吉澤康子のレビュー一覧
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本書は二部構成で、どちらも手記のような体裁で話が展開する。第一部の最初は誰が語っているのか分からず、我慢の読書となる。ゲシュタポに捕まったスパイのクイーニーが秘密を書くように強制され、しかも二週間でやれという。二週間後は想像できる悲惨が待っている。第二部は、クイーニーをフランスまで飛ばした女性飛行士のマディの語りとなる。こちらも手記のような体裁となる。二人は違う場所にいながら、相手を信じて書き続ける。衝撃なのは、マディとクイーニーの再会シーンだ。究極の信頼関係を築いているかのように、クイーニーの望みを叶える。自分にはこれはできない。相手のためを思っても。で、このような物語が実は大人向け小説では
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第2次世界大戦中に、ドイツのとある場所にイギリスからのスパイの女性が囚われる。彼女は激しい拷問のうえ、暗号を伝え、さらにイギリスのことを書き記すように紙を与えられる。
彼女はそこにマディと呼ばれる女性飛行士の物語を3人称で語り始める。1週間という期限内に書くこと。その間は生きられることが保証される。しかしながら、彼女の状況は過酷であり、最後まで書き進めることができるか非常にあやうい。
彼女の手記と彼女の状況が挿入されるのが1部、そして2部と読みすすむと、なんというか、奇跡だなぁと思う。実にフィクションだ。
物語の中で彼女らが生きていたこと。戦争という非日常の世界で日常があったことを考 -
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第二次世界大戦中、イギリス特殊作戦執行部員の女性スパイがナチスに捕虜となった。彼女はイギリスに関する情報を手記とすることを強要される。
その手記には親友であるマディのことが丁寧に綴られていた。
こういう物語で、前半は彼女の記した手記がつづく。
何故彼女は、手記を小説のような形にしたのか。
わたしは戦争の特にナチスを扱ったものは見つけたら読むほうなので、今回作品の存在を知って、読みたくて堪らなかった。
この作品では、手記の部分が大変長い。また、手記に挿まれるように捕虜としての生活を窺わせる内容も記されている。
長い手記が、全て真実なのか空想なのかわからないまま読み進めていく。そのためなんと -
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力のこもった歴史ミステリです。
元警官で探偵のウィリアム・モンクのシリーズ。
「見知らぬ顔」「災いの黒衣」「護りと裏切り」に続く4作目。
看護婦のヘスター・ラターリィと、弁護士のオリヴァー・ラスボーンの3人で事件に当たるのが特徴です。
今回は特にヘスターの視点が多いですね。
女性が主人公のミステリがお好きな人にもお勧めです。
看護婦のヘスターは、仕事のつなぎに、新聞広告に載っていた仕事を引き受ける。
エディンバラの名家の女主人メアリがロンドンへ旅行する付き添いに、看護婦が求められたのだ。
ヘスターは指示どおりに心臓病の薬を飲ませたが、メアリが車中で亡くなってしまう。
殺人の罪を着せられたヘ -
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貧しくとも、夫のジムに特別なクリスマスプレゼントを贈りたい。デラはある決意をする。しかし、ジムからのプレゼントは……(賢者の贈り物) どんな金庫でもたちまちの内に開けてしまう大泥棒・ジミーは恋に堕ち、過去を捨てるけれど……(よみがえった改心) 一日だけ大金持ちの振りをしてとびきりのおしゃれと贅沢を楽しむチャンドラーは、貧しそうな身なりの娘を助けて、つい…(おしゃれさんの失敗) 二回も偶然にもらった「緑のドア」と書かれたカード。ルドルフの冒険心が疼いて…(緑のドア) 窓から見えるツタの最後の一枚が落ちた時、自分の命も消える。そう生きる気力を失っていたジョンジー。けれどその一枚は、どんな風にも雨に
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アデリアシリーズ3作目です。
今回も残虐行為有り。
アデリアも相当酷い目に遭ってます。
宗教裁判にかけられそうになって住み慣れたケンブリッジを追われるわ、
またもやヘンリー王から無茶振りされるわ。
嘆いたり癇癪を起こしたりと感情的にはなりますが、
決してブレない命に対す真摯な態度が救いになっています。
前作までと雰囲気がちょっと違って感じるのは、
アーサー王伝説が絡んでいるせいですね。
伝説に彩られたキリスト教の聖地というロケーションに加えて、
夜毎アデリアの夢に現れる意味有りげな啓示(?)。
アーサー王に関しては、
まだいろいろ謎だと以前読んだ記憶がありましたが、
あとがきによると結構 -
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アデリアシリーズ2作目です。
前作から1年。
娘が生まれて、アデリアは母親として幸せに暮らしていましたが、
またもやヘンリー王(ロウリーか?)に引きずり込まれて、
恐ろしげな事件の渦中にどっぷり。
医者として女性として際どい立場の自分自身だけでなく、
今回は娘の安全にも心を砕かねばならず、発狂寸前です。
なにしろセクハラのオンパレードで、
現代人の感覚で読んでるとかなりストレスが溜まります。
息子をそそのかして謀反を企てている王妃エレアノールが容疑者のため、
あわや再び戦乱の世になるのかという危機感から、
ロウリーは勿論、アデリアまで駆り出される訳ですが。
なんだろなぁ〜。
結局、国民を巻 -
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女性の検死官が連続殺人事件を解決するミステリー、と書くとパトリシア・コーンウェルのシリーズを連想するが、こちらは12世紀のイングランドが舞台。その点だけでも充分ユニーク。
時代が時代なだけに捜査や検死の方法に多少迷信じみた要素が入るかと思いきや、そこは想像していたよりも現実的で、むしろ現代小説を読んでいる感覚に近かった。
もちろん風俗習慣、思想、時代背景は12世紀のそれが鮮明に描かれているので、現代小説を読む感覚で時代小説を読むという不思議な読み応えを感じた。
子供を餌食にした犯行も残酷だが、当時まかり通っていた迷信や無知、差別もまた別の意味で残酷なので、現代が舞台の犯罪物を読む時より精神的 -
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12世紀の女医アデリアの活躍を描く歴史ミステリ。
3冊目。
いよいよ面白いです。
前作から4年。
アデリアは幼い娘のアリーとその子守となったギルサ、子供の頃からの用心棒でサラセン人のマンスールと共に、村に落ち着いていた。
ところが医療で人気を得たのをねたまれ、宗教裁判所に狙われたと知って、急ぎ移転することに。
その途中、友人エマが、幼い息子と一緒に、亡き夫から受け継いだ領地へ向かうのに一緒になります。
イタリア生まれで、当時のヨーロッパでは最先端の教育を受けた検視医アデリア。
アデリアの目から見ると、女性の医者など魔女として焼き殺されかねないイングランドは野蛮な地。
ヘンリー王は領土を拡大 -
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さて、下巻です。
上巻最後にシモン殺害というショッキングな事件が起こりましたので、
その遺体を検死するところから始まります。
なぜそう思えるのか理解に苦しむところですが、
自分たちは安全だと信じて疑わなかったアデリアは、
かなり動揺しています。
事件の様相も、どんでん返しの連続で意外な展開となります。
疑わしかった人物も実は・・・。
そして満を持して登場したあの人が、
そもそも何故アデリアが派遣されることになったのかを語ります。
残酷な場面もいくつかありました。
擬音語・擬態語のたぐいや直接的な表現はそれ程でもありませんが、
充分想像できる程度に表現されています。
上下巻通して、
この -
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舞台は1171年のイギリス。
主役はアデリア。
イタリアからやって来た検死を専門とする女医です。
故郷のサレルノでは裕福な生活と地位が約束されていたのに、
王命により遠路はるばるイギリスはケンブリッジに来る羽目に。
そこは女性の地位が低く、医者であることも検死をすることもタブー。
発覚すれば魔女の烙印を押されて死刑もありえる。
ひとりで散歩していたらレイプされてもおかしくないという、
現代人には信じられないようなスリリングな状況に陥ります。
そして仕事は子供ばかりを狙った連続殺人事件の被害者達の検死。
この時代に科学捜査はありません。
ハエのたかる腐乱死体と格闘しながら状況証拠を積み重ねていき -
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ネタバレ詳細な当時の様子が分かり、また国というか都市によって特徴があるのだなというのがよく分かりました。
イタリアやスペインから見れば、当時のイングランドは田舎というか野蛮といってもいいぐらいなのですね。
迷信がはこびつつも、実は庶民の一人一人は、事実を見据えている、逞しい状況が分かります。
残酷な描写もありますが、ヒロインと騎士の最後のやり取りがほっとさせられます。
シモンは最後まで活躍してほしかった。(というかシリーズとしてコンビが続くのかと思っていた)
犯人は中盤見当がついてしまいましたが、共犯者が意外で、最後まで分かりませんでした。 -
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楽しみな歴史ミステリのシリーズが始まりました!
12世紀のイングランドを舞台に、検死のできる女性アデリアを主人公とした歴史もの。
CWAの歴史部門であるエリス・ピーターズ賞の受賞作。
ケンブリッジで起きた、子供を狙った連続殺人。
磔のような姿だったために犯人はユダヤ人とされて、暴動が起きる。当時、ユダヤ人が復活祭にキリスト教徒の子供を殺すという噂があったのだとか。
ユダヤ人すべてをケンブリッジ城内に匿ったまま1年、犯人はわからず…
事件の調査を依頼されて、シチリア王国から調査員と死体を検分することの出来る医師が派遣される。
マチルダ女王の時代18年間続いた内乱も治まり、その息子ヘンリー2世の元 -