【感想・ネタバレ】人生を肴に ほろ酔い百話のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年09月16日

居酒屋作家・太田和彦の書き下ろし酒飲み話。
近年は家飲みを極める居酒屋作家の、人生終盤に差し掛かった酒の肴は「人生を振り返ること」。
酒のつまみになる100話を収録。

居酒屋論に限らない身辺雑記だが、読んでいて心地よい。

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Posted by ブクログ 2023年10月08日

先日、積読本棚から一掴みした本の中から、ウクライナ関係本を数冊読んだ。

抱いた思い…日本人自らが戦争を仕掛けることは無いが、『はたして巻き込まれた場合にどう対処するのか?』。ウクライナを例に取っても、合理的理由がなくても戦争は起こる。とりわけシビリアンコントロールが存在しない国においては。話せばわ...続きを読むかるなんてことはあり得ず、チンピラのインネンよろしくもっともらしく仕立て上げた理由(大義)で容易く戦端は開かれる。

前置きが暗澹としてしまった。僕自身も茫漠とした思いに苛まれる中、はたして、和らげてくれる口直し本はないかと探してたところに、太田和彦さんの新刊を見つける。それも書き下ろし。

さ〜て、本書。
日頃は各地の居酒屋巡りを主戦場としている太田さんも長引くコロナ禍に手を焼き、家飲みに向かわざるを得ず本書は居酒屋巡りを横に置き、日常のあれこれを綴る。

太田さんの興味・関心事の裾野は広い。旧い邦画に昭和歌謡に演劇にと…時間が経つのを忘れて『ひとり遊び』に熱中されている。

芸は身を助けるじゃないけど、『趣味と好奇心と健康はシニア・シルバーライフを豊かにする』。仕事一筋の定年退職者を揶揄したフレーズとして、かつて話題を呼んだ『濡れ落ち葉亭主』がある。趣味はなく、時間はあっても現役気分抜けきらずで、家事ひとつしようとせず、妻が外出するとなれば『ワシも行く!』と言って、妻の後をついて行くというアレ。

それに照らせば、太田さんは反濡れ落ち葉亭主。齢77になっても活躍の場を持ち、平日は朝は9時半〜晩の9時まで仕事場で過ごし帰宅。風呂に浸かり、それから毎夜ひとり静かに、テレビ・ラジオ、音楽も流さず新聞にも目をくれず無念無想で酒を愉しむ。

本書はそんな日常を縦横に語る。例えば、ファッションでは『バウアー好き』を語る。英国のカントリーウェアのバウアー。お気に入りのコートは10着も所有されてるとか。僕も愛用しているが、無骨で堅牢なコートは見ようによっては、作業服に見えなくもない。革ジャン同様『着こなれ』感が求められる服。ゆえに、シニア・シルバー世代が着用してると、『ヤルなぁ、あのオヤジ!』って思ってしまう。かく言う僕も紛れもないオヤジだけど(苦笑)

方や、我が国の政治のスカタンぶりに悲憤慷慨。支持政党は立憲民主党であることを明かし、ついでに、その立憲民主党に『支持率向上案』を献策。

毎月新聞に意見広告として、政策を訴求する地道な広報活動をすべし。若い人を相手にする必要はない。新聞を毎日読む大人に対象を絞り、時間的余裕がある日曜版に掲載。ただし、赤旗の様な教条的紙面はNG。ゆえに、立憲君主党の支持の識者や文化人にも寄稿いただく。その掲載紙は別刷にし、同日街頭配布。大事なのは、紙面が真面目に作られているかどうかであり、読もうと思わせるデザイン・レイアウトであると。何なら私がやってもいいとまで語り、枝野・長妻・小沢三氏に呼びかけて終わる。

意気軒昂そのもの。献策の良否は問題ではなく、一般にかつては反体制の思考も、組織で家庭で揉まれる中で保守的思考あるいは無関心に傾いていく中で青臭さ・書生論が眩しい。〈私見ながら、是々非々なんて聞こえのいい事言ってた日本維新も、ミニ自民プンプンだし。〉

読み了えて真っ先に思ったのは、青春時代の話も綴られてはいるが、いずれも懐古話に向かわず、視線の向かう先は、前を見て、現在進行形の『今の自分』を語っているってこと。

77歳にして、『オレらの頃は…』っていうトーンが一切ないのには驚き、還暦を迎えたばかりだけに、〈おっさん臭さをいかにして薄らいでいくか〉という問いに対し、素直に見習わなきゃ!って思えた一冊。

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