身内の孤独死をきっかけに、35歳独身女性が「終活」を考える話。
タイトルで死にたい言っていますが、「よりよく死ぬためにしっかり生きよう」とする漫画。いたずらに煽るような表現はなく、軽妙なギャグに笑いながら読める。
だけどメッチャ真面目に正面から向き合っているので、胸にブスッと刺さった刃が読み終わっ
...続きを読むてもまったく抜けない。そのバランス感覚がすごい。「孤独死」という題材で、この笑えて考えさせられる真面目で優しい読後感というのは、なかなか稀有なのではという気がします。個人的に期待の一冊。
著者の漫画作品はサブカル属性のイメージでしたが、これは広い層に読まれてほしいなと願ってしまう。
面白かったのは、色々な立場の人の生き方が出てくる所と、その描き方。
独身アラフォー女性を主役に、苦学生・専業主婦・共働き子育て・老後・親の介護…etc。それぞれの立場の価値観ギャップ、世代ギャップが非常にわかりやすい。ひとつの視点の生きづらさだけでなく、自分とは違う立場の人への無神経さ・残酷さがきちんと描かれているのが誠実です。主人公の鳴海は自分のイヤなところをきちんと自覚するので、嫌味なく読めるのが上手いなあと思う。真理はズドンと刺しながらも、全方位の表現に配慮があるので、言葉の使い方が巧みだなと唸るばかり。
あとセリフが魅力的です。刺さる表現がたくさんありました。
実家が太い鳴海と、苦学生と思われる那須田くんの価値観の相違、特に奨学金のくだりは耳が痛かった…
鳴海の親世代における専業主婦と働く女の対立など、なんか見たことがあるぞーという、分かり合えない壁がたくさん出てきて、あーいたたたたってなります。
「ひとり」を描くためにこそ、様々な個人の生を描き、自分とは違う他者がたくさんいる世界で、ひとりの人ほど「人」を大切に生きていかないといけない……という気づきの視点が良いなと思いました。潔い。
不安と孤独の処方箋として、推しと言う名の「希望」を提示するのも、カレー沢先生らしくて良いです。
好きなものがある人生、万歳。あと猫は神。
孤独死のリアルを書いている本も、お金の稼ぎ方や人間関係の築き方を書いている本も、山ほどあるのでしょうが。ハウツー以前の意識部分を、こういうアプローチで攻めるのは漫画ならでは。
最近の推し漫画です。現状把握の一巻から、どう展開してどう着地するか。続きが読みたい〜