鹿島田真希のレビュー一覧
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超面白かった、個人的に。
近著だと来たれ、野球部や、少女のための秘密の聖書が好きだった人は間違いなく好きでしょう(あまりいないと思いますが苦笑)鹿島田さんファンならぜひぜひ。
電車や休憩時に会社で読むのはやめておいたほうがいい、笑えて笑えて仕方ないから。ついつい口元が緩んでしまう。
新人賞受賞し小説家デビューしたものの、二作目はボツばかりでなかなかうだつの上がらない主人公と、その周りのどこか壊れた人たち。クレイジーで自意識が高すぎる自称クリエイターな元恋人、美人なのにネジが何本か外れてる先輩、そしてその恋人。主人公は小説を書くための修行的な一環でBLの新人賞の下読みをする。その作品の数々と、 -
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ネタバレ初っ端からこれは当たりだと思いながら読み進めた。鹿島田さんにしか書けないだろう、奇想天外な展開。面白かった。イカれてる御伽噺のようで。
語り手の“わたし”が住む家には母親と血の繋がらない二の腕を触りたがる父親がいる。わたしの住む裏のアパートにはパンツ泥棒かもしれない気味の悪い浪人生のお兄さんがいて、わたしは母親に頼まれて家賃を取りにパンツ泥棒かもしれないお兄さんのもとに行く。そこでひょんなことをきっかけにお兄さんから旧約聖書について話を聞くことになるーーという物語の始まり。
血の繋がらない父とちょっと壊れている(どろけいをしている娘に破廉恥と言い捨てたり、かりんとう=犬の糞=破廉恥という考えな -
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演劇を観てるような錯覚に囚われる本だった。
「飽くことを知り、足ることを知る」、滑稽なまでに清い主人公•吉田青年。
不思議な魅了を持つ彼が色んな人と関わっていくお話、後半。
登場人物のキャラが割と極端なのに(自虐の人、外交的な人、妬む人、鈍感な人…)、不思議と誰にでも共感できた気がする。
非現実的で観念的で理屈っぽくて、吸い込まれる様に前後編読み切ってしまった。
多分好き嫌いが分かれそうな作品だけど、私は好きだ。
読むたびに新たな気付きがありそう。
ラストの、
「それは、単なる宛名書きではなく、吉田青年が愛してる人の、リストのようなものになった。
(中略)
愛してる人のリストで -
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ネタバレ異国の血が流れるナジャは、首席として音大入学当初から有名人だった。
環境にも恵まれていて、生まれながらの才能を持つ、まさに音楽に選ばれた天才のナジャは
いつだって音楽のことを考えられたし、自由奔放で、人の気持ちになんて無頓着だった。
ぼくは凡人で2浪の末の入学だから学費もアルバイトで稼ぐ日々で、音楽のことを考えるのはどうしても二の次になっていた。
だけどぼくは才能のあるナジャを心から応援していたし、傷ついてもなお、彼女に恋していた。
ゲイのルツ子とピアニスト志望のキムも交えて、
互いの成長とナジャとぼくの関係。
トンボは優しいなあ。凡人でありながら天才に嫉妬して自暴自棄になるわけでもな -
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読書開始日:2021年9月28日
読書終了日:2021年9月30日
所感
【冥土めぐり】
家族のかたちは様々だと小説を読んで初めてわかる。
自分は自分の家族で良かったと思えることが増えると同時に、現実は小説よりも奇なりといったもので、辛い過去として抱えて生きるものもたくさんいることがわかる。
本作はそんな拗れた家族と時を過ごした主人公の話。
母親と弟の浮世離れした人柄を痛々しい肌に描写されている。
母に関しては幼い頃の経験、弟に関しては母親をはじめとした親族からの伝承にそれぞれが縛られ、浸されている。
縛りは強固で、何を言っても、何を望んでも無駄になる。
もう一生考えが交わることが無いとわかる -
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ネタバレ新人小説家、見崎沙代子と壊れ屋たち。
口先だけのナルシスト北川という元恋人に振り回された出来事の数々。
自意識というもの皆無のツバサ先輩と、恋人の見た目と中身のギャップありまくりのクマちゃん。
編集者の洞察力抜群の金子さんと
少女漫画家でありながらも派遣で働く、精神ぶっとんでる氷川だいあ。
ボーイズラブ小説の選考読みするバイトで
支離滅裂のように感じたそれぞれの小説たちに
実は深い意味があったという衝撃。
壊れてるね、沙代子もみんなもw
完全に崩壊するすんぜんという、絶妙なバランスで
シュールで、狂気やエロさえも感じる。
「プライドのために、精神と肉体の欲求が離れてしまうのは、脅威で -
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表題作は簡単に言えば、アダルトチルドレンの治癒の話。主人公の感覚は分かるものが多かった。個人的に凄くハッとさせられたのは芸術作品を鑑賞してるときの感覚で、これは自分もまったく同じなので驚いた。同時に、客観的に見るとこれは芸術を味わう感性と真逆の思考回路だなと気づいた。自分の芸術を見る目がないことがすとんと納得できた瞬間でした。
最後のシーンは感動した。蝕んでいたものが根本からなくなると、日常が変わるんだなあと。旅行自体は単なるお祓いみたいなものだけど、人間にはこういうプロセスが必要なんだよなと思う。
さて、めでたく歪んだ家庭という足枷から心理的に脱出できたわけだけど、その実際のきっかけが難病と -
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ネタバレ近所のお兄さんの家に家賃を取りに行って、お菓子を食べながら聖書の話を聞いた子どもたち。わたしと、黒い靴下の少年。
血のつながらのないお父さんはわたしの二の腕を触りたがるし、
お母さんは少女のままでいやらしい目でわたしを見て接してくる。
黒い靴下の少年は殺してやると言って、わたしを間違ったものから守ってくれる。
万物の誕生からモーセ、預言者ダニエル、聖書を通じて現実の物事と向き合っていく正直者たち。
モーセのところが難しかった。
とてもわかりやすく、そして難しい。
正しいこと間違っていることを見極める力を身に付ける大切さ。
性的だけど、中学高校で読むといいかも)^o^( -
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近所のパンツ泥棒と噂されるお兄さんが(主に)聞かせてくれる旧約聖書の話と、ちょっと生々しい現実に置かれた主人公の少女の話が代わる代わる出てくる。
旧約聖書の人々や神様の話って、よくある教訓めいた話と違って、なんだかすっきりしない。まるで、少女の置かれたねちねち、ぬるぬるした現実世界みたい。そんな風に、言葉に表しきれない何かを読みながら感じていたのだけど、物語の最後で少女がまとめてくれました。
旧約聖書は本当の物語なんだ。
旧約の物語には、その「はっきり」がありません。物語に出会うたびに、ただ、ぞくぞく、ぬるぬるした気持ちになるのです。
でも、それはわたしが生きている世界にとても似ています。