田口ランディのレビュー一覧
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コンセントを読んで気になる著者のひとりになっていた。生きにくい時代はいつの時代も昔から生きにくくて。だからこそ自分を。そういうことをちゃんと見てきた人だと思って気にかけていた。K先生の話がいい。K先生はシリアスな映画を生徒たちに見せる。生徒たちの中には「映画を楽しめた頃にもどりたい」「知りたくないことを知った。苦しい」と感想を漏らす。K先生は「でもいいんです。ボクは若い時にはちゃんと絶望しなければ世の中のことを理解できないと思っています。だから生徒に思想によって谷に突き落とすんです。」発言コワイ。でも素晴らしい。本当のことだと思う。世の中のことを理解するまでには多少時間がかかっちゃう。でも。一
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Posted by ブクログ
田口ランディさんの小説は久しぶりに読んだけれど、シャーマンだとか幽体離脱だとかのスピリチュアル要素は変わらずで(とは言え10年以上前の小説ではあるのだけど)とても読み手を選ぶと感じるのが正直なところ。
私はそういうのは嫌いではないから読むのだけど、この作品は精神世界的な要素がとりわけ強めで、読み終えたときには程よくぐったりしていた。
ドレミと始まって、シは有限の極み。そしてその上のドは神の世界。上のドの世界には、ほんの一部の人間しか到り着けない。
物語の基本にあるのは上記のようなもので、主人公のマホは、行方不明になった大事な友人であるミツコを探してバリに向かい、そこでたくさんの不思議な体験を -
Posted by ブクログ
これまでの作品でもそうだが、作者も明確な答えを出すというより、迷いの中で書いたんじゃないかなと思った。東日本震災の復興も、福島の原発事故の未だに終わっていない。その中でさまざまな迷いを抱きながら今日まで人生を歩んできた人々が登場する。明確な答えは見つからないまま、時間は進んでいく。世の中は矛盾に満ちている。それぞれが持つこれでいいんじゃないかな、こうなんじゃないにかなという自分なりの答え、妥協点を信じながら、疑いながら、受け入れている。他人が何と言おうと本人が決めること。人と人のゾーンというものも存在する。そこを尊敬の念を持って跨がせていただいたとき、分かり合える小さな小さな一歩となるのかなと
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Posted by ブクログ
音楽や文学に関して優れた感受性を持ち、様々な分野で秀でた才能を持ちながら、構成力に欠け、子供の頃は格好のいじめの対象となってしまう。ようやく社会人になって就職するも長続きしない。家を出ては仕事を辞め、舞い戻るを繰り返す。ちょっとした挫折が無気力を招き仕事にも就けなくさせる。ついには雨戸を締め切り自室に閉じこもり、家庭内暴力を繰り返す昼夜逆転の生活が始まることに。刺激の少ない単調な生活は、脳に影響を及ぼし正常な判断力を失わせていく。脳神経は一つの回路だけが太く強くなり、あらゆる思考は親が悪いに結びついていく。心の底にある母親に愛されたいという強い願望は暴力としてしか表れず、一人苦しむ。歪んだ思い