ジェイムズ・P・ホーガンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
シュレーディンガーの悪魔
すばらしい。ここのところ、映画や書籍でタイムパラドックス関係に触れていたもので、ハードSFの作者がこれをどう描くのか興味があって手にとって見た。
タイムパラドックスについては、アニメを題材にした簡単な解説がある。しかし、ノベライズとなるとこれが難しい。
ノベライズ(小説化)する場合、それが特にSFである場合には、ストーリーの楽しさとタイムパラドックスに関する帳尻あわせが必要になる。このバランスをどの辺に取るかが作者の技量によるところだろう。
「未来からのホットライン」は、まさに熱狂的ファンが多いホーガンがこのバランスに挑戦した作品だろうと思う。私も「星を継ぐもの」以来、ホーガンのファンである。どこがいいかというと簡単である。「あっと驚く結末」であり、「破綻のない帳尻合わせ」である。
こっちのコメントが冗長になる前に今回の感想を書いておこう。まず最初から一気にのめりこんでしまった。いきなりマックスウェルという名前の猫が登場するのである。シュレーディンガーの悪魔が出てきてもおかしくない。このしょっぱなでホーガンの読者に対する挑戦が見て取れた。
(シュレーディンガーについて簡単な解説はこっち)
相変わらずホーガンらしく冗長さは残るし、小説としてのストーリーはきわめて単純。ウィルスや核融合を持ち出してはいるものの、その部分は薄っぺらい。飽くまでテーマはタイムパラドックスである。読者はどんな結末を用意しているのかを楽しみにひたすら読み進めることになる。
後半に入ったところで結末(小説としての結末という意味ではなく帳尻あわせの結末)が読めてくる。その手があったか!と気づくのである。タイムトラベルに関して、私の経験ではこの手法を用いたものはない。
過去を変えることで未来が変わる手法(これはあまりにアニメっぽいが映画で考えると「オーロラの彼方へ」はこの例だろう)、未来はやはり変わらない手法(これが多い)、そして過去を変えることでもうひとつ別の未来ができるという手法(これも多い)でパラドックスを克服しているものがほとんどだろう。
「未来からのホットライン」で使われたのは、これらの手法のいずれでもない。考えようによっては未来は変わるし、変わらないと考えても正しい。登場人物に感情移入する必要はない。これまで誰も気がつかなかった超観察者の手法を用いているのだから。賛否両論あるだろうがこれは傑作である。 -
Posted by ブクログ
とにかく面白い! 時間との勝負なところがあって中々ハラハラさせられる。ホーガン得意の規制の厳しい社会主義的アメリカが舞台になってる。ホーガンがいくつもの小説で力説(?)してる【政府のあり方】というのがまさに理想の政治なんだね。政府とは国民を統制したり規制する能動的なものじゃなくて、純粋に受動的な、簡単に云うなら【交差点で渋滞を整理してるお巡りさん】であるべきだという物なんだね。現在の世界で広く信じられてる考え方、【誰かが得をしてる時は別の誰かが損をしてる】っていうのは間違いだと云ってるわけです。力(規制や抑制も一種の暴力だとホーガンは云ってる)では誰も幸福にはなれない。情報を秘匿することで得られる富や権力は、情報を公開することで得られる富には比べられない。などなど。権力に縋って生きている者はもっと権力を持つ者にあっさり切り捨てられてしまう危険があって、その可能性に汲々としなければならないから結局は幸福ではない。とかね。この本の中でホーガンが仏教の【地獄】に簡単に触れてました。あの、極楽と地獄には同じご馳走と箸があるけど、そこにいる者の違いが地獄を地獄たらしめているって奴。