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Posted by ブクログ
かつて〈モンスター〉として描かれてきた多重人格者を、〈モンスター〉の側から書くことで理解を深めた記念すべきノンフィクションの傑作。連続レイプ犯として逮捕されたビリーミリガンには犯行の記憶がなかった。ビリーの症状、24人の人格との対話、生い立ち、裁判の様子など非常に興味深く描かれる。虐待が生み出したと思われる多重人格。しかし犯罪者の人格も彼の一部であり、それが一人の人格であるなら文句なしに罰される罪を犯している。そしてどれも彼の人格なのだ。その中から一人格を正しいと決めて集約させようとすることは治療なのか、矯正なのか。また犯罪を犯すほどではない多重人格者はどうしているのだろう。問題視されなければ個性でしかないのか。普通に生活してるのだろうか。判断はシャッフルされるが、ビリーのような患者に同情は覚えつつも犯罪を犯してしまえば被害者への同情を優先したい。そんなことを頭の中でぐるぐる考え続けさせられる。
Posted by ブクログ
これが実話であり、他にも精神分裂病苦しんている人々がいることは真実であると考える他ない。
幼少の頃の虐待によることが要因であるならばこのような事象を広く世間に認知され、虐待のない世の中になることを願う。虐待する側も病んでいるのだろうし、病が伝染すると考えさせられる。
ビリーの場合、主人格を乗っ取る交代人格による性犯罪で窮地に陥るが、その犯罪履歴を持つものが身近にいるのは確かに恐ろしいし、隔離しておくべきとの主張もよくわかるので難しい問題である。
その犯罪、フィリップが主犯であろうが、レイゲンの暴走による所が大きいと感じた。
多国語を読み書きできる人格がいるのも驚き。自分の脳にも強いきっかけがほしいものである。
上巻では多重人格というものに憧れすら覚えたが、下巻の悲惨な状況に閉口。多重人格という病気が正しく認知され、治療法が確立されることを願う。
Posted by ブクログ
24人もの人間をビリーとして人格を統合していくことの、なんと難しいことか。
イギリスアクセントの英語、ボストン訛り、オーストラリアの英語、セルボ・クロアチア語を読み、物理・科学・医学・電気・武器に詳しく、絵など‥多才の才能をもち合わせ、それがバラバラの人間の中では発揮できても、統合していくにつれて、その能力が薄められていく不思議さ。
自分の知らない自分を引き出す、俳優・女優のような職業もある様に、本当の自分を分かっていないのかも知れない。
行った事のない、住んだことのない地域の言語まで習得できてしまったその能力とは、心の傷とは裏腹に、その異常にまで発達したその能力に、現代だったら、また違った評価が出てきたのだろうと思う。
Posted by ブクログ
被虐待児は全国でかなりの人数に上ると思うが、その中で解離性同一性障害を発症するのはどのような特徴を持った人間なのか。
ビリー・ミリガンは多才で知的にもかなり高かったようだけど、それも関係しているのか。
そもそも人格なんてものがあるのは人間だけで、その人格が分裂していることが良いこととも悪いこととも見なせない。最終的にミリガンが社会の中で生き、生活していけるのならば「共同経営」でも「個人経営」でも「会社組織」だろうと問題は無いと言ったドクターコールの見解にその通りだなと思った。
ミリガンは癌を患い亡くなったようだが、彼が晩年幸せな時間を少しでも多く過ごせたことを願ってやまない。
Posted by ブクログ
主人公に据えられているはずなのに、徐々にビリーにうんざりしてしまったのはなぜだろうか。自分の望まないことを回避するように統合と分裂を無意識にコントロールしているのでは?とか、自分が性根では善人なのだと喧伝したいがための正当化なのでは?という気がしてくる。
作中の作家は中立であるように描かれていると思うが、一方で、実際のキイスはビリーに心を寄せていたのではないかとも感じた。
そう感じたのに、ビリーに対して上記のような感想を覚えたのが少し不思議だったけれど、それがこの作品の妙なのかもしれず、また最後の方はストーリーが一進一退だから、そのためかなとも思う。
Posted by ブクログ
下巻にも人格名と性格一覧を載せてくれよ、と思いながら読み始めたが、順番に新人格が登場してパンチのある紹介(行動)をしていくので必要なかった笑
"憎悪の管理者"で喧嘩担当のレイゲンだが、ロビンフッドのように貧困の子供を助けて喜んだり、人格の中でもクリスティーンを気に入っていて、スポットに出ていない時は遊び相手になっていたり(レイゲンが必要な時に呼んでも出てこないのでアーサーが探し回ってみると遊び相手をしていた)、レイゲンがエイプリルに唆されてチャーマー・ミリガンを銃殺しようとするのを、アーサーがクリスティーンに止めさせる(効果あり)流れが面白かった。
アダラナは女性と一体になれる機会があれば出てくるが、男の身体でありながら、実にややこしい存在だ。
リーのように、突発的に現れたかと思いきや、"好ましくない者たち"にカテゴライズされると自分の意思で完全消滅するなど、特異な存在もあった。
下巻では、上巻の続きからレイプ事件に至るまでの流れ、そして今に繋がり、その後もアセンズ精神衛生センターで人格も安定するかと思いきや、街中での自由行動など制限が解除されていくと、それを危険視した報道に騒ぎ立てられ、レイゲンやスティーヴが自殺を図る騒動があったり、他の患者と病院内の敷地を10分程度散歩していたら他の女性患者へのレイプ疑惑を向けられたりで、悪名高いライマ病院へ移送されることになる。
そこでは、薬漬けにされた表情のないゾンビ達が、たくましい介護人たちに幅広の革ベルトを振りまわされて脅され、あとはひたすら壁を見つめて1日を過ごす日々だった。作家とは会えなくなり、ある時に窓を割ってからは第五集中治療病棟から第九集中治療病棟に移され、手紙すら出せなくなった。代わりに別のライマ患者(匿名希望)がビリーについての現状(第五から第九に移ったことも)を作家に手紙で話した。
それからライマの消印があるセルボ・クロアチア語の手紙が作家の元に届いた。
「元気ですか?お元気ならいいのですが。私は時間を失いました。ビリーは眠っているので治療ではありません。彼は大丈夫です。心配しないでください。私が管理します。彼のためにできるだけのことをします。あてにしてください。「必要の前に法律はない」 レイゲン」p387
「レイゲンは何もかも永久にやめました。そうしなければならないんです。口をきかなければ、外側でも内側でも、誰にも害を与えなくてすむと言っています。誰もぼくたちを責められないでしょう。レイゲンは聞くのをやめました。注意はすべて内側に向けられ、そのため完全に外部から遮断されそうです。
現実の世界を閉めだすことによって、ぼくたちは自分たちの世界で平和に暮らせます。ぼくたちは、苦痛のない世界は感情のない世界だと知っています……でも、感情のない世界は、苦痛のない世界なんです。 ケヴィン」p393
その後、新設されたデイトン司法センターに移送された。アレンはライマ病院を"恐怖の部屋"、デイトン司法センターを"超清潔な黴菌タンク風監獄"と表現した。p401
レイゲンはドアが閉まる音を聞くと、起きあがって叩き壊そうとしたが、アーサーにとめられた。サミュエルがスポットに出て、ひざまずき、嘆きの声をあげた。「オイ・ヴェイ!神よ、どうしてわたしをお身捨てになるのですか」フィリップは悪態をつき、床に身体を投げだした。デイヴィッドは苦痛を感じた。マットレスに横たわって、クリスティーンが泣いた。アダラナはあふれる涙で顔が濡れるのを感じた。クリストファーは上体を起こし、靴をもてあそんだ。トミーはドアを調べ、錠をあけられるかどうかたしかめようとしたが、アーサーにスポットの外に追いだされた。アレンは弁護士を呼びはじめた。エイプリルは復讐の欲求にかられ、病棟が炎上する情景を見た。ケヴィンはののしり、スティーヴが彼を嘲った。リーが笑った。ボビーは自分だけが窓から飛んで出られると空想した。ジェイスンは癇癪を起こした。マーク、ウォルター、マーティン、ティモシーは錠のおりた部屋のなかで荒れ狂った。ショーンは蜂の羽音に似た音をたてた。アーサーはもはや好ましくない者たちを統制できなかった。p284
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