鹿島田真希のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
超面白かった、個人的に。
近著だと来たれ、野球部や、少女のための秘密の聖書が好きだった人は間違いなく好きでしょう(あまりいないと思いますが苦笑)鹿島田さんファンならぜひぜひ。
電車や休憩時に会社で読むのはやめておいたほうがいい、笑えて笑えて仕方ないから。ついつい口元が緩んでしまう。
新人賞受賞し小説家デビューしたものの、二作目はボツばかりでなかなかうだつの上がらない主人公と、その周りのどこか壊れた人たち。クレイジーで自意識が高すぎる自称クリエイターな元恋人、美人なのにネジが何本か外れてる先輩、そしてその恋人。主人公は小説を書くための修行的な一環でBLの新人賞の下読みをする。その作品の数々と、それに対しての主人公のツッコミがもうたまらない。ほんと吹き出しそうになるので外で読むのはお勧めできません。
特にお気に入りは38頁の
ーーでも、足を「竹」とか「繊維」とかに頑張って例えていたのに、最後は「そそり立ついちもつを握ってしごいた」。ぶっちゃけすぎだよ。
ってところです苦笑
BLが全くダメなわたしでも楽しめたので、そういうのを毛嫌いしてる人にも読んでもらいたいですね。自我が崩壊してる人へ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初っ端からこれは当たりだと思いながら読み進めた。鹿島田さんにしか書けないだろう、奇想天外な展開。面白かった。イカれてる御伽噺のようで。
語り手の“わたし”が住む家には母親と血の繋がらない二の腕を触りたがる父親がいる。わたしの住む裏のアパートにはパンツ泥棒かもしれない気味の悪い浪人生のお兄さんがいて、わたしは母親に頼まれて家賃を取りにパンツ泥棒かもしれないお兄さんのもとに行く。そこでひょんなことをきっかけにお兄さんから旧約聖書について話を聞くことになるーーという物語の始まり。
血の繋がらない父とちょっと壊れている(どろけいをしている娘に破廉恥と言い捨てたり、かりんとう=犬の糞=破廉恥という考えな)母の不穏な、いやらしい始まりの気配があるたび、家賃を取りに行けと命じられ、次第にそれが楽しみになるわたし。パンツ泥棒かもしれないお兄さんはいつもお菓子を与えてくれ、旧約聖書の続きを読み聞かせ、ときにわたしの周囲での事件に準え話を進めていく。
そしてちょいちょい愉快な、シュールな展開を迎えるから面白い。
黒い靴下しか持っていない男のクラスメートに白い靴下が欲しいなら自分で買えばいいと指摘したことで、黒い靴下の男の子に「黒い靴下を履いているやつが黒い心を持っているとは限らない」とか言われ殺してやるとしつこく嫌がらせを受けたり笑、
わたしの見る夢の中。
お父さんとお母さんは裸でした。お父さんが、おちんちんをこすり始めます。すると、それはどんどん大きくなりらバットほどの大きさになりました。おちんちんがそのぐらい大きくなると、お父さんは消化器のホースみたいに、白い液体を放出しました。それがお母さんの乳房に当たると乳房がどんどん膨れあがってしまうのです。とか笑
ネタバレになりますが
ラストのパンツ泥棒の正体がお兄さんではもちろんなく、お父さんでもないところがちょうどよかったかな。
不気味さと少しのしょうもなさを真面目に描いた物語が好きな方は是非。 -
Posted by ブクログ
演劇を観てるような錯覚に囚われる本だった。
「飽くことを知り、足ることを知る」、滑稽なまでに清い主人公•吉田青年。
不思議な魅了を持つ彼が色んな人と関わっていくお話、後半。
登場人物のキャラが割と極端なのに(自虐の人、外交的な人、妬む人、鈍感な人…)、不思議と誰にでも共感できた気がする。
非現実的で観念的で理屈っぽくて、吸い込まれる様に前後編読み切ってしまった。
多分好き嫌いが分かれそうな作品だけど、私は好きだ。
読むたびに新たな気付きがありそう。
ラストの、
「それは、単なる宛名書きではなく、吉田青年が愛してる人の、リストのようなものになった。
(中略)
愛してる人のリストであると同時に、愛してほしいと思っている人のリストでもあったのだ」
は思わず感動してしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ異国の血が流れるナジャは、首席として音大入学当初から有名人だった。
環境にも恵まれていて、生まれながらの才能を持つ、まさに音楽に選ばれた天才のナジャは
いつだって音楽のことを考えられたし、自由奔放で、人の気持ちになんて無頓着だった。
ぼくは凡人で2浪の末の入学だから学費もアルバイトで稼ぐ日々で、音楽のことを考えるのはどうしても二の次になっていた。
だけどぼくは才能のあるナジャを心から応援していたし、傷ついてもなお、彼女に恋していた。
ゲイのルツ子とピアニスト志望のキムも交えて、
互いの成長とナジャとぼくの関係。
トンボは優しいなあ。凡人でありながら天才に嫉妬して自暴自棄になるわけでもなく彼女を嫌悪するわけでもなく、彼女に惹かれていく様子。
あたたかい。ルツ子もキムもいいキャラ。 -
Posted by ブクログ
読書開始日:2021年9月28日
読書終了日:2021年9月30日
所感
【冥土めぐり】
家族のかたちは様々だと小説を読んで初めてわかる。
自分は自分の家族で良かったと思えることが増えると同時に、現実は小説よりも奇なりといったもので、辛い過去として抱えて生きるものもたくさんいることがわかる。
本作はそんな拗れた家族と時を過ごした主人公の話。
母親と弟の浮世離れした人柄を痛々しい肌に描写されている。
母に関しては幼い頃の経験、弟に関しては母親をはじめとした親族からの伝承にそれぞれが縛られ、浸されている。
縛りは強固で、何を言っても、何を望んでも無駄になる。
もう一生考えが交わることが無いとわかる瞬間がある。とても怖い瞬間。
恋愛の熱に侵され、異常が日常となってしまった人に同様の恐怖を自分は感じたことがある。
主人公は、縛られた母親と弟に幼い頃から嫌悪、違和を感じるとともに、母親と弟から不当な扱いを受ける。
母親の特性である「全ての事柄に対し被害者面をし、最終的にわあわあ泣くという幼稚な表現を行う」に対し、自分もかなりの気持ち悪さを覚える。
わあわあという表現しか用いないほど幼さから脱却できない年老いた女への嫌悪と、わあわあと言う表現が通用した時代があり今でもこの表現を行えば誰かがタダで、何回も助けてくれると思っている救いようの無さへの嫌悪感を抱く。
そんな主人公へ一石を投じたのが、太一だ。
金や善意全ての飲み込んで行く母親や弟を対極に、悪意を全て飲み込み何事もなかったかのように消却する太一。運や人望に完全に見捨てられた母親や弟を対極に、不思議な運と人望で朗らかに生きる太一。
色々と気の利かない太一であるが、徐々に主人公を癒やしていった。
太一との旅行で少しずつ、過去を過去と認識できた主人公は、旅行最後の太一の鼻かみで完全に過去を捨てされた。
太一は見抜いていたのかもしれない。全て。
そう考えるとかなりの色男だ。
素敵なラスト
〜解説を読んで〜
美術館で意味のわからない絵をありのまま受けとめられるようになると同時に、虚飾に満ちた実母の自慢話が一枚の肖像画に収まっていくように感じる。芸術に触れて、気持ちを出し入れできる瞬間。辛(つら)い記憶を乗り越えるチャンス
と表現しており、薄々感じていたことを言語化するとこんな感じかと思えてよかむた。
【99の接吻】
感情移入が難しい作品だった。
雰囲気は作中に出てくる単語にとらわれているのかもしれないが、なまめかしい感じが常にする。
秘密の花園、女の巣をのぞき見しているような感覚。
菜菜子は恐らくアセクシュアル。
そしてその行き場の無い愛やら恋やらは身近な姉達に注がれた。
菜菜子は人の愛し方を知っていると思う。
対象の喜怒哀楽をすべて官能的にとらえられる。
愛でられる。
対象の詳細も分析できる。
そして葉子のようになるとわかる。
一見冷静で大人な雰囲気を持つように見えるが「姉妹で1番、貞潔と放埒の間で揺れる」葉子のように。
下町のイメージや、下卑な町と下町の違いなど興味を持つ単語が多くあった。
谷根千。ぜひ行きたい。
そしてスノップ気味の自分へ警告を。
意図を持った言動や行動は、その真逆も抑えるべきだと改めて心に刻む。
冥土めぐり
ただ太一は女とか妻とか、そういう種類の人間の喜ばせ方を知らないのだ
理不尽に嫌われ、理不尽に愛される
ホテルと母の暴落
母親が持っていたあらゆる快楽の喪失
その渇きは何を飲んでも癒されない=自分に詐欺してるから
不協和音のような支離滅裂な妄想が奏でられる
本当に辛いのは、もうとっくに希望も未来もないのに、そのことに気づかない人たちと長い時間を過ごす
魔がさしたのだ
購めた
性的嫌がらせを受けたパーティ
闇すらも漂白した城だ
太一の世界は不公平を飲み込んでしまう
悪運、母と違う自分
見抜かれていたようだ
99の接吻
近親相姦みたいな恋愛
体も飽きるほど与えて
女になるという嫌悪感を巧みに拭う
肉まんのような白い乳房
そう言う姉さんのしかけた罠、ひとつひとつ
あなたのその周到さを愛でていたい
スノップ
快楽
谷根千。ほんとうのわたしたちの姿は、内気で人見知り
下町と下卑た町の違いのわからない男よ
葉子姉さんを癒やして。あなたのように、かよわい女性ができるのは、きっとそれくらいのことだわ
何をしてもいいらもうそんな無邪気な時期をわたしは終わろうとしているのかもしれない
変な男には変な男の魅力があり
神聖な儀式を簡単にしてしまった
貞潔と放埒の顔を持ち合わせた私たち姉妹そのもの -
Posted by ブクログ
ネタバレ新人小説家、見崎沙代子と壊れ屋たち。
口先だけのナルシスト北川という元恋人に振り回された出来事の数々。
自意識というもの皆無のツバサ先輩と、恋人の見た目と中身のギャップありまくりのクマちゃん。
編集者の洞察力抜群の金子さんと
少女漫画家でありながらも派遣で働く、精神ぶっとんでる氷川だいあ。
ボーイズラブ小説の選考読みするバイトで
支離滅裂のように感じたそれぞれの小説たちに
実は深い意味があったという衝撃。
壊れてるね、沙代子もみんなもw
完全に崩壊するすんぜんという、絶妙なバランスで
シュールで、狂気やエロさえも感じる。
「プライドのために、精神と肉体の欲求が離れてしまうのは、脅威です! 人類は自身の真の欲求を理解していないと生命の危機に曝されて、絶滅してしまいます!」
自分の本当の欲求をわかっていない人間って
結構いると思うよね。現代。)^o^( -
Posted by ブクログ
表題作は簡単に言えば、アダルトチルドレンの治癒の話。主人公の感覚は分かるものが多かった。個人的に凄くハッとさせられたのは芸術作品を鑑賞してるときの感覚で、これは自分もまったく同じなので驚いた。同時に、客観的に見るとこれは芸術を味わう感性と真逆の思考回路だなと気づいた。自分の芸術を見る目がないことがすとんと納得できた瞬間でした。
最後のシーンは感動した。蝕んでいたものが根本からなくなると、日常が変わるんだなあと。旅行自体は単なるお祓いみたいなものだけど、人間にはこういうプロセスが必要なんだよなと思う。
さて、めでたく歪んだ家庭という足枷から心理的に脱出できたわけだけど、その実際のきっかけが難病と頼りない夫というのが面白い。不幸を排斥したのは別の不幸だったという。ある意味奇跡なんだけどまったく奇跡感がなくて、読後もなんだがそわそわする。不思議な感覚だ。
不思議な感覚がするのは『99の接吻』も同じで、読んでいて終始どこか不安定な感覚を覚える。一見安定してるんだけど、いびつな重ね方をした積み木の上にじっとしているような感じ。そして独特なのが、結末の後も不安定感が残ることだと思う。始めの不安定点から確かに良い方に向かうんだけど、そこはまた別の不安定点であるようなしこりが残る。うまく言えないけれど、この作者にはいままで読んだものと違う異質なものを感じたので他の作品も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ近所のお兄さんの家に家賃を取りに行って、お菓子を食べながら聖書の話を聞いた子どもたち。わたしと、黒い靴下の少年。
血のつながらのないお父さんはわたしの二の腕を触りたがるし、
お母さんは少女のままでいやらしい目でわたしを見て接してくる。
黒い靴下の少年は殺してやると言って、わたしを間違ったものから守ってくれる。
万物の誕生からモーセ、預言者ダニエル、聖書を通じて現実の物事と向き合っていく正直者たち。
モーセのところが難しかった。
とてもわかりやすく、そして難しい。
正しいこと間違っていることを見極める力を身に付ける大切さ。
性的だけど、中学高校で読むといいかも)^o^(