ネタバレ
Posted by ブクログ
2017年06月30日
子供の頃テレビで見て、彼についてなんとなくは知っていた。今でも内容が頭を離れず、ようやく読むことができた。
解説にもあったが、多重人格は親からの虐待に起因することが多いらしい。ビリーの場合は、継父からの性的虐待、実父の死によるショック、母親からの激しい叱責などが原因で、自分を守るために人格が分裂して...続きを読むいった。怪力のレイゲン(スラブ訛り)、愛を渇望するアラダナ(レズビアン)、知的能力の高いアーサー(イギリス上流階級訛り)、全ての苦痛を引き受けるデイヴィッド(幼児)などなど。それぞれが全く異なる人格やバックグラウンドを持っているのも驚きだし、リーダーを作って人格をコントロールしていたというのも衝撃だった。
ある人格がビリーになっている間は他の人格の記憶がなくなるため、ビリーの混乱は激しく、例えば気づいたらアメリカにいたはずがロンドンにいたり、苦手な科目のテストで満点をとったり、何より覚えのない罪に問われ苦悩する姿が読んでいて辛い。
法廷に立つにあたり精神科医が人格の統合に尽力、成功したものの、社会からの冷遇によりまた分裂する。統合と分裂を繰り返し、人に裏切られ、彼を救おうとする人も周囲からの嫌がらせや家族との亀裂が生じ、苦しむこととなる。
あまりに過酷だが、読むことができて良かった。