あらすじ
TOP(東京オリンピックプロジェクト)男子マラソンの強化選手となった走水剛。だが、勤務先・青葉製薬の新商品開発のため、急きょケニアへ赴任することに。日本での合同練習には参加できないものの、赤道の国で秘策〝ロングスパート”に磨きをかける。そして二〇二〇年、夏──。二十八歳になった剛は、ついに東京五輪のレースに挑む。傑作青春小説、感動のゴールへ!(「デッドヒート」シリーズ全六巻を加筆・修正のうえ、全三巻としました)(解説・北上次郎)
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Posted by ブクログ
そしていよいよ、最終巻へ。
東京五輪のマラソン代表選考においては、実際にはMGCという形が創設されとても面白い代表選考になったのだけど、この本の中では、陸連がトップ選手を秘密裏に絞り込んでいくという形となる。
そこで剛が本格的にその日本代表を目指してライバルと鎬を削る話になるかと思いきや、社命でケニヤに赴任することになろうとは。
しかし、ポレポレ(焦らず、ゆっくり行こう)はこの本のテイストに合っており、また上巻の頃は剛が駅伝のメンバーに選抜される必然性も感じられなかったものが、ここまで腹筋チャレンジや瞑想マラソンを繰り返し、実によく食べ、そして走り込みをしている姿が描かれると、無謀なロングスパートも段々あり得るように思えてくる。
トップ30に絞られるレース、代表候補の重要な指標になる特別レース、それぞれにこれまでのエピソードが活きてくる。
そして、残り200頁余りは、東京五輪のレースに。
剛の独白とその合間に挟まれる関係者へのインタビューで構成される話に、選考レース以上にこれまでの全てのエピソードが綯い交ぜになって走りを彩る。
2016年に「Final」を読んだ時は『淡白で物足りないところはある』と感じたが、全てを遡ってここに辿り着けばその過程の記憶がどっと押し寄せて、ファンキー飛松のインタビューのシーンをはじめ、あらゆる局面で一緒に感動に咽ぶことが出来るのも過去を知ってこそというもの。
来年の夏(本当に出来るのか?)、札幌で(になるんだろうな)、同じような感動のレースが見れると良いな。
太郎の挫折と復活の話も良かったが、それを後押ししたP.122~123の競馬場に対する描写、流石にこの作者ならではだ。