上田岳弘のレビュー一覧
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作者の作品は、芥川賞を受賞した「ニムロッド」から、何作か読んでいる。「ニムロッド」でもそう感じたのだが、癖のある(私は嫌いでは無い)、旧来の日本の純文学の流れとは少し異なるような印象の作品が多いように思う。また、その結末がいずれもどこか釈然としなかった(ような印象である)。
今作の存在をどこで知ったのか?、自分の記憶でははっきりとはしないが、たぶんいつも目を通している日経新聞土曜版・読書欄からのつながりだろう(作者の氏は、ここ数週間、連載「私の読書術」をしていた)。
読み始めて、う〜んやはり語り口調は変わっていないな…とも思ったのだが、私が読んだ何作かと比較して、「フィクションだけれど現実 -
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読書開始日:2022年1月6日
読書終了日:2022年1月13日
所感
ニムロッドでも思ったが、著者のシステマチック、ロボットのような精密かつ無機質な文章は、スルスルと脳に入ってくる。
【塔と重力】
人間削いでいくと座標になる。
神も座標か。
水上の小説には頷けるところがある。
生まれ落ちた瞬間の核は同じで、その後から誰かの影響という肉がつく。
だからこそ途中で美希子が世界に散らばっていると考え出した。
文章中にもあったが、おそらく美希子は精神病で、主人公もまた精神病。
美希子と重ねることができた葵、その葵とのこどもへの祈りがいい。瓦礫に埋もれた経験から実生活を実感出来ない主人公が新たな思考に -
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ネタバレ又吉さんの『火花』を破って三島賞の栄冠に輝いただけのことはあって、とても面白かったです。しかしどこまでを書いていいのかが難しい作品でもあります。以下の拙文をお読みいただくよりも、まずはまっさらな状態で本書を読んでいただくのがいいかと。
一言でいうと直木賞を獲った『月の満ち欠け』と同じく生まれ変わりの恋物語なのですが、スケールの大きさが全然違います。あちらはせいぜい10数年間のみが舞台であるのに対し、本作はのスパンは10万年。最初は石器時代のクロマニョン人、二人目は戦時中ナチスに迫害されたユダヤ人、この二人が手にすることができなかった「私の恋人」を、現代日本に生きる主人公の井上由祐が手に入れる -
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併録の3編が互いに関連している、というだけでなく、
三島賞以降の過去作を彷彿させる箇所もいくつかあった。
その意味するところは、「私とは何者なのか」「私は何処にいるのか」という命題に対する、新しいアプローチなのではないか、と思う。
「私とは何者なのか」という問いは純文学の往年のテーマであり、寧ろ存在意義であり、強弁すれば全ての小説のテーマはそこに行きついてしまうのかもしれない。
私は私以外に存在せず、私が認識するから世界が存在するのであり、私自身が私の存在を否定することはできない、私を存在せしむるのは他ならぬ私自身である、つまり「我思う、故に我在り」こそが、永らくその命題への唯一の回答だった -
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ネタバレニムロッドの作者の短編作品集。
片翅の蝶
大人が付くべき、優しい嘘について。
そして、なぜ人間に物語が必要かについて。
一方、その物語は必要なかったのかもしれないとも思う。子供に、そういう事実を教えてあげたっていいじゃないか。そういう気遣いが、世の中の見方を綺麗なだけのものにしてしまうのかも。
「少年の日の思い出」ヘルマン・ヘッセのエリオットの、大人版のようだ。
下品な男
下品な男は、最後に自分の物語を語った。
そしていなくなった。
幸せの形は一つだけど、不幸せな形は人の数だけある。上品の形は一つだけど、下品の形はさまざま。
想像力ある人間の方が、下品をより深みのあるも -
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“そういうこっちゃないんだよな。俺は使われているわけじゃない。使っているわけでもない。ただ、今あるようにあるだけなんだ。そして、昨日よりもよくなっている。例えばね、昨日の自分に比べて、この辺の道に詳しいし、空を見ればどう天気が変わっていくのかわかる。筋肉も随分ついた。きっと配達員をやめても俺は生きていける。その確率が昨日よりも少し上がっている。俺もどこかでこの仕事をやめる時がくるかもしれないけど、それは大きな問題じゃないんだ。この方向で積み重ねていけば、その内に俺は国がなくてもやっていける自分を得る。国がなくなっても、配達的なものは続くからね。だから、末端とか、システムとか、そういうこっちゃね
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わからなさが残る。けれどなんだか響く言葉もあり、なんとなく『東京都同情塔』を思い出す。
バベルの塔を思わせる「塔」
「駄目な飛行機コレクション」
「小説」、そこに「ビットコイン」
欲しがる人が多ければ多いほど価値の上がる実体のないもの。
「駄目な飛行機コレクション」は、人間の欲望が形になったもの。縛られていることと自由のはざまで、それぞれどこを突出させたかで、いろんな駄目な飛行機コレクションが出来上がる。
「欲望」、「人間」、「根源的な衝動」
そしてその可能性について。
『東京都同情塔』がよかった人には読んでみてほしいです。
再読記録で印象に残った内容・言葉