樋口一葉のレビュー一覧
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なによりもまず、そのあまりにも美しい文章について触れるべきなのかも。言文一致が生まれて間もない頃の文章であるにも関わらず滑らかに流れていく言葉と、そんな時期だからこそまだ使われていた古文調の言葉遣いで述べられていくその文章は、読めば読む程に魅力が増していく。
そして、そこに描かれる物語の大半は、世間という荒波に翻弄され、風習という名の運命の荒野に投げ出された男女の報われぬ物語。社会の進歩に対して余りにも早く自我というものに目覚めてしまった、早熟の才故に描くことのできたあまりにも報われぬのに美しき物語。僅か25歳で天寿を全うする、その最後の1年間に書かれた本書には、踏み躙られても尚衰えぬ輝きとい -
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一葉の没した24歳すぎて再度読み返した。「たけくらべ」の美登利は「ええ厭々、大人になるは厭やな事…」と彼女ら吉原遊郭周辺に暮らす子供達に「思春期」「青春期」モラトリアムという猶予期間はない。子供の時間を終えたら、大人になり職につく。酉の市を境に「子供、子供である時間」を終えて遊女としての身の哀しさを知ったか、少女美登利は憂いて沈み、水仙の造花を懐かしい想いで眺める…手に入らない清き男性をそのはるかに見つつ…美しい美登利の姿に終焉する物語に、私は耽美といいきれないリアリズムを感じる。
20歳大学一年、英語の教授が夏休みに、日本語で評せよと謎の課題としての扱いで読んだ記憶…妙な思い出とともに、時代 -
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お前の罪じゃ無い、世の中の罪だ
(田山花袋「断流」より)
人生の不条理・社会の闇と真正面に向き合い描かれた「悲惨小説(深刻小説)」または「観念小説」と呼ばれる作品のアンソロジー。あまり聞き慣れぬ作家の、大手出版社の文庫本レーベルにもなかなかラインアップされない作品をたくさん味わえる貴重な一冊だと思う。
川上眉山「大さかずき」
泉 鏡花「夜行巡査」
前田曙山「蝗売り」
田山花袋「断流」
北田薄氷「乳母」
広津柳浪「亀さん」
徳田秋声「藪こうじ」
小栗風葉「寝白粉」
江見水蔭「女房殺し」
樋口一葉「にごりえ」
性別、生まれ、家庭の経済状況……。収録 -
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2021年 32冊目
これほど美しい文学を今まで読まずにいたことは自分にとって大きな過ちでした。文語体なので主語がなく場面の切り替わりが急なので多少まごつきますが、現代文でこの繊細な筆致を堪能することはできなかったでしょう。
・たけくらべ
フィリップ・アリエスの「子どもの誕生」のように、当時の日本も子どもって観念はなかったんじゃ。年端をいかないうちから奉公に出て、居住地区間の争いがあり、当然のように運命を受け入れる。あどけない子どもたちと思いきや、初潮を迎え遊女の将来を悟ったり出家したりの登場人物の境遇、心情を推測するのが難しかったです。
最後の1ページ、慈愛と悲壮と諦観がちりばめられ -
購入済み
たけくらべ
とにかく、日本の名著の一冊です。文章は一文が物凄く長く、文体も、なかなか読みにくいですが、読み返すうちに少しづつ分かってきます。吉原花街にかかわる4人の子供たちの青春物語でもあります。一葉は日本近代文学の出発点に位置した作家と言われています。24歳で亡くなったのは惜しまれます。
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これは難しかった。最初の「たけくらべ」を20ページぐらい読んで、これはカナワンと放り出していた。
こういう文章です。
龍華寺の信如、大黒屋の美登利、二人ながら學校は育英舍なり、去りし四月の末つかた、櫻は散りて青葉のかげに藤の花見といふ頃、春季の大運動會とて水の谷(や)の原にせし事ありしが、つな引、鞠なげ、繩とびの遊びに興をそへて長き日の暮るゝを忘れし、其折の事とや、信如いかにしたるか平常の沈着(おちつき)に似ず、池のほとりの松が根につまづきて赤土道に手をつきたれば、羽織の袂も泥に成りて見にくかりしを、居あはせたる美登利みかねて我が紅の絹はんけちを取出し、これにてお拭きなされと介抱をなしけ