小松和彦のレビュー一覧
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内田樹さんの『呪いの時代』を読んで以来、この、現在の日本を覆う「呪詛の念」とは何なのか、ずっと気になっていた。そこで手に取ってみた本書は、妙なテーマでばかり書いている民俗学者による一冊だ。
奈良、平安といった時代に脈打った「呪い」の歴史は興味深く、マンガ家などにとってもこういう本は参考になるのだろうなと思ったが、「呪い」そのものについての著者の分析的考察は少々ステレオタイプで浅いものだった。
「呪い」は日本固有のものどころか、世界各地の未開社会に見られる。そうした「呪い」が、民の宇宙観・歴史観・宗教といかなる関係をもち、コスモスを形成するのか。デュルケームの『宗教生活の基本形態』も、話が呪術に -
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今時は呪いを信じる人はいないと思いたいところだが、そうでも無く昔ながらの丑の刻詣りに似たパフォーマンスをする人がいるのである。
著者は呪うという行為が呪いをかける側の心証だけでも成立する行為だという。そして、呪う側と呪われる側の一方的な断絶した関係は、現代社会のさまざまな人間関係においても見られるものとする。
こうした現代の状況を踏まえつつ日本文化史に置いて「呪い」とはどういうものであったのか、それは現代に生きる私たちの心性にいかに継承され、投影されているのか、さらには呪いを生み出す人間の心性とは どういうものなのかなどといった問題について探っていくとするのが本書の趣旨である。
まずは、高 -
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隣に人殺しがいても、バレなければ神隠しとして解釈され社会は存続できる。隣近所を疑いながら限界状況で生きることを防ぐ人類の知恵。
神格的な理由を付与して社会を持続させる方便、それは魔女狩りであり、サキュバスであり、狐憑きであり、気ぐるいである。
最近、陰陽屋というドラマで、問題を無理やり狐のせいにして調和を目指す話を見ましたが、まさにこれ。神話をなくした現代人はこのスケープゴートがない。それは非常につらいが、いい面もあるので一概には是非の判断はつかない。
ただ、人の想像力というものは根本的に、常に自分や、自分の延長線上の社会を守り持続させるために存在すると思った。 -
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序で神話学や歴史、文化史などの観点から「神話」をとらえ、また1~5章の内容を先取りして触れているので、読み終わった後に又序を読み返したくなる。
1章では能登の旧柳田村に伝わる猿鬼伝説を扱う。猿鬼を退治した神々の変遷を通じて「誰が」「いつ」「どのような視点で」猿鬼や諸神の物語を伝えたのか、また現代に置いてもどのように猿神伝説が伝えられ・創作されているのかを見る。
2章では御伽草子・いざなぎ流祭文それぞれで描かれる「天竺」観を探る。本朝・唐と並び称される天竺であるが、唐とどのように差別化されていたのか、仏教的要素が消えてしまっているいざなぎ流祭文ではどのように語られているのか、について論じる。
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1992年に小学館から出版された同名ハードカバー本の文庫版。「酒呑童子」・「玉藻前」・「是害坊天狗」など、日本の妖怪伝説における著名な妖怪をを紹介し、その背景にあるものを考察する。文庫化に当たっては、ハードカバー版にあった語句の解説がカットされているほか、掲載されている図版が一部差し替えられている。
元々中・高校生向け雑誌の連載であった為、文章は平易で読みやすい。内容も比較的深い点を掘り下げていて(酒呑童子の誕生譚や、是害坊天狗・鬼女紅葉伝説の元ネタなど)、初学者が妖怪伝説を知るにはうってつけである。後半の「鈴鹿山の大嶽丸」・「宇治の橋姫」が(雑誌掲載時の都合もあってか)ほぼ伝説の紹介で終始し -
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歴史とは権力者=勝利者から見たものである。なぜなら権力に屈した者や排除されてきた者=敗者は歴史を残すことができないからだ。そのような敗者は歴史の中で「鬼」と呼ばれてきた。本書では,民俗学者と写真家のふたりが対談を通じて,そのような「鬼」たちこそが実は日本の文化を生み出し歴史を築き上げてきたのだと論じている。
本書では幾つかの側面から鬼について語られている。鬼とは何なのか,そして鬼は社会の中でどのような役割を果たしてきたのか。権力者に敵対し敗れた者たちは社会の周辺に排除され,やがて鬼と呼ばれるようになる。主流をはずれた彼らは独自のネットワークを築き,商工業などで力を蓄えていく。一方で権力者たち -
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初心者の為の妖怪手引書。
絵巻図も掲載され読みやすく面白かった。
また妖怪を詳しく知らない私でも、内容や逸話が細かく記されている印象を受けた。
鬼・酒呑童子(しゅてんどうじ)
妖狐・玉藻前(たまものまえ)
天狗・是害坊(ぜがいぼう)
天狗大魔王・崇徳上皇(すとくじょうこう)
鬼女・紅葉(もみじ)
器物の妖怪・つくも神
鬼・大嶽丸(おおたけまる)
鬼女・橋姫
8つの妖怪を詳しく紹介している。
つくも神がイタズラっ子のように可愛い印象を受けたのは私だけだろうか…。
あとの妖怪の悪行は、欲深い人間にも非はあると思う。
妖怪は逸話や空想上の出来事で終わるもの。
しかし妖怪の習性や感情は人間に -
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