山下肇のレビュー一覧
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ゲーテとの対話(上)を読み終わってから、半年以上が経ってしまった。
文章を読むことも、咀嚼して理解することも、時間がかかるけれど、時間をかけ、何度も読まなければ、到底理解できない。その上、何度読めば、どのような経験を積めば理解できるのかもわからない程、かなり高次な著書である、、ということは理解できる。
続けて(下)を読み、再度(上)から読んでいき、どのように理解や感じ方の変化があるのか楽しみ。
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(前略)
もともと人間は小さなことにしか向いていない。そしてただ、自分でよく知っているものを理解し、喜んでいるにすぎないのである。すぐれた有識者は絵を理解することができ、いろ -
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ネタバレ長い一文によって、過剰なまでに克明に、細部も漏らさず綴られる言葉は秀逸だった。異常な状況が、どこまでも冷静に理知的に語られる。
本人の意志とは無関係に、それまでの自分とは違うものに変わってしまったら……。グレゴールはそれまで一家の大黒柱として家族を支えてきたのに、そのおかげで家族は働かずに楽な生活ができていたのに、状況は変わり、結局グレゴールなど始めから存在していなかったかのように終幕する。グレゴールの人生とは一体何だったのか?
本当の意味で人々が理解し合うことなど無いし、愛情というものも幻想にすぎない。グレゴールの人生に、その頑張りに、意味など無かったし、人間一人が突然いなくなっても、不都合 -
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ドイツ語題名Gespreche mit Goethe in den letzten Jarens Seines Lebensのとおり、生のゲーテと親交があったエッカーマンによる、ゲーテ最後の9年のなかで交わされた対話の集大成。対話本といってもそのほとんどがゲーテの言葉から成り、ゲーテという人物の生き方や思想が伺える。
ゲーテは『ファウスト』を最初に読み、そこで氏をもっと知りたいと思ってこの本を購入。読みながらまるでゲーテ自身が自分に直接語りかけているような気分になる。
個人的に旅するときの座右の銘として置いている「誰でも旅行をするについては、何を見るべきか、何が自分に大切か、を知っていなけ -
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カフカ 「変身」
2回目読んだ時にやっと物語のあらすじが分かった。
朝起きたら毒虫になったグレゴール。今までは家族を養う大黒柱的な存在だったが虫になったことで立場は一転、みんなの邪魔元に成り下がってしまう。
そんなグレゴールはかつて、妹を音楽学校に進学させたいという夢を持っていた。
そんな思いやりに溢れた優しい兄なのだが、自身の姿が毒虫になったことで、家族からぞんざいに扱われ、自尊心を失っていく様が痛ましい。
最初はグレゴールを献身的に世話していた妹でさえ、ご飯を足で蹴り与えるなど次第に愛がなくなっていく。
何か相手にしてあげたいこと、優しさに溢れた思いやりを持っていたとしても、自分の立場や -
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カフカの断食芸人を文字面は知っていたが、改めて読んだ。断食という行為の無常さ。腹は減るのに、何かを失って、何かを得ることのアイロニー、そして何かを失うことによって得られる快感。ただそれも度がすぎると、何かを失いすぎると周りの人間は見ても目もくれないと言う。不思議な矛盾とでもゆうか、断食と言う、何か失うと言う行為。同時に自己の限界を試す自己検査の行為。またまたそれのどちらでもあるかそのどちらでもないか話を読むに進めると、主人公の断食芸人はやはり誰かから注目を集めたくて断食をやっている。ただその断食にもプライドがある。誰かが自分を見ていなかった時でも断食を続け、断食を軽視する人間に対して常に懐柔さ
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ネタバレ変身と断食芸人の二篇。初めて読んだ。
普段は最近出た本しか読まないが、薄くてするする読めた。
二篇の中でも断食芸人の方が読みやすかった。
主人公はすごいことをしているんだぞ!という気持ちなのか、そのものにハマっているのか。熱中する気持ちには共感できたが病的。
だからこそ、読んでいて面白みがあった。
変身はただただ状況に混乱した。主人公の冷静さが逆にこちらを混乱させるように思う。
献身的に家族に尽くしたグレゴールの報われなさが人生って感じ。
お金をこっそり貯めて妹に音楽学校に通わせようとしていたところて毒虫になって、妹の演奏を聞きに良い妄想をしながら部屋を出たらヘイトをくらう展開のとんでもな -
Posted by ブクログ
ネタバレ不条理文学というのを初めて読んでみました。
どちらもすごく面白かった。
毒虫:
起きたらばかでかい毒虫になってるの、普通はなんで!?ってなりそうなところですが、主人公は特に疑問も無しに受け入れてるの面白い。
家族も主人公が毒虫になったことを受け入れていてすごい(笑)
私なら主人公が毒虫に食べられたのかなと思って退治してしまいそう。
家族のために働いてきたのに、変身して毒虫になってから、気を遣われ、どんどん扱いが酷くなっていくの可哀想すぎる...でも、毒虫と共に住む家族の立場になると、仕方の無い扱いだよなあとも思います。
断食芸人:
かなり短かったけど面白い。
断食芸人ってほんとにいたっけ? -
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昔読んだときは思わなかったけれど、カフカさんの話って太宰治に通じるものがある。
昔は心理学的考察が云々なんて身構えて読んだ『変身』も実はブラック・ユーモアなお話だったんだね。
ここに収録されていた『変身』のザムザさんも『断食芸人』の芸人さんも最期は自分の死を受け入れている。
しかし、その受容は他者である読者からすると「それでいいの?」と感じるもので、その感情から読者は自分が亡くなるときのことを考える。
結局は納得して死を迎えられることは他人がどう思おうと幸せなことなのでは…って気がする。
上を見過ぎてもキリがないし。
2編とも奥深い話だな…と少し大人になった今は思いました。
訳も良かったと