堀内静子のレビュー一覧
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名作と名高い本作。
アルファベット順に殺人が起きるという不気味な謎と、鮮やかなプロットには一気に引き込まれた。
しかし、現代のリアルな犯罪心理小説に慣れた視点から見ると、劇中で事件に巻き込まれていく男の行動や、心理描写のディテールには、どこか物理的・心理的な無理があるようにも感じられた。
だが、読み進めるうちにこれは、当時のミステリが「プロットの美しさ」を最優先にした結果なんだなと納得。
当時は現代ほどミステリ作品が溢れておらず、読者の目も今ほど批評的ではなかったはず。
こうした細かな違和感に気づけること自体、本作が築いた「基礎」の上で、後世のミステリが進化を積み重ねてきた証拠なのだろう。
そう考えると、本作の歴史的価値は微塵も揺らがないどころか、ミステリの歴史の一端にいま自分が触れているのだと気づかされ、興奮で満たされた。
そして何より、この物語の最大の魅力は名探偵ポアロの〈名探偵ぶり〉にあると思う。
世間が用意された完璧な筋道や状況証拠に惑わされ、犯人だと決めつける中、ポアロだけは自身の違和感を信じた。
一人の人間に真摯に向き合い、その言い分に耳を傾け、冷徹なパズルの裏にある真実を見抜いたポアロの姿には、彼の人間味溢れる洞察力が詰まっている。
ミステリの歴史の深さと、ポアロというキャラクターの深い魅力を再発見した。
これこそが、時代を超えて本作が愛され続ける理由なのだと感じた。 -
Posted by ブクログ
被虐待児は全国でかなりの人数に上ると思うが、その中で解離性同一性障害を発症するのはどのような特徴を持った人間なのか。
ビリー・ミリガンは多才で知的にもかなり高かったようだけど、それも関係しているのか。
そもそも人格なんてものがあるのは人間だけで、その人格が分裂していることが良いこととも悪いこととも見なせない。最終的にミリガンが社会の中で生き、生活していけるのならば「共同経営」でも「個人経営」でも「会社組織」だろうと問題は無いと言ったドクターコールの見解にその通りだなと思った。
ミリガンは癌を患い亡くなったようだが、彼が晩年幸せな時間を少しでも多く過ごせたことを願ってやまない。
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ネタバレ 購入済み
最後まで
最後まで犯人がわからなかった。ABC順の名前の殺人が起きて、犯人と思われる人もイニシャルがABCだなんてセンス良い。身代りも用意してキチンと計画したのに、証拠ゴロゴロ出て呆気なく終わるとは。ポアロの推理が始まったところはスラスラ読めた。
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Posted by ブクログ
主人公に据えられているはずなのに、徐々にビリーにうんざりしてしまったのはなぜだろうか。自分の望まないことを回避するように統合と分裂を無意識にコントロールしているのでは?とか、自分が性根では善人なのだと喧伝したいがための正当化なのでは?という気がしてくる。
作中の作家は中立であるように描かれていると思うが、一方で、実際のキイスはビリーに心を寄せていたのではないかとも感じた。
そう感じたのに、ビリーに対して上記のような感想を覚えたのが少し不思議だったけれど、それがこの作品の妙なのかもしれず、また最後の方はストーリーが一進一退だから、そのためかなとも思う。 -
Posted by ブクログ
1977年、ビリー・ミリガンは連続レイプ犯として逮捕された。だが、本人には全く犯行の記憶がない。精神鑑定の結果、彼の中には複数の人格が存在し、犯行はそのうちの一人によるものという事実が明らかになる。初めて『多重人格』により無罪となった男のノンフィクション。
『ザ!世界仰天ニュース』でも放送され、実際の映像も残っているビリー・ミリガンという人物について、本人へのインタビューや関係者の証言をもとに『アルジャーノンに花束を』で知られる作家が記録作品とする。
ビリーは幼少のころ、父親の自殺を目撃したころから精神の分裂が始まってしまう。そして分裂が加速したのが、再婚相手となったチャーマーによる虐待やサディスティックな性的暴行や暴言だった。
ビリーの体の中では、暗い中に白くスポットが当たったような部分があり、その周りに何人もの人格が待機している。そして、スポットに進んだ人格が表面に現れ、意識をもつという感覚をもっている。
基本人格であるビリーは、高校生のときに自分が知らない間に時間が過ぎていることに悩み、自殺を試みる。しかし、学校の屋上から飛び降りる寸前で、レイゲンという人格がスポットに現れ、自殺を免れて以来、ビリーの人格は眠らされることとなる。
ビリーの人格の何人かを紹介すると、誰がスポットに出るかをコントロールする「アーサー」。アドレナリンの流れを自在に操り、女性と子供を守る「レイゲン」は、危険な場所では優位に立ち、暴力的な行為をすることもある。「アレン」は口先がうまく、他人を巧みに言いくるめることができ、クリスティーンは3歳で、他の人格から愛されている。
アーサーがスポットに出ることを許している10人の人格の他に、好ましくない特色をもつため、アーサーによって「好ましくない者たち」とされ、スポットに出ることを許されていなかった13人の人格には、軽犯罪を繰り返す「フィリップ」や強盗を計画する「ケヴィン」、自慢や気取りで努力をしないマーティンという人格もあり、23人が統合された人格である「教師」は、他の人格が身につけている技や知識を操り、ユーモアある人物とされている。
YouTubeで実際の映像も見てみたけど、すごく不思議で興味深い内容で、人間の精神や脳、心の働きや可能性をも感じる内容だった。
実際のビリー・ミリガンは、今も健在のようだが、治療の結果、基本人格であるビリーがスポットをコントロールしていて、スポットの周りには他の人格もいるけど、もうスポットには出さないようにしているらしい。
今回上巻を読んだだけだが、同ページ数くらいの下巻が残っている。内容的には終息に向かっている、ビリー本人や関わった人たちにとっては苦痛で悲惨だっただろうけど、読み物としては、これからの展開がどうなるのか、一波乱も二波乱もありそうで楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
あらすじ:「24人のビリーミリガン」の続編。(参考記事:本レビュー:24人のビリー・ミリガン )
多重人格障害(今は解離性同一性障害 という)のビリーは、連続レイプ事件で逮捕されるが、精神病のために責任能力なしという判決によって無罪となり、精神病院に入る。しかし、政治家やマスコミ、一般市民の圧力により、最重警備施設のライマ精神犯罪病院に入れられる。そこで受けたのは治療ではなく、虐待であり、またもや人格が分裂する。ライマに送られてから、自由の身になるまでの物語。
やっぱり、ビリーは天才。
ビリーは、数々の虐待も乗り越え、施設の中でビジネスまで始めてしまう。そして、他の患者を扇動し、暴動を起こす。他の施設に送られてから、医師達の意見が合わず、薬物療法を続けてもらえないことに恐怖を感じたビリーは施設を逃亡。またつかまって、今度はハンガーストライキ。ハンガーストライキの末コンピュータを手に入れ、施設のコンピュータをハッキング・・・。
周りはすっごい迷惑だと思うけど、どこにいても新しい可能性を見出すところは本当にすごいと思う。わたしにかけている能力やわ。芸術やコンピュータの才能があるだけじゃなく、人を動かす力もあるし、総合的に判断する力も持っている。もし、違う環境で育っていたら、ベンジャミン・フランクリン (電気の発見だけではなく、政治・外交・事業でも大きな成功を収めた人)みたいになってたかも?それとも、この障害があるがゆえにこの才能が生まれたのかな?
しかし、この才能があるのに、やはり他の人格になったときはすべてをぶちこわすようなことをしてしまう。どうして他の人格は自己の不利益になるようなことをするのか、やはり多重人格って不思議な病だ。しかし、脳陵を切断した人の中には、「他人の手」症候群 と言われる症状が現れる人があるという。右手が自分の意思とは無関係に動くというものだ。右手が自分を絞め殺そうとした事例さえあるらしい。だから、私達が自分だと感じているものは、実際にはビリーと同じくたくさんの人格の共同体なのかもしれない。それぞれが同じ目的のために働いているありの巣と同じだと思うとちょっと気持ちわるいな。
☆が前作より1つ減ったのは、今回の作品は、作者がかなりビリーサイドに偏った書き方をしていると感じたから。長い間一緒に仕事をしたために、ビリーに対する思い入れが大きくなったのだろう。でも、ビリーに関わるそれぞれの人の立場に立つと、悪のように描かれている人たちもそれぞれ意見があって、彼らの目では正義のために行動していたのではないかと思える。実際、統合されたビリーがどれほど良い人間だとしても、分裂したビリーが何をするかわからず、しかも、いつビリーが分裂するかわからないとしたら、やはり、近辺をうろつかれるのは不安を感じるだろう。
この手の本はとても面白いし、様々な想像をかきたててくれる。ただし、自分の精神状態が安定しているときでないと、若干引きずられて欝になるので、注意が必要な気がする。