【感想・ネタバレ】ラ・カテドラルでの対話 (上)のレビュー

あらすじ

独裁者批判,ブルジョアジー批判,父と子の確執,同性愛――.居酒屋ラ・カテドラルにおける二人の人物の会話をとおして,独裁政権下ペルーの腐敗しきった社会の現実を描く初期の代表作.「これまでに書いたすべての作品の中から一冊だけ,火事場から救い出せるのだとしたら,私はこの作品を救い出すだろう」(バルガス=リョサ).(全二冊)

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Posted by ブクログ

いつだめになってしまったのだろう?ペルーも、自分も。
新聞社説担当サンティアーゴ・サバラ(サバリータ)は考える。
家に帰ったら妻が「犬を散歩させていたら、野良犬収容係員に強奪されてしまったの」と泣く。怒ったサンティアーゴが収容所に乗り込むが係員は「この不景気で、狂犬病対策として犬を収容して歩合制で小銭を稼ぐ仕事に就かざるをえないんですよ。係員の中には人が抱っこしている犬を取り上げる、人の家の庭に乗り込んで繋がれている犬の紐を切って連れていく連中もいますよ。あなたは記者なんでしょ?社会のための仕事がこの低賃金で押し付けられています。人間に権利なんてあるんですかね?この問題を取り上げてくださいよ」などと言われる。
そしてサンティアーゴは昔知っていたアンブローシオというサンボ(黒人と先住民の混血)と再会し、二人はラ・カテドラルという労働者向け安居酒屋に入る。どうやらサンティアーゴは上流階級出身だがそんな暮らしを嫌がり家を出た。そして父にはサンティアーゴも知らない「何か」があり、それをアンブローシオは知っているようなのだ。サンティアーゴはアンブローシオに「一体何があったんだ。なあ、間抜けのフリは辞めてくれ。父のせいなのか?父がやったのか?」と問う。

本書の現実的な時間は、サンティアーゴとアンブローシオがラ・カテドラルで過ごした4時間。そこで彼らがどのように生きてきたのかが、ペルーの政権不安や革命、反体制運動などを背景に語られていく。

しかしバルガス=リョサなので、二人の会話の合間にどちらかが当時を思い出してそこから話が広がっていくのだが、一つの文章ごとに時間が生きつ戻りつ広がりつつ、誰と誰の会話かは分かってもそれがいつの会話かは読み進めないと分からない、心情とセリフと客観的描写が入り乱れる、という手法。これでもちゃんと読めるし分かるんだから凄いよなあ。私の「バルガス=リョサを読む時に活性化する脳細胞」が活性化してきました・笑

以下、メモ取らないと理由わからなくなるので書き留めまくってやたらに長いです(^_^;)

【登場人物】
◆人種の呼び名。
・インディオ:混血がある・なしという人種区別よりも、スペイン語以外の先住民言語を話し伝統を受け継いで生活しているという文化的な区別として呼ばれる。
・メソティソ:インデオと白人の混血。または混血ある・なしに関わらず、都市部に住んでスペイン語を話して都会的生活を送る混血者はインディオではなくメソティソと見做される。
・チョラ、チョロ:インディオと白人の混血の女、男。メソティソと同じ意味だが多少の侮蔑が含まれるが、仲間内の親しみとして使うこともある。
・サンボ:黒人とインディオの混血
・ムラート:白人と黒人の混血
・ネグラ、ネグロ:黒人の女、男
・セラーノ:アンデスの山間出身者を「田舎モン」と揶揄するニュアンス

◆政治家、党派
・ベナビデス将軍・大統領(実在人物/1933年〜39年)
・ブスマンテ大統領(実在人物/1945年〜48年):上流階級出身で、外交官から大統領になった。
・オドリア将軍・大統領(実在人物/1948年〜56年):チョロ(先住民との混血)の軍人。大統領ブスタマンテに対してクーデターを起こした。作中のフェルミン・サバラや、ドン・カヨはこの派閥。アプラ党を取り締まる。
・ベラウンデ(実在人物/1963年〜68年):作中では、カヨ・ベルムーデス失脚後に大統領になっていることが明かされる。
・アプラ党:1924年に結党された「アメリカ革命人民同盟」。暴力革命も肯定している。その時時の政権に弾圧される。
・カウイデ:共産党地下組織と、ホセ・カルロス・マリアテギ設立のペルー社会党
サンティアーゴの大学政治活動の時に出てくる名前。アプラ党、カウイデ、社会党組織と接触してデモを実行したのか??

◆サバラ家(上流階級。愛称は「サバリータ」)
・両親:実業家のフェルミンとソイラ夫妻。オドリア政権派で、成約や建築を受注し、政財界の重鎮となる。
・サンティアーゴ:少年時代の渾名は「ヤセッポチ」。学生時代は父に反抗して、カトリック大学ではなく、チェロや中層階急の通うサン・マルコス大学に通った。
・テテ:サンティアーゴの妹。後にポパイ・アレバロと結婚。
・チスパス:サンティアーゴの兄。元士官候補生から半ヤクザになり、サンティアーゴに変なことを吹き込んだりしていた。その後父の会社で真面目なサラリーマンになった。

◆アレバロ家(上流階級)
・ポパイ:少年時代の渾名は「ソバカス」。サンティアーゴの幼馴染で彼の妹テテと結婚する。建築士。

◆ラ・クロニカ新聞社
・バイェホ:編集長
・ペリキート:カメラマン
・カルリートス:サンティアーゴの新聞社の同僚(先輩)で、サンティアーゴは彼に色々と話をする。後にアル中で入院。

◆アンブローシオ
チンチャ出身の黒人と先住民の混血(サンボ)。
ドン・カヨの幼馴染で御用聞きみたいなことをした。その後、フェルミン・サバラの運転手になり、「何か」があり長い年月行方不明だった。

◆アマーリア
サバラ家のメイドだったが、ソイラ夫人に解雇される。サンティアーゴとポパイは彼女に欲情して訪ねていったことがある。
アンブローシオとは内縁の妻のような関係で、子供を残して死んだことが分かる。

◆ベルムーデス家
・両親:父「禿鷲」、母「信心深いドニャ・カタリーナ」と呼ばれる。禿鷲は人夫出身だが、ベナビデス将軍官僚と組んで財産を作り、チンシャ町長になる。
・一人息子:カヨ:アンブローシオと幼馴染だが、父の社会的地位向上により距離が生じる。最初の妻は、黒人女のローサ。この結婚に激怒した父から援助を切られる。この勝手な結婚には、アンブローシオと、学生友達のセラーノが協力していた。ローサは「うまくやった」のだが、年月が経つとどんどん醜くなり夫婦仲も悪くなっている。

【カヨ・ベルムーデス(ドン・カヨ)がオドリア政権に入る】
第三章は、カヨ・ベルムーデスが、学生時代の友人セラーノにリマに呼ばれるところから。(「セラーノ」というのは「インディオ系」という呼称で、本名はエスピーナ将軍。)
セラーノは、ブスタマンテ政権の大臣だったが、オドリアによるクーデター後も大臣を務めている(このあたりの政治の動きはよくわからず…)。そしてカヨ・ベルムーデスをオドリア政権の官僚に推薦した。
カヨ・ベルムーデスはそのままリマに残り、ローサとは別居。愛人として「オルテンシア」という女性を入れたらしい。
この後カヨ・ベルムーデスは軍保安部で秘密警察を取り仕切り、アプラ党や共産主義を弾圧していく。<この国は文明国なんかじゃなくて、野蛮な、暗愚の国なんだ。(P241)>
だが彼には政治主張は無く、ただ役割としての弾圧を敷いているのだった。
そしてサンティアーゴの父、フェルミン・サバラも政治主義ではなく商業価値としてオドリア政権と親しくなっていく。

【サンティアーゴの逮捕】
そしてそのころ、サンティアーゴはサン・マルコス大学の同級生のアイーダやハコーボと仲良くなり、学校内の政治勉強会(共産主義、労働者階級のための闘争、マルクス主義など)に参加する。
サンティアーゴは上流階級の学校を避けて庶民や混血たちのいる学校に入ったのだが、政治や本の話をする時に、教授も、学生も、意欲が無いこと気が付き、「チョロ(混血。社会的に地位が低い人たちを示していると思う)の連中も金持ち坊っちゃんたちと同じだった」と感じる。活動仲間は「安月給で働く教授たち、地位の低い階級の学生たちが世の中に無関心なのは体制が悪い。だから教えてやらなければ。」というのだが、サンティアーゴ自身は本気で共産主義もアプラ党支持にもなりきれない。
そんなサン・マルコス大学活動ブループが労働者デモを呼びかけ、結構大きな事になった、のかな。そこへカヨ・ベルムーデスが軍隊を入れて大学を占拠し、政治活動グループを逮捕した。その中にサンティアーゴもいた。
彼は、父のフェルミン・サバラがカヨ・ベルムーデスに頼んだため釈放された。
フェルミンは息子のサンティアーゴが自分に反抗しても青春の寄り道として期待して応援していた。しかしサンディアーゴは家出同然で独立し、大学も辞めて新聞社に勤めるのだった。(彼の階級では人に使われる人生というのは脱落となってしまう)
なお、この大学占拠と学生逮捕にサンティアーゴは一種の責任を感じていたのだが、実はカヨ・ベルムーデスが、フェルミン・サバラを警戒して盗聴などを行っていたところ、息子のサンティアーゴのデモ計画を知って襲撃した、ということをアンブローシオから聞かされる。

【父と息子の関係】
うまく行かない二組の父と息子が出てくる。禿鷲とカヨのベルムーデス親子、上流階級実業家フェルミンと反抗するサンティアーゴのサバラ親子。
両方を知っているのがアンブローシオ。ラ・カテドラルでは「旦那さん(フェルミン)は坊っちゃんを心配して、こっそり様子を見に行っていたんですよ」「父は主張のない商業主義者で憎らしい俗物さ」なんて話も差し込まれる。ずっと昔、アンブローシオがフェルミン・サバラにベルムーデスの話をした時は「旦那さんは、禿鷲とドン・カヨの話をしていながら、ご自身とサンティアーゴ坊っちゃんの話をしているのでは?」なんて考えている。
ただサンティアーゴ自身もオドリア独裁政権には大反対でだが、他の党派に賛同しきれない気持ちも抱えている。
フェルミンの言う<仕事をしている人間がみんな手を引いてしまって、政治家だけに政治を任せてしまったら、国はむちゃくちゃになってしまいますから。(P261)>は、「政治理念のない素人が首を突っ込むことの危険」もあるけれども「政治プロだけが国を動かす危険回避」って意味ではそうだよなあとは思うんだけどさ。

【そのころアマーリアは?】
アマーリアはトリニダーというアプラ党員で工場勤務の男と付き合っていた。彼は以前逮捕歴があり心の傷となっているらしい。アマーリアは妊娠するが、トリニダーはアプラ党の活動でしょっちゅう出かけるし、心の傷だといって働かない。
だがトリニダーが死んで判明したのは、彼はアプラ党員何かではなかったということ。彼が「党員仲間」と言っていた男が言うには「彼はアプラ党員と間違われて逮捕されたことがあり、それ以来似非のアプラ党員を名乗っていた。彼が党活動って言っていたのは、俺達と飲んでいただけ」だという。
えええ。これって精神医学的に「トラウマから、余計に自分を傷つけようとする」って病症が実際にありそうですね。
トリニダーは、カヨ・ベルムーデス配下の秘密警察にやられたことが分かるのだが、アンブローシオはその秘密警察の運転手になる。(そしてフェルミナン・サバラの運転手に転職したようなんだけど、「いつ」なのかがよくわからない…)

【アンブローシオの両親】
アンブローシオの父トリフルシオは刑務所に入っていた。釈放されてからは、農場主でオドリア派議員アレバロの元で働く。オドリア派の選挙不正とかが書かれます。
母はトマサという田舎のネグラ(黒人女)。


【アンブローシオとアマーリア】
カヨ・ベルムーデスは、オルテンシア(歌姫という意味の「ムーサ」とも呼ばれている)いう歌手?ダンサー?水商売?の女を愛人にして家を与えている。多くの男を夢中にさせた美女で、同性愛の傾向もあるらしい。
アンブローシオは、一人になり生活に困っているアマーリアにこっそりと「オルテンシアのところで女中を募集している。だが絶対に俺の名前は出すな。カヨが邪魔するから。」と言って紹介した。
どうやらこの後アンブローシオとアマーリアの間に娘が生まれるのだが、彼女が「オルテンシア・アマーリア」と名付けられるらしい。

【カヨ・ベルムーデス失脚】
カヨ・ベルムーデスに監視されるようになったフェルミン・サバラは、カヨを政権に推薦したエスピーナ将軍(セラーノ)、オドリア大統領の甥パレーデス大尉たちと「反体制連立グループ」を組んだ??(フェルミンがいろいろな人と接触したり離れたり、カヨがいろんな人と組んだり監視したりの場面が入り組んでいるので、誰が味方で誰が敵で誰がそんな政治主張かわからなくなっている…。なおカヨがフェルミンを監視していたのは連立グループ入りを察知されたからで、結果としてサンティアーゴの大学が占拠された。)
そして市立劇場での反体制政治家による集会を、カヨたちが妨害しようとしたりして、実際に行われた集会には襲撃者が乱入したこともあり大騒動に。カヨは軍隊で鎮圧しようとするが、市民グループも蜂起して「革命」に近い状態になる。カヨは辞任せざるを得なくなり外国に亡命し、それまで贅沢に暮らしていたオルテンシアは置いていかれた。
フェルミン・サバラは身の危険を感じて姿を隠す。
現時点での政権
・オドリア政権は、共産党や反対者は弾圧したが、公共事業などには力を入れて独裁を正当化した。
・フェルミン・サバラのような実業家は政治家と癒着した。
・フェルミンたちの「連立グループ」は、カヨの弾圧から身と財産を守るためのクーデターみたいなもの?
・多分連立グループを組んだのは、カヨにより失脚しかけている政治家、富裕層、政治家と癒着して財産を得ている実業家たち。

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2026年07月31日

Posted by ブクログ

長く、複雑で、シーンの数も登場人物の数も多いので、かんたんに理解できる小説ではない。しかし、退屈ではない。おそらくこれがバルガス=リョサがノーベル賞を授かった主な業績なのだろう。そう思うほどに前衛的なやりかたで、社会と政治の腐敗を描いている。話のおもしろさを理解するためには、サンティアーゴ/サバリータを主人公とみなし、父親のドン・フェルミンとの関係がどういうものか、そして彼自身がどういう人生を歩んでいくのかを常に見失わないことが必要だ。そうすれば、すべて人間関係を把握しなくても、本書のテーマが見えてくる。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白いとは聞いていたが、ここまで面白いとは…ぐんぐん引き込まれて、今年ベストかもしれない。ハンガンの少年が来るといい勝負。バルガス=リョサ追悼ウィークはこの上下だけになりそうだけれど(分厚い!GW終わった!笑)、バルガス=リョサ大先生素晴らしい体験を有難うという感じです。

「これまでに書いたすべての作品の中から一冊だけ,火事場から救い出せるのだとしたら,私はこの作品を救い出すだろう」
そう著者が言うだけある作品…

まず視点が自由間接話法を縦横無尽に使って入り乱れる。映像的ともいうべき交差で、最初は登場人物もわからないから、何が何だかという感じだったが、慣れるとこれが心地よいスピードで話が進むし、思わぬところで思わぬ話が何気なく繋がっていく種明かしのような構成がとてもスリリングだった。

ペルーの政治情勢と、密接に絡み合う人種・階層含む社会経済状況、何も知らずに読み出したが、そこもある視点として知ることができて面白かった。

彼自身もペルーなのだサバリータ、彼もまた、どこかの瞬間でダメになってしまったのだ。彼は考えるーそれはどの瞬間だったのか?ホテル・クリヨンの前で、一匹の犬が彼の足を舐めにやってくるーおまえは狂犬病じゃないだろうな、さっさと失せろ。ダメになってしまったペルー、と彼は考える、ダメになってしまったカルリートス、誰も彼もがダメになった。(p.15)から始まる。

「全然迷いがなかった、信じていたんだ」とサンティアーゴは言った。「僕はその前から何かを盲目的に信じている人たちのことを、羨ましいと思っていたんだよカルリートス」…「それこそが人間にとって、一番恵まれていることなんだよアンブローシオ」とサンティアーゴは言う。「自分の言っていることを信じられるということ、自分のやっていることが好きだということ」(p.277)

「かわいそうにな」とカルリートスは言った。「これで一生、新聞記者になっちまうんだな。いいか、ちょっとこっちに寄ってくれ、誰にも聞かれないように。ひとつ重大な秘密を告白しよう。詩こそこの世で一番偉大なものだぞサバリータ」(p.450)

…もう二度とあの熱意は持てないだろう、と彼は考える、何かをやり遂げたいというあの欲求、特ダネをとってみんなにちやほやしてもらうんだ、ああいう企画も二度と出さないだろう、それで昇進するんだ、なんて。何がダメになったんだろうか、と考える。彼は考えるーいつ、なぜ。(p.458)

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いつも沖縄に出張にいくときにラテンアメリカの文庫を携えるようにしているが、最初、上巻だけ持って行った。
面喰らいながら書いたメモが、以下。


複数の会話が入り乱れる。時間の混乱。しかし似たトピックを話していたり、連想的に響きあったりすることもある。
地の文においては、彼がいうのだった、と人称の妙
地の文は会話文で中断されなければ原則的に改行なし。
おまえは何々だったなサンティアーゴ。と、作者の声なのか、サンティアーゴの自問自答なのか、も地の文に紛れ込む。
地の文においても、たとえば208ページ、もちろん構わないのよ、いいことだと思っているのだった。と、直接話法?と間接話法?が入り混じる。

自分(そして国)はダメになってしまった、遡ればいつからだったか?あのときだったのだろうか、と話しながら度々考えている。
全体小説を書きたいと思った時、こういう文体と形式を選ばざるを得なかった。ボヴァリー夫人なんかは単純で純朴だ。
ところで、アンブローシオが坊ちゃんに話しかけるだけでなく、旦那さんにも話しかけているが、誰?=たぶんフェルミン>108p。

※もっと分析を頑張るならば、地の文でこういう話、そこに混入するのは誰と誰の会話でどういう内容か、まで。
また、各人物ごとにエクセルなどで時系列のマトリックスを作るのもおもしろいかも。


上巻を読み終えてから下巻の訳者解説を読んで、面喰うのも無理はないと納得した次第。
読み終え、各章ごとのあらすじをまとめ、登場人物の表(B5にたっぷり!)を作り、もっと分析したいと思いつつも果たせないので、いったんここで感想を書くことにする。

ざっくり言えば、過去を悔いている(自分は、そして国は、いつから駄目になってしまったのだろう、という問いへの執着ぶりが独特)青年が、かつての実家の使用人と再会し、ラ・カテドラルという酒場で飲みながら対話する、という大枠。
四方山話噂話過去話などなどが入り乱れ入り混じり読者は渦に巻き込まれていくが、中心にあるのは「(息子にとっての)父を巡る謎」。

視点人物であるサンティアーゴの父は、政治にどっぷりの商人だが、ある種のセクシャリティを隠しており、ある殺人事件を機に息子が探り合ってしまう。(「間抜けのふりをするのはやめてくれ」「二人で率直に、ムーサについて、父さんについて、話をしようじゃないか。彼に命令されたのか?父さんだったのか?」という序盤の台詞が、後半に効いてくる)
次の視点人物であるアンブローシオの父は、ムショ帰り。青春期の息子がいる家に帰り、息子の性格を曲げてしまう。
さらに政治的重要人物であるカヨも、禿鷲と綽名される金貸しの父を持つがゆえ、独特なセクシャリティを持つ。

というように、父ー息子ー政治や権力ー性、というテーマがあり、そこにアンブローシオの妻となる使用人のアマーリアや、差別意識の強いサンティアーゴの母や、カヨが囲う愛人のオルテンシア(=ムーサ)やが緊密に絡んでくる。もちろん性がかかわれば男女両面ひっつくのは当然なのだが。
政治劇と個人劇がつながるのが性、というのは、下衆だが、吉本隆明や埴谷雄高を連想したりもした。

ネットで感想を漁っていると、火サスをタランティーノやゴッドファーザーPART2っぽく書きました、という例えがあって、膝を打つ。
「緑の家」と較べるとスケールの小ささは否めないが、むしろ日本の学生運動を連想したり、家庭の権力性を考えたり、と、自身に引き付けて考えるきっかけになるのは、こちらかなと思ったりもした。

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2018年12月05日

Posted by ブクログ

 語りの手の語る過去や心情と、まったくそれとは別の場面の状況などが入り混じった文章になっており、読み進めるのにはじめは戸惑った。しかし、全く別の場面が交錯する箇所で、どちらの場所での発言ととれるセリフなどが出てきて、こういう表現はドラマや映画的でおもしろいなと思った。
 始終ドタバタだが、最後の兄弟の束の間のやりとりにほっこり。下巻も早く読まなければ。

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2021年12月22日

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