あらすじ
ルネサンス前夜のイタリア。教皇庁の書記官ポッジョ・ブラッチョリーニは、古代の文献を探し求める人文主義者でもあった。1417年、ドイツに旅に出た彼は、修道院で一冊の写本を発見する。それは、古代ローマの詩人ルクレティウスの『事物の本性について』。千年以上の眠りから偶然にも目覚めたこの作品は、キリスト教的世界観と真っ向から対立する宇宙論を高らかに歌い上げていた。ポッジョはこの詩を世に送り出し、それを読んだモンテーニュら様々な思想家・芸術家によって新しい時代が花開いていく──。一冊が引き越こした歴史を生き生きと描く、ピュリッツァー賞受賞の傑作。 解説:池上俊一
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『チ。-地球の運動について』の副読本としてtwitterで勧められた。『チ。』では天動説についてのストーリーになっているが、こちらでは原子論が主軸であり、弾圧の歴史もその比ではない。詳細な調査により、大きな歴史のうねりを読者に語ってくれるピュリッツアー賞ノンフィクション部門受賞作。
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名前だけは聞いたことがある人もいるルクレティウスの『事物の本性について(DRN)』という書物が、ルネサンスという一大ムーブメントのきっかけであり、それに留まらず現代に至る科学革命の一因にまでなったとする
古代ローマ期に書かれたこの書物は、より以前の古代ギリシアの哲学者エピクロスの思想を紹介するものであり、
神々がいたとしても私たち人間には無関心であり人間は優越的な存在ではない、
この世の事物は「原子」からなっており魂もそうなっている、
苦しみは削減すべきであり悦びを追求するべきである、
などといった現代に通ずるような価値観を提示する
DRNは中世を通じて忘れ去られたが、ルネサンスの人文主義者でありかつ「ブックハンター」でもあるポッジョ・ブラッチョリーニがドイツの修道院で発見し写本を作った
ローマ・カトリック教会による弾圧を受けるが、DRNの示す思想は衝撃的かつ魅力的であり、西欧世界に徐々に浸透していく
その流れを描くと同時に、ポッジョが生きたルネサンスの生活史や彼の勤務先でもある教皇庁の実情も生々しく描いている
厳格で敬虔な聖職者のみがいると思われた教皇庁は、昨年の『教皇選挙』の公開とあいまって、意外に世俗的な世界なのだなと思わされた
後半ではルクレティウス(エピクロス)の思想を解説する部分や、モンテーニュやガリレオなどの知識人へDRNが与えた影響なども述べられており、驚かされる
解説にもあったように、DRNの提示した思想・哲学は当時の世界観全体に影響を与えるものであり、徐々に、名前を変えて普及していった
そうであったが故に、「地動説の発見」のように大々的な出来事として扱われてこなかったという指摘は盲点で非常に興味深かった