トーマス・セドラチェクのレビュー一覧
-
大野和基 / ポール・クルーグマン / トーマス・フリードマン / デヴィッド・グレーバー / トーマス・セドラチェク / タイラー・コーエン / ルトガー・ブレグマン / ビクター・マイヤー=ショーンベルガー3.4 (10)
Posted by ブクログ
最悪のシステムの中の最善のシステムである、資本主義について、情報技術によってますます加速し、変容をしていく先に何が待っているのか。2019年の断面で7名の経済学者が未来を予測した書
キーワードは以下です。
米中の対立
資本主義の修正と変容
富の再配分
人工知能の発達と普及、そして雇用への影響
目次
プロローグ 「未完」のその先を求めて
Chapter1 ポール・クルグマン 我々は大きな分岐点の前に立っている
Chapter2 トーマス・フリードマン 雇用の完新世が終わり、人新世がはじまる
Chapter3 デヴィッド・グレーバー 職業の半分がなくなり、どうでもいい仕事が急増する
Ch -
Posted by ブクログ
前作がとてもためになったため、本書にも興味を持ち購読。
著者は本書執筆目的として
「経済のシステムにより生じた精神的・実在的な深淵へと読者を案内するため」
と述べている通り、過去と現在の経済動向を心理学や哲学を絡めて解説している。
『予言』をテーマにした項が、コロナ禍に加えて政権の暴走で疲弊する日本の現状を表しているように感じた。
「人間は何かに理由を求めたがる」
「国家の非常時には国民が低俗な情報を信じ、誇張して伝える」
怒りに満ちたネットニュースへのコメントや、根拠の乏しい陰謀論。論理的にこういった現象を紐解いていくと、現状がアホくさく見えて来てしまう。
これからも読む経済本はよ -
購入済み
経済思想史です
経済の思想史というべきものです。
経済学の知見が少なくても理解はできます。でも、経済学の知見があればあるほど、より楽しく読めると思います。但し、著者の考えがすべてとは思いません。
また、一つだけ、コロナ対策で評価の高い権威主義的国家での経済についての記載が少ないように思えました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレヘブライ人の善をなす理由をそれ自体におこうとする思想、これは神という彼岸に現象の理、因果性、意図を求めようとすることによる悩み、矛盾を解決しようという試みが始まり。彼らの悩みは、問の置き方の掛け違いに過ぎぬのではないか?
ギルガメシュは現象の理不尽さを見て、それが善か悪かといった倫理問題に発展することはない。神は気まぐれであり、洪水の理由は悪行ではない。現象に善悪上の因果性を求めるという奇妙さ。そこに悪行があったのではと勘ぐる陰湿さ、弱者の理論。
この一見した倫理上の矛盾への悩みが倫理を超越した理論へつながる。例えばルカによる福音書を見よ。敗北者の恨み、妬みが結晶化している。彼らがアブラハムは -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりの書評です。表面的なテクニックに留まらず「あるべき」という倫理を追求することは、改めて仕事に当てはめる必要があると感じさせられました。
本書は、経済思想は本来、哲学、宗教などと密接に関連し、常に「倫理的な規範」「善と悪」の価値判断と不可分であるが、現代の主流派経済学は分析的アプローチと数学モデルによってこうした倫理と決別したように=「価値中立的」に見える。しかし、実は「効率性、完全競争、高成長」「快楽追求・効率至上主義的」に価値を置いているとし、リーマン・ショックの問題も契機に、物質的反映がもたらす幸福を躍起になって追い求める「経済成長」よりも巨額の債務に依存しない安定性がより重 -
Posted by ブクログ
この本は作中にも書かれているように「機械論的・強権的な主流派経済学に対する批判の書」です。つまり、現在の経済学にありがちな数式等を駆使したものではなく、数式で表すことの出来ない倫理、哲学を土台にした経済学の本であると言えます。私自身もこの作者の意見には賛成で、物理学等と違い、経済学は人間の行動を相手にした学問であり、そこには倫理学、哲学だけでなく、社会学、心理学等複雑な要素が沢山絡んでいます。その複雑な要素を数式だけで表すのは到底無理な話であり、実際問題現実世界においても様々な経済学の理論はあれど幾度となく金融危機が生じています。経済学は全てを数式で表そうとはせず、数式で表せる部分とそうではな
-
Posted by ブクログ
現在のウォール街の問題をギルガメッシュの壁から語り起こす経済学についての一大叙事詩です。道具としての経済学はいかに近年のものであり、経済が人間とか社会に向き合う学問である限り、「倫理」からは目を背けてはならない、という熱い想いが一貫されています。「神の見えざる手」の元祖とされているアダム・スミスに対してさえ「国富論」より「道徳感情論」の作者として光を当て直しています。キーワードとしてアニマルスピリットが多く使われていますが、レヴィ・ストロース「野生の思考」を連想してしまいました。また最近、シンギュラリティが間近とされているAIの専門家が、これからはテクノロジーには倫理についての議論が求められて
-
Posted by ブクログ
セドラチェクの著作に触れたくて読んだ。先に続編から手に取ってしまったが、特に問題はない。本作は、ユングやフロイトの精神分析や、ギリシャ神話、聖書、その他の寓話などから、現代における人類の経済活動を読み解こうとするもの。
リリスの話が面白かった。アダムとイブのイブよりも先に登場していた女性。ー リリスは神話に出てくる中で、「抑圧されている」という感情をもった最初の人物だ。抑圧にまつわる描写は、もうひとつの古い文献にも登場する。メソポタミア地方で生まれた世界最古のギルガメシュ叙事詩がそれだ。ウルクの民は、専制君主ギルガメシュからの抑圧を感じていた。ギルガメシュが民に、町を囲む壁を築くよう強制した -
ジャレド・ダイアモンド / ブランコ・ミラノヴィッチ / ケイト・レイワース / トーマス・セドラチェク / レベッカ・ヘンダーソン / ミノーシュ・シャフィク / アンドリュー・マカフィー / ジェイソン・W・ムーア / 大野和基3.5 (4)
-
ジャレド・ダイアモンド / ブランコ・ミラノヴィッチ / ケイト・レイワース / トーマス・セドラチェク / レベッカ・ヘンダーソン / ミノーシュ・シャフィク / アンドリュー・マカフィー / ジェイソン・W・ムーア / 大野和基3.5 (4)
Posted by ブクログ
資本主義に対して各識者が色々な主張をしているが、中には反対するような論説もありそれぞれが論理だっているので難しい問題なのだと再認識。脱物質化で環境問題にも対応できると言っているアンドリューマカフィー氏の章だけハテナがたくさんあった。人類が利用している資源量は近年になって減ってきているという主張だが、そもそもが採りすぎですでに環境破壊が相当進んでいるのに、どれほど利用資源量が減ってるからOKと言えるのだろうか?さすがに今までと同じ経済活動で良いとは言えないと思ったが、本を読んでみたい。
原発問題は「化石燃料に比べればマシ」という一方、「長期的なリスクあるからダメ」というところで、やはり政治的な決 -
Posted by ブクログ
経済を歴史や倫理、哲学等の観点から深堀りした読み応えのある良書。
現代の数式やお堅い専門用語を並べがちな主流の経済学へ一石を投じる内容になっている。
文章の大半は偉人や古典文学からの引用で構成されており、現代の通説は過去の原則で成立している事を理解させてくれる。
知性は情動の奴隷であり、「見えざる手」は人間の情動で成立している。
人の強欲さが現代の継続したGDP上昇の源泉となっている。
様々な観点から経済学を捉えてみたい。
そのためには一見関係なさそうに思える歴史や心理学にも目を向けてみよう。
そんな気持ちになれた、良い読書体験だった。 -
大野和基 / ポール・クルーグマン / トーマス・フリードマン / デヴィッド・グレーバー / トーマス・セドラチェク / タイラー・コーエン / ルトガー・ブレグマン / ビクター・マイヤー=ショーンベルガー3.4 (10)
Posted by ブクログ
色んな視点があって面白い。
現代社会を憂えている点では一緒。
個人的には、フリードマン、グレーバー、ブレグマン、ショーンベルガーの思想にかなり共感を覚えた。それぞれの著書を読んで、より詳しく勉強しようと思う。
以下、個人的なメモ(ネタバレ?)
ポール・クルーグマン
富の集中は防がなければならない。
資本主義による経済不平等をどこまで是正するか。政治の話。
トーマス・フリードマン
「Average is Over」格差拡大で、平均的では不十分で、常に平均以上になることを志向しなければならない。
「creativity,collaboration,comunity,coding」が必須スキル -
大野和基 / ポール・クルーグマン / トーマス・フリードマン / デヴィッド・グレーバー / トーマス・セドラチェク / タイラー・コーエン / ルトガー・ブレグマン / ビクター・マイヤー=ショーンベルガー3.4 (10)
-
Posted by ブクログ
前書は、経済を「善と悪」の視点からその西洋における歴史と成長の要因を検討・分析したが、本書では、現実の経済を人に見立ててその精神分析をしようというものである。本書の内容について著書の中で触れているのでそれを引用してみよう。
「この本は経済を心理学的な視点から見ようという本だ。だから、心理学がするような質問を次のようの問いかけてみたい。システムとしての経済はいつになったら、なんの世話も助けも借りずにやっていけるようになるのか? いつになったら自分自身と、そして自分自身の問題と折り合いをつけられるのか? 経済という肉体は、いつ成長を止めるのか? いつ大人になるのか? 健康な子どもがすくすく -
Posted by ブクログ
チェコ人の経済学者による、経済論。
歴史を紐解き、聖書や古代ギリシア、ローマにおける哲学、倫理学、数学等と経済学との関連を明確にし、善悪を含めた倫理の要素と経済学とに焦点を当て論述している。以前は倫理的要素が経済学でも大きく論じられていたが、現在は経済学と倫理学、哲学とは切り離されている。善悪の観点を排除した現在の経済理論は、目的を見失っていると批判している。常に進歩と発展を追及している資本主義のあり方に警鐘を鳴らす著者の考え方は理解できた。
「よい経済学者であるためには、よい数学者であると同時によい哲学者でなければならない。経済学は数学に肩入れしすぎて、人間的な要素をおろそかにしてきた」 -
-
Posted by ブクログ
無味乾燥で数式とCeteris paribus(他の条件が一定なら...)のオンパレードとなった経済学を、倫理と哲学の視点からRe-buildを諮るユニークな一冊である。
アダム・スミスの代表的著書が『国富論』と並び『道徳哲学論』であることを考えれば当然なのだが経済活動と道徳は呉越同舟である。しかし皮肉なことにアダム・スミスを契機に無機質化した経済学に再度有機的要素の復権を試みる。ギルガメッシュ叙事詩や新旧約聖書、ギリシャ哲学のなかに経済学的要素を見出し、特にマンテヴィルの「蜂の寓話」の非効率非対称だからこそ経済は発展する例えは示唆に富む。
「不足感が不足を生む」「数学はエレガントに創って