あらすじ
藤原道長が恐れ、紫式部を苛立たせた書。それが随筆の傑作「枕草子」だ。権勢を極めてなお道長はなぜこの書を潰さなかったのか。冒頭「春はあけぼの」に秘められた清少納言の思いとは? あらゆる謎を解き明かす、全く新しい「枕草子」論。
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Posted by ブクログ
枕草子は悲運で救われない定子の在りし日の幸せな姿を
①本人に思い出させ②他の人に思い出させるため語り続
ける鎮魂の物語
それは中関白家の悲劇が生んだ
道隆の死が切っ掛け、道長が藤の長者となり、花山法王
を伊周が襲撃・・・中宮定子の出家・・・定子が率いて
いた知的で機知に富んだサロンは崩壊した
道長に尻尾を振る貴族(斉信)との仲を根拠に、清少納
言は主(定子)に仇成す存在と疑われて距離を置くが…
伊周が定子に紙の束(草子)を渡し「何か書けば?」と
言うのに清少納言が「枕にしたいわ」とウィット溢れる
やり取りを覚えていて、実家で籠る清少納言は華やかな
サロンで繰り広げられた幸せな日々を書き連ねて、絶望
・悲嘆にくれる定子の心を慰めるのだった
政治バランスが乱れた状況に鑑み、特定貴族を批判しない、子供(内親王・親王)の事に触れない、幸せで何気なおかしみダケを記したのである
Posted by ブクログ
表題がなんとも魅惑に満ちている。
かの清少納言が随筆『枕草子』に託した”たくらみ”とは?
冒頭「春は、あけぼの」に込められた秘かな想いとは?
今まで他の物語を読んで何となく知っていた中宮・定子の波乱万丈な人生。
山本淳子さんの指導により深く掘り下げてみると、定子の毅然とした美しさや聡明さ、それを見守る清少納言の知性に惚れ惚れする。
誰もが羨む恵まれた血筋に生まれながら必ずしも順風満帆とは行かず、暗闇をさ迷うような人生を歩んだ定子。
そんな定子の気持ちを誰よりも察し、定子の苦悩が少しでも和らぐように、定子の魂を鎮め浄化させようと、清少納言はただ黙々と『枕草子』を書き綴る。
人生とは時に切なく時に儚く、けれどそれら全てはこんなにも光り輝き美しい。
清少納言好きはもちろん、平安時代好きにはたまらない一冊。
とても贅沢で有意義な時間を過ごせた。
何かと比較される清少納言と紫式部。
2人が孫の代まで因縁があったとは驚いた。
この2人って何かと比較されるけれど、時代的に見ても出逢ったことはないはず。
なのに何故こんなにも比較されるのか。清少納言の後に後宮入りした紫式部にとって、目の上のたんこぶ的存在の清少納言のことは忌々しくどんなにか嫌であっただろう。
それが孫の代まで縁があるとは、あの世の2人もびっくりしたことだろう。
千年の後の世でも受け入れられ、幅広い世代に読み続けられている『枕草子』。
定子が後宮で創り上げた文化は時代を超えて今もなお生き続ける。
『枕草子』に託した清少納言の”たくらみ”は大成功と言えよう。
悲しい時こそ笑いを。
くじけそうな時にこそ雅びを。
「あはれ」を「をかし」に変える清少納言の姿勢を見習いたい。
最後になりましたが、この著者を紹介して下さった地球っこさんに感謝します(*^^*)