エリザベス・ウェイン2作目。1作目の「コードネーム・ヴェリティ」とも関連を持ったWW2女性飛行士の物語。
前作でも戦争の悲惨さを徹底的に描いた作者だったが、本作ではミステリー要素等を少なくして、収容所内で描写と友情とサバイバル、そしてその後のPSTDの苦しみにクローズアップした小説に仕上げている。
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戦場や無差別攻撃を受けた各国諸都市の悲惨さに唖然とする小説、映画、演劇等の諸作品はたくさんあって、それぞれにおいて「こんな愚かなことは二度と繰り返してはならない」という主張を聞き取れるのだが、アウシュビッツや政治犯収容所が舞台のそれは、また違った意味の戦争の愚かさを教えてくれる。
主人公たちが受ける虐待、実験、処刑の数々は「人間とはここまで残酷なことができるようになるのか」という思いに至り、壮絶さに心身がマヒ状態になってしまう。虐待を受ける側には当然絶対なりたくないが、虐待する側にだって絶対なりたくない。健康な女性の脚に銃創を模した穴をあけてそこに汚泥を塗り込んで、化膿、壊死回復状況を確認する実験をするようなこと、誰がしたいものか!
でも、そこに「正義のために」という気持ちがこもるとくるってしまうのが人間でもある。その兆候は部活での後輩虐待、教師の生徒虐待、職場でのハラスメント…いたるところに表れているのである。程度の差があるだけで根っこは一緒なのだ。
「正義」という言葉を信じないこと。その言葉は特撮やアニメなどフィクション世界にのみあると理解すること。政治の力を理解しつつ、政治家なる人たちを根底から信じないこと…。ローズたちのような思いをする人をなくすために、俺にできることからやっていこうと思う。
とにかく、戦争は絶対アカン!