谷口菜津子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
彼氏ラブなキャリアウーマンあいこちゃんと、夢を追いかける家事職人ともこちゃんが、同居を通してそれぞれの進路について考え、ご飯を食べて、自分だけの道を生きていこうとする物語。
今の私に凄く刺さる一冊。人との暮らし方にテンプレートの正解はなくて、それぞれの形があっていい。夫婦別姓でも、別居婚でも、友人とシェアハウスでも、当人が一番納得できる形であれば、それが正解なんだ。「普通の暮らし」なんてものに幻想を抱いているから、違和感があってもそれを模倣して、結局歪みが生まれて上手くいかなくなって、険悪な関係になったり別れたりしてしまう。上手く人と暮らすためには、対話することを諦めてはいけない。思い込んだり我慢したりするのではなく、私はこう思っていて、あなたはこう思うのなら、こうするのはどうだろう?と、折衷案を考えることができるのも、我々が原始人ではなく現代人だからだ。
同作者の『じゃあ、あんたが作ってみろよ(あんたが)』にも、人々の食と暮らしが描かれている。『今夜すきやきだよ』では、あいこちゃんが家事料理をしてくれるともこちゃんに対してきちんとリスペクトをしている一方で、『あんたが』では昭和男の勝男は料理を作ってくれている鮎美に対して「季節感がない、おかずが茶色すぎる」などとイチャモンをつけてくる。そこには「女なんだから料理するのは当たり前」というステレオタイプな価値観があり、料理にあれこれ文句を言う父の背中を見て育ってしまったバックボーンがその価値観を助長して、最終的に鮎美に捨てられてしまうような人間になってしまったのだ。勝男にとっての「普通の暮らし」には、生活をケアしてくれている鮎美に対してのリスペクトが欠如していた。『あんたが』では、鮎美と別れたことでその事実に気づいた勝男が、料理を通して自分の価値観を更新しようと奮闘する物語が描かれている。
あいこちゃんとともこちゃんが生活を共にして上手くいっている背景には、彼女らの間に恋愛感情がないこともあるのかもしれないな。リスペクトし合いながらウィン・ウィンの関係を築けるシェアハウス、正直羨ましい。 -
購入済み
女性の窮屈な気を代弁してくれる
私も主人公のようにブラジャーが窮屈で苦しくて大嫌いなのですが、それをテーマにした漫画を読める日が来るとは…と感動して即購入。本当はノーブラで過ごしたいのに社会に許されない不合理が伝わります。卒乳した今、まさにブラジャーごと乳を「お疲れ様でした」と労わりつつどこか別の場所に祀って、ノーブラ生活したいと思っている自分にドンピシャでした。つくづく女性の乳は、自分以外の誰かのために存在してるんだなあって思います。誰も書かない、特に男性からは1ミリのニーズもなさそうなテーマを選んで刊行まで行った作者と編集の方に敬意を表したいです。エロとして消費され続ける女性の乳を強調したアニメや広告に辟易してる自分にとって、女性目線で乳に思いを馳せることのできる、稀有な作品でした。40ページと短かったので、長編も読みたいです。
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自他様々な環境や情報によりかつて規定したりされたりしたものさしに則って生きる事が「幸せ」に繋がる……と、短絡的と言うか視野狭窄気味に生きてきたふたりが改めて「自分の幸せ」と向き合いながら「自分だけの(誰かと同じでも違っても良い)ものさし」を確認していく物語、なのかな。
環境も自分も良くも悪くも変わるんだから、ものさしだってその時々で微調整していけば良いんだよね。
他人の言葉や価値観でぶん殴られるように直接「自分(のものさし)」が上書き改変されていくのではなく、気付かぬうちに強固になってしまっていた「自分」を包み込んでいた何か(過去に想定した幸せへの道筋だったり、当たり前のように押し付けられた価値観だったり)の綻びが広がるきっかけが「それら」だっただけ、という描き方が心地良い。
不器用にじたばたと自分と向き合ったり自分の価値観や感情の輪郭を掴み直そうとするふたり(と、その周囲の人々)が好ましい。
自分を掴み直していく物語と言えば、「自分」を覆う「もやもや」とした汚れみたいなものを其々が(ゼロにはできないなりに)少しずつ拭って軽くしていくような「セクシー田中さん」もあるけど、「自分を守ってくれるはずの何か」が「自分の望む何か」とはかたちがズレているかもしれなくても「変わらない」選択をとる人の事も否定しきらないこの作品もまた角度が違って好きだな。 -
Posted by ブクログ
自分の幸せは、自分で探すしかない。そこに他人の価値観や基準が入り込むと、わけがわからなくなっていく。
前作『今夜すきやきだよ』に比べると、家事のなかでも掃除により重点が置かれているのだけど、掃除というのはまさに、いまの自分の状態をうつすものだと思う。肉体的にも精神的にも、ある程度余裕がないとできない。
丁寧な暮らし、というのを実践している人は、肉体的にも精神的にも健全で、満たされている人なんだろうなぁと思う。でも発想を逆転させて、万全じゃない自分でも、まずは掃除をするところから、良い状態の自分に近づけていくというのも大事かも。
部屋をキレイにできた! 凝った料理じゃなくても、キッチンでなにか料理した! とか、自分のための家事って、実はセルフケアにもつながっているのか。 -
Posted by ブクログ
勝男は変わったな。勝男が変わっただけに、変われない人達がより際立つ。
でもそれは男性だけじゃない。勿論、今までの歴史や社会慣習の影響で、男性の方に、価値観を変えていかなくちゃいけないことがより多いけど、男性にも男性の生きづらさがある。そのことに女性が関わっていることもあって、女性の側も価値観のアップデートが必要だなと改めて。
過去に何かの感想でも書いたけど、フェミニストを攻撃する男性の中には、男性の生きづらさ、苦しさを抱えていることを女性に向けてしまっている人もいて(それが本人が自覚的なのか無自覚なのかもまた別に問題としてはあるが)、それはやはり健全ではなくて、男性に対する思い込みや価値観を男性自身も女性もアップデートしなくてはいけないよなあと。それが結果的にお互いにとって良い方向に向いていけるのではないかと思う。
そう言う意味でも1巻で、うわぁと思った勝男の変化には希望を持てるし、こう言う人が増えると本当の意味で社会が変わっていくのかなあと。
まあでも現時点では木嶋のように古い価値観に固執していて変わろうとする男性を揶揄するだけの人も多いし、女性自身が親や社会から刷り込まれていた価値観から抜け出せない人も多いんだよな(鮎美もそう言う面もあるようだ) -
Posted by ブクログ
つくりおき料理のレシピを見るのは好きで、よくつくったりもするけれど、できたてすぐを食べてしまい、意外にも残らない……。
が、この本のレシピは、逆に「すぐには食べられない」。本当に、未来の自分に、つくり置くためのもの。
数日後の自分って、予想できそうでできないところもあって、急に「今日は、なにもつくる気にならない……買い物にも行きたくない……」みたいな時に、こういう料理があれば、元気を取り戻せそうだ。
ホームパーティーでも出せそうなオシャレなレシピが多く、材料の買い出しにもちょっと手間がかかるかもだけど、数日後の自分のために、いま頑張って仕込むというのは、前向きな気持ちになれて、なんか良い。