旦敬介のレビュー一覧

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    パウロ・コエーリョはすごい。
    なんかいろいろ考えさせる。単純に言えば1人の女が幸せをつかむ物語なのに。
    本当の愛は思わぬところからやってくる。そして、硬くつながれる。そして、それが見えたり、見えなかったりするから不思議だ。

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    2014年08月24日
  • 11分間

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     これは何の時間かというと、一人の娼婦を買って、実際に性行為をする時間である。

     エロティックな話なのか?と言われると、どうだろうか。
     ポルノグラフィではないけれど、多分に性的なものを含む。

     緩やかに流れる時間というものを深く感じた。
     いやー。この話の出だしから、エンディングで驚かされたけど納得もした。すごい。(感想の最後が急に安っぽくなって台無し感が凄い)

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    2014年06月18日
  • 旅立つ理由

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    この本の素晴らしさを伝えるのはどうしたらいいのだろう。
    文章から匂い立つ景色とそこでの人々の暮らし。
    タンザニア、ブラジル、モロッコ、メキシコ、ウガンダ・・・。
    端正な文章と魅力的なエピソードの数々、そして美しい挿絵。
    読むだけですっかり異国の地に降り立ったような錯覚に陥った。

    それぞれの短編で舞台となる都市や村は一見して何の繋がりもない。ANAの機内紙に連載されたものでもあるし、舞台設定ありきの短編だと思っていた。
    ところが読み進めるうちに一人の日本人が旅したり実際に住んでいた場所だと言う事に気づく。

    読売文学賞を受賞した作者のインタビューを読むと、経験したありのままを書いたとある。なるほど。この圧倒的なまでのリアリティの理由はそう言うことだったのか。

    それにしてもここまで異国の地で現地の人々にすっと溶け込んでしまうとは驚くほかない。
    日本人旅行者などほとんどいないような場所である。そんな所で、あっと言う間に親密になってしまうのはやはり旦ださん自身が持つ魅力がなせる技なのか。

    私が今まで旅してきた場所は、いわゆる観光地ばかり。そこで暮らす人達と話す機会もなく上っ面だけを眺めるだけだった。
    正直に羨ましいと思った。
    言葉がしゃべれたとしてもこうはいかないと思う。
    仕方がないからこの本を読んで擬似体験できただけでも良しとしよう。

    どのエピソードも甲乙つけがたいほどすばらしいけれど、心に残ったのは「キューバからの二通の手紙」と「マリオのインジェラ屋」。
    いっとき心を通わせても、あっけないほどに縁が切れてしまう切なさ。それも旅の醍醐味だろうけど。

    残念な事が一点。
    本書を読む時と場所を完全に間違えた。
    出来れば白浜の椰子の木の下で海を眺めながら読みたかった。
    そんな気分にさせてくれた本だった。

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    2014年03月27日
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    苦手だったパウロ・コエーリョ。寺山修司好きの女子に「女性が男性に読んで欲しい猥褻な本」という不純な動機で読み始めたが人生の示唆に富んでいて凄かったの一言。一度整理しないと他の本を読めないので、一旦レビューしとく。
    この本はエロ本であると同時に聖書である。堕ちながら高まっていく相反する世界を描写していく。特に、自意識に悩んでいたり、自己否定している人には赦されると思う本だと思う。性描写に眼が行きがちで、たしかに生々しいが、それは鞭を打たれるキリストを描写するのと同じ如く、ただの状態をある意味正しく表現したに過ぎない。
    相反する要素は、実は表裏一体であり、それに気づき学ぶことは身を持ってしないとわからないが、この表現力の豊かさによって読者は主人公に起きることを客観的、そして主観的に感じることが出来る。
    僕は、この本を読み終えて、赦されたと思った。読後感に救いがあった。
    もちろん、主人公がサディスト側に回る伏線の回収が無かったり、道の真ん中で突然、主人公が一人でオーガズムに達するとか、最後が救いがたいほどメルヘンチックだったりするのだけれど、結果は他者のためであり、過程は自分のためにあるなど、いささか極端で、だからこそ分かりやすい。
    誰にも勧める本ではないけれど、僕の中ではすごくよかったとしかいえない一冊。

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    2013年11月24日
  • 旅立つ理由

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    ラテンアメリカ文学者であり、翻訳家でもある作者による短編集。
    キューバ、メキシコ、ブラジル、ケニアなど21篇の話はどれも短いけれど印象深いものばかりです。
    文章が美しい。流麗と言いたくなります。
    異国に生きる人の存在感、その土地の空気感が色濃く描かれている。
    とても新鮮です。何だろうこのカッコ良さ!
    あんまり気に入ったので手元に置きたくなって早速本屋さんに取り寄せを頼みました。熱に浮かされたようです(笑)

    以下、お気に入りとその引用

    「逃れの町」
     ポルトガル人はなぜ、坂の多い不便な場所を首都に選んだのか。中世の町の残像が、リスボンを丘の斜面に建てさせ、やがて、ブラジルの町をも、丘の斜面の町にしたのではないのか…。

    「昼食のゆくえ」
     スペインではお昼が一日で一番大事な聖なる食事だから、手を抜くわけにはいかない。パエーリャはここでは、お昼の料理だった。しかもそれは副菜であって、その他に鶏の胸肉のローストとじゃが芋の料理を彼女は作った。反対に、夕食は冷たいチョリソ・ソーセージとパンとチーズぐらいですませるのがスペインの流儀だった。
     1981年のスペインを思い出すと、望遠鏡を反対側から覗いているみたいに遠くに小さく見える。その翌年からわずか十年の間にスペインは、サッカーのワールドカップとバルセローナ・オリンピックと、ゼビージャ万博を、立て続けに開催して、左派政権のもとで一気に加速して変わっていったからだ。

    「カチュンバーリの長い道のり」
     ある日突然、あの日のアミーナの献立が実は、東アフリカの歴史と、植民地主義の歴史と、かつて「アフリカの真珠」と呼ばれたウガンダに生まれ育った彼女個人の歴史とが交錯する長大な時間を、まるで一篇の映画のように凝縮して鮮烈に映し出すものだったことを電光のように思い知らされることになるのである。

    ↑インド西部グジャラート地方の料理がどのようにしてウガンダに伝わりそれを作ったアミーナの出自と結びついた後年の驚きが描かれ、深く息をつき、感銘を受けたこの一篇。見事です。

    他に
     世界で一番うまい肉を食べた日 ー フィレンツェ
     初めて見る異国の情景 ー ザンジバル
     熱帯の恋愛詩 ー ベリーズ
     どうしてジェラバを着ないのか ー モロッコ
     カポエイリスタの日常 ー バイーア
     マンディンガの潜水少年たち ー ベラクルス
     アフリカの流儀 ー マラバ
     初めてのフェイジョアーダ ー バイーア
     ハンモックを吊る場所 ー メリダ
     本当のキューバを捜して ー キューバ
     マリオのインジェラ屋 ー エチオピア
     ラ・プラタ遁走曲 ー ウルグアイ国境
     眺めのいい窓 ー バイーア
     アミーナの買い出し ー ナイロビ
     キューバからの二通の手紙 ー シエゴ・デ・アビラ
     一番よく守られている秘密 ー メキシコシティ
     父祖の地への旅 ー ウガンダ
     歩く生活の始まり ー バイーア

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    2013年08月28日
  • 旅立つ理由

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    パステルカラーにぬり分けられた家並みや、陽盛りの路地にできたわずかばかりの日陰の椅子で飲む生温かいミント茶、親しげにすり寄ってきては、何かとものを売りつけようとする少年たち。ピレネーをこえた異郷の旅がなつかしくよみがえってくる。

    町の書店でこの本を探すとすると、どのあたりの棚に並んでいるのだろう。旅行関係の本が並ぶ棚だろうか。それとも、日本の小説が並ぶ棚だろうか。海外が舞台のエッセイとも小説ともつかぬ手触りからは堀江敏幸の初期の作品に似た風合いがある。身綺麗な主人公と同じ匂いを共有する友人たちが出会い、意気投合し、自分たちの手で料理した旨いものを食う、その味わいは、たとえば片岡義男の手になる短篇小説の持つそれである。ちがいは、その舞台が日本のどこにでもありそうな小さな町か、中南米やアフリカのひなびた町かどうかくらいだ。

    生きていることを実感するには、適切な食材を正しい方法で調理して食べることにつきる。僕はそれを長田弘の『食卓一期一会』で学んだ。そのためには、少々の時間と金はつかわねばならない。グルメというのではないから、三ツ星のついた有名料理店で高級料理を食するといった話ではない。その土地の人間が大事にしてきた、その土地の人でなければ分からない料理。そこには、大きくいえばひとつの民族の歴史が息づいている。

    巻頭を飾る「世界で一番うまい肉を食べた日」で紹介されるビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(骨のついた肉の塊が大きいことで知られる)はともかく、それに続く話に登場するのは、ほとんどの日本人が食べたこともない料理だ。気候、風土がちがえば、食べる物も人々も異なる。料理といっしょに異郷の地に生きる多民族の息づかいが伝わってくる。切りつめた語り口は、座談の名手のようで、吹きすぎる風のように耳に心地よい。

    メキシコ湾岸、ベラクルス郊外のマンディンガという集落の食堂では牡蠣を注文すると、男の子が海に飛び込んで牡蠣をとってくる。世界一の牡蠣を食べるならマンディンガ、ということになる。アパートの「封切り」パーティーのために二日前から支度して作る、ブラジルはバイーア風フェイジョアーダ。リオ・デ・ジャネイロの黒インゲン豆とちがって茶色い豆を使う。40人もの客がやってくるいかにもブラジル風の一夜。キューバならアヒアコで決まりのはずだったが、「典型的なキューバ料理」のはずのアヒアコがどこへ行っても食べられない、この不条理さ。エチオピア人のマリオが焼くインジェラ(テフというきわめて粒の細かい雑穀をすりつぶして水で溶き、三、四日醗酵させてから円形の鉄板か陶板に薄く流しこんで蒸し焼きにしたもの)。スペインのサラマンカでは、大学生のマノーロがトルティーヤ・エスパニョーラ(早い話がスペイン式オムレツ)を作ってくれる。オリジナルのレシピつきで。バイーアの料理をもうひとつ。貧民街だったペロリーニョの飲み屋「パンゾ」の女主人が別れに作ってくれたムケカ。レモンとココナッツ・ミルクと椰子油で魚を調理したアフロ・ブラジル料理。極めつきはアミーナというウガンダからの国連認定難民が大量の買出しの果てに作るカチュンバーリだろう。「細かく刻んで激しく塩もみしてから洗ったり絞ったりした玉ねぎやキャベツに、やはり細かく切ったトマトと香菜と緑トウガラシを混ぜてレモン汁でじっくり和えたもの」だが、このカチュンバーリの来歴が凄い。

    「彼がアミーナから見よう見まねで学んだカチュンバーリが、こんなふうに、アミーナの人生の全容と切っても切れないものであって、それがヴァスコ・ダ・ガマの時代から続く全地球的規模の暴虐な歴史の展開にダイレクトに結びついていて、流行語として『ポスト・コロニアル』と呼ばれている世界の構成と分かちがたいものであることを思うと、いったい自分はどんな顔色をして何を作ればいいのか、彼にはなおさらわからなくなっていた」

    主人公の日本人はウガンダの女性と結婚し、子どもも生まれるが、今は離婚して男の子と暮らしているようだ。仕事は何をしているのかよく分からないが、海外暮らしが長い。それも、中南米やアフリカといったあまり観光では行かないところばかりだ。最後の方の一篇で主人公の日本人の名が「ダン」であることが示される。

    作者の名は、バルガス=リョサや、ガルシア=マルケスの訳者としてかねてからなじんでいたが、こうして本人の著作を読むと、また別の顔が見えてくることに驚いた。軽々と国境を越え、世界の果てまで出かけてゆき、そこで伴侶を得、子どもを授かる。その出向いた土地で、新たな友を得て、また別の国へと彷徨い出る。

    かつて外国を旅して、紀行や小説を書いた作家には、日本と西洋を比較して、その優劣を競ったり、彼我のちがいに慨嘆したりと、しかたのないこととはいえ肩肘張った物言いがつきまとった。著者の文章には、その大上段に振りかぶったところがない。軽やかな身ごなしと、身の丈にあった感慨が新鮮な感興を与えてくれる。久方ぶりに「旅への誘い」を感じた。夏の旅のお伴に絶好の一冊。

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    2013年08月02日
  • 11分間

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    再読。テーマはセックスだし、電車の中で読んでいて恥ずかしい部分も多いが、個人的に好きな一冊。宗教嫌いな人は無理かも。

    ちなみにパウロコェーリョ好きな人には遠藤周作もオススメ。

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    2011年11月08日
  • 悪魔とプリン嬢

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    悪に焦点を当てた物語。

    人を善たらしめるのは人の本質ではない。人の本質は悪である。
    人を善たらしめるのは、あくまで人自身の行動である。人が人の手によって善を選択したときに、初めて人は善となりうる。
    善とは選択の結果なのだ。

    と、最近よく思う。

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    2011年09月13日
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    あっ!という間に読み終わった!
    セックスの話ではあるけれど、愛とか、思いやりの話だと思う。あと男と女について?
    個人的にはマリーアの日記が入る進め方もお気に入りです。
    ラストは賛否両論かもだけど、私は好きだな。

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    2011年07月04日
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    過去最高の作品。
    恋愛に対する考え方がかわった。
    まだ、何に刺激を受けたのか具体的には言えないのだけれども。
    もう一度読みたい。

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    2011年05月17日
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    聖なる性。宇宙の深淵。これが、全てに通じる道のよう。
    何度も読み返したいし、何度読んでもまた新しい文章が胸を打つ。

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    2012年01月13日
  • ザーヒル

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    著者の自伝的小説。本人を想起させるキャラクターを設定することによって、リアリティを創出。
    カザフスタンのテングルという文化は興味深いものがあり、「神はステップのどこにでもいる」という宗教観と、「来歴(ザーヒル)から解放されるために、来歴を語る」という野心的な試みは、何かしらの示唆を与えてくれる。

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    2010年06月28日
  • 悪魔とプリン嬢

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    初見:26歳

    面白かった。徹夜して読んだ。あっという間の出来事だった。
    最近、プリン嬢なのでは?という女の人と知り合った。
    あくまで表紙の顔じゃない、その精神がだ。

    久々に読んだあとが気持ちよかった。
    おススメの一冊。

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    2009年10月04日
  • 悪魔とプリン嬢

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    ベロニカは死ぬことにした、から始まる三部作の完結編。世の中には善と悪との二種類がある。その、人間の悪の部分を確かめるために、村全体に犯罪を犯させようとする紳士に思わず怒りを感じたけど、その紳士と退治しようとする人もいて・・・善と悪とは何でしょう?パウロコエーリョ作品の中では一番好きかも知れない。

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    2009年10月04日
  • 悪魔とプリン嬢

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    『ピエドラ川の・・・』、『ベロニカは・・・』に続く、1週間に起こった劇的な変化を描いた3部作の完結編。3部作といってもお話はひとつずつ別々です。

    こじんまりした田舎町に、過去に起こった衝撃的事件から立ち直れずその憎しみをどこにぶつければいいんだー的に悪霊にまんまと魂を支配されてしまった旅人がやってきます。田舎町にはここから出たいと思いながら手段がなくて不満をいっぱい持った娘がいます。この悪魔が、人間は本来悪なのか善なのかということを確かめるため、娘と町の人たちにひとつの賭けをするのですが、、、、というお話。大変面白かったです。
    おとぎ話かと思いきや、けっこう容赦の無い感じで人間の汚い面やずるい面も描かれており、読み応えあります。

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    2009年10月07日
  • 七つの殺人に関する簡潔な記録

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    辞典のように分厚い本だが、多元焦点の手法で登場人物が入れ替わり立ち替わり、時間が経過していく、一本の映画のようにあっという間に読めた。しかしこの情報量でほんの数十年の出来事に過ぎず、南米の歴史を深く紐解いたらさらに数十冊になるだろうから、これはほんの一部の物語である。

    Netflixでボブマーリーの映画を観たばかりだったのだが、日本からしたら遠い南米ジャマイカという国について自分は何も知らなかったと、改めて自覚した。

    ボブマーリーについては、平和の象徴と讃えられ、数々のヒット曲で世界を席巻したレゲエシンガー。南米の陽気な国ジャマイカで誕生したレゲエミュージック、という認識がこの本でガラガラと崩れた。

    南米のゲットーの暮らしは想像を絶する。アメリカよりも悪い。アフリカに近いかもしれない。ジャマイカだけでなくキューバやブラジルやメキシコも劣らずの治安の悪さが想像できる。第三世界とアメリカは表現するが、キューバ危機など、冷戦の影響が見え隠れする。社会主義、共産主義と資本主義の対立構造が、国の発展を阻み、成熟を妨げる。アメリカの思惑に、国内政治のプロパガンダに音楽の英雄は利用される。マフィアもまた彼らの飼い犬の一つにすぎない。プライドも野望も力からは逃れられない。盛者必衰、今日笑っていた者が明日にはいなくなる。また別の力が椅子に座るだけだ。

    これはフィクションだが、南米とアメリカの関係がかいまみえ、あながち嘘ではないだろう。

    ジャマイカという国の歴史を知らずに、60年代から90年代までの部分だけ切り取ってもピンと来ない。アフリカ奴隷の反乱や、スペイン、フランス、英国の南米支配の歴史を知り踏まえてみれば、より多くのことに気づくだろう。開拓史や音楽史、宗教の起源も併せて彼らの歴史を勉強したい。ラスタファーライの本質など、アフリカから受け継がれた思想も関係するのだろう。

    一方でアメリカに渡ったジャマイカ人が、どのように彼の国で生き延びてきたのかも、視野に入れねばならない。ジャマイカのゲットーにルーツを持つマフィアたちの非道がどのように培われたか。第三世界を利用してきた、資本主義社会にも責任の一端はあるのだから、彼らを危険視して排除すればいいというシンプルな話ではない。黒幕は大体安全な国のアップタウンでのんびりと楽しんでいる。ゲットーになど興味はない。搾取される者が、搾取する側に回ることは無い。

    ジャマイカのゲットーで起きていたことは、ニューヨークのゲットーよりも酷く、黒人の人権を勝ち取るためのリーダーもいない。彼らはまだ共食いしていて、成熟していない。つけこまれ、アメリカに搾取される。

    作中のピアスはマーロンジェイムズなのかもしれない。ジャマイカという国を外側から捉える視点そのもの。死がいつも近くて、死に時も選べない時、音楽やラスタが彼らの魂を救ってくれるのだろうか。本当の肥溜めの中では死に慣れるしかないのか。自分などが想像してみても、何も分からない。

    本作はレゲエだけでなく、60年代から80年代のヒットチャートなど、音楽についての描写が多く、音楽好きにはまた違った楽しみがあるのが良かった。

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    2026年06月24日
  • 世界終末戦争(上)

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    ペルーの文豪バルガス・リョサは昨年亡くなっているが数多くの作品を残している。本作の舞台はブラジル内陸地方の騒動。宗教、革命、政治、それぞれの信条を持った人物たちの争いを描く。いずれの立場にいる人も各自が信じる善に向かって突き進んでいくが、目的を達成するために暴力を否定しない。時は19世紀末、世界の終わりが近づいてくる。まだ物語は折り返し地点だが、先が全然予想できず、楽しみでもある

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    2026年04月13日
  • 世界終末戦争(下)

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    生々しい戦争描写で息も絶え絶え。。

    が、憑かれたように読まされるのがガルシアマルケスやバルガスリョサだよなあ。

    地獄を味わった近眼の新聞記者の明日はどっちだ。

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    2026年02月25日
  • 世界終末戦争(上)

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    どいつもこいつも香ばしいキャラクターばかりだ!

    仏教徒というか何でもちゃんぽんな邦人にはわからない部分もあるが、さあ下巻へ。

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    2026年02月14日
  • 世界終末戦争(下)

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    大変興味深かった。
    ブラジルで実際に起こったカヌードス戦争(1896-97)の話。

    救世主と呼ばれたアントニオ・コンセリェイロ。彼が説教をして歩いていると次々と人が集まり、彼と彼を崇める何万もの人がカヌードスに定住する。国家をアンチキリストと称し軍と戦い、軍に全滅させられる。

    読んでいると、そこから生じた様々な思いや考えが頭を占めてしまい、のろのろ読みになって読み終えるのにだいぶ時間がかかってしまった。
    感想とかどんな本なのかとかまとめられるような作品ではなく、人間の、社会の、全てがある気がする。

    上巻は矛盾について皮肉を込めて書いているという印象。
    例えば、人殺しが信仰に目覚めてやっと人を殺す人生から抜け出せたと安堵するのに結局その信仰の為に多くの人殺しをしなくてはいけなくなるとか。思想や主張、宗教や戦争の矛盾を強く感じた。

    下巻は人間の本能的な欲について書いている印象。
    生きたい、愛し愛されたい、性への欲望、怒り。

    登場人物が多様で、犯罪者(犯罪者から信者になる複数人)、革命を見たいと願う者、記者、農園主、権力者、軍人兵士、体に異常がある人々、商人など、それぞれが語り手となって個人の思いや人生を語ったり同じ時をそれぞれの立場から語ったりする。

    そのような構成であるのに発端となるコンセリェイロだけは何を考え何を思っているのか全く書かれず、彼が語り手となることはない。彼の言葉は神の教えだけ。
    私にはそのことがこの作品を名作にしているように感じた。

    本当に色々なことを考えてしまう本だった。

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    2025年12月05日