須藤靖貴のレビュー一覧
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県立新居山総合技術高校食物調理科、通称「ショクチョウ」は卒業と同時に調理師免許が取得でき、料理の道を志す若者が集まる。プロとなるために学ぶので、満点で当たり前。優しくも厳しい先生の元、3年7組ショクチョウの30人は日々料理と向かい合う。
ショクチョウの特徴のひとつは、何事においても30人全員の意見を一致させること。それは多数決とも異なり、少数の意見をねじ伏せるのではなく、とことん話し合うことで意見をまとめていくもの。だから自分の考えを相手に伝えること、相手の意見を聞くことが必要となる。
ショクチョウの日々は油断禁物の完璧を求められるもの。何故なら食べ物を扱うプロとなるのだから。失敗することもある。でもその失敗に対してどう対応するのか、何故失敗したのかを理解しているのか。そこが重要となり、失敗しましたごめんなさいでは許されない。
だから担任の小梅先生も厳しく烈火のごとく叱る。叱られたショクチョウ生は、それをがしっと受け止め反省し次に活かす。これは信頼関係が為されているからできることだなということは、端々から読み取れます。
ギロンも小梅先生の厳しさも、一歩間違えると単に力での押さえつけになってしまう。それを小さな声を無為にしないことや、自主性や信頼関係に繋げる物語の組み立ての巧さに引き込まれました。 -
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そしていよいよ、最終巻へ。
東京五輪のマラソン代表選考においては、実際にはMGCという形が創設されとても面白い代表選考になったのだけど、この本の中では、陸連がトップ選手を秘密裏に絞り込んでいくという形となる。
そこで剛が本格的にその日本代表を目指してライバルと鎬を削る話になるかと思いきや、社命でケニヤに赴任することになろうとは。
しかし、ポレポレ(焦らず、ゆっくり行こう)はこの本のテイストに合っており、また上巻の頃は剛が駅伝のメンバーに選抜される必然性も感じられなかったものが、ここまで腹筋チャレンジや瞑想マラソンを繰り返し、実によく食べ、そして走り込みをしている姿が描かれると、無謀なロングスパートも段々あり得るように思えてくる。
トップ30に絞られるレース、代表候補の重要な指標になる特別レース、それぞれにこれまでのエピソードが活きてくる。
そして、残り200頁余りは、東京五輪のレースに。
剛の独白とその合間に挟まれる関係者へのインタビューで構成される話に、選考レース以上にこれまでの全てのエピソードが綯い交ぜになって走りを彩る。
2016年に「Final」を読んだ時は『淡白で物足りないところはある』と感じたが、全てを遡ってここに辿り着けばその過程の記憶がどっと押し寄せて、ファンキー飛松のインタビューのシーンをはじめ、あらゆる局面で一緒に感動に咽ぶことが出来るのも過去を知ってこそというもの。
来年の夏(本当に出来るのか?)、札幌で(になるんだろうな)、同じような感動のレースが見れると良いな。
太郎の挫折と復活の話も良かったが、それを後押ししたP.122~123の競馬場に対する描写、流石にこの作者ならではだ。 -
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美味しい食べ物が出てくる本が好き。
なので、タイトルにひかれて読んでみました。
出てくる食べ物は本当においしそうで、
シンプルな材料なんだけど凝った料理が多かった。
白菜の博多煮、ごぼう天うどん、私も食べたいな~。
読む進めるうち、主人公ケイシの母のような気持になってしまい、
小学生時代の因縁の相手サダとの再会、
卒展の成功・・・目頭が熱くなってしまった。
高校生が何かに一生懸命に取り組む話、好きだな。
こういう話を読むと、私自身が、大学受験のための高校生活を送っていたことが悔やまれる。
ないものねだりかな。
「同じ釜の飯を炊いて食う仲間」。
ご飯は互いにくっついて粘り気があってドライじゃない。
そんな素晴らしい仲間との、青春の物語でした。 -
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大相撲三段目力士の桐疾風。得意技は突き押し。名古屋場所の途中、愛しの恭子姉さんと純ちゃんに会うために大阪へ向かった。もし、見つかれば半殺しの目に遭うかもしれないのに新聞沙汰を起こしてしまう。高校を中退し相撲の世界へ飛び込んだが、厳しい稽古の日々に何度もスカすことを考えていた。それでも努力の甲斐があり、少しずつ番付は上がり、夢にまで見た十両へはあと一歩。しかし、運命を呪いたくなるようなことが疾風に襲いかかる。変わっていく自分の姿に気持ちが切れた疾風に周りの温かい気持ちが差し伸べられる。もう一度土俵に立つために、本当の男になるために再び四股を踏む。
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元トップランナーの伴勝彦は、現役引退後、実業団女子マラソンチームの監督として選手の育成に力を注いでいた。
しかし、期待されていたリオオリンピックでは所属選手が途中棄権、次年の国際大会では他チームから引き抜いてきた選手だったが入賞すら叶わなかった。
監督就任時に、かつての恩師から「オリンピックで金メダルを獲れる監督は、おまえだけしかいない」。その言葉を信じてやってきたが、目指す金メダルへは届かなかった。
そんな中、バレーボールからマラソンに転向してきた恩師の孫娘の齊田恭子が入部し、2020東京オリンピックを目指す。
歯に衣着せぬ言動の恭子に戸惑う伴だったが、自身のすべてを賭けて指導にあたる。
そして、ついに2020東京オリンピック 女子マラソンのスタートが切られた。
8月の過酷な暑さの中でのレースで伴と恭子はどのように戦うのか。
感動のフィナーレが待っている、女子マラソン小説。 -
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本好きの小学年の次女にクリスマスプレゼントの一つとして渡した本。渡す前に自分でも読んでみた。
「小説の書きかた」という題名ではあるが、本書はそれを解説する実用書ではなく、それをテーマとした青春小説。横須賀にあるとされる県立高校文芸部の4人の生徒が、小説誌の新人賞に応募するという内容の物語。物語の中で生徒たちは小説の書き方を学んでゆく。
物語形式なので飽きずに興味を持って読めるのではないかと期待し購入。高校が舞台なので小学生には難しいかなとも思ったが、渡してから半日後にはすべて読んでしまった。 知っている人にとっては極基本的な書くための技術なのかもしれないが、物語の中の高校生と一緒に学べるので技法がすんなりと頭に入ってくる。
4人の高校生が登場するが、3人の女子はリレー形式で原稿を書き、1人の男子は編集者として全体をまとめてゆく。
小説に限らず、情報社会である昨今は共同で何を作り上げてゆくということは日常的なこと。複数の人間が絡む創作物の制作過程をイメージできることはとても現代的であると感じた。
登場人物たちはこの小説の制作過程を文化祭の発表にしようとするのだが、こういったプロセスそのものに意味を持たせるという発想もまた現代的だ。
小説の書き方を学ぼうという人にとって、横須賀の潮風のようなさわやかなインスピレーションが得られる作品だ。 -
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映画ファンやアニメファンが、舞台となた場所を訪れる「聖地巡礼」
がしばらく前から話題になっている。
何を今更なのである。読書好きはもっと昔から聖地巡礼をしている
のだ。学生時代の夏休み、暇に任せて在来線を乗り継いで京都へ
行った。目的は当時はまだ営業していた京都・丸善の店内にレモンを
置くこと。
そう、梶井基次郎の真似である。京都・丸善には私のような客が
結構いたようだ。店員さんは慣れたものだろうが、今考えると迷惑
行為だよね。若気の至りである。
さて、本書。著者を知らなかったのだが作家さんだそうな。それも
池波正太郎ファンの作家。その著者が、池波作品を携えて小説の
舞台となった土地を訪ねる紀行エッセイだ。
類書は結構あるんだよね。江戸地図で作品を楽しむとか、京都を歩くと
か。読みたいのだけれど、極力読まないようにしていた。だって、聖地
巡礼本なんて読んだら、絶対に池波作品を再読したくなるから。
それなのに読んでしまったの、本書を。ほんの出来心で。冒頭から
やられましたわ。
藤枝梅安の生誕地・静岡県藤枝市を訪ねる章では偶然にバスに乗り
合わせた年配のご婦人と、そのご婦人と待ち合わせをしていたご友人
たちと一緒に「藤まつり」の会場を楽しむなんていいじゃないか。
『真田太平記』を手にゆかりの地を歩き、著者の自宅のある最多県朝霞
市から自転車で(!)東京・永代橋まで行き、永代橋の欄干にもたれて
池波作品を読む。
似たようなことをした。昔々、上野の西郷隆盛像の前で半日『西郷隆盛』
を読んでいたことがあった。
やっぱり失敗だったわ。いや、本書の内容ではない。小説舞台の地を
訪ねて、近くに池波さんおすすめの蕎麦屋や寿司屋があればそこで
お腹を満たし、遠方であれば池波さんのエッセイに出て来る宿に泊まる。
真似したくなる旅だからこそ、読んで失敗したのだ。池波作品を再読し
始めたら、しばらくそればかり読んでしまうからだ。
だって、私の書庫の片隅には本棚とは別に文庫用コンテがいくつか積ん
であり、中には池波正太郎や山本周五郎などの時代・歴史小説の文庫が
納められているのだ。
それは手を触れてはならぬ禁断の箱。手を出したら最後、作品の虜囚に
なってしまうから。
あ、でも手が勝手にコンテナを開けようとしているっ!まずは台東区の
池波正太郎記念文庫に行くか。そこで何を読むかが問題だが。