【感想・ネタバレ】24人のビリー・ミリガン〔新版〕 下のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年07月30日

下巻にも人格名と性格一覧を載せてくれよ、と思いながら読み始めたが、順番に新人格が登場してパンチのある紹介(行動)をしていくので必要なかった笑

"憎悪の管理者"で喧嘩担当のレイゲンだが、ロビンフッドのように貧困の子供を助けて喜んだり、人格の中でもクリスティーンを気に入っていて、ス...続きを読むポットに出ていない時は遊び相手になっていたり(レイゲンが必要な時に呼んでも出てこないのでアーサーが探し回ってみると遊び相手をしていた)、レイゲンがエイプリルに唆されてチャーマー・ミリガンを銃殺しようとするのを、アーサーがクリスティーンに止めさせる(効果あり)流れが面白かった。
アダラナは女性と一体になれる機会があれば出てくるが、男の身体でありながら、実にややこしい存在だ。

リーのように、突発的に現れたかと思いきや、"好ましくない者たち"にカテゴライズされると自分の意思で完全消滅するなど、特異な存在もあった。

下巻では、上巻の続きからレイプ事件に至るまでの流れ、そして今に繋がり、その後もアセンズ精神衛生センターで人格も安定するかと思いきや、街中での自由行動など制限が解除されていくと、それを危険視した報道に騒ぎ立てられ、レイゲンやスティーヴが自殺を図る騒動があったり、他の患者と病院内の敷地を10分程度散歩していたら他の女性患者へのレイプ疑惑を向けられたりで、悪名高いライマ病院へ移送されることになる。
そこでは、薬漬けにされた表情のないゾンビ達が、たくましい介護人たちに幅広の革ベルトを振りまわされて脅され、あとはひたすら壁を見つめて1日を過ごす日々だった。作家とは会えなくなり、ある時に窓を割ってからは第五集中治療病棟から第九集中治療病棟に移され、手紙すら出せなくなった。代わりに別のライマ患者(匿名希望)がビリーについての現状(第五から第九に移ったことも)を作家に手紙で話した。
それからライマの消印があるセルボ・クロアチア語の手紙が作家の元に届いた。
「元気ですか?お元気ならいいのですが。私は時間を失いました。ビリーは眠っているので治療ではありません。彼は大丈夫です。心配しないでください。私が管理します。彼のためにできるだけのことをします。あてにしてください。「必要の前に法律はない」 レイゲン」p387

「レイゲンは何もかも永久にやめました。そうしなければならないんです。口をきかなければ、外側でも内側でも、誰にも害を与えなくてすむと言っています。誰もぼくたちを責められないでしょう。レイゲンは聞くのをやめました。注意はすべて内側に向けられ、そのため完全に外部から遮断されそうです。
現実の世界を閉めだすことによって、ぼくたちは自分たちの世界で平和に暮らせます。ぼくたちは、苦痛のない世界は感情のない世界だと知っています……でも、感情のない世界は、苦痛のない世界なんです。 ケヴィン」p393
その後、新設されたデイトン司法センターに移送された。アレンはライマ病院を"恐怖の部屋"、デイトン司法センターを"超清潔な黴菌タンク風監獄"と表現した。p401



レイゲンはドアが閉まる音を聞くと、起きあがって叩き壊そうとしたが、アーサーにとめられた。サミュエルがスポットに出て、ひざまずき、嘆きの声をあげた。「オイ・ヴェイ!神よ、どうしてわたしをお身捨てになるのですか」フィリップは悪態をつき、床に身体を投げだした。デイヴィッドは苦痛を感じた。マットレスに横たわって、クリスティーンが泣いた。アダラナはあふれる涙で顔が濡れるのを感じた。クリストファーは上体を起こし、靴をもてあそんだ。トミーはドアを調べ、錠をあけられるかどうかたしかめようとしたが、アーサーにスポットの外に追いだされた。アレンは弁護士を呼びはじめた。エイプリルは復讐の欲求にかられ、病棟が炎上する情景を見た。ケヴィンはののしり、スティーヴが彼を嘲った。リーが笑った。ボビーは自分だけが窓から飛んで出られると空想した。ジェイスンは癇癪を起こした。マーク、ウォルター、マーティン、ティモシーは錠のおりた部屋のなかで荒れ狂った。ショーンは蜂の羽音に似た音をたてた。アーサーはもはや好ましくない者たちを統制できなかった。p284

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Posted by ブクログ 2022年09月13日

主人公はレイプ犯として逮捕されるが、自分は多重人格だという訴えは無罪になるための演技ではなく、彼も壮絶な過去を大変な思いで乗りこえてきた人だった。当事者と家族、彼を信じる治療者と疑う治療者、社会の人々の気持ちの揺れが、痛いほど伝わってくる本。
個人的には、本に一瞬出てくる作業療法士が、彼個人としっか...続きを読むり向き合い寄り添う援助者として描かれてるのが、嬉しかった。

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Posted by ブクログ 2021年04月13日

かつて〈モンスター〉として描かれてきた多重人格者を、〈モンスター〉の側から書くことで理解を深めた記念すべきノンフィクションの傑作。連続レイプ犯として逮捕されたビリーミリガンには犯行の記憶がなかった。ビリーの症状、24人の人格との対話、生い立ち、裁判の様子など非常に興味深く描かれる。虐待が生み出したと...続きを読む思われる多重人格。しかし犯罪者の人格も彼の一部であり、それが一人の人格であるなら文句なしに罰される罪を犯している。そしてどれも彼の人格なのだ。その中から一人格を正しいと決めて集約させようとすることは治療なのか、矯正なのか。また犯罪を犯すほどではない多重人格者はどうしているのだろう。問題視されなければ個性でしかないのか。普通に生活してるのだろうか。判断はシャッフルされるが、ビリーのような患者に同情は覚えつつも犯罪を犯してしまえば被害者への同情を優先したい。そんなことを頭の中でぐるぐる考え続けさせられる。

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Posted by ブクログ 2017年06月30日

子供の頃テレビで見て、彼についてなんとなくは知っていた。今でも内容が頭を離れず、ようやく読むことができた。
解説にもあったが、多重人格は親からの虐待に起因することが多いらしい。ビリーの場合は、継父からの性的虐待、実父の死によるショック、母親からの激しい叱責などが原因で、自分を守るために人格が分裂して...続きを読むいった。怪力のレイゲン(スラブ訛り)、愛を渇望するアラダナ(レズビアン)、知的能力の高いアーサー(イギリス上流階級訛り)、全ての苦痛を引き受けるデイヴィッド(幼児)などなど。それぞれが全く異なる人格やバックグラウンドを持っているのも驚きだし、リーダーを作って人格をコントロールしていたというのも衝撃だった。
ある人格がビリーになっている間は他の人格の記憶がなくなるため、ビリーの混乱は激しく、例えば気づいたらアメリカにいたはずがロンドンにいたり、苦手な科目のテストで満点をとったり、何より覚えのない罪に問われ苦悩する姿が読んでいて辛い。
法廷に立つにあたり精神科医が人格の統合に尽力、成功したものの、社会からの冷遇によりまた分裂する。統合と分裂を繰り返し、人に裏切られ、彼を救おうとする人も周囲からの嫌がらせや家族との亀裂が生じ、苦しむこととなる。
あまりに過酷だが、読むことができて良かった。

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Posted by ブクログ 2017年02月19日

教師という人格が登場し回復の兆しを見せているのに、偏見などによるマスコミの煽りに遭い、必要な治療もままならならず、症状も悪化するのは残念だった。
ふと思ったのだが、人格の統合=回復としてもいいのだろうか?
ビリーの頭の中では全員が会話することができていたのだし、それさえできていれば無理やり統合しなく...続きを読むてもいいような気がした。
それでも、後書き?の部分の他の多重人格の症例を読んでいると、彼は良い方に好転したケースのように思えた。
ビリー自身は2014年に生涯を閉じたが、彼の晩年が幸福なものであればいいと思った。

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Posted by ブクログ 2022年05月05日

辛い現実を前に、人格を分散させることによって心を保ち、命を守る。そんなこともある人間の精神や脳の不思議。一人ひとりの人格はビリーが生み出したもののはずなのに、統合されていくと一部の人格だけしか表れなかったりする。

じゃあ、本当のビリーって??

そんな問いは、場面によって顔を使い分けることにも重な...続きを読むるようで。友人と過ごす自分、家族と過ごす自分、恋人と過ごす自分、一人で過ごす自分。どれも現実で本物なのに、本当の自分に悩んだりする。もしも、これらが統合されて一つの顔しか持てないのなら、どの自分が残るんだろうか、なんて。

ー現実の世界を閉めだすことによって、ぼくたちは自分たちの世界で平和に暮らせます。
 ぼくたちは、苦痛のない世界は感情のない世界だと知っています……でも、感情のない世界は、苦痛のない世界なんです。

ビリーの中の子どもの人格を見るたびに切なくなる。犯罪者の人権問題も考える。

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Posted by ブクログ 2020年09月27日

これが実話であり、他にも精神分裂病苦しんている人々がいることは真実であると考える他ない。
幼少の頃の虐待によることが要因であるならばこのような事象を広く世間に認知され、虐待のない世の中になることを願う。虐待する側も病んでいるのだろうし、病が伝染すると考えさせられる。
ビリーの場合、主人格を乗っ取る交...続きを読む代人格による性犯罪で窮地に陥るが、その犯罪履歴を持つものが身近にいるのは確かに恐ろしいし、隔離しておくべきとの主張もよくわかるので難しい問題である。
その犯罪、フィリップが主犯であろうが、レイゲンの暴走による所が大きいと感じた。
多国語を読み書きできる人格がいるのも驚き。自分の脳にも強いきっかけがほしいものである。
上巻では多重人格というものに憧れすら覚えたが、下巻の悲惨な状況に閉口。多重人格という病気が正しく認知され、治療法が確立されることを願う。

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Posted by ブクログ 2018年04月15日

下巻に関しては、恐らく書きたい事例が多すぎ、かえって消化不良を起こしているように感じられる。ノンフィクションであるので、客観的な事実を列記するというよりは、内面の描写が多く途中から創作なのか良くわからなくなった。
問題は多重人格者をどう更生させるかももちろんながら、幼い頃の虐待・暴力がその人格形成の...続きを読む大きな影響をきたすことを社会がよく理解したうえで、コミュニケーションをとっていかないといけないのだろうと感じる。

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Posted by ブクログ 2016年03月04日

ずっと読んでみたいと思っていたが、手を出すのが怖かった本。やっと読み終わった。下巻は人格の入れ替わりが激しく、本来の「ビリー」が少なく感じる。実際も、1/24しか生きてないのかな。。
幼少期の悲惨な記憶がもたらした信じがたい事実。☆4を付けたが、あまりにも辛すぎて読後感は良くない。

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Posted by ブクログ 2016年02月29日

 24人もの人間をビリーとして人格を統合していくことの、なんと難しいことか。
イギリスアクセントの英語、ボストン訛り、オーストラリアの英語、セルボ・クロアチア語を読み、物理・科学・医学・電気・武器に詳しく、絵など‥多才の才能をもち合わせ、それがバラバラの人間の中では発揮できても、統合していくにつれて...続きを読む、その能力が薄められていく不思議さ。
 自分の知らない自分を引き出す、俳優・女優のような職業もある様に、本当の自分を分かっていないのかも知れない。
 行った事のない、住んだことのない地域の言語まで習得できてしまったその能力とは、心の傷とは裏腹に、その異常にまで発達したその能力に、現代だったら、また違った評価が出てきたのだろうと思う。

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Posted by ブクログ 2017年03月21日

主人公に据えられているはずなのに、徐々にビリーにうんざりしてしまったのはなぜだろうか。自分の望まないことを回避するように統合と分裂を無意識にコントロールしているのでは?とか、自分が性根では善人なのだと喧伝したいがための正当化なのでは?という気がしてくる。
作中の作家は中立であるように描かれていると思...続きを読むうが、一方で、実際のキイスはビリーに心を寄せていたのではないかとも感じた。
そう感じたのに、ビリーに対して上記のような感想を覚えたのが少し不思議だったけれど、それがこの作品の妙なのかもしれず、また最後の方はストーリーが一進一退だから、そのためかなとも思う。

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