太田和彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりにお勉強
わしが呑み歩くきっかけの1つに太田和彦さんの『ニッポン居酒屋放浪記』を読んだ事によって、その本に載ってある銘居酒屋が出張先で有れば、ドキドキしながら飛び込んだもんだ
正に良い居酒屋の歴史、雰囲気、店主、女将、店員、料理、日本酒と全てを引っ括めて素晴らしい居酒屋の数々を教わってしまっちゃったから、お後が悪い
そこからは1人で良さそうな居酒屋へ飛び込みしたり、SNS繋がりのみ呑兵衛さんをナンパして、その人の地元の居酒屋へ連れて行って貰ったりして、日本酒好きな人々、良い居酒屋、楽しい思い出(うる覚えw)と、人とお酒に大変恵まれた呑兵衛ライフを送らさせて頂いとります
ホント呑み友さんに恵まれてるなぁって、しみじみ思いながら読みました。
本の内容は1人呑みの美学がメインじゃけど
1人でしっぽり呑むのもええけど、わしはみんなでワチャワチャ楽しく呑むのが大好きじゃな
2024年27冊目 -
Posted by ブクログ
居酒屋の紹介と言えば、肴と酒。居酒屋評論の大家 太田和彦氏ともなると、そこにたどり着くまでの『イントロ』から読ませる。
例えば、こんな具合に…
よしずの天井、黒玉砂利洗い出しの床。ごぶごぶに曲がる天然木の柱はてらてらと艶光りし、銘木でなく節のあるカウンターはもはや少し傾き、天然木を残した卓席もいい。往年の艶冶な小料理屋の風を生々しく残す店内で、酒を飲む喜びに浸れるのがここの最大の魅力だ。
居酒屋の建築意匠の見立てを経て、ようやく生ホタルイカをアテに菊正宗の燗を口に含むとなる。
長年全国の居酒屋にて、ひとり酒を愉しまれている御仁だけに、居酒屋の佇まいを如実に表す床・梁・カウンターに宿る優美な色気を瞬時に嗅ぎとってしまうんでしょうな。建物探訪の渡辺篤と同じ匂いを感じニンマリしてしまう。
この通過儀礼よろしくの一連の審美鑑定の描写って、中々核心に触れようとせず、周辺から愛でる様は愛撫しているようで官能的でさえある。
さて本書。
その太田氏をして『東京ほど豊かに個性ある居酒屋が集まっているところはない』と言わしめる通り、TOKYOには江戸や明治の往事をしのばせる老舗、各地の蔵から取り寄せた銘酒居酒屋、本格焼酎やワインも揃う新進気鋭店、オシャレな角打ちまで、多彩な居酒屋が群雄割拠しており圧巻かつ絶景。
そこで、太田氏は呑兵衛垂涎の東京の居酒屋壮観図を〈東京、今夜の居酒屋〉〈あの店の、この一品〉〈たまには夫婦で〉〈荷風な酒場をさがして〉の4章立てで、令和版『東京いい店いい肴』を綴る。
いずれもそこに共通しているのは『店内に流れる時間』。肴をつまみ、ほっこり一杯、じんわりニ杯、にっこり三杯…と次第にゴキゲン度を増し、盃を干していく。胃が落ち着き、陶然となる頃には、初めての店にも馴染みはじめ、ほどけていってることを自覚し、酩酊度が増していく。
酒飲みなら、この感じは今流行り『サウナの整う』より、はるかにそうだよなぁ…って実感するんでは。
先日、金沢へ旅した際に立ち寄った銘酒居酒屋で聞いた『こちらでは30代の人たちが一番日本酒飲まれます』と実に頼もしい言葉を聞いた。こと、お酒に関しては国粋主義者なんで、日本酒が身近な存在であって羨ましい。灘の酒所があるのに、日本酒は悪酔いする、足を取られるとか、酒には罪はなく、単なる飲み方に問題があるだけなのに…。近くて遠い甲子園みたいな存在だ。
菜種梅雨から花冷えの時期はぬる燗が実に旨い。冷えた身体が温もって…と書きながら、今年のお花見はワインはやめて、日本酒にしようと決めた。 -
Posted by ブクログ
まえがきに、表題に込めた意図をしたためている。
齢70を過ぎた。仕事、家族、自分の目標等、おおよそ形になった。これから我が人生に残された日々に求めるのは『心の安泰』。その安泰を保つには何かしらの『指標』が必要。その視線に先にあったのは『豆腐』。豆腐はそれ自体でも美味い。鍋には欠かせず、最初は清らかな姿、最後はいろんな出汁を吸って、色を纏い一番美味しい姿に変わる。
それって人間の営みそのものではないか-。『肉はいらないから、残ったその豆腐をくれ!』という人もいる。脇役な豆腐であるが唯一主役を張るのが『湯豆腐』。昆布を敷いた鍋に豆腐を沈め、ことこと煮るだけ。単純ではあるが味は奥深く、食べ飽きない。70歳、これからは湯豆腐だ。
一茶は蛙に、ノムさんは月見草に、市井の人は根性大根に自身の生きる様をなぞらえたり、奮起を促す対象物としてながめる。それは古人がイワシの頭を信心することと同根かも。
さて、本書。
著者も齢74。表題が物語るように著者もいよいよ
『老境』に至り、この手の随筆なら定番の『これまでの来し方』、日々の暮らしでの愉しみ、社会に向けては忌憚の無い意見を開陳、シニア男性には『自立』『ひとり遊び』の稿で『独酌作法』を伝授し、自分を肯定する場所として居酒屋での一人飲みは最適であり、男たるものバーの止まり木でカクテルを飲まないでどうすると扇る…、いつもの居酒屋評論ではない多面的エッセイとなっている。
この中で、興味深く読んだのはシニア男性に向けて『妻離れ』の提言。白洲次郎の夫婦円満の秘訣『できるだけ一緒にいないこと』に倣い、著者は安アパートで良いから自宅近所に自分のアジトを作れ、妻と旅に出ても日中は別行動、夜は居酒屋で一日の行動を報告し合うぐらいが良い。リタイアしたのだから、妻に世話を焼かしてならない。現に著者は自宅から徒歩15分程の場所に職場を持ち、朝9時半〜夜9時まで過ごす。昼夜の食事は自炊。自宅で夫婦で食事するのは年に10回程度。そう、ほとんど別居状態。それが太田家の円満の秘訣と語る。
とは言え、著者の場合、居酒屋評論家の第一人者として執筆依頼も多く、年金とは別の収入がある。
老齢になっても、お座敷(仕事)に声がかかるということは社会との接点があり、適度な緊張感が老化の抑止となる。
結論として、齢70を超えて健やかに生きていくには…
①自身の趣味と飲み代を支える程度の一定の稼ぎ
②身の回りのことは自分でこなす
③ひとり時間を楽しめる趣味と空間
なんだかんだと言っても、結局先立つものの確保に行き着く。仕事を通じて社会との接点を持つことは健康維持にもつながり、趣味や交友範囲が広く行動力のある妻に向ける眼差しも穏やかになり、それは夫婦円満に結びつく。
ここまで書いて頭をよぎるのは『衣食足りて礼節を知る』の諺。繰り返すが、心がけではどうにもならない。肝腎要は『生活の充実』。これが余生をゴキゲンに過ごすことになるってこと。
一気読みの感想が『人はパンのみにて生きるにあらず』の教えに背中を向けるような思いを抱いた一冊。