エリザベス・ウェインのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレエリザベス・ウェイン2作目。1作目の「コードネーム・ヴェリティ」とも関連を持ったWW2女性飛行士の物語。
前作でも戦争の悲惨さを徹底的に描いた作者だったが、本作ではミステリー要素等を少なくして、収容所内で描写と友情とサバイバル、そしてその後のPSTDの苦しみにクローズアップした小説に仕上げている。
戦場や無差別攻撃を受けた各国諸都市の悲惨さに唖然とする小説、映画、演劇等の諸作品はたくさんあって、それぞれにおいて「こんな愚かなことは二度と繰り返してはならない」という主張を聞き取れるのだが、アウシュビッツや政治犯収容所が舞台のそれは、また違った意味の戦争の愚かさを教えてくれる。
主人公たちが -
-
Posted by ブクログ
第二次世界大戦下のイギリス。主人公はアメリカ出身の飛行機乗りの女の子、ローズ・ジャスティス。ローズが、マディからもらった手帳に書き綴った「手記」という形で描かれるドイツの強制収容所ラーフェンスブリュックの状況。そして、極限の環境での、少女たちの友情の物語。
「コードネーム・ヴェリティ」の姉妹編。
つらい状況を描写しながらも、どこかにある未来を(友情を?希望を?)感じさせるので、ちゃんと読み進められる。そもそも、「手記」がここにある、という事実が、未来を感じさせる。すごく上手い描き方。
「コードネーム・ヴェリティ」とともに、何度も読み返すことになると思われます。すでに、2度めを読み始めまし -
Posted by ブクログ
英国補助航空部隊に所属する飛行士のローズが主人公。舞台は第二次世界大戦中の欧州。ローズは飛行機を移送する仕事についていたが、ドイツ軍に捕まり、ラーフェンスブリュック強制収容所に送られる。収容所での生活は酸鼻を極めるもので、ローズには何度も絶体絶命の危機が訪れる。そんな中、医学的人体実験のために手術された囚人と仲間になり、ともに生き延びようとする。文字通り命を懸けた仲間との生活の中で、女性として人間としての尊厳を保ちつつ、いかに収容所から脱出するか画策する。仲間と収容所を脱出した後に、いったんは離れ離れになるものの、後で再会する。その再会シーンも涙物で、素直に喜ぶのだと思うが、ぎこちない感じであ
-
-
Posted by ブクログ
2 続いて、「ベルリンは晴れているか」の深緑先生がおすすめされていたこちらを。時は同じく第二次大戦末期。ナチスに捕らえられ、情報を書き記すことで尋問を逃れた特殊部隊所属のクイーニー。ところが手記は小説の体裁を取り、親友のマディとの出会いやこれまでの歩みを克明に記したものだった……というのが第一部。
第二部はマディ視点で、クイーニーを救出すべくレジスタンスと活動をともにするうち、真実(=ヴェリティ)が明かされるという構成。
イギリス補助航空部隊(ATA)とピーターパンを絡めたお話は過去に同人誌で読んだことがあったので、不思議な縁に首を捻ったものです(もちろん作者さんにはこちらも勧めました)。
聡 -
-
-
Posted by ブクログ
圧倒的なのは、想像を絶する収容所内の様子
フランス人、ポーランド人、ドイツ人、ロシア人たち
実在したラーフェンスブリュック収容所にいた女性たちに起こったこと……。
主人公ローズの使命は、実験台にされたポーランド女性74名の「ウサギ」たちの名前を数え歌にしてすべて暗記して、彼女たちの存在を世に知らしめる。そのために周りに助けられながら生き残ること。
普通であれば、救出され、解放され終戦、事実が明るみになりエンディングとなるところ、その後に訪れるPTSD的な精神状態まで描くことで、より起こってしまったことの「残酷さ」が際立つ。
事実を明らかに「しなければならない」と「したくない」のはざまで苦 -
Posted by ブクログ
女性2人の永遠の友情が描かれる戦争作品。
第一部はクイーニーの手記。親友マディのことを綴っているけど、クイーニーが捕えられている極限状態のせいか、文章も読みにくい。(あえて彼女は読みにくくしているのかもしれないけど。)
読みにくいと思いつつ、がんばって読み進めるしかない。
洋書だから読みにくいというより、そういう話なんだろうな。
第二部のマディの手記のほうが読みやすく、第一部の疑問を解消してくれる。
第一部よりジェットコースターに乗っているような疾走感のある第二部。
後書きを呼んで驚いたが、児童書、、、?!
内容を理解できるのか、と、刺激が強くないか?という疑問がある。私的には大人の作品 -
-
Posted by ブクログ
ヴェリティ=真実、
記録された歴史の裏にある人々の思いこそ、戦争の真実である。
「スパイと飛行士」ふたりの女性。
ドイツ占領下のフランス。
作者のあとがきでは「マディとジュディーは私の空想から生まれたフィクション、舞台の都市名もその他の登場人物も架空、でも、一つ一つのエピソードは真実」と、さまざまな文献等から探り当てて織り込んだことがらに、この物語にかける熱量が伝わる。
そのすさまじさにより、男の戦場には表されない現実の戦争の残酷さを、まざまざと見せつけてくれる。
二人の主人公の語りの世界
第一部、とらわれたスパイのゲシュタポのための手記に描かれた“小説のような”独白は、いつまでも溺れて -
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレとても哀しい友情小説である。
この本はミステリーとして紹介されることが多いようだ。確かに謎に満ちた第1部の手記を第2部の手記で伏線回収していく手法は、ミステリー小説として一級品だとも思う。
しかし、ミステリーの醍醐味である「謎が解明してすっきり」とはいかないのである。謎の解明は哀しさにつながり、二人の主人公の友情は美しいのに、その再開は悲劇なのである。
あとがきによると、出版された際は、ヤングアダルトだったらしいが、この小説をティーンエイジ対象にするという辺りが、反戦に対する断固たる姿勢にうつる。
戦争は悲劇、武力や暴力による争いは絶対にアカンのだ、ということ。
人間は、ここまで優しく -
Posted by ブクログ
本書は二部構成で、どちらも手記のような体裁で話が展開する。第一部の最初は誰が語っているのか分からず、我慢の読書となる。ゲシュタポに捕まったスパイのクイーニーが秘密を書くように強制され、しかも二週間でやれという。二週間後は想像できる悲惨が待っている。第二部は、クイーニーをフランスまで飛ばした女性飛行士のマディの語りとなる。こちらも手記のような体裁となる。二人は違う場所にいながら、相手を信じて書き続ける。衝撃なのは、マディとクイーニーの再会シーンだ。究極の信頼関係を築いているかのように、クイーニーの望みを叶える。自分にはこれはできない。相手のためを思っても。で、このような物語が実は大人向け小説では
-
-
-
Posted by ブクログ
第2次世界大戦中に、ドイツのとある場所にイギリスからのスパイの女性が囚われる。彼女は激しい拷問のうえ、暗号を伝え、さらにイギリスのことを書き記すように紙を与えられる。
彼女はそこにマディと呼ばれる女性飛行士の物語を3人称で語り始める。1週間という期限内に書くこと。その間は生きられることが保証される。しかしながら、彼女の状況は過酷であり、最後まで書き進めることができるか非常にあやうい。
彼女の手記と彼女の状況が挿入されるのが1部、そして2部と読みすすむと、なんというか、奇跡だなぁと思う。実にフィクションだ。
物語の中で彼女らが生きていたこと。戦争という非日常の世界で日常があったことを考 -
Posted by ブクログ
第二次世界大戦中、イギリス特殊作戦執行部員の女性スパイがナチスに捕虜となった。彼女はイギリスに関する情報を手記とすることを強要される。
その手記には親友であるマディのことが丁寧に綴られていた。
こういう物語で、前半は彼女の記した手記がつづく。
何故彼女は、手記を小説のような形にしたのか。
わたしは戦争の特にナチスを扱ったものは見つけたら読むほうなので、今回作品の存在を知って、読みたくて堪らなかった。
この作品では、手記の部分が大変長い。また、手記に挿まれるように捕虜としての生活を窺わせる内容も記されている。
長い手記が、全て真実なのか空想なのかわからないまま読み進めていく。そのためなんと