市川朔久子のレビュー一覧
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家庭内で父親のモラハラに悩む中3の夏芽は、耐えられず、夏休みを利用して寺のサマーステイに行く。そこでの体験を通して、生きていくうえで大切なことを学ぶ。
読みながらメモを取らなかったので、色々と取りこぼしている気がしますが、メモを取ることで途中で意識を途切れさせたくないほどに、本の世界に引き込まれました。親子関係、摂食障害、親からの虐待、子供を亡くすこと…など、様々な深刻な問題が出てきますが、それぞれの事象のことだけを書いているのではなく、あらゆる問題の根底に必要な力、理解、想いなどを教えてくれています。大人が読んでも考えさせられたり救われたりしますし、子供も、早い段階で知っておくと助けに -
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ネタバレ本読んでうれしくなってピアノに向かって曲を作りたくなったのは久しぶりかも。ラストで、女の子が互いに手をぱちんと打ちならす、きれいな終わり方。余韻を楽しみたくなる。
「しずかな魔女」もそうだったけれど、ここでも放送部のコンクールに向けて、自分たちでドラマをつくり、ニュースの原稿を作成しと、物語の中で物語を語る構成になっている。そのドラマやニュースの中身が、登場人物の抱えている様々な問題と響きあって、深く心を打つ。
最後の放送で流すことになっている、オリジナルな曲の歌詞も何だかよい。
こういう物語のリアリティーって、登場人物が抱えている問題の解決の度合いによって決まってくる部分も大きいと思う。あま -
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奇妙な置き手紙を残して出て行った母親、血のつながらない父親、その気はなかったのに選ばれた記念行事実行委員、学校に来ない幼なじみ。中学生の論理の日々は当たり前だけど当たり前には過ぎていかない。
物語は論理の目を通して書かれます。一人称の物語は語り手が知らないことは書けない。語り手が他者に踏み込まなければ、他者の心の中はわからない。(中には超能力者か!? と思うような察知力を発するものもありますが)
そこがこの物語では丁度いい距離感となっています。
何故母親が家を出て行ったのか。父親は自分のことをどう思っているのか。よく知っていると思っていた友達の全く知らない顔。家族のことも友達のこともわからな -
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もう50歳手前のいい大人ですが、ずっと私も母を心から愛せないことに罪悪感を感じていた。宗教が、親を敬えとあまりに言うので、本当に辛かった。
でも、こんな風にいい子でいられる場所は、きっと誰にもどこかにあるはずだから、諦めないで生きて少年少女!
父親を死ねばいいのにと思ってしまった事に罪悪感を感じながら、家に居たくなくて、サマーキャンプを探すなつめ。交通事故で入院していた父が間もなく退院だと聞いただけで、友人と楽しく食べたたい焼きが、せり上がってくる…吐かないと。。
なつめが選んだのは、田舎の、お寺でのサマープログラム。料金が安く、家から遠かった。。
サマープログラムの参加者はなつめ一人 -
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ネタバレ同業者が何人か「良かった」と言っていて読み始めた。
表紙のイラストの可愛さに反して、テーマは重たい。
夏芽は言葉で父に支配され、そのことに反感を持ち、そんな自分が汚らわしいと自分を責める。
雷太は父に暴力を振るわれ、バカと言われ、自分はダメな子と思っている。
そんな二人がお寺で出会う。
夏芽は親から逃げるように参加したサマーキャンプ。
雷太は母親から突然預けられ。
しかし、傷ついた二人に対し、お寺の人たちは穏やかで優しかった。
ひょんなことから飼うことになった3匹のヤギとその世話役の葉介も加わったお寺の夏。
夏芽はだんだん摂食障害の症状も収まり、雷太は子どもらしく伸び伸び過ごすように。
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中三の夏休み、『夏芽』は父から離れたい一心で、お寺のサマースティを申し込んだ。
着いて見れば、とんでもなく田舎の山寺で、参加者は夏芽一人きり。だが、そこへ母親に置いていかれた小さな男の子『雷太』が加わり、草刈りに駆り出されたやぎの『後藤さん』と世話係の高校生『葉助』と…。
悩める子どもたちに送る心暖まる物語。
虐待、摂食障害など、心身ともに傷つけられた子どもたち。中学生の女の子の目線で書かれているので軽いタッチではありますが、とても辛い話です。それでも情景描写はとても美しく、出てくる食べ物もとても美味しそう。読んでいるだけで、こちらも元気がもらえそうです。
きっと世の中には親との関係に苦し -
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講談社の児童文学新人賞受賞作品。
つらい記憶のせいで声が出せなくなってしまった主人公のまゆこは、昔ながらの美容院をやっているナオコ先生のもとで暮らす。
そこでの生活を通して、自分の傷と向き合い、人の優しさに触れ、少しずつ心を開いていくまゆこの姿や、ナオコ先生の優しさの奥にあるものが明らかになっていく展開に、ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまいました。
そして、作品に漂う優しさに、気が付けばボロボロと涙をこぼしていました。自分が具体的にどこに感動したのか分からない、だけど、思いやりにあふれた日常の積み重ね、そして人の優しさが、人の心を救うんだということを、じんわりと実感させてくれ素敵な作品でし