堀内静子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
シリーズの順番を考えずに読んでいるが、特に問題なし。文章は固くなく、やり取りもちょこちょこ微笑ましい場面があり、とても読みやすい。次々に事件が起こるので飽きが来ないし、章も短い。なんといっても、後味がとてもスッキリして爽やか!
あと、全部読んでみて思うのは、とてもちゃんとした推理小説だということ。手がかりは初めから順に差し出され、私たちは星座を探すように、点と点を繋いでいけばいい。分からなくてもポアロがいるから大丈夫。
トリッキーでも、バカスカホームランを打つ派手なタイプでもなく、計算も練習量も見え、犠打も盗塁も守備も「ああ、上手いな」と思わせるような、少し小柄で多才な選手を想像させる小説。最近のミステリーに慣れた人からすれば刺激が足りないかもしれないが、この文章と人物描写、物語の巧みさはやはり凄いなあと思う。
たくさん人物が出てくるが、名前はうろ覚えのまま読み進めた。性格やバックボーンがハッキリしているので、性格が分からないと名前を覚えられない私としては非常に有難い。人を覚えるのが苦手な人でも、ポアロがかなり短く、正確に、人柄や関係性をまとめてくれている箇所があるので気楽に読める……かも。
読んでいて、ポアロは、何も知らない、何の手がかりもない、ということをきちんと話す人だから、信頼が置けるんだなあ……と思った。合理的なだけかもしれないけど、それぞれの事件に濡れ衣をかけられた容疑者がいないことを「喜ばしい」と表現してるのも優しい。それに、どんな人にも論理的な思考があると考え、その人の思考を辿ろうとするポアロは、変人ではあるのだろうが、誰に対しても公平だ。
後日談も素敵だしね。
お気に入りのポイントといえば、序盤のジャップ警部とポアロとヘイスティングズのやり取りは、なんともいえず微笑ましい。とりなそうとして話を蒸し返してヘイスティングズの地雷踏んじゃって慌てて宥めたり、うきうきで他人の恋のキューピッドやったりと、この、髭を大事にしてる小柄なおじさん、もしかして可愛いのでは……? -
Posted by ブクログ
ネタバレABCと名乗る人物からポアロの元へ届けられた挑戦状。アンドーヴァーでアリス・アッシャー夫人が殺害され、ベクスヒルではベティー・バーナードが殺害される。いずれの場合も惨劇の現場となった地名のページが開いたABC鉄道案内が置かれていた。
子供のころに初めて読んだアガサ・クリスティ。ミッシング・リンク物の傑作って言われるくらいだからさすがに面白かった(笑)ポアロに届く手紙の謎とかは感心してしまった(笑)解説の中にあったエラリー・クイーンの『九尾の猫』『十日間の不思議』との関係が面白かった(笑)『九尾の猫』も好きですが『ABC』の勝ちですかね(笑) -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。「森を見て木をみず」という手法のトリックはどこかで見覚えがあったが、この小説が元ネタなのだろうか。シンプルに序盤から終盤までずっと飽きさせない物語構成がすごいと思った。ずっとある一人の狂人の仕業におもわせ、最後にひっくり返す。それももちろんフィクションであるため、非現実的ではあるが、筋の通った論理的な方法で。精神障害や多重人格で終わらせないのが、素晴らしいと感じた。細かい犯行の手違いや間違いにもちゃんとした理由があるのがぬかりなかった。手違いがない方がミステリー小説として美しいのではないかと思ったが、その手違いに犯人の人間味というのが溢れていたのは興味深かった。相変わらずポワロの論理的で、懐疑的で、冷静で、紳士的な姿勢には憧れる。というかそれ以上に、何でこんな物語が作れるのかさっぱりわからない。「自分たちは木を見ているようで、森しか見ていなかった」というコンセプトのを最初から最後まで一貫して作り上げる才能はどこからやってくるのだろうか。
又、個人的な話だが、今自分が情緒を劇的に揺らす作品、表現を鑑賞できない状態にあるため、アガサクリスティーのミステリーが、論理と人間心理のバランスの塩梅が丁度よく、そして読み応えもあり、結末も痛快だった。やはりポワロの俯瞰的な観察者的な視点、そして物語に一貫して存在する「品」のようなものが今の自分にフィットした。これからも読んでいきたいし、アガサクリスティ以外の古典ミステリーも読みたいと思った。