旦敬介のレビュー一覧
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題名の『11分間』の意味は?
この小説の主人公は、ブラジルの若い女の子。
ひょんなきっかけからスイスに渡り、売春婦になる。
1年だけ。1年だけと決めて彼女は売春婦を続けるうち恋をしてしまう。
その恋の結末はイコール小説の結末なので書くのを控えるが、『11分間』というタイトルの意味は書こう。
その売春婦をしている彼女は言う。
一晩の彼女の相場は350スイスフラン。
いや、一晩は正しくない。一人のお客で350スイスフラン。
一晩というのは大袈裟だ。実際は45分で350スイスフラン。
服を脱いだり、親しげなそぶりをしてみせたり、他愛もないことを話したり、また服を着たりする時間を差し引けば正味の -
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ブラジル人女性のマリーアが、11分間の営みから時間の使い方と自身の本当の欲望、本来の姿や愛について学んでいくお話。
主人公がアルケミストに影響されてるw
自分から進んで人生のジェットコースターに乗っていること、機械は制御されて安全を確保されているものということ。
魂の緊張を解きほぐす
ターミネーター型 自分の欲望に忠実で自意識過剰
プリティウーマン型 欲望を内に抑えつけている表面いい人
ゴッドファーザー型 フラットで線引きされたやりとり
純真な少女、運命の悪女、慈愛の聖母
本当のセックスとは
自分のことしか考えていない、世間のこうあるべき姿に従うだけ、誰かのために自分を犠牲にする -
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いやぁ~、読みごたえがありました。
百科事典じゃないんだから、もう。重すぎです!
・・・と文句言いつつ、この装丁、大好きなんですよね。
背表紙が特に好き。背表紙を横書きにして、絵まで入れちゃうなんて、この分厚さだから出来ること。
しかし、読んでいてけっこう頭が疲れた。
たくさんの登場人物にそれぞれの視点から見えたことをしゃべらせて、ゆっくりと全体像を浮かびあがらせていく形式の物語なんだけれども、そういうタイプの物語の常として、話の焦点が絞られてくるまでにすごく時間がかかる。通常の本ならともかく、このボリューム。半分くらい読んでも(すでに400ページ以上)、ただのギャングの抗争劇にしか見えなく -
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書店員を長く続けていると何度か立ち会う入荷した荷物の箱を開けた瞬間にビビっと感じる「これ面白そう!!!」。この本も目に入った時から危険なぐらい引き付けられた。ボブマーリー暗殺未遂事件!?刺激的なワードが躍る表紙はその文字以上に禍々しいほど極彩色なジャングルの情景。ジャマイカのぼんやりしたイメージが輪郭を伴ってゆく。判型からして凶悪。ずっしりとした重量感。思わず躊躇する価格。それでも手に取らずにはいられない1冊。
物語は1976年12月3日に始まる。日本では昭和51年。ロッキード事件が巷を賑わせていた年末に遠く離れた中米の地でレゲエ・スターにしてジャマイカの英雄ボブ・マーリーが襲撃された。真相 -
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おちょくってるのか。簡潔な記録だと。A5版七百ページ二段組。厚さ五センチ。重さ一キログラム超。まさに凶器レヴェル。放ったらかしにしてあった妻の実家の庭の草刈りをした後で手にしたら、手首が震えて床に落としそうになった。『JR』以来、厚手の本を読むときいつもやるように、机の上に足を載せ、椅子を後ろに倒して膝の上に置いてページを繰った。久しぶりの大物である。しかし、長大さに恐れをなすことはない。一つ一つの章は確かに簡潔で要を得ている。
「ボブ・マーリィが逝っちゃった」と歌ったのは加川良だった。ボブ・マーリーが死んだのは一九八一年五月のことだから、おそらくその年の秋から冬にかけてのことだろう。町の小 -
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表紙を見たときに、何となくどこかで見たことの有る絵だな、と感じた。それもそのはず、本作は「翼の王国」に連載されていた作品をまとめた短編集だったのだ。表紙のイラストも、連載時と同じイラストレーターの作品だそうだ。僕は最近あまり青い方には乗ってないし、乗ったからと言っていつも翼の王国を読むわけではないけれど、それでもいくつかの作品は読んだことがあった。
元々作者がトラベルライターをしてた頃からよく読んでいたし(それでキューバに行こうとしたことも有る)、連載していたときから、心の奥底を旅立ちへ駆り立てるような文章には好感を持っていたのだけれど、改めてこうして一冊通して読んで、連載では判らない、この物 -
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"アルケミスト""第五の山"などで知られる著書によるキリシタン文学。
平和で退屈な山奥の村ヴィスコスにやってきた外国人の旅人。村で唯一の宿で働くバーメイドのシャンタールは好奇心から彼にちょっかいを掛ける。思いもかけず旅人は彼女を誘い出し、彼の財宝と引き換えにある取引きを持ちかける。
一見善良な田舎の人々。彼らの奥底に眠る善と悪とを掘り起こそうとする旅人。キリシタンの教えが背景に流れ、ふわふわとした読後感です。
○人間の本性についてだ。われわれは誘惑に屈する機会を与えられれば、遅かれ早かれ必ず誘惑に屈する、というのが私の発見した真実だ。条件さえ -
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全日空の機内誌の連載だったということで、短編小説集である。海外、特にアフリカやブラジルの街角や生活での小粋な景色を描いたものである。
その細かい描写は現地ならではと思わせ、読んだ誰もが遠い異郷を脳裏に思い浮かべるであろう。旅好きな人の旅情をそそるのは間違いない。
読み進むうちに、短編それぞれが連携し始め、彼という名の日本人主人公の物語になっていく。彼は、どうも筆者自身あるいは自身をモデルにしたようである。実体験をベースにしているのならばリアリティがあるはずだ、と納得した。
それでも、本書の価値はうすれない。ここに書かれているような異国での出会いや経験を、そのほんの一部でも旅の中で味わい -
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ネタバレ何年かぶりに読み直した本。節目には読みたくなるコエーリョ。 前は「嫌な場所から抜け出して自分の行きたいところへ踏み出してみなさい」というコエーリョ節が響いて会社を辞めるきっかけにもなった本。それなりに自分のやりたい事をやれている今でも読んでみると、発見がある。ただ、それは昔響いた所とはちょっと違う。 惰性で生きている人たちを否定してしまいがちだけど、マリーアはこの小説のあと、緩やかな惰性に入っていくのではないだろうか。惰性と冒険の繰り返し。その二項対立は年を取るごとに境界が曖昧になっていく。痛みを共有することから得られる快楽を強く否定する理由が気になった。愛の形は人の数だけあると思いつつ、痛み