市川朔久子のレビュー一覧
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本書は、シリーズ『おしごとのおはなし』ということで、物語は二の次なんでしょと思っている、そこのあなた、物語だけでも充分に読む価値のある、美容師の仕事の素晴らしさを知りながらも、女の子の成長を描いた作品なのです(小学校中級から)。
しかも本書の場合、『しずかな魔女』や『小やぎのかんむり』といった素敵な物語を書かれてきた市川朔久子さんと、私の好きな種村有希子さんの色鉛筆の素朴な愛らしさが光る絵による、最高のコラボレーションである点も見逃せないけれど、物語の始まりは決して明るいものではありません。
いつも大切にしている長い髪を、お母さんに結んだり編んだりしてもらっていた、女の子「かのこ」 -
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以前、ブク友の111108さんが読まれていたのを思い出し、久々の市川朔久子さんだったが、まさか、こんなにシリアスな内容だとは思わなかった。
夏休みにおける、自然がいっぱいのお寺生活と、山羊や新しい仲間達とのふれ合いにより、日々の生活って、こんなに楽しいものだったんだと、改めて実感する様子も清々しく、読み所なのだが、私は別の視点で書いてみようと思います。
それにしても、本書の主人公「夏芽」や「雷太」の父親は(山羊の匂いに不快感を顕わにしていた母親も)、極端過ぎる例として書いているのかもしれないが、実際に、こういう親いるんだろうな。
私の今の職場では、よく親子連れを見るが、時折、子供にとっ -
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序盤は、あまり物語に入り込めず、読むペースが遅かったのが、途中から面白くなってきて、最後には良い話だなあ、と思えました。
その理由を考えていると、私が主人公の「橘論里(ろんり)」の視点で読んでいたことに気付きました。
確かに、序盤の論里は、母のことや、父と妹の世話をしなければという生真面目なところもあって、何となく投げやり気味な雰囲気を、読んでいる私も感じ取り、やり切れない気分でいたのだと思う。
しかし、学校の創立二十周年記念行事イベントの実行委員の一人に選ばれた後に、何気に言った自らの考えを、本当に実現させたくて率先して動いている姿を見ていると、楽しそうな様子が文章から感じられて、それ -
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タイトルは「よるの美容院」。
お店の名前は「ひるま美容院」。
ネーミングの妙の面白さもあるが、タイトルは、主人公の「まゆ子」にとって、とても大切な意味合いを持つ。
まゆ子の身に起きた異変は、シリアスに重くなりがちなテーマであるが、それを、のんびりと温かく描いているところに、この作品の良さがあると思いました。
そこには、周りの温かい人達に囲まれながらの暮らしもあるし、「ナオコ先生」のまゆ子との距離感も良い。役割をきちんと与え、見守りつつ、そっと助言をしてくれる。「しずかな魔女」もそうだったが、「気づき」を促すことが、本人にとって重要なのだと思いました。それがどんなに辛いことでも、共に寄り添 -
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まず表紙がとても可愛い。そしていわゆるYA(ヤングアダルト)の本なのでとても読みやすいです。すんなり読めるので軽い読み物と思いがちですが、こういう児童文学寄りの本には傑作が多数含まれています。むしろ名作の宝庫と言っても過言ではありません。
で、この本は父親からモラハラを受けている女子中学生が、山寺のサマースクールでひと夏を過ごす話です。
一見爽やかで優しさに溢れている気分のいい本なのですが、ちりばめられたモラハラ、DV、ネグレクトがちくりちくりと胸を刺します。当然YAなので直接的な描写は無いです。基本希望にあふれているのですが一緒に夏を過ごす5歳の放置子の存在も切なく、夏が終わった時に皆離れて -
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地元では人気の中高一貫の女子校の中3の万木夏芽(まきなつめ)は、夏休みを由緒ある静かなお山寺でサマースティに参加することに。しかし、行ってみたら参加者はたったの一人。お寺には住職と見習いの穂村さん、住職の孫の美鈴さんがいた。そこに、DVの父親から逃れてきた母親が、勝手に置いて(預けて)いった5歳の雷太も加わって過ごすことに。
やがて寺の草刈りのヤギ3匹と夏休み中ヤギの管理をすることになっている高校生の葉介も加わった。
夏芽の生活に不穏な空気を抱きながら読み進めていくと、夏芽がサマースティに参加したわけが、どんどん明かされ納得と同時に辛くなる。そして、夏芽が暖かい人たちに囲まれて、辛い思いをして -
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家庭が安住の場所ではない、または学校も同じく、というような設定の話ばかりの昨今である。
この話も私立の女子校に通う一見恵まれた環境にいるように見える主人公が、実は苦しい心を抱えて生活している、という設定だ。
そんな状況から抜け出したくてお寺のサマーキャンプに参加。参加者は自分だけだが、お寺を取り巻く人々と生活にやっと普通に息をする感覚を取り戻す…。
主人公と同年代の子ども達にとって、この手の本はどうなのだろうか?といつも思ってしまう。主人公の成長を描いていて、心を打たれるのだが、当事者世代には見たくない現実を再び見せられる感じがしないだろうか?だから思い切りフィクションのラノベに流れてしまうの -
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中学3年生の夏芽は、ケガの療養のために自宅にいる高圧的な父から逃げるために、山寺のサマーステイに参加することにした。そこには、ちょっと変わった(不真面目な?)住職と、その孫娘、修行中の若い僧侶がいたが、参加者は彼女一人だけだった。最初の晩、彼女は自分の布団の中に眠る子どもを発見する。それは、母親からここに隠れているように言われた5歳の男の子だった。彼らの奇妙な同居生活(サマーステイ?)が始まる。
話が進むにつれ、かわいいタイトルと表紙の写真からは想像もできない重い話が広がる。その重さが、田舎の美しい光景と人々のやさしさに晒され、癒されていく。
ユーモアを挿み込みながら心の痛みと向き合うとこ