河野純治のレビュー一覧

  • パレスチナ実験場 世界に輸出されるイスラエルの占領技術

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    パレスチナ実験場
    アントニー・ローウェンスティン
    独立系ジャーナリスト。
    ユダヤ系オーストラリア人&ドイツ人
    曽祖父母をホローコーストで失い、祖父母はナチスから逃れてオーストラリアに。リベラルなシオニストの家庭で育つ。
    舩田クラーセンさやか
    本書の日本での出版に尽力。
    アフリカ研究者。元東京外大准教授など。

    ・舩田さんの巻末解説で、イスラエルがパレスチナ人に対して行なった実験で試された武器の売り込みが取り上げられている。
    ・武器について
    政府の方針に沿い伊藤忠と日本エアクラフトがイスラエル企業と武器開発の覚書を結び、市民の抗議、書名、ボイコットなどの運動で撤回させたこと
    イスラエル製ドローンの入札を止めたこと。
    防衛省が攻撃用ドローンを購入したことが判明したこと(経緯は?)
    ファナック社とエルビット社が武器製造ライン上の産業用ロボットを提供したこと
    ・情報技術について
    警察や企業がサイバー監視技術の取引や連携を進めていること
        ⋯サン電子とセレブライト(Cellebrite) 
    ・年金積立金を投資していること
    など。
    ・日本は武器取引によりイスラエルのジェノサイドに加担し、この道筋を経済成長と呼ぶ「落ちぶれた」姿を晒している。
     
    エスノナショナリズム
    ひとことで言うと
    民族にもとづく政治的な自己主張

    パレスチナも当てはまる。 ただし、イスラエルは国家を持つ側のエスノナショナリズム、パレスチナは民族自決を求める側のエスノナショナリズム

    日本のナショナリズムは、
    日本という国家への帰属意識と、
    日本人という文化的、歴史的まとまりへの一体感が結びついたものです。
    そのため、純粋な市民的ナショナリズムでもなく、純粋なエスノナショナリズムでもないと整理できます。

    本論へ
    第1章から7章まで
    とにかく世界の誰にでも武器を売り込むイスラエルの姿が実例列挙で取り上げられている。一番の客は独裁者や独裁国家である。提供する武器を通じて悪辣非道な世界中の行いに関与し、人々を殺している。欲しがるものには誰であれ武器を売り、平和の芽をつみ、イスラエル式の占領をも世界に売り込む。
    戦争や紛争が続くほど儲かるという考えは、彼ら自身がパレスチナ人を相手に実証してきている。
    イスラエルはソーシャルメディアを武器として巧みに使っている。ドローンを攻撃用に使うだけでなく、パレスチナ民間人の監視にも使う。
    防衛製品の多くを支える原動力は8200部隊だ。南部のネゲブ砂漠の基地で西岸地区やガザのパレスチナ人と世界中の同盟国、敵国からの通信を傍受している。経験を積んだ退役軍人はイスラエル内外の企業に高級で採用され大規模監視の仕事をしている。英米でさえこの諜報機関を地域の安定の脅威とみている。その危険性を内部から告発する人も多い。

    イスラエルの技術を買う国はヨーロッパにも、というかEUがといえばいいか。地中海を超えてヨーロッパに渡りたい難民を監視し、追い返すために
    イスラエルの監視ドローンが浮かんでいる。遭難する難民を救出するためでなく、時には溺死させるために通報を遅らせたりする。EUの望むことをやっているわけだ。ウクライナ戦争によりEUとイスラエルの関係は深まり、ドローンを購入したりしている。ドイツのイスラエル支持ぶりは馬鹿げたレベルになっている。

    南アフリカとの関係。
    多くのアフリカ諸国は1948年以降、崇高な反植民地闘争としてイスラエルを支持していた。イスラエルもアフリカの解放運動に関心を寄せていた。しかし67年以降は自らが占領国となり立場を変えた。マンデラは「イスラエル国家がアパルトヘイトを支持したことを決して忘れない」と語った。
    インドはカシミールのイスラム教徒を巡ってイスラエルと同様の状況を抱え親イスラエルの立場に立っている。

    イスラエルの施策との相似と相違
    中国の新疆ウイグル族の問題
    メキシコの国境の壁の問題
    アメリカの先住民族の問題
    など

    スマホに潜む大規模監視について
    イスラエルの監視会社NSOグループが販売する電話端末ハッキングツール「ペガサス」
    スノーデンは語る。「この業界のビジネスの全体像は、最新のセキュリティを回避する新しい種類の感染症をこしらえ、それを抑圧の手段を切望していて、国内でそれを生産する高度な技術を欠いている国に売ることだ」
    ハアレツ紙の元記者アミタイ・ジブは「イスラエルがアフリカのどこかの国にサイバー監視システムを売ることで国連の一票を獲得できる」と語る。

    「オレンジを捨てて手榴弾に乗り換えた」イスラエルの防衛産業は300社を超える多国籍企業と6000社の新興企業がある。
    ◉主な5社、
    1. エルビット・システムズ(Elbit Systems) 
    イスラエル最大の民間防衛企業。無人航空機(ドローン)、電子戦システム、アビオニクス(航空電子機器)、通信・情報システムなどを幅広く手掛けています。
    2. IAI(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ / Israel Aerospace Industries)
    国営の航空宇宙・防衛大手。ミサイル防衛システム(「アロー」や「バラク」)、レーダー、軍事用ドローン、航空機製造・改修などを開発しています
    3. ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ(Rafael Advanced Defense Systems)
    国営の兵器開発・防衛企業。防空システム「アイアンドーム」や、対戦車ミサイル「スパイク」、車両用アクティブ防護システム「トロフィー」などで世界的に知られています。
    4. IMIシステムズ(IMI Systems / 旧 イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ)
    小型火器や弾薬、ロケット砲、装甲車両などを製造してきた老舗企業。2018年にエルビット・システムズに買収され同社傘下(Elbit Systems Land)となりましたが、依然として主要ブランドとして機能しています。5. IWI(イスラエル・ウェポン・インダストリーズ / Israel Weapon Industries)
    主に小銃や軽兵器を製造する民間企業(SK Group傘下)。アサルトライフル「タボール(Tavor)」や「タボール7」、サブマシンガン「ウージー(Uzi)」、自動小銃「ガリル(Galil)」などを開発・製造しています。

    ◉防諜(カウンタースパイ)・サイバー監視・情報傍受などの領域におけるサイバーインテリジェンス・監視技術企業
    代表的な大手・主力企業は以下の通りです。
    1. NSOグループ(NSO Group) 
    特徴: スマホ監視スパイウェア「ペガサス(Pegasus)」で世界的に有名なサイバーインテリジェンス企業。
    領域: モバイル通信の傍受、端末の遠隔監視・分析技術。政府機関や治安機関向けにソリューションを提供しています。 
    2. セレブライト(Cellebrite) 
    特徴: デジタルフォレンジック(電子鑑識)分野の世界的大手。 
    領域: ロックされたスマートフォンやデバイスからのデータ抽出・解析システム。世界各国の捜査機関や防諜・治安当局で標準ツールとして採用されています。 
    3. エルビット・システムズ(Elbit Systems) 
    特徴: イスラエル最大の防衛エレクトロニクス企業。 
    領域: 傘下の「Elisra(エリスラ)」等を通じて、電子戦(EW)、SIGINT(シグナルインテリジェンス / 電波・通信傍受)、C4ISR(指揮統制・情報・監視・偵察)システム全般を手掛けています。 
    4. コグニト(Cognyte) / 旧 ヴェリント・システムズ(Verint Systems)防衛部門
    特徴: 監視分析・調査インテリジェンスソフトウェアの大手。 
    領域: 大規模なデータ分析(BIG DATAインテリジェンス)、通信傍受、オープンソースインテリジェンス(OSINT)の解析プラットフォームを国家安全保障機関等に提供。
    5. サークルス(Circles Technologies) 
    特徴: 位置情報および通信トラッキング技術に特化した企業(NSOグループ傘下)。 
    領域: SS7(共通線信号方式)の脆弱性を利用し、標的の電話番号のみから世界中のモバイル端末の現在地を特定・追跡する技術を開発。

    ・まとめ
    ベンヤミン・ネタニヤフのことば
    『私たちが彼ら「世界」のようになるよりも、彼らが私たちのようになるだろう』
    日本もネタニヤフの言う「彼ら」になりつつある。

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    2026年10月02日
  • 一四一七年、その一冊がすべてを変えた

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    『チ。-地球の運動について』の副読本としてtwitterで勧められた。『チ。』では天動説についてのストーリーになっているが、こちらでは原子論が主軸であり、弾圧の歴史もその比ではない。詳細な調査により、大きな歴史のうねりを読者に語ってくれるピュリッツアー賞ノンフィクション部門受賞作。

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    2025年12月29日
  • アフガニスタン・ペーパーズ 隠蔽された真実,欺かれた勝利

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    政権側がどのようにアフガニスタンで戦争をしてきたのかを明らかにするルポ。戦争というものは古今東西、国がいかに国民や世界を騙せるのかにつきるのかもしれない。もちろん情報統制も戦術のひとつなので致し方ないのだが。正直なところ、米国がアフガニスタンで20年も戦争を継続していたという認識はなかった。これも情報操作のひとつだろう。米国は敗戦したと考えるのが妥当だろう。本書を読むと、米軍のアフガン撤退直後にタリバンが復権したのか理由が分かる。そして、タリバンの復権が米国のこれまでのアフガン戦争の20年を水泡に帰した重要性を理解できる。本書を読んで、現在のウクライナ戦争に頭が向く。この戦争はどこまで真実がつたえられているのだろうか。

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    2022年12月30日
  • 趙紫陽 極秘回想録 (下)~天安門事件「大弾圧」の舞台裏~

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    総書記まで務めた著者は「国家の近代化を望むなら、市場経済を導入するだけでなく、政治体制として議会制民主主義を採用すべきだ」と言い切る。

    この言葉を含めた最終章は良識あるテクノクラートの面目躍如というべき文章だと感じた。

    ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。

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    2022年08月31日
  • 趙紫陽 極秘回想録 (上)~天安門事件「大弾圧」の舞台裏~

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    趙紫陽や胡耀邦らがより周到に自派を拡大し、とう小平の死去を待って党改革を進めていたら今の中国はどうなっているだろう?

    結局現実と大して変わっていないかも知れないし、経済面は同じようでも政治面では穏やかに変わっていたかも知れない。ソ連の様に解体していたらアジア全体が不安定化しているだろうし、ベトナムの様な一党独裁になっているかも知れない。

    色々と想像を掻き立てられる回想録。

    ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。

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    2022年08月27日
  • ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

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    「この写真を撮った人は自殺した」
    小学校のとき、ハゲワシと少女の写真を見せてくれた先生が言った言葉は、永遠に心から離れません。

    なぜこの写真を撮る前に少女を救わなかったんだと世界中から非難された、ケビン・カーター。
    当時は私も非難した側と同じことを思っていました。撮っている場合じゃないだろうと。
    当の本人も写真を優先させたことを後悔していたと読んで分かりました。
    でも、この写真がなければ饑餓の現実は世界に伝わらなかった。重い意味を背負ったこの写真は千語に値したのだと思います。

    撮っても苦しかった
    撮らなくても苦しかった

    まだ子供だった多感な時期にこの写真を見れたのは、ケビン・カーターさんの苦渋の決断があってこそでした。
    亡くなって30年近く経ちますが、忘れません。

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    2021年07月21日
  • ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

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    ピュリツァー賞(ピューリッツァー賞)は、新聞出版業で財を成したハンガリー生まれのアメリカ人、ジョーゼフ・ピューリツァーの遺志に基づいて、ジャーナリストの質の向上を目的に1917年に設立された。受賞対象は報道のほか、文学、音楽など、21部門に亘るが、1942年に創設された報道写真部門は、その中で最も権威ある部門のひとつである。
    本書は、1942年から最新までの70年間の受賞写真を、撮影時の状況、写真への反響、写真家自身の証言、撮影機材や条件を記した撮影データ、及び同時代の出来事とともに収録したものである。(私の手元にあるのは、2011年出版の第1版なので、2011年の受賞作まで収録)
    本書をめくってみると、1頁1頁の重み(もちろん、本の重さではなく、内容の重さである)に手が震えるが、私としては特に2つの大きな意味を感じる。
    1つ目は、私は、世界の戦地・紛争地の様子を我々に伝えてくれるフォト・ジャーナリストの活動に強い関心を持っており、これまでも、(ピュリツァー賞を受賞した3人の日本人の一人である)沢田教一を描いた『ライカでグッドバイ』(青木富美子著)をはじめ、カンボジア・アンコールワットに消えた一ノ瀬泰造や、今世紀に入っては、故・山本美香、安田純平、長倉洋海、佐藤和孝、橋本昇、川畑嘉文らの書いた本を読み、多くにおいて非常に共感を持っているのだが、彼らと同じ志を持つ世界中のフォト・ジャーナリストが撮った、数限りない写真の中の代表的なものが集められており、フォト・ジャーナリズムの集大成であるという点。
    2つ目は、対象となっている写真は、ベトナム戦争、東西冷戦、アフリカの紛争、イラク、アフガニスタン等の戦争・紛争、噴火、地震、津波等の自然災害のほか、オリンピックなど、幅広いが、そこには第二次世界大戦以降の世界が凝縮されており、言わば「世界の戦後史」を表しているという点である。
    頁をめくり終えて最も強く感じるのは、人間の愚かさである。多くのフォト・ジャーナリストは、戦地・紛争地で起こっている現実を知らない、或いは知ろうとさえしない、恵まれた国の人びと(我々日本人はその代表である)に対して、その様子を伝えることにより、その戦争・紛争を停止させ、延いてはそのような戦争・紛争が起こらない世界を作っていくために、自らの命を危険にさらしながら、本書にあるような写真を撮り、世界に発信しているのである(自然災害等は避けられないものであるが)。しかし、ピュリツァー賞報道写真部門ができてから70年を過ぎた今、世界の戦争・紛争は減っているだろうか。。。
    本書を見て我々が本来心に刻むべきことは、今後こうした写真が撮られることがないような世界を作ることなのだ。

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    2020年12月01日
  • ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか

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    渡米した内村鑑三は、
    自身が崇拝してきたキリスト教を根幹としたキリスト教国で絶望する。

    これが、キリストの教えを実践する国なのか?と。
    「山にとどまる者は、山を知らない」
    外へ出ることで始めて自分自身が何者かをよく知ることができると内村鑑三は言う。

    がっかりした内村鑑三は、
    欧米の宗教であることを根拠にキリスト教を擁護することを止めることを決意。

    まさに自身の頭で考え、自身の心で感じることこそが、根拠となりうるのであって、
    欧米であるという外的証拠などでは、足元はグラグラだということを痛感したからである。


    内村鑑三は、正しい道徳と正しい行為のためには、身体が正しい状態でなければならないということを、つまり胃袋が大事だということを痛感する。
    また、どんなに崇高な志がある活動であっても、その活動を通して人々に貢献するには、明瞭な頭脳と鉄の意志が必要だと知る。

    内村鑑三は、
    信仰を重んじながら、リアルな現実を直視することも忘れなかった。


    日本の本質的な敗戦要因の一つとして、
    現実を無視した過度な精神主義が見られる。
    アメリカとの戦いは物質的な戦いではなく、精神力の戦いだとみなしていた。
    それが、例えば兵士の睡眠や胃袋を軽視し、精神力過多の思想によって、無理が募り敗戦につながった。大きな要因の一つだろう。


    ひるがえって、
    内村鑑三は敗戦前の人間としては、
    かなり現実的な視点をもっていた宗教家でなかっただろうか。

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    2018年12月05日
  • ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか

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    強制的に改宗させられたものの、一神教の素晴らしさに心打たれた鑑三。
    彼の宗教的ストイックさと、アメリカに渡って無数の宗派のどこにコミットしていいかわからずノイローゼになりながら、自らの信仰を見出していく日記に非常に共感。
    どちらかというと橋爪先生の解説の辛辣さに笑ってしまったが、
    明治期の新しい真理に触れた鑑三がいかに、西洋の真理と日本の真理を接木しようと格闘しようとしていたかがわかる。

    ただ、神道や仏教の真の価値をー江戸、明治を経て形骸化していたとはいえー見いだそうとしない鑑三の態度にはぼくは批判的である。
    まだ、日本のキリスト教は始まってすらいないのが現状であると思う。

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    2016年12月07日
  • ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

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    ネタバレ

    どの写真にも強烈な印象を持ちました。浅沼稲次郎が狂信的な右翼学生山口二矢に襲撃される瞬間を捉えた、長尾靖撮影「舞台上の暗殺」、ケネディ大統領を暗殺したオズワルドが射殺される場面を撮影したロバート・ジャクソンの「全世界に生中継されたオズワルド殺害」、実写で見たこともあるエドワード・アダムズ撮影「サイゴンでの処刑」、南アフリカでの飢餓によって今にも死にそうな子供とその死をじっと待っているハゲワシの姿を捉えたケビン・カーター撮影「ハゲワシと少女」はこの写真集を見る前から記憶に残っていました。 最近の受賞作は、テロや内戦を捉えたものが中心となっています。カメラマンも命がけです。

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    2015年10月19日
  • 一四一七年、その一冊がすべてを変えた

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    ネタバレ

    名前だけは聞いたことがある人もいるルクレティウスの『事物の本性について(DRN)』という書物が、ルネサンスという一大ムーブメントのきっかけであり、それに留まらず現代に至る科学革命の一因にまでなったとする

    古代ローマ期に書かれたこの書物は、より以前の古代ギリシアの哲学者エピクロスの思想を紹介するものであり、
    神々がいたとしても私たち人間には無関心であり人間は優越的な存在ではない、
    この世の事物は「原子」からなっており魂もそうなっている、
    苦しみは削減すべきであり悦びを追求するべきである、
    などといった現代に通ずるような価値観を提示する

    DRNは中世を通じて忘れ去られたが、ルネサンスの人文主義者でありかつ「ブックハンター」でもあるポッジョ・ブラッチョリーニがドイツの修道院で発見し写本を作った
    ローマ・カトリック教会による弾圧を受けるが、DRNの示す思想は衝撃的かつ魅力的であり、西欧世界に徐々に浸透していく

    その流れを描くと同時に、ポッジョが生きたルネサンスの生活史や彼の勤務先でもある教皇庁の実情も生々しく描いている
    厳格で敬虔な聖職者のみがいると思われた教皇庁は、昨年の『教皇選挙』の公開とあいまって、意外に世俗的な世界なのだなと思わされた

    後半ではルクレティウス(エピクロス)の思想を解説する部分や、モンテーニュやガリレオなどの知識人へDRNが与えた影響なども述べられており、驚かされる

    解説にもあったように、DRNの提示した思想・哲学は当時の世界観全体に影響を与えるものであり、徐々に、名前を変えて普及していった
    そうであったが故に、「地動説の発見」のように大々的な出来事として扱われてこなかったという指摘は盲点で非常に興味深かった

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    2026年08月02日
  • ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか

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    タイトルの通り内村鑑三がいかにして(なぜではなく)キリスト教徒になったかを、自身の日記を追いながら補足的に当時の思考を追記していくというスタイルの文章です。

    情熱的で実直で、少し稚拙な感じすらする内村青年の思考の遍歴の話し。

    岩波文庫版よりも圧倒的に読みやすく、青春文学を読んでいるかのよう。一人称がぼくなのがイイ。

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    2025年01月07日
  • アフガニスタン・ペーパーズ 隠蔽された真実,欺かれた勝利

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    ワシントン・ポストの調査報道記者が、2001年米国同時多発テロへの報復としてアフガニスタンへの空爆が開始されてから、2021年に駐留米軍が撤退するまでの20年間続いた「出口の見えない戦争」の実態を克明に暴き出した一冊。

    同紙が独自に入手した情報からは、そもそも戦争の目的が明確にされず、特定の国に属さない一テロ組織であったアル・カーイダの撲滅がタリバーン政権の打倒と混同され、実質的にNATO軍が新たな国造りを担うも、長年の歴史や文化に敬意を払わず欧米式の復興政策を押し付けた結果、新政府や国民との関係はこじれ、新たに設立した統治機構や軍・警察は脆弱なまま、的外れな用途に注ぎ込まれた資金は汚職蔓延を生み、軍や民間の犠牲者が増え続ける中では、タリバーン復活はむしろ必然的な流れだったことが読み取れる。

    このような状況が続いた20年間、米国政府から一般国民には成功や勝利といったメッセージのみが発せられてきたことに驚かされるが、そこには真実を明らかにすることがリスクになる構造があり、当事者たちには恐らく、あからさまな隠蔽という意識はなく、事実を自らの都合に合わせて「解釈」し、外向きのメッセージを「調整」する強いインセンティブが働いていたと思われる。数年で入れ替わる様々な階層の個人が同様の「解釈」と「調整」を繰り返す中で、国全体が袋小路に追い込まれる状況は決して対岸の火事とは言えず、一般企業としても学ぶべきことが多い。

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    2023年01月11日
  • アフガニスタン・ペーパーズ 隠蔽された真実,欺かれた勝利

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    アフガンが失敗した原因
    ・民主主義が根付いていないところにいきなり大統領選挙から始めた
    ・目的を定めないまま戦争を始めた

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    2022年12月08日
  • アフガニスタン・ペーパーズ 隠蔽された真実,欺かれた勝利

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    「あの戦争は何だったのか」
    こう思わずにいられなかったのは、昨年米軍がアフガニスタンから撤退した時と本書のレビューを読んだ時だった。
    ブッシュ政権が聖戦だと言わんばかりに宣戦布告、しかし泥沼化が進む割には何のゴールも見えず。政治や海外情勢に疎くても、それくらいは自分も分かっていた。

    本書のタイトルはベトナム戦争に関する隠蔽資料「ペンタゴン・ペーパーズ」をアフガニスタン軍事侵攻版としてもじったもの。
    アフガン版の情報開示に踏み切ったのはワシントン・ポスト紙。アフガニスタン復興担当特別監査官事務所なる組織が、戦争に関わった数百人(高官から兵士まで)に取材を行ったという情報を報道記者だった著者がキャッチ。連邦訴訟まで起こして何とか公開に至ったという凄まじい経緯である。
    他で入手した情報も交え、あの20年戦争とは何でどこが間違っていたのか、3代の歴代大統領がどのように隠蔽していたのかがここで赤裸々に明かされる。

    要は見切り発車の開戦だったんだな。
    目標が定まらず、しまいには戦う相手や任務の内容まで曖昧になっていったのが、戦争が長引いた主な原因であった。(開戦当時、侵攻先の知識はほぼ皆無で、タリバンとアルカイダの区別すらついていなかったのには流石にゾッとした)

    「われわれがアフガニスタンに行ったとき、誰もが1、2年ですむだろうと話していた」

    やがては軍部も、重要な事実(副大統領が現地の空軍基地にて自爆テロに巻き込まれかけた件etc.)を隠蔽し、「われわれは優勢だ」と虚言を繰り返すようになる。
    そうした「根拠のない楽観論」が国民から真実を知る術を奪い、膨大な戦費と犠牲を生み出してしまった。(あとどうでも良いけど作戦に怪物の名前を付け過ぎ笑 「メデューサ作戦」とか)

    関係者の数があまりに多く、いきさつを追うのに苦労したが、どの人物も役目を負う者にしては信じられないくらいに手探りだった。もっと早く戦争を終結或いは軍を撤退させる事も出来たのに、見す見すそのチャンスを逃してきた。

    また本書には民間人の証言が一切登場しなかった。(アメリカ側の視点で書かれたのも大きいかもしれないが)
    戦争の発起人であるアメリカ人たちですら戦う意味を解していなかったのに、訳も分からず日常を奪われた民間人からしたら、死傷者数でしか生きた証を残されないのはたまったもんじゃないのでは?と一人息巻いてしまった。(実際国連は2009年になってようやくその数を集計する調査に乗り出している)

    そうは言うもののここまでの公開に持ち込んだ、著者の勇気とジャーナリズム精神には感嘆している。同時に「彼の祖国も、過去のどこかで一歩引く勇気を示してさえいれば…」と遺憾に思いながら、ラストの描写を見送った。

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    2022年10月21日
  • ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

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    写真一枚でその時代の背景が分かる印象的な写真が多かった。中にはグロイものもあったりだけど、結局宗教、イデオロギー主義主張の違いからの紛争、民族問題で戦争は起こるんだなと。悲観的な写真が多いイメージだったかなぁ。

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    2022年04月24日
  • ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか

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    ネタバレ

    題名だけ知ってて読んでみたかった本。訳のおかげもあって思ったより平易で読みやすく、面白かった。
    強制的な改宗から始まったものではあったが、その清廉な信仰のよろこびと苦悩、熱意には胸を打たれた。武家の息子として八百万の神と儒教思想の中で育ってきた人間が、自分の根本・世界の原理としてキリスト教を受け入れるために格闘する。ごりごりの儒教思想の御父上も改宗させたというのは本当にすごい。しかし日本では信仰の渇きを満たすことができず、アメリカにわたって様々な宗派と出会い、キリスト教国に対する幻滅も味わい、神学に疲れ、それでも自分なりの真理と呼べるものはつかみ取って帰国した。

    終盤にある、真理の話がとてもよかった。キリスト教は真理だ、と言い切りながら、真理を定義することはできない、とも繰り返す。
    「生命についての真の知識はそれを生きることによってしか得られない。メスと顕微鏡でわかるのはメカニズムだけだ。──真理もそうだ。ぼくらは真理を守ることによってのみ、真理を理解できるようになるのだ。理屈をこねたり、些細なことにこだわったり、こじつけをしたりしていては、真理から遠ざかるばかりだ。真理はそこにある。まぎれもなく、堂々と。そしてぼくらは自らそこまで行くしかない」
    自分で生き抜くことによってしか得られない、とはいかにも東洋的な哲学に感じるが、真理を得るためには自ら近づくしかない、というのはとてもキリスト教的だなと思う。儒教はいまだ自分の中で生きているというようなことを内村は言っていて、日本のこうした思想的土壌の上でキリスト教が豊かに育つことができるはずだという確信もあった。それを見事に示したのがこの真理についての話ではないかと思う。
    しかし解説の人が、定義と教義についてきっちり議論することなしに正統派キリスト教徒を気取るなぞおかしい、内村はキリスト教徒になり損ねたのではと書いていてこの本の何を読んだのかとびっくりしたが、あの悪名高い「ふしぎなキリスト教」の人だと気づいてなるほどねと思った。解説だけ取り替えてほしいなあ。

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    2022年03月22日
  • 冬のライオン ナショナル ジオグラフィック ノンフィクション傑作選

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    冒険物語と言えば、一昔前までは未開の地の開拓と動物との交流と相場が決まっていたものだが、本書を読んでまず感じたのは、時代は移り変わったということである。全10話のノンフィクションのうち、3篇は紛争の地で活動する人々の話である。また、5篇は動物を扱っているが、環境破壊から動物を守ろうと闘う人々の話もある。

    取材対象となる人物は人道的であるとは限らないため、感情移入しづらいこともある。正義の解釈は民族や立場によってこうも異なるものなのだろうか。また、著者によって文体もまちまちで、淡々と事実のみを記述するものもあり、気軽に冒険を楽しむという気にはなれないかもしれない。ドキュメンタリーとはそういうものだと自分に言い聞かせて読み進んだほどである。

    寄せ集めの感は否めないが、いくつか印象に残る話もある。私は「死の迷路からの帰還 原生林で迷ったときに生き残るための条件」が面白かった。山岳などでの遭難のメカニズムを科学的に解明しようとしており、唯一、役立ちそうな内容となっている。一方、「反捕鯨の戦いに命をかける海賊たち」は、日本の調査捕鯨を目の敵にして身体を張って戦うのはどんな人々なのかが分かり、実に興味深い。

    航空機の発達は世界を狭くしたと言われるが、なんのなんの、世界は十分広い。安全なテリトリーから足を踏み出せば、現代社会でもまだ命がけの冒険が待ち受けているのだ。そう認識を新たにすることができたのが、何よりの収穫であった。

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    2019年11月23日
  • ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ピュリッツァー賞受賞写真ということで、どこかで見たことがある写真が多い。故沢田教一氏など日本人カメラマンの写真もある。受賞した写真を撮ったカメラは日本製が多い。ニコン、最近だとキヤノン。ニコン(元は日本光学)は、もともと軍需産業で三菱財閥の一員。戦艦大和の測距儀も日本光学製だったはず。

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    2019年03月15日
  • ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

    Posted by ブクログ

    普段写真は見る機会がないが、一枚の画像に色々なメッセージが込められており、時代や歴史を感じられた。
    写真の展覧会などにも足を運んでみようと思う

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    2018年06月12日