あらすじ
橘論里は中学2年生の男子。母親と、血のつながらない父親と、妹・有里と暮らしている。学校では、開校20周年記念の行事をやることになり、論里は実行委員にさせられる。校庭に描くことになった冬の星座に思いをはせながら、論里は自分と自分をとりまく人たちのことを考えはじめる。生まれるときも死ぬときもひとりきり。だけど、だれにも迷惑かけずに存在できるものなんか、どこにもない――。
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Posted by ブクログ
うわあ〜とてもいいお話だった。何かに真剣に打ち込むって素敵だな。みのりおばさんも、ましろのお母さんも良いことを言う。大切な人が居なくなってしまうのは「いつか」。でもそのいつかは突然やってくる。その突然を家族と乗り越えて、尚且つ学校行事でも周りと力を合わせて成功に持っていった論里の成長が素晴らしい。良い経験をしたね。中高生向けの本だけど、大人が読んでも読み応えがありました。
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奇妙な置き手紙を残して出て行った母親、血のつながらない父親、その気はなかったのに選ばれた記念行事実行委員、学校に来ない幼なじみ。中学生の論理の日々は当たり前だけど当たり前には過ぎていかない。
物語は論理の目を通して書かれます。一人称の物語は語り手が知らないことは書けない。語り手が他者に踏み込まなければ、他者の心の中はわからない。(中には超能力者か!? と思うような察知力を発するものもありますが)
そこがこの物語では丁度いい距離感となっています。
何故母親が家を出て行ったのか。父親は自分のことをどう思っているのか。よく知っていると思っていた友達の全く知らない顔。家族のことも友達のこともわからないことばかり。
語り手(論理)がわからないことは読者にも開示されない。でも読者は論理とは違うのだから、論理とは別の思考や経験から読み取ることもあるでしょう。そして論理が気付いたことも、全ては開示しない。その作品と読者との距離感も丁度いい。そのことを示唆するエピソードもさり気なく素敵なのです。
それぞれの登場人物が、その背景に大きな物語を背負っていることが垣間見られます。それこそそれぞれが主人公として物語を背負えるほどに。そのことが物語の骨格となり支えているから、淡々と進む物語に心を委ねて読むことができるのでしょう。星が繋がり星座となるように、人が繋がり物語をつむぎ出します。実に心地好い読後感でした。
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ある日、母は、中学2年生の論里たちにこんな手紙を残した。
「いつか」は、いつ来るのか。
必ず来ることは、信じていました。
でもそれがいつかはわかりません。
といって、ただ待つだけでも、つまりません。
そしたら、いいことを思いつきました。
こちらから迎えにいけばいいのです。
「今」を「いつか」と変えればいい。
というわけで、今日がその「いつか」です。
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序盤は、あまり物語に入り込めず、読むペースが遅かったのが、途中から面白くなってきて、最後には良い話だなあ、と思えました。
その理由を考えていると、私が主人公の「橘論里(ろんり)」の視点で読んでいたことに気付きました。
確かに、序盤の論里は、母のことや、父と妹の世話をしなければという生真面目なところもあって、何となく投げやり気味な雰囲気を、読んでいる私も感じ取り、やり切れない気分でいたのだと思う。
しかし、学校の創立二十周年記念行事イベントの実行委員の一人に選ばれた後に、何気に言った自らの考えを、本当に実現させたくて率先して動いている姿を見ていると、楽しそうな様子が文章から感じられて、それに周りも影響されて、最終的には素敵な思い出になっていく過程に、すごく納得させられました。青春っていいなあ、と。
最初は、あまりやる気のなかった委員の面々も、何をやればいいのかを明確にさせることで、効率的に行事の準備が進行するところには、意外にも、大人が読んで、ハッとさせられる点があるし、論里が三歳の頃に、母が結婚したお父さんと、その後に生まれた妹の「有里(あり)」との微妙な関係も丁寧に描いてあって、家族の在り方を考えさせられました。もちろん、母の真相についても。
また、他の登場人物については、論里の友達の名前のとおりの「元気」に、ぶっきらぼうだけど、良いところもある「大和」に、「進藤先輩」、「谷先生」と、個性的な面々で面白かったです。それから、「水原白(ましろ)」と論里の、静謐な心のやり取りにも注目ですよ。
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児童文学というのは大人が見てこりゃあいい本だと思ったものが出てくる感じがするので、全体的に外れは無いような気がするし、シンプルで奥深いものが多いような感覚が有ります。
本作は親も一人の人間で夢も希望も有るという事と、自分の力は何かに取り組む事で初めて引き出されるという事がよく描かれています。それが説教臭くなく物語に昇華されている辺りとてもいい本だなあと思いました。
文体的には子供っぽいという事は特になく、普通の青春成長小説として評価出来ます。
変なお涙頂戴が少ないのも児童文学の好きな理由かもしれません。
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学校の催しで、校庭にキャンドルを並べて星座を描こうとする中学生達。星とキャンドル。どちらか1つでも感動を呼ぶのに、この2つの合わせ技は強力。家族の事、友達の事、中学生なりにいろいろあるけど、辛い事も嫌な事も乗り越えて前向きに進んで行く。キャンドルの灯りと星空は皆の心を結びつけ、美しいクライマックスとなる。私自身もキャンドルの灯りに心を救われた経験があるので、大いに共感を覚えて感動した。そして、皆が宇宙の事を考えていたら戦争など起こらないというある数学者の言葉を思い出した。児童書ではあるが、大人も十分に感動する素敵な話。
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良い。かなり良い、ずっと良い。安定のYA小説。
迷惑かけないでいつづけるなんて、そうだよね、無理だよね。キャンドルナイトで星座ってのもいい、美しいしロマンチック。紙コップの裏に願い事書くのもね、いいよね。
このくらいの年の子って、いろんな悩みがあると思う。一人っ子だと言いながらも次男な元気。元気と名付けられたその意味を思うと切なくなるし。本当の父親を知らない主人公の論里だってそうで、白とかいてましろちゃん。わりとDQN、や、今風な名前が連なるけれど、登場人物がみんな不器用ながらも一生懸命な姿が愛おしい。とても良質なYA。
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創立記念行事の委員になってしまった論里。
最初はやる気はなかったのだが案が採用され、中心に進めることに。
行事の運営を通して中学生の成長する姿が見えて心地よい。
母の行動は理解できない。
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オリオンという言葉に惹かれて手に取りました。
少し複雑な家族関係で、ちょっと変わった家族の論理一家と論理の学校生活を描いた作品。
バラバラとしていたものが、最後一つにまとまる感じがして良かった。ちょうど論理たちの行事が、一つにまとまっていく様子とリンクしている気がする。
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登場人物それぞれが抱えているものがあるが、多くを語りすぎないところがいいのかもしれない。
語り口調で、情景も感情も人柄も、思い浮かべやすく、親しみを持てた。
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お母さんがちょっと身勝手ではないか?と思ったけど、それを差し引いても良い物語だった。
魅力的な登場人物が多く、特に妹の有里がとてもラブリー。
論里がどんどん成長していく姿が微笑ましく、爽やか。「紙コップのオリオン」のシーンは胸が熱くなる。実際に見てみたい。
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母親が書き置きを残して度に出てしまった父子家庭の、四季がめぐるまでを描いた爽やかなYA作品。
明るい母がいなくなった3人での暮らしで生活力をつけていったり、学校の創立20周年記念行事の実行委員になったりと、そんな中で自分も含めた周りの人々を見つめなおしていく主人公の論理くんがとても好印象だった。
淡い気持ちを寄せることになる白ちゃんの名前の由来や、天真爛漫な妹ちゃんの言動には胸打たれるものがある。
ラストの冬の凛とした寒さに映えるキャンドルナイトもロマンチック。
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最初はほのぼのとした話を思い浮かべた。
でも進むに連れ、友達が抱える問題とか、自分自身のことや、家族について考えが及び、決して身勝手にならない主人公に好感が持てた。
妹ちゃん可愛すぎる。
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突然旅に出た母、やさしい継父、虫好きの妹。母を待ちながら暮らす中2の論理はうっかり学校の記念行事の実行委員になりキャンドルナイトを企画することに。夜の校庭に描く星座を思いながら気になる同級生、先輩、家族、人とのつながりについて考えはじめる。
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橘論理(ろんり・中2男子)は実母と継父と妹の有里と暮らしている。ある日、学校から帰宅すると母親は置き手紙を残していなくなっていた。
``「いつか」は、いつ来るのか。
必ずくることは、信じていました。
でもそれがいつかはわかりません。
といって、ただ待つだけでも、つまりません。
そしたら、いいことを思いつきました。
こちらから迎えに行けばいいのです。
「今」を「いつか」に変えればいい。
というわけで、今日がその「いつか」です。
みんな、元気でなかよくね。
では、行ってきます!``
そして、母からかかってきた電話では
「詳しくはWebで!」って。
母不在でも、父は「あんな性格だから」と受け入れ、論理は腹をたてながらも、時には料理をしてみたり、家事も習慣づけてやる。7歳の有里は、寂しがって困らせる事もなく元気だ。
(なんと、すごい家族!)
一方、論理は学校の20周年記念行事の実行委員をやることになる。親友の轟元気はともかく、マイペースで浮いている水原白(ましろ)や、中学になって一匹狼的不良のようになってしまった河上大和らと、ちゃんとやっていけるのか・・・。
でも、記念行事がキャンドルナイトと決まり、論理は2年のまとめ役のようになって動き出すと、だんだん、論理を取り巻く人が、ちょっと違って見えてくる。
ちょっと変わった家庭にいる論理だけど、みんな、それぞれ思いがある。つらさもある、と。
少年の成長物語。
Posted by ブクログ
いやいやかかわっていたはずの、中学校の20周年記念行事の実行委員の仕事にしだいに熱中していく論理。
気ままな写真旅行に出てしまった母の代わりに料理をしたり、学校に来ない幼なじみを心配したり、無口な女の子が気になったり。
ほわっとあったかい、こじんまりときれいな青春小説。
Posted by ブクログ
タイトルと装丁にひかれたYA向けの本書。文化祭にむけてキャンドル・ナイトに励もうとする若人たちの姿は朝井リョウの『世界地図の下書き』のラストシーンを彷彿とさせた。2013/312
Posted by ブクログ
家族や友達との関わりを通して成長していく少年の物語。
読み始めは期待はずれかな?とも思ったけど、いやはやなんとも爽やかな話だった。
キャンドルナイトのイベントとかも参加したくなったかも。
物語の中で目を引くのは、主人公の小学生である妹。
その邪気のなさに脱力するというか、笑ってしまうというか。彼女にかかると、尖った兄のクラスメイトも形無し。
虫やツツジの蜜(私もよく吸った)、そしてチョコパイをこよなく愛する彼女のその朗らかさには、読んでいるこっちの気持ちまで明るくなる。まあ家の中に、なんでもかんでも虫を持ち込むのは勘弁して欲しいけど。
まだ著者二作目だけど、私この人の作品良いと思うなぁ。