旦敬介のレビュー一覧

  • 旅立つ理由

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    この本の素晴らしさを伝えるのはどうしたらいいのだろう。
    文章から匂い立つ景色とそこでの人々の暮らし。
    タンザニア、ブラジル、モロッコ、メキシコ、ウガンダ・・・。
    端正な文章と魅力的なエピソードの数々、そして美しい挿絵。
    読むだけですっかり異国の地に降り立ったような錯覚に陥った。

    それぞれの短編で舞台となる都市や村は一見して何の繋がりもない。ANAの機内紙に連載されたものでもあるし、舞台設定ありきの短編だと思っていた。
    ところが読み進めるうちに一人の日本人が旅したり実際に住んでいた場所だと言う事に気づく。

    読売文学賞を受賞した作者のインタビューを読むと、経験したありのままを書いたとある。なる

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    2014年03月27日
  • 11分間

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    苦手だったパウロ・コエーリョ。寺山修司好きの女子に「女性が男性に読んで欲しい猥褻な本」という不純な動機で読み始めたが人生の示唆に富んでいて凄かったの一言。一度整理しないと他の本を読めないので、一旦レビューしとく。
    この本はエロ本であると同時に聖書である。堕ちながら高まっていく相反する世界を描写していく。特に、自意識に悩んでいたり、自己否定している人には赦されると思う本だと思う。性描写に眼が行きがちで、たしかに生々しいが、それは鞭を打たれるキリストを描写するのと同じ如く、ただの状態をある意味正しく表現したに過ぎない。
    相反する要素は、実は表裏一体であり、それに気づき学ぶことは身を持ってしないとわ

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    2013年11月24日
  • 旅立つ理由

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    ラテンアメリカ文学者であり、翻訳家でもある作者による短編集。
    キューバ、メキシコ、ブラジル、ケニアなど21篇の話はどれも短いけれど印象深いものばかりです。
    文章が美しい。流麗と言いたくなります。
    異国に生きる人の存在感、その土地の空気感が色濃く描かれている。
    とても新鮮です。何だろうこのカッコ良さ!
    あんまり気に入ったので手元に置きたくなって早速本屋さんに取り寄せを頼みました。熱に浮かされたようです(笑)

    以下、お気に入りとその引用

    「逃れの町」
     ポルトガル人はなぜ、坂の多い不便な場所を首都に選んだのか。中世の町の残像が、リスボンを丘の斜面に建てさせ、やがて、ブラジルの町をも、丘の斜面の

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    2013年08月28日
  • 旅立つ理由

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    パステルカラーにぬり分けられた家並みや、陽盛りの路地にできたわずかばかりの日陰の椅子で飲む生温かいミント茶、親しげにすり寄ってきては、何かとものを売りつけようとする少年たち。ピレネーをこえた異郷の旅がなつかしくよみがえってくる。

    町の書店でこの本を探すとすると、どのあたりの棚に並んでいるのだろう。旅行関係の本が並ぶ棚だろうか。それとも、日本の小説が並ぶ棚だろうか。海外が舞台のエッセイとも小説ともつかぬ手触りからは堀江敏幸の初期の作品に似た風合いがある。身綺麗な主人公と同じ匂いを共有する友人たちが出会い、意気投合し、自分たちの手で料理した旨いものを食う、その味わいは、たとえば片岡義男の手になる

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    2013年08月02日
  • 11分間

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    再読。テーマはセックスだし、電車の中で読んでいて恥ずかしい部分も多いが、個人的に好きな一冊。宗教嫌いな人は無理かも。

    ちなみにパウロコェーリョ好きな人には遠藤周作もオススメ。

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    2011年11月08日
  • 悪魔とプリン嬢

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    悪に焦点を当てた物語。

    人を善たらしめるのは人の本質ではない。人の本質は悪である。
    人を善たらしめるのは、あくまで人自身の行動である。人が人の手によって善を選択したときに、初めて人は善となりうる。
    善とは選択の結果なのだ。

    と、最近よく思う。

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    2011年09月13日
  • 11分間

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    あっ!という間に読み終わった!
    セックスの話ではあるけれど、愛とか、思いやりの話だと思う。あと男と女について?
    個人的にはマリーアの日記が入る進め方もお気に入りです。
    ラストは賛否両論かもだけど、私は好きだな。

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    2011年07月04日
  • 11分間

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    過去最高の作品。
    恋愛に対する考え方がかわった。
    まだ、何に刺激を受けたのか具体的には言えないのだけれども。
    もう一度読みたい。

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    2011年05月17日
  • 11分間

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    聖なる性。宇宙の深淵。これが、全てに通じる道のよう。
    何度も読み返したいし、何度読んでもまた新しい文章が胸を打つ。

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    2012年01月13日
  • ザーヒル

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    著者の自伝的小説。本人を想起させるキャラクターを設定することによって、リアリティを創出。
    カザフスタンのテングルという文化は興味深いものがあり、「神はステップのどこにでもいる」という宗教観と、「来歴(ザーヒル)から解放されるために、来歴を語る」という野心的な試みは、何かしらの示唆を与えてくれる。

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    2010年06月28日
  • 悪魔とプリン嬢

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    初見:26歳

    面白かった。徹夜して読んだ。あっという間の出来事だった。
    最近、プリン嬢なのでは?という女の人と知り合った。
    あくまで表紙の顔じゃない、その精神がだ。

    久々に読んだあとが気持ちよかった。
    おススメの一冊。

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    2009年10月04日
  • 悪魔とプリン嬢

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    ベロニカは死ぬことにした、から始まる三部作の完結編。世の中には善と悪との二種類がある。その、人間の悪の部分を確かめるために、村全体に犯罪を犯させようとする紳士に思わず怒りを感じたけど、その紳士と退治しようとする人もいて・・・善と悪とは何でしょう?パウロコエーリョ作品の中では一番好きかも知れない。

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    2009年10月04日
  • 悪魔とプリン嬢

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    『ピエドラ川の・・・』、『ベロニカは・・・』に続く、1週間に起こった劇的な変化を描いた3部作の完結編。3部作といってもお話はひとつずつ別々です。

    こじんまりした田舎町に、過去に起こった衝撃的事件から立ち直れずその憎しみをどこにぶつければいいんだー的に悪霊にまんまと魂を支配されてしまった旅人がやってきます。田舎町にはここから出たいと思いながら手段がなくて不満をいっぱい持った娘がいます。この悪魔が、人間は本来悪なのか善なのかということを確かめるため、娘と町の人たちにひとつの賭けをするのですが、、、、というお話。大変面白かったです。
    おとぎ話かと思いきや、けっこう容赦の無い感じで人間の汚い面やずる

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    2009年10月07日
  • 世界終末戦争(下)

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    大変興味深かった。
    ブラジルで実際に起こったカヌードス戦争(1896-97)の話。

    救世主と呼ばれたアントニオ・コンセリェイロ。彼が説教をして歩いていると次々と人が集まり、彼と彼を崇める何万もの人がカヌードスに定住する。国家をアンチキリストと称し軍と戦い、軍に全滅させられる。

    読んでいると、そこから生じた様々な思いや考えが頭を占めてしまい、のろのろ読みになって読み終えるのにだいぶ時間がかかってしまった。
    感想とかどんな本なのかとかまとめられるような作品ではなく、人間の、社会の、全てがある気がする。

    上巻は矛盾について皮肉を込めて書いているという印象。
    例えば、人殺しが信仰に目覚めてやっと

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    2025年12月05日
  • 知への賛歌 修道女フアナの手紙

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    ネタバレ

    フアナの読者層はまず非常に限られていた。読み書きができる知識人は、男性なら上流階級や聖職者にほぼ限られ、女性では修道女や裕福な女性くらいしかいなかった。批判の声を上げていたのも、保守的な修道院関係者や宗教指導者たちだ。つまり、彼女の作品はごく狭い修道院や宗教コミュニティ内で主に読まれており、読者の中心は修道女たちだったと考えられる。そんな中で、世俗を断ったはずの修道女フアナが、自らの修道院をサロンのように使っていると批判された。ところがフアナは、その批判の焦点を「女が学問をすること」一点にすり替えた。そして正当性の主張を展開し、キリスト賛美や美辞麗句で自らの主張を権威づけ、修辞・比喩・引用を駆

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    2025年09月03日
  • 七つの殺人に関する簡潔な記録

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    ジャマイカやばいとこじゃん..

    名前だけ中に浮いていたボブマーリーという存在の輪郭が、(かなりいい意味で)この読書を通じて明確になった気がします。

    現在のジャマイカはどうなってるんだろう。
    レゲエを聴いみようかな。

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    2024年01月30日
  • ザーヒル

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    失踪した妻を探し求め、真実の愛へとたどり着くある作家の話。『ザーヒル』とは、盲目的に意識が囚われてしまう存在のこと。この作家にとってのザーヒルは、彼の元を去った妻であった。しかし聖なる存在と交信できるという不思議な青年と出会うことによって、彼の心はだんだんと浄化されていく。コエーリョも経験したという宗教儀式や巡礼などがこの話の大事な骨格になっている。そのため、内容的にはすぐには受け入れがたい部分もあるが、著者独特の冒険仕立てのストーリーがこの話のスパイスとなっていると思われる。

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    2023年01月27日
  • 11分間

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    売春婦の恋の物語。性的な表現が多いため好き嫌いが分かれそうな作品であるが、個人的には非常に楽しませてもらった。主人公である女性の心の機微をここまでリアルに描いている(ように思われる)パウロ・コエーリョに感嘆してしまったことが、この本の第一印象である。また、決して俗悪な話ではなく、精神性の高い女性の生涯を高貴に描いているところが私好みであった。

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    2022年12月03日
  • 父ガルシア=マルケスの思い出 さようなら、ガボとメルセデス

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    著者は、ガルシアマルケスの息子で映画監督。 ガルシアマルケスが亡くなる直前から、彼の葬儀、著者の母が亡くなるまでを綴ったエッセイ。
    記憶力が抜群で素晴らしい小説を書いたガルシアマルケスだが、晩年は認知症を患っていたということが意外だった。 病状は重度で、家族のことも認識できなかったらしい。最後はすべてを人の手で看病されていた。ノーベル賞を受けた文化人であっても、認知症には勝てない。 彼の最期は知らない方が良かったかもしれない。
    彼の前半生の自伝は刊行されているが、後半生は書く気がなかったらしい。 彼にとっては有名になった後の人生は大して面白くなかったのだろう。ガルシアマルケスのプライベート

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    2022年08月15日
  • ラ・カテドラルでの対話 (上)

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     語りの手の語る過去や心情と、まったくそれとは別の場面の状況などが入り混じった文章になっており、読み進めるのにはじめは戸惑った。しかし、全く別の場面が交錯する箇所で、どちらの場所での発言ととれるセリフなどが出てきて、こういう表現はドラマや映画的でおもしろいなと思った。
     始終ドタバタだが、最後の兄弟の束の間のやりとりにほっこり。下巻も早く読まなければ。

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    2021年12月22日