旦敬介のレビュー一覧
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この本の素晴らしさを伝えるのはどうしたらいいのだろう。
文章から匂い立つ景色とそこでの人々の暮らし。
タンザニア、ブラジル、モロッコ、メキシコ、ウガンダ・・・。
端正な文章と魅力的なエピソードの数々、そして美しい挿絵。
読むだけですっかり異国の地に降り立ったような錯覚に陥った。
それぞれの短編で舞台となる都市や村は一見して何の繋がりもない。ANAの機内紙に連載されたものでもあるし、舞台設定ありきの短編だと思っていた。
ところが読み進めるうちに一人の日本人が旅したり実際に住んでいた場所だと言う事に気づく。
読売文学賞を受賞した作者のインタビューを読むと、経験したありのままを書いたとある。なる -
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苦手だったパウロ・コエーリョ。寺山修司好きの女子に「女性が男性に読んで欲しい猥褻な本」という不純な動機で読み始めたが人生の示唆に富んでいて凄かったの一言。一度整理しないと他の本を読めないので、一旦レビューしとく。
この本はエロ本であると同時に聖書である。堕ちながら高まっていく相反する世界を描写していく。特に、自意識に悩んでいたり、自己否定している人には赦されると思う本だと思う。性描写に眼が行きがちで、たしかに生々しいが、それは鞭を打たれるキリストを描写するのと同じ如く、ただの状態をある意味正しく表現したに過ぎない。
相反する要素は、実は表裏一体であり、それに気づき学ぶことは身を持ってしないとわ -
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ラテンアメリカ文学者であり、翻訳家でもある作者による短編集。
キューバ、メキシコ、ブラジル、ケニアなど21篇の話はどれも短いけれど印象深いものばかりです。
文章が美しい。流麗と言いたくなります。
異国に生きる人の存在感、その土地の空気感が色濃く描かれている。
とても新鮮です。何だろうこのカッコ良さ!
あんまり気に入ったので手元に置きたくなって早速本屋さんに取り寄せを頼みました。熱に浮かされたようです(笑)
以下、お気に入りとその引用
「逃れの町」
ポルトガル人はなぜ、坂の多い不便な場所を首都に選んだのか。中世の町の残像が、リスボンを丘の斜面に建てさせ、やがて、ブラジルの町をも、丘の斜面の -
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パステルカラーにぬり分けられた家並みや、陽盛りの路地にできたわずかばかりの日陰の椅子で飲む生温かいミント茶、親しげにすり寄ってきては、何かとものを売りつけようとする少年たち。ピレネーをこえた異郷の旅がなつかしくよみがえってくる。
町の書店でこの本を探すとすると、どのあたりの棚に並んでいるのだろう。旅行関係の本が並ぶ棚だろうか。それとも、日本の小説が並ぶ棚だろうか。海外が舞台のエッセイとも小説ともつかぬ手触りからは堀江敏幸の初期の作品に似た風合いがある。身綺麗な主人公と同じ匂いを共有する友人たちが出会い、意気投合し、自分たちの手で料理した旨いものを食う、その味わいは、たとえば片岡義男の手になる -
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『ピエドラ川の・・・』、『ベロニカは・・・』に続く、1週間に起こった劇的な変化を描いた3部作の完結編。3部作といってもお話はひとつずつ別々です。
こじんまりした田舎町に、過去に起こった衝撃的事件から立ち直れずその憎しみをどこにぶつければいいんだー的に悪霊にまんまと魂を支配されてしまった旅人がやってきます。田舎町にはここから出たいと思いながら手段がなくて不満をいっぱい持った娘がいます。この悪魔が、人間は本来悪なのか善なのかということを確かめるため、娘と町の人たちにひとつの賭けをするのですが、、、、というお話。大変面白かったです。
おとぎ話かと思いきや、けっこう容赦の無い感じで人間の汚い面やずる -
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大変興味深かった。
ブラジルで実際に起こったカヌードス戦争(1896-97)の話。
救世主と呼ばれたアントニオ・コンセリェイロ。彼が説教をして歩いていると次々と人が集まり、彼と彼を崇める何万もの人がカヌードスに定住する。国家をアンチキリストと称し軍と戦い、軍に全滅させられる。
読んでいると、そこから生じた様々な思いや考えが頭を占めてしまい、のろのろ読みになって読み終えるのにだいぶ時間がかかってしまった。
感想とかどんな本なのかとかまとめられるような作品ではなく、人間の、社会の、全てがある気がする。
上巻は矛盾について皮肉を込めて書いているという印象。
例えば、人殺しが信仰に目覚めてやっと -
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ネタバレフアナの読者層はまず非常に限られていた。読み書きができる知識人は、男性なら上流階級や聖職者にほぼ限られ、女性では修道女や裕福な女性くらいしかいなかった。批判の声を上げていたのも、保守的な修道院関係者や宗教指導者たちだ。つまり、彼女の作品はごく狭い修道院や宗教コミュニティ内で主に読まれており、読者の中心は修道女たちだったと考えられる。そんな中で、世俗を断ったはずの修道女フアナが、自らの修道院をサロンのように使っていると批判された。ところがフアナは、その批判の焦点を「女が学問をすること」一点にすり替えた。そして正当性の主張を展開し、キリスト賛美や美辞麗句で自らの主張を権威づけ、修辞・比喩・引用を駆
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著者は、ガルシアマルケスの息子で映画監督。 ガルシアマルケスが亡くなる直前から、彼の葬儀、著者の母が亡くなるまでを綴ったエッセイ。
記憶力が抜群で素晴らしい小説を書いたガルシアマルケスだが、晩年は認知症を患っていたということが意外だった。 病状は重度で、家族のことも認識できなかったらしい。最後はすべてを人の手で看病されていた。ノーベル賞を受けた文化人であっても、認知症には勝てない。 彼の最期は知らない方が良かったかもしれない。
彼の前半生の自伝は刊行されているが、後半生は書く気がなかったらしい。 彼にとっては有名になった後の人生は大して面白くなかったのだろう。ガルシアマルケスのプライベート