鈴木芳子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読書という姿勢について哲学的視点から読み方と良書の選び方を勧め単に読むことで情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えながら思索し、批判的姿勢、疑問、問いを浮かべながら読むという行為をすることを推奨している。
本に限らず、動画やSNS等で様々な質の悪い誰が言ったのかもわからない情報や誤情報で溢れている。本でも同じことを情報への向き合い方について本著は示すものだ。100年前の書物であるが、良書とは何か、悪書とは何かを自分自身で吟味すると良いだろう。
著者が推奨する良書というのは時代を超えて価値を持つ本というものは、古典のように、長く読み継がれた理由があるもの。短命な流行書ではなく、世代を超えて人間の本質に訴える書物であり、その書かれた本の著者の独自の思想と体験に根ざしていること。金銭や人気のために書かれた本ではなく、思想や経験を伝える使命感から生まれたものである。
読者の思考を刺激し、創造性を喚起することであり、受け身の読書ではなく、思索を促すものであること、普遍的な真理や深い洞察を備えていること:単なる情報や技術書ではなく、人生や存在への洞察を提供するものを指している。
著者のショーペンハウアーは明確に「良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである」と述べ、人生の時間と知的エネルギーには限りがあるため、価値の乏しい書物にそれを消費してしまえば、真に読むべき本に触れる機会を永遠に失うと警告しました。悪書は「知性を毒し、精神を損なう」とされ、彼にとって最大の敵と明確にしている。
私は思う。本著が指す内容を正確に読もうとするのは知的生産には特化しているが、本著もまた自身の読書について時代を超えて読まれるということは良書であるといえる。時間は有限であり、この著者が読書についてを発表してから100年経過して消えた本は数多にある。ネットの情報はもっと早いだろう。
本著は思索を読みやすく解説している。一度手に取り読むことをオススメする。読むという行為は人間である以上無くならない。デバイスは紙から変わるかもしれないがそれでも向こう遠い未来まで読み継がれる良書であるといえよう。 -
Posted by ブクログ
人は意識せずとも他人と比べ、未来を憂い、今を見ず感じず、他人や過去未来をばかりを見て比較し、不安や不幸の迷路に陥ってしまう。本著で気付けることは、他人や実体の無い過去や未来を憂うことを止め、私たちが「今、生きている」という実感と、様々な視点を本などから学び、多様な経験を通して内面を豊かにすることで、孤独や不安や他者との比較や不幸に迷路に迷わず、今、私が感じている充実感と私だけの本来の幸福に気付くべきだと示唆している。
不安や心配も社会通念上の幸福は「迷妄(幻想・錯覚)」と説き、私も同意する。
私たちは常に誰かが作った幸福の尺度の中で生きている。常に比較し疲弊し摩耗している。自分の声を聞く必要があるだろう。本著は実体の無い見えない不安や心配になっている人に向けても効果的である。
孤独との向き合い方、内面を豊かにするとどう世界が見えるかを教え説き気付かせてくれる。厳しくも優しく寄り添ってくれる良書といえよう。 -
Posted by ブクログ
昨年上巻を読んで、気づけば半年が経っていた。
ネコのムル君が筆を取るときに音楽家クライスラーの伝記を下書きとして使い、出版社にそのまま送ってしまったため、ムル君の話とクライスラーの話が交互になって出版されたという設定の本。
下巻は若者から成熟期に至るまでのムル君の人生が綴られている。
学生連合に参加するようになって以前の品格がなくなったと人間様から言われたり、犬族が集まるパーティに参加したりと、世界を広げていくムル君。
そしてその間に挟まるクライスラーの伝記。正直最初は読みにくかったけど、ムル君の話とリンクするところもあってだんだん慣れてくる。
あとは所々に編集者のツッコミがあり、「ネコ君、それは盗作だ」とか「ネコ君がまたもや反故紙二、三枚をひきちぎってしまったために欠損箇所が生じました」というところでインテリネコムル君の愛くるしさが爆発している。
ムル君へ
「ストイックに真剣に節制しようとしたが、ネコは本質的に誘惑に弱い。ミルク粥の快い匂いや、思わず座りたくなるような、ふっくらしたクッションを前にすると、このうえなくりっぱな固い決意もたちまちくじけた。」(p.14)
というのは人間も同じだよ。 -
Posted by ブクログ
「読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことだ」はよく引用される箇所だが、それ以外にも「良書を読むための条件は、悪書を読まないことだ。なにしろ人生は短く、時間とエネルギーには限りがあるのだから。」だったり、「読書と同じように、単なる経験も思索の代わりにはなれない。」だったり、ギクリとする記述が多く見られる。その他にも古典や原著を勧めていたり、多読を批判していたりと、著者の読書についての独特の見解が読む者の心に突き刺さる。果敢に読書に取り組んできた自分にもこれらの言葉は突き刺さり、繰り返し問いかけた。読書できているのか、と。読む者に問いかける切れ味抜群の言葉たち。読書する者なら一度は手にして欲しい著書である。
-
Posted by ブクログ
厭世世界をどう生き抜いて幸福である事を実感するか、又は真の幸福とは?について書かれていた。
他者からの印象を気にせず、たまには独りの時間をどっぷりと楽しみ、その孤独な時間を愛せる者は真の幸福を知っていると説く。
外的刺激は殆どがまやかしと幻想。
そこから少し離れられるか、そうでないか。
喧騒と社交、対人関係を好む者は時を前借りしていて、そのツケは50代から支払う事になる。
時の前借りとはとても残酷だと思ったし、そうならない為に今をより幸福な、今風に言えばストレスフリーな生き方をする事を勧められている。
ストレス…現代にはストレスの要因になるものばかりで頭が痛くなるが、これを最小限に排除して生きる事を幸福の入口とされている。
頭では分かるけど、実践は簡単にはいかない。
ストレスは向こうからやってくるので、それと闘う「力」も必要だということだ。 -
Posted by ブクログ
読書<考える 因って、人生を読書に費やすな! ということらしい。 哲学者の読書についての本なので、何の気なしに買って読んだが面白かった。
「人生を読書に費やし、本から知識をくみ取った人は、たくさんの旅行案内所を眺めて、その土地に詳しくなった人のようなものだ。」(「自分の頭で考える」より)
アナロジーが秀逸でクスッと笑える。時々、他の哲学者や作家をディスる。
あまり本を読まず自分で思索せよというのが著者の言い分だ。読むなら良書を読めと。しかも時間をかけるなと。
「良書を読むための条件は、悪書を読まないことだ。なにしろ人生は短く、時間とエネルギーには限りがあるのだから。」(「読書について」より) -
Posted by ブクログ
俗な幸福論ではない。
「人は幸福になるために生きている」というのはまやかしだという。
幸福はむしろ人を弱くする側面もあるという。
自分だけをよりどころに自分を育て、孤独に耐え、孤独を愛し、不幸の少ない人生を送れ、との主張を、ときにシニカルな(=現実を見据えた)筆致で綴っている。
女性、人種、ユダヤ人、現代で言う「認知症」などへの考え方が時代錯誤なところはある。しかし、名声、名誉、過度に一般化された国民性、決闘、戦争、保険料、青年期と老年期の役割の違いなどへの言及は今も色あせない鋭さをもっている。
日記が大事だとさらりと書かれている。
巻末の解説が素晴らしく、理性を重視したヘーゲル哲学を乗り越えたショーペンハウアー哲学の卓越性について触れられている。 -
Posted by ブクログ
直接的に幸福にするのは、因果を逆に捉えがちだが「心根が明るいこと」である。「この特性は何にも代えがたい」とショーペンハウアーは語る(5%辺り)。陽気さにとって富や名声ほど役に立たないものはなく、健康ほど役立つものはない。健康第一というわけだ。
置かれた環境下で幸福感が左右されてしまう外的要因に心惑わされることなく、内的要因に心の平和を見出そうとする考えは成熟社会の日本では一般的と言っていい(常にこれに立ち戻るのは難しいが)。「健康な身体」もそういう意味では状態に左右されてしまうので不健康であっても維持できる強固な心の平和、サンクチュアリを創造したい。
著者によると、幸福の基礎をなすのは動物的本性であり、最も大切なのは前述の通り「健康」次いで「生活手段」すなわち「心配無用の暮らし」という。これに気づいて整えれば自信に満ちた態度になり、屈託のない自然な振る舞いができるようになる。
また「孤独を愛す」ことも重要と説く。孤独の中にこそ、真の自由がある、自分の心の声に耳を傾けよ、と。情報化社会において刺激過多な現代人とは間逆な世界観ではあるが、一方でマインドフルネスや禅、ヨガ、ジョギングなどのブームは無関係ではないと思う。瞑想によって解脱の平和が得られるインド哲学にも詳しかったそうな。
彼は「生の哲学」の祖とも呼ばれるが、後にフロイトが「エス」や「リビドー」「トゥリープ」という概念に再構築した「生への意志」というコンセプトを打ち出している。巻末の解説によると、「人間が望みうる唯一のことは、できる限り自分の中の意思を否定することにある。そしてこの否定は『瞑想』において達成される。欲望の隷属状態から開放され、無常さを超えて安らぎと平和を得る」と説いているらしい。
「本能と理性」という二元論はよく聞くが、彼によると「意志・本能」と「知性」と呼んでその関係は「暴れ馬」と「手綱」。強い意志・本能があってこそ、知性を豊かに開花させられ、また巧みな手綱さばきがなければ馬は暴走する。 -
Posted by ブクログ
ゲーテという人は文章が非常に美しい シンプルかつ 様々な 就職が入修飾るけれども ややこしくなく嫌味ったらしくなくとても綺麗だと思うんです
けれども これでイタリアを旅する紀行文となると、本当にすごいなと思います
博識で旅行の記録に石の種類とか地形の成り立ちを書き込むとか 植物の種類とかについても色々考えたい 知りたい みたいなことがいっぱい。
恋人が多かったりだとかすごい 老齢になってまで 求婚しただとか、ちょっとおおっていうイメージがありましたけれども これだけ 瑞々しい感性で精力的に動き回っていたら とても魅力的だったろうと思うわけで。
モテたんだろなーと。話を聞いていて引き込まれる感じがします。
当時の国際状況でスパイじゃないかって怪しまれたりとか それをどう乗り越えたかっていうところも結構面白い冒険譚みたいになっていて。しかも非常にそれがライトに書かれている。
ミケランジェロやティツィアーノのようなクラシカルな芸術作品を細かく観賞している表現も、おー、ゲーテが観たものをわたしたちも観てるのか、みたいな不思議な感動があります。
偉い人に食事に誘われたのにすっぽかしておいて怒られたとかっていうのも、なんかそこが 憎めない、 みんなそれで 虜になっていくんだなと思います。
ちょっと長かったなとは思いましたけど、それはゲーテの好奇心の結果であり、ゲーテという人の魅力を これだけ あの 見事に表現した出版物は貴重なんじゃないかと思いました。翻訳も、優れていると思います。長くなければ星4つ。長く読むのが苦手になったなー。ただ、長くてもイヤな感じではない。おしゃべり好きな友人が話が止まらなくて、口を挟む間がないしほかの人が喋れないんだけど、結局その人の話がおもしろくて聞いちゃう、みたいな印象です。
下巻を読むのはまたにします笑