あらすじ
きみはぼんやりしているぼくを押し倒して唇を寄せてくる。このセックスはスケルツォみたいだな、とぼくは思う──スラブ系の血をひく天才美少女、その才能を誰よりも理解し、自由を受け入れる優しい青年。作曲家志望の二人と個性豊かな友人たちの恋と友情。音楽の秘密を探し、新しい音楽を作るのに必要なものは何かを問う表題作に最新短編を併録。
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Posted by ブクログ
異国の血が流れるナジャは、首席として音大入学当初から有名人だった。
環境にも恵まれていて、生まれながらの才能を持つ、まさに音楽に選ばれた天才のナジャは
いつだって音楽のことを考えられたし、自由奔放で、人の気持ちになんて無頓着だった。
ぼくは凡人で2浪の末の入学だから学費もアルバイトで稼ぐ日々で、音楽のことを考えるのはどうしても二の次になっていた。
だけどぼくは才能のあるナジャを心から応援していたし、傷ついてもなお、彼女に恋していた。
ゲイのルツ子とピアニスト志望のキムも交えて、
互いの成長とナジャとぼくの関係。
トンボは優しいなあ。凡人でありながら天才に嫉妬して自暴自棄になるわけでもなく彼女を嫌悪するわけでもなく、彼女に惹かれていく様子。
あたたかい。ルツ子もキムもいいキャラ。
Posted by ブクログ
「ハルモニア」環境にも恵まれ、音楽の神様にも選ばれた美少女ナジャ。ナジャに恋した主人公トンボ。ナジャは特別いい女とも思えないんだけど、ナジャと音楽に恋するトンボがすごく素敵だった。音楽のことだけ考えて音楽に没頭したい。でも音楽を聴くのは聴衆。生活を知らずして聴衆のための音楽を作れるのか?でも生活に追われていたら音楽は満足にできない、みたいな、音楽だけじゃなくて表現者として生きていきたい人間共通の悩みみたいなものが描かれており、それがありがちな僻みっぽさをまとっていないところが良い。
「砂糖菓子哀歌」は二度目。鹿島田さんの艶っぽい文体で、ネジが一本飛んだような女を書くと異様な凄味が出る。
Posted by ブクログ
初読みの作家さん。音大を舞台に、2浪してようやく入った「トンボ」と彼を取り巻く学友達(母親がロシア人でハーフの天才・ナジャ、ゲイであることを公言するルツ子、韓国の大学を卒業後、日本に留学してきたキム)の群像劇。トンボの一人称で語られるが、それぞれのキャラクターが立っていてなかなか楽しかった。大学生活ってこんな感じなんだなと思えた。音楽理論やら音楽記号がやたら出てきて、明確に意味はわからなかったけれどおもしろい。自分とナジャの関係を第1主題、第2主題、コーダ……なんて分析するなんてさすが音大生だ。
Posted by ブクログ
ここまで一貫して万人受けしないものを書き続ける作家さんも珍しいな、と思います。相変わらずの強さ。
表題作のハルモニアはとてつもなく異なっている音大生の男女の愛とやらを音に乗せ、音楽として描いているものすごく入りづらくて読みづらい気がするのに不思議とテンポ良く物語が運ばれていきます。
砂糖菓子哀歌もまた独特で、ほんと哀歌です。リズミカルなの。言葉の運び方が。甘いのか苦いのか固いのか。中身を理解するよりも先にすいすいと読み進めてしまう不思議な本。
もはや中毒。川上未映子的なね、けど川上未映子さんよりももっと独特ださらに万人受けしない、好きだなー。