて作られ、都合の悪いものは改竄され潰される。そこにも第一の問同様、清少納言の巧妙な「絵空事」戦術があった。
とは言え、娘の小馬命婦をちゃっかり彰子に仕えさせている辺り、親としての心情は別なのだなと思ったりする。
道長の世は当面続きそうだから彰子に仕えていれば娘は食いっぱぐれはなさそうだし、上手く行けば良い男を掴まえられるかも知れないし。なんて考えていそう。
凋落後は道長派からの露骨な嫌がらせを受け続け、周囲からも距離を置かれ不遇なままだった定子が、崩御後は手のひら返しで気の毒がられたり恐怖の対象になったりというのは、現代でも通じるところがあって興味深い。
そこにはこの時代ならではの、祟りや怨霊が本気で信じられていたという背景があったのかなと考えられる。だからこそ『枕草子』も守られたのではないかとも思う。
道長も晩年は多くの怨霊に悩まされていたと聞く。まぁ彼の場合、定子に限らず色んな恨み買っていそうだし。
これまた始めて知ったが『源氏物語』の桐壺の更衣は定子の境遇にそっくりとのこと。
紫式部が仕える彰子のライバル、定子をモデルにしたとしたならそこにはどんな思いがあったのだろう。立場を越えて、定子の境遇は紫式部の創作意欲を刺激するものだったのか。
それにしても作家さんは清少納言と定子が好きなのだな、と全編通じて感じた。まあどうしても悲劇的な方に肩入れしたくなるのは解る。
Posted by ブクログ
枕草子は小学生の頃に最初に読みふけった古典で、描かれる宮中の有り様に憧れたものである。それが実際の出来事とともに解き明かされていてとても面白かった。紫式部の清少納言批判は子ども心にも嫌だなと思っていたので、その理由が説明されていたのも有り難い
Posted by ブクログ
山本淳子さんの著書にはハズレがない!本作もやはり、とても分かりやすく面白かったです。
さらに、主題は主題でとても興味深かったのですがその前に、中関白家の家風が素敵過ぎると今更ながらあらためて思ってしまった。。
定子の、女房に対するリーダーシップといい、当時は男性のみが嗜む教養である漢詩文の素養を持ちそれを日常的に楽しんでる様といい、これはすべて中関白家の教育の賜物です。
積極性、自己主張、優雅な機知、そして庶民性を特徴とした最先端の後宮文化が定子の目指したサロンであり、そこに大御所道隆、貴公子伊周等が登場してしまうんだからうっとりせずにはいられません。清少納言の気持ちわかるなあ~
と、現代人の私でさえもうっとりしてしまう世界を描いた枕草子ですが、実はそれが集中的に書かれたのは、道隆が世を去り、伊周が流罪となり(長徳の政変)、文化の基盤たる中関白家が凋落した時であり、定子の文化は崩壊の危機にあったとは驚きでした。
それをふまえて作品を解釈すると、枕草子はただのエッセイではないことが分かってきます。
生前は定子の苦しみを和らげ慰め、死後は鎮魂のおもいを込めた作品なのです。
そもそも枕草子とは、花鳥風月から生活文化に至るまで、知性と革新性、明朗快活と当意即妙を旨とした定子の文化から生まれたものなので、清少納言は定子によって命を吹き込まれたといっても過言ではなく、本人もそれを自覚しているだけに、尊敬と感謝と忠誠心をもって最後まで定子に寄り添い、その結晶がこの作品なのです。。
また、後世まで定子の姿を残そうと、枕草子を廃棄されないよう題材と背景に配慮しつくす清少納言の強い意志には頭が下がりました。
結果、社会もこの作品を受け入れることになります。
定子を迫害した道長は罪悪感から怨霊に怯え、他の貴族も罪悪感の裏返しから同情を唱えるようになりました。また、若者たちは定子の死に無常感と無力感にかられて出家していきます。
そんななか、美しい定子の記憶だけをとどめる枕草子はむしろ、社会を癒す作品として存在するようになったそうです。
そんな「たくらみ」を清少納言は計ったのです。愛ですね。
Posted by ブクログ
桃尻語訳もあり、明るく溌剌としたイメージの枕草子だが、それは中宮定子に捧げられたレクイエムだった。
清少納言の策略通りに千年後の私達は中宮定子サロンが雅やかさを愛でている。
清少納言はエッセイだけでなく、策士としても超一流だということ。
そして、その策略を読み解き、一般人に判りやすく解説してくれている著者に感謝。
Posted by ブクログ
面白かったです。
『枕草子』はリアルタイムに書かれたものではなく、中宮定子が幸福でキラキラとしていた頃のエピソードを清少納言が定子への思慕をこめて後から書いたものだったのですね。定子の実家の凋落後の境遇等を想像しながら読むと、以前と違った感想を持つだろうと思います。
著者が当時の時代背景や様々な文献から『枕草子』を読み解いていきます。そして『枕草子』にこめられた清少納言のたくらみが最後に明かされます。なんて切なくて愛しいのでしょう。清少納言の気持ちに寄り添えたような心持ちです。
興味のある方は是非!
Posted by ブクログ
日は入日 入り果てぬる山の端に 光 なほとまりて 赤う見ゆるに 淡黄ばみたる雲の たなびきわたりたる いとあはれなり
枕草子の後半に書き連ねてある「日、月、星、雲」の段。上の部分はその中の「日」の段にあたる。
初段の「春はあけぼの」にも通じるお題ありきの構成をとる。自然への洞察力に長け軽妙で小気味いい清少納言らしい文章だ。
もちろんこれだけを読んでも十分に枕草子の世界を堪能できる。
ただ、この背景にあるものを知ったらどうだろう。また一段と作品世界が広がることは間違いない。
この本によると、おそらく「春はあけぼの」は定子の生前に書かれたもの。そして上に上げた段は定子の没後に書かれたものとある。
平安という雅の中にありながらも、時代の波に翻弄された悲劇の中宮、定子。
そんな彼女の心を慰めるため、そして彼女の魂を鎮めるために書かれたのがほかでもない枕草子だったのである。
いったんこの作品がある種の挽歌だったと知ると、枕草子における清少納言のきらびやかな貴族社会への執着に合点が行った。
もともと山吹の花のくだりが好きで、ここを読むと定子の清少納言への愛情の深さに胸がいっぱいになってしまうのだが、この本を読んだ今はどのくだりを呼んでも清少納言の定子への思いがひしひしと伝わってきて切ない。
高校の授業で出会った枕草子。
知っているようで全然知らなかったその世界。
一筋縄じゃいかない。
だからこそ面白い。
平安の時代に思いを馳せながら、読み耽るのもいとあわれなり(笑)
尊敬するブク友さんから紹介された素敵な本です。
読んでよかった。
ありがとう~♪
久々のレビューでした!
Posted by ブクログ
他の解説本は読んだことあって、清少納言は現代にも通ずるエッセイストやなと思ってたんですが、大河を見て、こういう背景だったんだと新たに知り、こちらの本を読んでみた。まさにたくらみ。中関白家の雰囲気も楽しそう。
Posted by ブクログ
学生時代、源氏物語に傾倒していて清少納言を軽く見がちだったので改めて知りたいと読んだ。実際は紫式部と清少納言にニヤミスはなく、枕草子もリアルタイムで書かれた物ではないとわかった。何と無知だったのか、目から鱗の思いだった。内容が重複してる箇所が多くあったのが残念だが、なかなか勉強になった。
Posted by ブクログ
大河ドラマ繋がりで読みました。「枕草子」や清少納言て、紫式部や「源氏物語」に比べると、明るくてサバサバなイメージでしたが、背景には辛い状況があったんですね。それを隠して雅な様子を書き綴った辛さと、精神的強さに感服しました。
Posted by ブクログ
古典で見出しのみ習った程度の関わりだった枕草子が、本作読後は、定子が実際に平安の世を生き、人として存在した記録と色濃く思える。時政がわかり面白くはあるが、著者が後に出された、ひとり語りがあまりに読みやすかったため、こちらは参考書感が否めない。