吉澤康子のレビュー一覧
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ネタバレCIAが対ソ連に対し、プロバガンダとして「ドクトル・ジバゴ」を世に送り出す。その一連の動きと、「ドクトル・ジバゴ」の作者ボリス・パステルナークを取り巻く愛人と家族の話とでも言おうか。
実際、スパイというのは静かな行動をするもの。「ドクトル・ジバゴ」の原本や翻訳本が、誰かに燃やされるわけでも強奪されるわけでもなく、静かに粛々と計画されて出版にこぎつける。
タイピストたちは傍観者、もしくは見届け人か。決して表には出ないが、沈黙を守れる高度な教育を受けた女性たち。
もっと彼女たちの活躍が見られると思ったが、ちょっと肩透かしだった。
彼女たちはこれらの作戦をどこまで知っていたのだろうか。または「知 -
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1920年代のアメリカ!
禁酒法時代〜
もうこの時代設定ってだけで、好き…(笑)
まさにグレート・ギャツビーのあの頃よ!
その時代に警察署で供述書を作成するタイピストとして働く二人の女…
ひとりは孤児院で育った、地味でまじめなローズ
もうひとりは、断髪の美人、オシャレでホテル暮らしをしているオダリー
対極にあるかのような二人は互いに親しくなり、やがてオダリーの豪華なホテルの一室で一緒に暮らすようになる
だが、オダリーに秘密があることが分かり…
物語はローズの一人称で進むためとても読みやすい…
禁酒法時代に危ない橋を二人でうまく逃れるシスターフッドものかと思ったら…
もうあかん…あかん…
想像 -
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まず、表紙の可愛らしさ。
そして、タイトル。
ノスタルジックで、ほっこりしたストーリーを誰もが想像するのではないでしょうか?
…結果、全く違いました。
誰もが知っている有名な子ども番組に出演していた父。娘のレベッカが子どもの頃に番組からは降板し、行方も分からない。
20年間会っていなかった父をあるきっかけから探すことになるレベッカ。
なぜ、番組を降板したのか?家族の前から姿を消したのか?父が残した7つのおとぎ話を手がかりに父を探すレベッカ。ミステリー仕立てになっています。
幼かった頃の記憶の中の父と、周囲の人が語る父の姿の乖離。
家族がどんな人間であるかをこちらが選ぶことはできない。こちらが -
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余韻が心地よい。
人が死んだりはしないミステリー要素も多い。
間に挟まるおとぎ話が鍵になるが、帯にある通りそれぞれだけでもおもしろい。
かなり後味は悪いものもあるが、、
また、躁鬱などの表現が独特で、初めて触れる類だった。
影がついてまわる気がして、想像力が飛躍する。
上記のような精神的な病気の症状がわかりやすい。
朝井まかてさんの話を続けて読んだ後なので、全体的なロマンティックさが心地良かった。
父、主人公も父方の祖母も、不遇というか、誰かの悪意によるものというわけではなく大変な状況を味わったのだなぁと。
普通になるってすごいことなんだというセリフに共感。 -
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家族みんなが辛い思いをしてきたのだと思った。
アデリーンが治療を受けることが出来ていればと思ったけど、夫が医師だし閉じ込めておけば良くなるとの認識なら無理だし、世間体があるのかもしれない。母の遺伝かわからないけれどレオは病気で相当しんどい経験をしただろう。助言されても治療の必要性を感じないから、周りもどうしようもない。排除するしか。
みんなが辛い。
レオが、怪物のようなものに支配されていることに気づかなかったと話しているところがとても心に残った。躁鬱病などではなくとも、自分の思い込みに支配されていると感じることがあるから。
ハッピーエンドが嬉しかった。物語の続きを想像して長く楽しめるのも良か -
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圧倒的なのは、想像を絶する収容所内の様子
フランス人、ポーランド人、ドイツ人、ロシア人たち
実在したラーフェンスブリュック収容所にいた女性たちに起こったこと……。
主人公ローズの使命は、実験台にされたポーランド女性74名の「ウサギ」たちの名前を数え歌にしてすべて暗記して、彼女たちの存在を世に知らしめる。そのために周りに助けられながら生き残ること。
普通であれば、救出され、解放され終戦、事実が明るみになりエンディングとなるところ、その後に訪れるPTSD的な精神状態まで描くことで、より起こってしまったことの「残酷さ」が際立つ。
事実を明らかに「しなければならない」と「したくない」のはざまで苦 -
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女性2人の永遠の友情が描かれる戦争作品。
第一部はクイーニーの手記。親友マディのことを綴っているけど、クイーニーが捕えられている極限状態のせいか、文章も読みにくい。(あえて彼女は読みにくくしているのかもしれないけど。)
読みにくいと思いつつ、がんばって読み進めるしかない。
洋書だから読みにくいというより、そういう話なんだろうな。
第二部のマディの手記のほうが読みやすく、第一部の疑問を解消してくれる。
第一部よりジェットコースターに乗っているような疾走感のある第二部。
後書きを呼んで驚いたが、児童書、、、?!
内容を理解できるのか、と、刺激が強くないか?という疑問がある。私的には大人の作品 -
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ヴェリティ=真実、
記録された歴史の裏にある人々の思いこそ、戦争の真実である。
「スパイと飛行士」ふたりの女性。
ドイツ占領下のフランス。
作者のあとがきでは「マディとジュディーは私の空想から生まれたフィクション、舞台の都市名もその他の登場人物も架空、でも、一つ一つのエピソードは真実」と、さまざまな文献等から探り当てて織り込んだことがらに、この物語にかける熱量が伝わる。
そのすさまじさにより、男の戦場には表されない現実の戦争の残酷さを、まざまざと見せつけてくれる。
二人の主人公の語りの世界
第一部、とらわれたスパイのゲシュタポのための手記に描かれた“小説のような”独白は、いつまでも溺れて -
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ネタバレとても哀しい友情小説である。
この本はミステリーとして紹介されることが多いようだ。確かに謎に満ちた第1部の手記を第2部の手記で伏線回収していく手法は、ミステリー小説として一級品だとも思う。
しかし、ミステリーの醍醐味である「謎が解明してすっきり」とはいかないのである。謎の解明は哀しさにつながり、二人の主人公の友情は美しいのに、その再開は悲劇なのである。
あとがきによると、出版された際は、ヤングアダルトだったらしいが、この小説をティーンエイジ対象にするという辺りが、反戦に対する断固たる姿勢にうつる。
戦争は悲劇、武力や暴力による争いは絶対にアカンのだ、ということ。
人間は、ここまで優しく