高橋弘希のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ以前読んだ大岡昇平『野火』は古い作品であることもあり読み辛さがあったが、こちらは2017年刊行ということで非常に読みやすかった。
『野火』の終始タイヘンな生活とは大きく異なり、尾の小説の描写は長閑で平和な感じ。もちろん周囲は死で溢れているのだが、それも感傷的だったりドラマチックであったりブラックユーモアが交じっていたりと、大人しい文学という感じがした。戦争における日常。戦争が凄惨なものであるという前提に立てば、どこか壊れたけど平和に見える日常(2016年のヒット映画『この世界の片隅に』とか)が描かれていると言えるだろうか。
ただし、その日常が仮初めのものであり、そこにいた人が既に壊さ -
Posted by ブクログ
あらすじを読んでみてすぐに気になった作品。
不穏な空気感、意味ありげな情景描写、緊張感のある文体、そういうのすべて好みでした。
ただ「スイミングスクール」と「短冊流し」の、どちらも上手く感想をまとめることが難しい。
自分がこの小説を読んで何を感じたのかが自分でもよく分からない。ただ心が確かにざわついた。
9歳の娘ひなたをスイミングスクールに通わせることにした早苗。
自分もかつてスイミングスクールに通っていたな、と早苗は自身の幼少時を回想していく。
母との確執、伯父との関係、まだ赤ん坊のひなたにぶつけた言葉、録音したカセットテープ。
どうにもならない過去があり、これからも続いてく日常がある。
-
Posted by ブクログ
5篇からなる短編集。
「叩く」の登場人物の佐藤。
闇職の掲示板で見つけた仕事は空き巣の補助だった。
この男、依頼人に裏切られ
高齢女性と一緒に残されてしまったのだが。
「アジサイ」も「叩く」も
最終的にどうなるのか書かれていない。
不穏な空気がヒタヒタと・・・。
最終章「海がふくれて」は幼馴染の男女のやり取りが清々しい。
いやいや、本当にそうなのか。
どこかに隠されているブラックな部分を見落としてはいないか。
(ブラックは波?)
つい、そんなことも思ってしまった。
どの章も不穏だけれど、そこで描かれる色や光、匂いなどが
頭の中でパーッと広がり楽しかった。 -
Posted by ブクログ
人の心情の深いところを存分に味わえる本。
5つの短編集で構成されている。
叩く アジサイ 風力発電所 埋立地 海がふくれて
「叩く」は闇バイトに足を突っ込んだ人が、強盗に入った家で仲間に裏切られた所から始まる。
自分がどうするのか、何が正しいのか、ぐるぐると考えている訳だけど、とてもリアル。
他の話も、ちょっとした怪談にも思えてしまう空恐ろしさを兼ね備えている。
アジサイは、アジサイが咲いていく様を美しく描いているだけに、最後のシーンがぞわっとする。
風力発電所は、1番ゾゾゾとしたかもしれない。
埋立地も、一見子供達の悪戯心が呼んだちょっとした冒険話のようだけど、やっぱり怖い。
海がふくれ -
Posted by ブクログ
誰かの人生のほんの一編を覗いてみたら…
いろんな角度から見えてくるものがある、そんな5つの短編集である。
表題作である「叩く」には驚きと戸惑いと見とどけようとする自分がいた。
どうしたいのか、どうするのがいいのか…。
闇バイトに手を染めた若者が押し入った先で、老婆の横で転がされていた。
猿轡をされ、結束バンドで後ろ手に縛られた状態の老婆がじっとこちらを見ている。
いっしょに押し入った仲間に殴打され気を失っていた若者は、どうするべきか…。
「アジサイ」庭にアジサイが咲いた日。妻が置き手紙を残して実家に帰った。
理由を考えたけどまったくわからない。
連絡しても出ない。
アジサイはいつまで -
Posted by ブクログ
ネタバレこれが純文学だったことに気づいてびっくりする。帯だけ読んで、てっきりエンタメかと思っていた。
叩く
受験問題とか、国語のテストに出そうな話。
佐藤の心理を答えさせられそう。
闇バイトで強盗をした佐藤。組んだ塚田に殴られ、気付くと被害者の老婆と共に現場に取り残されていた。顔を見られた老婆を助けてやるか、殺すか、人生の折々を思い出しながら佐藤は悩む。
老婆の家の鳥かごには、2羽の小鳥がいた。佐藤は鳥Aと鳥Bと名付ける。鳥Bは片側の風切羽がまだらに抜けていた。
悩んだ佐藤は、50円玉を畳に落とし、表が出たら殺すと決める。しかし落とす前に鳥の悲鳴が。見ると鳥Aが鳥Bの風切羽を毟っているのだった。
-
Posted by ブクログ
バンドサクセス小説ですが、純文学要素が多大に入っているのでちょっと何言っているか分からないという部分も沢山ありました。でもバンド小説として序盤はとても興味深く、あるある要素も含めて面白かったです。
次第に訳の分からないバンドになってしまって、読んでいてどんな音楽やっているのか分からなくなってしまいました。
序盤はオルタナ系で曲がメロディアスで歌謡曲っぽい親しみやすさがあるようだったので、ウイーザーなんかを想像していましたが、シアトリカルな要素が多くなってきて、ゴスっぽくなったり、ナパームデスなんて言葉が出て来たり、どう考えてもリスナーはドン引きだと思います。牛の頭蓋骨被ったりようわからん。